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花沢類×牧野つくし


「ふう・・・」

部屋に入るなりあたしは大きくため息をついた。

「ついに卒業しちゃったね・・・」

そうつぶやくあたしの隣でタイを緩めながら花沢類が微笑んでいる。

「さびしいんだろ、牧野」

くるっと後ろを向いて顔をそらしたのは図星をさされたのを悟られたくないから。
それからもうひとつ、初めて見た制服姿の花沢類があまりに素敵でまぶしくてみとれてしまいそうになるから。

「当たり、だろ?」

ちょっとうれしそうに覗き込む、この人があたしの彼氏だなんて今でも信じられないのに。

「そんなことないよ。どうせ隣の敷地なんだし・・・」
「じゃあ何?まさか俺の制服姿に見とれちゃったとか」

もう、花沢類って普段はあっさりしているのに時々とんでもなく自信過剰だったり鋭かったりするのよね。さすが伊達にF4にはいってないわ。

「べ、別に見とれてなんかないよ。あんたたちの制服なんて何度か見たことあるんだから」

途端に気まずーい沈黙が部屋の中に漂った。

「そか、ごめん。俺の思い上がりか」

そう言って唐突にかけていた椅子から立ち上がり、制服のジャケットを脱ぐ。そのまま奥の部屋へと歩き出す。
普段の類はこんな風に早口で投げやりな話し方はしない。

「類・・・?どうしたの?」

彼を追って奥の部屋へと入る。部屋の真ん中に据えられたベッドの真ん中でどかっと類が大の字になって寝ていた。

「ちょっと、服のままで寝たらしわになるでしょ」

思わず声をかけると、ゆっくりと起き上がった類がいつも通りの穏やかでゆっくりした口調であたしに話し掛けた。

「いいんだよ、どうせ制服着るのは最初で最後なんだから」

その言葉を聞いてあたしははっと思い出した。何度か見たことあるのは類の制服姿じゃない。あいつの・・・。
その途端不意に腕を引っ張られ、ベッドへと倒れこむ。

「誰と勘違いしてたの?」

あたしの上に覆い被さるようにして類が聞いてきた。

いえないよ。そんなの・・・・。

顔をそらそうとするあたしの頬を両手で押さえ込む類。

「言えないって訳?」

茶色いビー玉のような目に宿る怒りにぞくっとするような寒気を覚えた。

「そんな態度見るとますます言わせたいね」

類が自分の胸元へと手をやり、ゆっくりと制服のタイを外した。すぐにあたしの両手を掴んで上にあげると今しがた外したばかりのタイできつく縛り上げてしまう。

「ちょっと・・・やめてよ」

華奢に見えるけれど花沢類の力はあれで結構強い。解こうとしても解けそうにないとわかるとあたしは、オンナの武器、「お願い攻撃」に出た。

「類・・・ごめんね、あたしが悪かったから、ね、この手ほどいて?」
「んーーー?どうしようかな?」

涼しい顔で類があたしの表情を楽しむように見つめる。

「あんたにこんなアブノーマルな趣味があったなんて知らなかった」

人がしたでに出ていれば調子にのって来る花沢類にあたしはキレる寸前だった。

「へえ・・・この程度でアブノーマルっていうんだ?」

あたしがむっとすればするほど類は冷静になっていくみたいで、落ち着き払った様子でそんな言葉を返してくる。

「牧野にはちょっとお仕置きが必要みたいだね」

そういうなりあたしの耳元に近づき息を吹きかける。

「ん・・・」

くすぐったいその感覚に身をよじる。

「自分だってしっかり感じてるくせに」

くすくす笑いながらあたしの反応を見据えているその態度。

「な、何いってんのよ、この変態男!」

もはや類に向かってこんな言葉を言う日が来るとは・・・。自由になる足をバタバタさせながら叫ぶ。

「今度は逆ギレ?」

あくまで落ち着き払ったままの類が軽々とあたしの足を押さえつける。

「無神経なことして人を不愉快にさせてるのは牧野だろ」
「だから、勘違いしてたのはごめんなさいって・・・・」
「そのことじゃない!」

それほど大きな声じゃなかったけれど類の鋭い声は部屋の中に響き渡った。

「何のことか牧野が思い出すまでちょっとお仕置きさせてもらっていい?」

またいつもの柔らかな表情の類だった。

「え?え?どういうこと?」

あたしの質問には答えずに類が唇を重ねてくる。優しくてうっとりするようなキス。大好きなキス。
よかった。いつもの類だ。お仕置きとか何とか聞こえたような気がしたけど気のせいよね。
そのまま類の右手はあたしの制服のジャケットのボタンにかかる。

「は・・・あ・・・」

類の唇は耳元、首筋、次々と移動する。
いつのまにかブラウスのボタンを全部外され、はだけたままの状態で類の愛撫を受けていた。

「ねぇ・・・腕ほどいて」

腕が頭の上部で結ばれているから服も脱げない。類を抱きしめることだって。

「いやだ」
「だって・・・このままじゃ服脱げないよ」
「脱ぎたかったの?」

そういってにっこり笑った類は体を起こし、手を下半身に移すとさっさとあたしのスカートと下着を取り払ってしまった。

「ちょ、ちょっとそのことじゃないって・・・」

この格好ってあの・・・上半身はすべてはだけてて下半身は何も身に付けてない。
とてつもなく恥ずかしい格好なんですけどっ・・・!

「花沢類!なんとかしてっ・・・!」

あたしは真っ赤になって自由の利かない身体を横にしたりうつ伏せにしたりして何とかし視線から逃れようとするが類がにやにやしながらいとも簡単にまた仰向けにしてしまう。

「んーどうしようかな?」
「花沢類っ、あんた楽しんでるんでしょ」
「ははは、あったりー。こういう牧野の姿って滅多に拝めないしね」
「拝まなくていいってば!」
「じゃ、拝まずに堪能する」

類の手が再び下半身に伸びてきた。剥き出しになった太腿にゆっくりと触れる。
同時にそこに唇を寄せて強く跡が残るほどに吸い付く。

「やっ・・・そんなこと」

先程までされていた感覚がよみがえる。

「類・・・ねえ・・・」

腰が自然と動きだす。まだ直接には触られてもいないけどあたし・・・もう結構きてる。

「じゃあ、俺の質問にも答えて?」

相変わらず微妙な位置に唇を這わせたまま類が問い掛けた。

「俺が今日制服着てきたのはなんでだった?」

太腿の付け根、確かにあたしの弱い箇所だけど、今はそこを攻めて欲しいんじゃない、もっと・・・

「えっと、あたしが『最後くらい制服姿見せて』っていったから?」

たしかF4と一緒にカフェテリアでランチしてる時にあたしがそういったんだった。
でも類以外の3人は『制服?んなダセえもん着て来れるかよっ』って笑ったのに・・・

「そう、可愛い彼女のお願いを俺がせっかく聞いてあげたのにな。
今日来て見たら・・」

そう言いながらすっかり濡れぼそった箇所をすっと指で滑り上げる。

「や・・・っ!」

待ち望んでいた刺激に思わず声を上げる。

「なんで司も制服なんだよっ・・・」
「そん・・なの・・知らないっ。ねえ、それより・・・」

火照る箇所をすぐに静めてほしくて熱い視線を向ける。

「おまけに牧野まであいつのことをちらちら見てるなんて・・・な」

吐き捨てるような類の言葉にこもっている。気付かれてないと思っていた。
ちゃんとわかってたんだ。あたしの視線の先。

「ごめん・・・」
「それだけ?」
「ホントにごめん・・・」

あたしの謝罪を耳にして類は何も答えず、再び同じ場所へと指を進めた。

「あ・・・ん・・・類あたし・・・」

いつもならこれだけで類はちゃんとわかってくれるのに、今日の類は本気であたしに意地悪するつもりのようだ。ほんの少しポイントをずらしてせめてくる。

「お願い・・・あたしもう・・・」
「どうして欲しい?」

唇の端をほんの少しゆがめて類がいう。

あたしの「ごめんなさい」もまだ彼の心には届いていないみたいだ。

「・・・意地悪」
「意地悪は牧野のほうだろ」

じっとあたしを見据えるその視線にあたしは類には隠し事しても無駄だと思った。
すべて白状しよう、そう覚悟を決めた。

「・・・知ってたの?」
「・・・ていうか偶然目に入った」

あんなことであんなもん受け取ってたらわかるだろ、顔を横に向けて類が言葉を続けた。

「・・・そう、ごめん・・・ね」

「捨てていい?」

類が仰向けに寝ているままのあたしの上に覆い被さるようにして聞いてくる。
道明寺の気持ちはうれしかったけど、今のあたしにとって1番大事なのは目の前にいる花沢類だから。

「・・・いいよ、かまわない」

即座に答えは出た。
あたしの言葉が終わるか終わらないかのうちに類は左手であたしの制服の右のポケットをごそごそと探り始めた。すぐに探し当てる小さな物体。
それを右手に持ち変えると振り返り、部屋の隅に位置しているダストボックスへとめがけて投げ込んだ。

「これで、よし」

にっこり微笑んだ彼の笑顔はいつもと同じだった。ううん、いつもよりも子供っぽかったかもしれない。

「ね、じゃあ、この手ほどいてくれる?」
「それは、だめ」

うれしそうに頬にキスをする。

「どうして・・・」
「俺ってやっぱりアブノーマルだから」






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