花沢類×牧野つくし
![]() 「いらっしゃいま・・・あッ、花沢類!」 あたしはショーケースの団子を補充しながら、店内に入ってきたお客に営業用のスマイルを向けた。 しかしそのお客の顔をパッと見たあたしは、見慣れたその姿に声をあげた。 「あれ?どしたの?」 「近く散歩してて・・・牧野バイトやってるかもって思って寄った」 そう言いながら花沢類はケースの中の和菓子を眺めている。 「バイト何時まで?」 「今日はあと30分くらいで終わるけど・・・」 「そっか。じゃ向かいのカフェで待ってるから送るよ」 「あ、うん・・・」 花沢類はニコッと笑いかけると、店をでて行った。 店の前を歩いていたOLらしき女の人がすれ違った花沢類を見て振り返ってる。 「はあ・・・」 あたしがカウンターに頬杖をついてため息を吐くと、奥で様子を見ていたらしい優紀が 声をかけてきた。 「花沢さん、今日も来てくれたね」 「・・・うん・・・」 今から1ヶ月前、突然いなくなった道明寺を追いかけてN.Yへ行ったあたしは あいつの予想外の言葉と冷たい瞳に追い返され、一人異国の地で路頭に迷っていた。 そんなあたしを救ってくれたのは・・・花沢類だった。 一緒に日本へ帰ってきてから、花沢類はいつもあたしのそばにいてくれた。 学校へ行っているときは一緒に非常階段でサボったり、お弁当を一緒に食べたり・・・ 西門さんや美作さん、桜子や滋さんも何かとあたしを気遣ってくれた。 道明寺と別れてから1ヶ月・・・なんの連絡もないまま、どうして追い返されたのか理由もわからないままだった。 「花沢さん、あれから何にも言ってこないの?」 レジのお金を清算しながら、優紀が尋ねてきた。 「N.Yで告白されたんでしょ?」 「こ、告白って・・・ッ!」 「好きだって言われたんでしょ、立派な告白じゃん」 あわててどもるあたしに優紀はサラリと言ってのける。 確かに・・・N.Yにいる時にあたしは花沢類から好きだと言われた。 でもあれから毎日一緒にいるけど特に何を言われるわけでもなく 花沢類との関係は今まで通りだった。 ---夢、だったのかも・・・ 最近はそう思うようになっていた。 「お疲れ様でしたー」 優紀よりシフトが早目に終わったあたしは手早く制服に着替え、 花沢類が待っているカフェへ急いだ。 店に入ると、窓際の隅の席でこちらを向いて座っている花沢類の姿が目につく。 「ごめん、お待たせ」 あたしの声に気づいた花沢類がふわりと笑う。 あたしはその笑顔に鼓動が速くなるのを感じていた。 ---な、なにドキドキしてんのあたしっ 「牧野もなんか飲む?」 「あ・・・あたしはいいや。今日バイト暇だったから休憩中にお茶飲んだし」 「そっか。んじゃ行こっか」 花沢類にうながされるまま、店を出たあたし達は横に並んで歩き出す。 「ねえ、どこ行くの?」 「うーん・・・散歩」 あいかわらず散歩の好きな花沢類の返事にあたしはぷっと吹きだす。 「・・・なに?」 「花沢類って本当に好きなんだなーって思って」 「好き?なにが?」 「散歩とかひなたぼっことか・・・」 「なんだ、そっちか」 その花沢類の言葉の意味がわからなくて、え?と首をかしげていたあたしの手が 偶然花沢類の手に触れた。 「あっごめ・・・」 変に意識して顔が赤くなってしまったあたしを見て花沢類はくすっと笑うと おもむろにあたしの手をとり指を絡めた。 「えッ?!」 驚いているあたしにおかまいもなく手をつないだまま歩き続ける。 冷たくスラリとした指の感触にあたしの鼓動は一気に走り出す。 ---別に手つなぐのはじめてでもないのに なんでこんな意識してんの? さっき優紀が変なこと言うから・・・ しばらく街をブラブラ歩いたところであたしのカバンから携帯の着信音が鳴り出した。 「ちょっとごめん・・・もしもし?あ、進?・・・・・えぇ?!そんな困るッ急に・・・・ちょ、ちょっと待ってよ!」 あたしの切羽詰った様子に花沢類が不思議そうに尋ねてくる。 「どした?」 「え?・・・・あのー・・・進が今晩友達が泊まりにくることになったからあたしにどっか泊まってきて、って・・・ ったくもーあの子いっつもそうやって急に言ってくるんだからッ!」 鼻息も荒く携帯に文句をぶつけてるあたしを見て花沢類は何か考えた風で黙っている。 「あたしちょっと優紀んとこ泊まらせてもらえるか聞いてくる。バイト先戻るから花沢類、ここでバイバイしよ?」 くるりと方向転換したあたしの腕を花沢類が不意につかんだ。 「それならうち来れば?」 「は、花沢類の家に?!と、と、とんでもないっ遠慮させていただきますッ」 「なんで?別にオレ一人暮らししてるわけじゃないんだからいいじゃん」 「いや、でもそういう事じゃなくて・・・」 「心配してんの?オレ、夜這いしたりしないから安心していいよ?」 いたずらっぽくウィンクしてみせた花沢類の顔に見とれてしまっていたあたしは さからえずに好意に甘えることになった。 花沢類の部屋に着くと、相変わらず殺風景な部屋にソファが置かれていた。 「あれ?前はテレビとベッドしかなかったのに・・・ソファ買ったの?」 「ああ、それ?静が送ってきた」 「し、静先輩が?」 「うん、この前電話した時にソファくらい部屋に置いたら?って言われて・・・ 買いに行くのめんどくさいって言ったらいいやつがあったからってパリから送ってきた」 突然出てきた“静”という名前に、あたしはなぜか胸の奥がざわざわと波立つ。 「よく・・・連絡とってるの?」 「たまにね。1ヶ月に1回くらい」 あたしはなんとなく花沢類と視線を合わせずらくなって、背中を向けるようにフローリングに ペタッと腰をおろした。 「牧野おなかすいてない?」 「う、うん・・・大丈夫」 「じゃあ先にシャワー浴びたら?」 そう言って部屋の奥にあるバスルームを顎で指し、花沢類はベッドにうつぶせになって テレビを見始めた。 「じゃあ先に使わせてもらうね」 「ごゆっくり」 あたしはまだ胸に残っている感情を消化しきれないまま、服を脱ぎシャワーのお湯を勢いよくだした。 ボーッとしながらお湯の加減も調節しないで水栓をひねってしまったあたしは、 頭の上から思いっきり熱湯を浴びてしまった。 「キャーッ!!あっつーいッ!!!」 バスルームにこだましたあたしの声は部屋でテレビを見ていた花沢類にも届いたらしく すごい勢いで駆け込んできた。 「牧野?!どうしたッ?」 バスの床にしゃがみこみ、ヒリヒリしている背中の痛みにじっと耐えていたあたしは なんの前ぶれもなくバスに入ってきた類に気づいてあわてて裸体を隠そうと近くにあった バスローブを羽織った。 「な、なんでもないの・・・ただちょっと背中に熱湯浴びちゃって・・・」 そう言いながら後ずさりするあたしを花沢類は軽々と抱き上げると ソファにあたしを座らせた。 そしてなにも言わず部屋をでていくと、戻ってきた花沢類の手には救急箱と氷の入った袋が下げられていた。 「冷やすから背中みせて」 「えッ?!い、いいよ!こんなの放っとけば治っちゃうしっ」 「早くしろっ、痕が残ったらどうすんだ?!」 はじめてみる花沢類の怒鳴り声に近い言葉にあたしはびくっとなって、素直に背中を向ける。 「ごめん・・・花沢類。迷惑かけて・・・」 「いいよ、謝るな。オレこそごめん。怒鳴ったりして・・・」 さっきとはうって変わっていつもの優しい花沢類の声に、あたしはなぜかホッとして その拍子に涙が溢れてしまった。 「牧野・・・?!なんで泣いて・・・」 「ごめんッ何でもないの。気にしないで!」 顔を隠すように俯いたあたしを花沢類はそっと自分の方に向き直らせ、 顔を覆っている両手をそっと外す。 両手をつかまれた格好で顔をのぞきこまれたあたしは視線のやり場に困って 顔をふいっと横に向く。 「あんたが何でもないって言う時は何かある時なんだよ」 さらに優しい口調で言うと、花沢類はあたしの両手をぐいっと引き寄せ 胸に受け止めた。 体が密着した瞬間、花沢類の甘いコロンの香りにあたしの思考回路がショートする。 「は、離してッ」 体を戻そうと力を込めてみても、ぎゅっとあたしを抱きしめている花沢類の腕はびくともしない。 「・・・なんで泣いたの?」 「べ、別に泣いてなんか・・・」 「牧野?」 まるで子供を諭すような口調にあたしはいつもと違って意地をはるのをやめた。 「・・・花沢類怒っちゃったのかと思って・・・それに・・・」 「それに?」 「ちょっと・・・ちょっとだけ嫉妬した」 「嫉妬?」 「静先輩と連絡とってるんだな、って思ったら・・・」 恥ずかしくて顔が真っ赤になってるあたしは花沢類に抱きしめられたままぎゅっと目をつむって 何かしらの反応が返ってくるのを待った。 「・・・マジ?」 花沢類はあたしの肩をつかんでまっすぐ顔をのぞきこむ。 「え?」 「牧野が嫉妬してくれるなんて思わなかったから・・・なんか嬉しい」 そう言って少し頬を赤らめた花沢類の表情にあたしは見入ってしまった。 恥ずかしそうにまたあたしの顔を自分の胸に押し付けると、ぎゅーっと抱きしめられた。 ---な、なに? なんでこの人こんなに嬉しそうなの? ふと耳元に直接響いてくる振動に気づいてそっと耳をすましてみる。 トクトクトクトク・・・・ 花沢類の心臓がかなり速いペースで脈打ってるのがわかった。 「花沢類・・・心臓速いよ・・・?」 「・・・そりゃ速くもなるよ?」 「なんで?」 「好きな女のそんな格好間近で見せられたら無理もないでしょ?」 花沢類の言葉にバッと体を離し、自分の格好を見てあたしは目を丸くして ソファから飛びあがる。 あたしは右側の肩をさらけだしていて、胸元ギリギリにまでバスローブがはだけていた。 「わ、わ、わ・・・」 あわてて襟元を直し、バスローブのベルトを締めなおしたあたしは花沢類のさっきの言葉に気がついて ハタ、と動きを止める。 「あの・・・好きな女って・・・さっき?」 「言ったよ?前にも言ったじゃん、オレ牧野にホレてるって」 花沢類はくすっと笑うと、ソファから立ち上がったあたしをまたそこに座らせ 救急箱から薬を取り出す。 「もう一回見せて?」 また怒られたくなくて、あたしは素直に背中をみせる。 「ちょっとまだ赤いね・・・コレ塗っとくから」 そう言って花沢類は薬を指につけると、それをあたしの背中に塗り始めた。 「・・・痛ッ・・・」 「ごめん、大丈夫?」 「あ、うん・・・ちょっとヒリヒリしただけ」 優しく、丁寧に薬をつけてくれる。 手が離れ、塗り終わったのかなと思った矢先に不意に首筋に生暖かい感触を感じて あたしはパッと後ろを振り返ろうと体をひねった。 ---え・・・?! それが花沢類の唇だということに気づいてあたしは固まってしまった。 右の首筋にぞくぞくっとするような刺激を感じ、あたしは体に力を込める。 花沢類はあたしを再び自分の方に体ごと振り向かせると、唇に軽く触れるようなキスをした。 さすがのあたしもやっとの思いで口を開く。 「だ、だめだよ、花沢類。あたし・・・」 「黙って。あんたは何も考えなくていい」 花沢類はまた唇に触れたかと思うと、今度はあたしの唇を味わうかのように何度も角度を変え だんだんと深く、熱く唇を重ねてきた。 温かい花沢類の舌が進入してきて、あたしの頭はボーッと何も考えられなくなっていく。 甘い類の唾液があたしのそれと混じりあって、まるでひとつになったかのような錯覚に陥る。 「・・・牧野・・・好きだよ」 キスとキスの合間に優しくつぶやく甘い声にあたしもいつしか自分から類の舌を求めていた。 手応えを感じた類は、あたしの腰にあてていた右手をすっとバスローブの胸元に差し入れ 胸のふくらみに直じかに触れた。 一瞬ひやっとした類の指の感触にビクン、と反応したあたしも優しく包み込むような類の愛撫に 腕がだらしなく垂れる。 類はあたしをソファの背もたれによりかからせ、体を密着させるようにそのそばに座りなおす。 あいかわらず続けられている長いキスに抵抗する力を奪われてしまったあたしは、 類の手によってバスローブが完全にはだけ、胸が露出している事にも気づかなかった。 もみしだかれる胸のふくらみに先端がだんだんと固さを増してきて、あたしの全神経がそこに集中する。 先には触れないように胸をもんでいた類の指が一瞬先端に触れ、あたしは電流が走るような衝撃に 思わず声をもらしてしまう。 「・・・あッ・・・」 あたしの声を合図にするように、類は先端を指でつまみ、持ち上げ掌に擦ったりして刺激を与えてくる。 「あん・・・あッ・・・」 唇と唇の間から漏れるあたしの声は少しづつ荒くなっていく。 やっと解放された唇からは甘い吐息が漏れ、類の手が少しづつ下へ下がっていく。 かろうじて腰のあたりにまとわりついていたバスローブで下着をつけていない部分が覆われていたものの、 類の手が内股に触れた瞬間に急にこの状況が恐怖となって襲い掛かってくる。 「・・・いやッ・・・花沢類、ダメだよこんなこと・・・」 バスローブを再び羽織ろうとするあたしの手を花沢類がつかんで阻止する。 「なんで?」 「なんで、って・・・あたし達付き合ってるわけでもないし・・・」 「オレは牧野が好きなんだよ?あとは牧野次第・・・オレの事嫌い?」 類はわざとあたしの耳元に近づくと、鼓膜を直接震わすように囁いた。 かあっと頬が染まったあたしの反応を楽しむかのように類はなおも問い詰めてくる。 「嫌い?今オレとキスしてていやだった?」 「き、嫌いでもないし別にいやじゃなかったけど・・・でもっ」 一生懸命この場を切り抜ける理由を頭の中でフル回転させているあたしに 花沢類はまっすぐで熱い視線を向ける。 「オレ、牧野を抱きたい」 「だ、だ、抱きたいっ?!ま、待って・・・心の準備してない・・・」 「そんなもん必要ない。ここで待ったかけられても、オレ止めらんないよ」 端正で整った顔が、唇が触れそうなほどの距離にまでせまってきて あたしはもう逃げられないことを悟る。 見つめ返したあたしの視線と花沢類の視線が絡み合う。 覚悟を決めて目を閉じたあたしを類は抱き上げ、ベッドへと運ぶ。 完全にまとっているものを脱ぎ捨てたあたし達は、シーツの中で肌を重ねあう。 あたしの体の這っていく類の指の動きに、あたしの理性が少しづつ剥がれ落ちて 再び太ももの内側へ這わせてきた類の手を受け入れていた。 すでにしっとりと湿った秘部に類の指が滑り落ちていき、少しもりあがった蕾に触れた。 「あ・・・あん・・んっ・・・」 全身が痺れるような感覚にあたしは溺れ始める。 あたしの一番感じる部分を探り当てた類は、執拗にそこを攻めてくる。 乳首を舌で愛撫されながら、指の先で突起した蕾をいじられているとあたしの中心から蜜があふれだしていく。 類はそれを指ですくっては感じる部分に擦りつけ、刺激を与えていく。 「はん・・・あッ・・・いやッ・・・」 あと少しで絶頂を迎えそうになったあたしは、類の指と舌がパッと離れたことに気がつく。 「・・・・ど・・・したの・・・?」 うつろな瞳でいやらしいねっとりとした声になっている自分に驚きながらも、 あたしを見下ろしている類の何かをたくらんだような笑みにもう一度聞き返す。 「ねえ・・・花沢類・・・?」 熱くなった下半身が疼いて、早くまた触れてほしい気持ちがあたしの視線を熱くしている。 「いや・・・なんでしょ?だからやめた」 「え・・・?いやって言うか・・・だからその・・・」 「してほしいの?やめてほしいの?どっち?」 「・・・花沢類の意地悪・・・」 軽く睨んで見るが、類はそれでも答えを求めてくる。 「・・・や・・・じゃない・・・してほしい・・・」 「んッ・・・それならまた気持ちよくしてあげるよ」 あたしの答えに満足したように類がニコッと微笑むと、 再び濡れて艶やかに膨らんだ蕾を指先で弄び始めた。 「はん・・・あぁ・・・はん・・・」 背中を弓のように反らせ声をあげるあたしに類もだんだんと興奮してきているのがわかる。 すると中心に類の指があてがわれ、入り口付近を浅く出し入れする。 痛みはまだなく、快感と恐怖とか入り混じった異常な興奮があたしを襲う。 類はあたしの表情を見ながら、少しづつ中指を奥にさしこんでいく。 まだ何も受け入れたことのないそこは、きつく、類の指にからまる。 するとゆっくりと出し入れしていた速度をあげ、親指で蕾をまさぐり始めると あたしの声はますます荒くなっていく。 「あッ・・・あッ・・・もう・・・ダメッ・・・」 大きなうねりとともにやってきた快感の波にあたしはのみ込まれた。 あたしはまだ脈打っている寄せては返す余韻のなかで、うっすらと瞳を開けた。 「・・・牧野?大丈夫?」 「う、うん・・・」 自分の顔が真っ赤になっていることがよくわかる。 「牧野がこんなに感じやすいなんて思わなかったな」 花沢類の言葉にますます顔はゆでダコ状態。 恥ずかしさに耐えられなくなって、あたしはシーツをかぶって背中を向ける。 でも花沢類はそれを許してくれない。 「まだ寝ちゃダメ。牧野の全部見せてもらってないよ?」 ---なッ・・・なんて大胆なこと言うんだこの人は・・・!! 普段の花沢類からは想像もつかなかった言葉や仕草が あたしをどんどん狂わせる。 あたしの背中にピタッと寄り添うように類は後ろからあたしを羽交い絞めにし、 耳たぶを噛んだり、舌を這わせたりしてくる。 ゾクゾクっとするような舌の動きにあたしは正直に反応する。 「ん・・・ッ」 類は舌の動きを続けながら、後ろからあたしの胸をもみ、先端を指でしごく。 「あ・・・んんッ・・・」 それだけであたしの茂みの中に湖ができていく。 類はそれを察知したかのように、片方の手を胸から腰そして秘部へとおろしていく。 「もう・・・こんなに濡れてる・・・」 「・・・いや・・・恥ずかしい・・・」 類に耳元でささやかれ、そしてさらに潤っていく。 「牧野・・・」 類は切なくあたしの名を呼ぶと、体を起こしあたしを見下ろす格好になる。 後ろから抱きしめられたとき、ちょうどあたしのお尻のあたりに固い突起物が何度も触れた。 ---ま、まさかこんな固いモノがあたしの体に入ってくるの・・・? なんか怖くなってきた・・・ 花沢類はあたしの両足を軽く広げ、ひざをついた姿勢で自身をあたしの中心にあてた。 ---こ、こわいッ!! 足が震え、無意識にあたしは目をつぶっていた。 そんなあたしの様子に気づいた類が切なそうにあたしを見つめる。 「牧野・・・もうやめようか?」 体はこんなに花沢類を求めているのに、そして花沢類もきっと・・・ あたしは覚悟を決め、優しくあたしの髪をなでる類の手を両手で握り締め、 そっと自分の頬に添えた。 いつもは冷たい類の手が今はこんなにも火照っている。 あたしの体も同じ・・・花沢類を求めてる。 「・・・花沢類・・・大丈夫だから・・・手つないでて?」 類は愛しそうにあたしを見つめると、左手をあたしの右手に絡ませぎゅっと握る。 「・・・いい?」 類のためらいがちな言葉にこくん、とうなづくと類があたしの中に入ってきた。 十分に濡れそぼっているのにあたしはなかなか類を受け入れられない。 体を真っ二つに引き裂くような痛みにあたしは顔をしかめる。 「牧野・・・ごめん。オレもう引き返せない・・・」 「・・・うん・・・大丈夫だから・・・ッ」 類はあたしの頬や額、首筋に何度もキスを降らせながら 自身を奥深く差し込んでいく。 「・・・痛ッ・・・」 それでもなんとか類のすべてを受け入れ、痛さもすこしづつひいてゆく。 「ちょっと痛いかもしれないけど・・・ごめん」 類はそう言ってあたしの中心に向かって腰を動かし始めた。 「ひぃッ・・・いッ・・・あッ・・・・・」 だんだんと快楽の波があたしを支配してきて、結合部分からさらに蜜が溢れ出す。 あたしが感じはじめてきたことに類の動きも次第に激しさを増していく。 「あんッ・・・はぁ・・・あん・・・・」 あたしはぎゅっと閉じていた瞳をあけ、類の顔を見上げた。 今まで見たこともない男の類の表情にあたしの胸がきゅん・・・とうずく。 視線が絡み合い、指が絡み合い、そしてあたしたちはひとつになって絡み合う。 今まで知らなかった未知の世界があたしの中の何かを突き動かした。 「・・・ま・・・きの・・・」 「あ・・・ッ・・・また・・あんッ・・・・」 気づくと、花沢類があたしの髪を撫でながら優しく微笑む。 「牧野・・・すげえかわいかった」 「そ、そういうこと言ってまたからかう・・・ッ」 あたしは耳まで真っ赤になって恥ずかしさのあまりついいつもの口調になってしまう。 こんな時くらい、って自分でも思うけど。 「ほんとだよ。・・・オレやばいかも」 「やばい、って何が?」 「ん?・・・牧野に対する気持ちにブレーキかかんなくなちゃった」 「へ?!」 目を丸くしているあたしを花沢類はまっすぐに見つめてこう言ったんだ。 「もうオレは自分を抑えるのやめる・・・あんたをもう司には渡さない」 そう真顔で言った類のビー玉みたいな瞳の奥にはあたしが映っていた。 あたしもふうっと息をつくとまっすぐ花沢類を見つめ返した。 「あたし・・・花沢類を受け入れたときにもう覚悟は決まってたよ」 そう。 あたしは花沢類と生きていく。決めたんだ。 決意を新たにしたあたしの背後に、闇がすぐそこまできていたなんて その時は知るよしもなかった。 「花沢類?」 冬のやわらかい陽射しを浴びながら、非常階段でうとうとしていたオレは その愛くるしく自分を呼ぶ声で現実に引き戻された。 「その顔は・・・また寝てたんでしょ?」 そう言って牧野は扉からちょこっと顔を出すとくすっと微笑みながら、オレのとなりにペタンと座る。 「こんなとこで寝てたら風邪ひくよ?寒くないの?」 牧野はオレの顔をのぞきこんでまるで母親がこどもを諭すような言い方をする。 「ん・・・寒い・・・」 オレはそう言ってわざとオーバーに寒そうに震えてみせると、牧野を両腕につつみこんだ。 「・・・あったかい」 「ちょ、ちょっと花沢類っ!こんなとこで誰かに見られたらどうすんのッ」 「別にHな事してるわけじゃないしいいじゃん」 「よ、よくないッ!!」 一生懸命オレの腕から逃れようともがく牧野。 抱きしめてるだけなのにそれだけで顔が真っ赤になってしまう。 オレはもうちょっと意地悪したくなって抱きしめていた腕をパッと離した。 「も、もう・・・ッ」 牧野はまわりを見回してキョロキョロしている。 オレは手を伸ばし、左手で牧野の腰を寄せ顎をくいっと軽く持ち上げると不意打ちで唇を重ねた。 目を丸くして驚いているのが目をつぶっていてもわかる。 「・・・んっ・・・」 唇が離れそうになると、オレは腰にあてていた手に力をこめそれを許さない。 軽く開いた唇のあいだから舌を割り込ませると、だんだんと抵抗していた力が弱くなり 牧野が受け入れ始めたところでオレは唇を離した。 「・・・んっ・・・」 唇が離れそうになると、オレは腰にあてていた手に力をこめそれを許さない。 軽く開いた唇のあいだから舌を割り込ませると、だんだんと抵抗していた力が弱くなり 牧野が受け入れ始めたところでオレは唇を離した。 「・・・もっとしたかった?」 「な、何言ってんのッ?!そんなわけないでしょっ」 いたずらっぽくそう尋ねてみたオレに、牧野は顔を真っ赤にして反論する。 「ここで押し倒したいとこだけどガマンしとく」 オレの言葉に牧野は絶句したように口をポカンとあけたまま固まってしまった。 その時不意に扉が開いて総二郎とあきらが顔をだした。 「やっぱここだったか」 「・・・ん?何牧野固まってんの?」 総二郎の言葉に牧野はハッと気づいたように立ち上がる。 「な、な、何でもないッ!あッあたしそろそろ授業始まるからもう行くわ」 「ちょっと待て。話しあるからそれからに・・・」 総二郎の制止も聞かずに牧野はあわただしく扉を開けると階段を降りていってしまった。 「ったく・・・」 あきらは呆れたように扉の向こうに視線を送ると牧野が座っていた場所に腰をおろす。 総二郎も腰をおろしかけたところで何かピンと来たらしく、オレに向かってニヤニヤ視線を送ってきた。 「・・・なに?」 「非常階段でいちゃつくなよーまったくお熱いこった」 ---相変わらずするどいやつ・・・ オレはきわめて冷静を装ってとぼけた表情を返す。 ---牧野だったらここで顔真っ赤になってあっけなくバレちまうんだろうな そう思ったらなんだか無性におかしくなってしまった。 「何笑ってんだよ、類」 あきらが怪訝そうな顔でオレをのぞきこんでいる。 「で?何、話って?」 「ああ、きのう滋から電話で聞いたんだけどな、今日桜子誕生日なんだってよ」 あきらの言葉にオレは眉をひそめる。 「桜子って・・・あの整形の?」 「おまえなー・・・いつもツルんでるやつの名前くらい覚えろよ」 「・・・めんどくさい」 「女は牧野だけじゃねえんだからよ・・・まあいいや。 で、さっき桜子に祝ってやっからどこ行きたいかって聞いたらクラブのVIPルームがいいって 言うからよ、青山の予約した。牧野と来いよ」 「・・・クラブ?牧野来るかな・・・」 ああいうところはあんまり好きそうじゃないな・・・と思ったが一応声をかけてみることにする。 「牧野が行かないって言ったらオレも行かないから」 あらかじめ断っておいて、オレは立ち上がって非常階段を降り始める。 「お、おいっ類!」 「類のやつ、牧野とつきあいはじめてからますます付き合い悪くなったな」 あきらがぼやく。 「・・・まあしょうがねえだろ?類の頭ん中は牧野のことしかねえからな」 総二郎はそう言ってふっと笑うと、オレらも行こうぜと非常階段をあとにした。 HRが終わり、教室で帰り支度をしていたあたしの耳になにやらざわざわと騒ぐ声が聞こえてきて 入り口でできている人だかりに視線を送る。 クラスの女生徒がキャーキャーと声をあげている輪の中で頭ひとつ出ているその人物の姿に あたしは顔が青ざめる。 ---は、花沢類っ?! なんでこんなとこに・・・?! 唖然としているあたしの目の前に花沢類が歩み寄ってきて、あたしは顔を見上げる。 「な、なに・・・?」 「迎えにきた」 花沢類はそう言ってあたしにニコッと笑いかける。 遠巻きにあたしたちを見ていた連中から悲鳴のような叫び声があがる。 「ほら、かばん貸して」 あたしのかばんを手にとると、反対の手であたしの手をつかみ教室の入り口へをひっぱっていかれる。 「ちょっと・・・、花沢類あたし一人で歩けるってばっ」 あたしの言葉なんて無視するかのように花沢類はスタスタと歩き続ける。 背中に刺さる殺気立った視線を感じながら、あたしは手をひかれたまま学校をあとにした。 校門の前に待機していた花沢類の送迎車に乗り込み、途中訳のわからないままやたらと高級なブティックに 連れて行かれあれよあれよという間に着替えさせられ、メイクまでされたあたしは状況が飲み込めないまま 店員のうながすままに店内の奥にあるVIPルームと書かれた個室に入った。 そこには着替えをすませてソファに座り雑誌をパラパラとめくっている花沢類の姿があった。 ---うわ・・・どっかのモデルが雑誌から飛び出してきたみたい・・・ 肌触りのよさそうなシルクのシャツを第2ボタンまであけ、細身のレザーのパンツスタイルが いつもと違う男性的な雰囲気を漂わせている。 思わず見とれてしまったあたしに気づくと、花沢類がパッとあたしを振り向き一瞬固まる。 ---や、やっぱりこんな格好似合わないよね・・・ ちょうど花沢類の着ているシャツと同じような薄手のシルク素材の黒のワンピース。 肩紐は切れてしまいそうなほど細く、胸元は大胆にカットされていて裾も膝丈で端の方が透けて見えるようになっている。 それになんと背中はひもがクロスしただけの大胆極まりないものだった。 自分の格好にあらためて恥ずかしさを覚えたあたしは、それを隠すように早口でまくしたてる。 「あ、あたしこんな格好したのはじめてだからめちゃくちゃ恥ずかしいんだけどッ! でもやっぱり花沢類は何着ても似合うよね、そんな服普段あんまり着ないよねえ?」 明らかに動揺してしまっているあたしに花沢類の視線がささる。 うつむいてしまったあたしの手をとると、花沢類は店員の挨拶も軽くあしらって車道に寄せられた車に 再び乗り込む。 「ど、どこ行くのッ?!」 「・・・今日桜子ってやつの誕生日なんだって。で、青山でみんな集まるらしい」 「あ・・・桜子誕生日なんだ!それならそうと言ってくれればよかったのに・・・ っていうかこの格好ッ!こんなんでパーティーでちゃっていいのかな・・・」 少し、いやかなり露出の高いこの服に不安を覚える。 「なんかクラブでやるんだって。だから平気」 「あ、そう・・・クラブね・・・クラブって・・・あのガンガンうるさいクラブ?!」 「そ。・・・なんだ牧野行ったことあるんだ?」 「あるっていうか・・・」 あたしはトーマスに騙されてホテルに連れ込まれたときのことを思い出す。 ---そういえば現況は・・・桜子じゃんっ!! 顔をひきつらせていると、類がふと運転手にここでおろしてと告げた。 「降りるよ」 「え?ここ・・・青山じゃないよねえ?」 青山で集まるって言ってたのに・・・と首をかしげているあたしに花沢類はワンピとセットで買ってくれた ロングコートをあたしに羽織らせてくれた。 「寒くない?」 「うん・・・コートあったかいし・・・」 「じゃ、行こう」 そう言って花沢類は目の前にそびえ立つあのメープルホテルと肩を並べるくらい立派なホテルへ入っていった。 「ちょっとここで待ってて」 花沢類はあたしを受付の手前で待たせると、しばらくしてカードキーを手に戻ってきた。 「ね、ねえ?待ち合わせ7時って言ってなかった?時間平気?」 「・・・部屋で待ってる人がいるんだ」 「えッ?!誰?」 花沢類はそう尋ねたあたしにくすっと笑ってみせると、手をひいてエレベーターに乗りこむ。 目的の階に降り立つと、花沢類のあとに続いて長い廊下を進んでいき奥の部屋までやってきた。 ---誰が待ってるんだろう・・・? 花沢類がドアを開けたままあたしを先に通してくれる。 「・・・ん・・・?誰も・・・いないよ?」 部屋をのぞきこんだあたしはそこに誰の姿もないことに気づいて花沢類を振り返ろうとする。 その時、不意に後ろから抱きすくめられあたしは息をのんだ。 「・・・は、花沢類?」 あたしを包んでいた腕にぎゅっと力が込められ、ふわっと花沢類の甘いコロンの香りがあたしの脳を刺激する。 抱きしめられているだけなのに、あたしの心臓は飛び出さんばかりに跳ね上がって体温まで上昇しはじめる。 羽織っていたコートがぱさっと床に落ち、あたしはワンピース姿になる。 カアッと火照った頬に花沢類の冷たい指先が触れたかと思うと、あたしの顔だけを後ろに向けさせ 唇を奪われた。 「・・・んっ・・・」 いつもと違う激しいキスにあたしは少し躊躇すると、それを逃さないとばかりに 生暖かい舌先があたしの舌を求めて中にはいりこんでくる。 だんだんとその甘くて激しいキスにあたしの頭がボーッとなる。 唇が離れ、花沢類の唇が今度は耳へ、そして首筋へ降りてくる。 「ちょ、ちょっと・・・花沢類・・・ッ」 このまま事の成り行きにまかせていたらマズイ・・・ベッドの脇のデジタルクロックがもうすぐ7時をさすことに気づいて あたしは腰にあてられていた花沢類の手をつかむ。 「もう行かなきゃ・・・それに・・・誰か来るんじゃないの?」 それでもあたしの首筋にキスを降らせてくる。 「・・・え?オレそんなこと言った?」 「・・・はッ?」 振り向くと花沢類は確信犯的な笑みをうかべてあたしを見つめている。 「だ、騙したな〜ッ?!」 額に青筋立てちゃってるあたしに花沢類はくすっと笑ってみせたあと、 相変わらず腰にあてている手をあたしの背中に這わせてきた。 背中はひもが交差しているだけだから、花沢類の指先がじかに肌に触れる。 そのひやっとした心地いい感触と、目の前の花沢類の熱っぽい視線に あたしの体は正直に反応を示す。 「・・・ダメ?」 「ダ、ダメって何が?」 「今ここで牧野のこと抱きたい」 ---だ、抱きたいぃぃ〜?! なんて恥ずかしいセリフ真顔で言うのよ、この人はッ 「ねえ、ダメ?」 ---そ、そんな甘えた声出されたってダメなんだからッ・・・ あたしは一生懸命理性を保とうと花沢類の視線から目を離し、再び背中を向けた。 「・・・み・・・みんな待ってるんだからダメッ!はやく行こッ」 ドアの方へ歩き出したあたしは、ぐんっと腕を後ろに引っ張られ高いヒールにバランスを崩した。 花沢類がとっさにあたしの体を腕で支える。 顔を見上げると、すぐ近くにある花沢類の顔。 いつもは穏やかなうす茶のビー玉のような瞳から男を感じさせる色気が漂い、あたしの理性をくすぐる。 「牧野のそんな色っぽい格好見せられて・・・何もするなって?」 「・・・ダメ・・・だよ・・・」 「・・・オレもう・・・抑えきかない」 花沢類はあたしの唇を激しく濡らしてゆく。 いつもと違う少し乱暴なほどの情熱的なキスにあたしの理性は完全に吹っ飛んだ。 唇を重ね、舌をからめ、お互いを求め合う。 その行程さえももどかしいかのように類はあたしをベッドに押し倒し、 自分も蝶ネクタイとシャツを脱ぎ捨てる。 首筋に舌を這わせながらあたしのドレスの肩紐をずり下ろし胸を露出させる。 類の手はすっかり熱くなっていて、ゆっくりと形づくっていくようにあたしの胸を揉む。 「・・・んッ・・・はァ・・・」 指と指の間からぷくっと突き出した先端に類の舌が触れると、まるで感電したような衝撃が全身に走った。 いつもはゆっくり胸を弄ぶ類だが、その先端を口に含みながらあたしのショーツを一気に引き下ろす。 正確に、まっすぐにあたしの中心に指をあてがった類があたしの耳元でささやいた。 「・・・やっぱりやめる?」 ---こういう時の花沢類はほんとに意地悪だ・・・ あたしの体をその気にさせておいてからそんなこと言うんだから・・・ べつにやめたっていいもん このまま部屋を出て、みんなのとこに・・・ でもあたしの口からでた言葉は全くの逆だった。 「・・・花沢類・・・はやく・・・」 あたしの言葉に満足したように類はすっかり蜜が溢れたそこに指を滑らせ、 隆起し固くなった部分を指先で擦る。 「あぁッ・・・んぅ・・・んッ・・・」 敏感な部分が類から与えられる振動でどんどん感度をあげていく。 「はぁ・・・あッ・・・ダメ・・・もう・・・」 トロンとした瞳で頬を染め見上げる牧野の表情はオレの男の部分を刺激する。 それを見下ろしながら、オレはベルトをゆるめ固くなった自身をまだ脈うっている 部分にあてがった。 まくりあげられたドレスの裾からのぞくなまめかしい腿を腕で押し広げると ゆっくりと挿入する。 「あんッ・・・・あぁ・・・」 色っぽいあえぎ声が牧野の唇から漏れると、オレの自身もますます反応してしまう。 まだ少しきつい部分も、溢れ出る蜜のせいで滑り込むようにオレを中まで誘導する。 あたたかい包み込まれるような感覚に頭が真っ白になる。 深く沈めた腰がつきあたりまで達すると、何度も一点をめがけて突きつづけた。 ドレスからこぼれた胸の先端はすっかり固くなっていて、オレの動きに合わせて 上下に揺れている。 「あぁ・・・はんッ・・・んッ・・・」 眉間にシワを寄せ一生懸命オレにしがみついている牧野の表情に オレは耐えられなくなって愛しい名前をつぶやく。 「・・・牧・・野・・・」 「あんッ・・・る・・・い・・・」 うわ言のようにオレの名を呼び返す声をもう一度聞きたくて オレは牧野の口元に耳を近づける。 「も・・・一回・・・言って・・・」 「・・・あぁッ・・・る・・・類・・・」 さらに圧迫が強まった感覚にオレは動きを早めた。 「あッ、あッ・・・んッ・・・」 部屋に響く二つの荒々しい呼吸。 ぎゅっと抱きしめられる感触にオレの停止していた脳の動きが反応する。 細い腕が首にからまると、目の前の胸の谷山に顔をうずめた。 「・・・ねえ・・・花沢類?」 その呼び方にオレはくすっと心の中で苦笑する。 ---最中はオレのこと類って呼ぶくせに・・・ 終わった途端戻っちまうんだもんな 「なに?」 「・・・まだ・・・あたしたち繋がってるよね・・・?」 「?」 牧野の言わんとしていることが読めなくてふと顔を起こし視線を交わす。 その少し困惑したような表情にハッと気づいた。 ---やべ・・・抜くの忘れてた・・・ 「えーと・・・ごめん」 気まずそうにうつむいて体を離すと、牧野が何か言うのを待った。 「・・・・・やっぱり・・・だよね?なんかあたし服着たままだし・・・どこも・・・形跡がないし」 牧野が起き上がってなんとも言えない表情を浮かべている。 「・・・怒ってる?」 おそるおそる尋ねたオレに牧野が少し間をおいたあと、ぷっと吹き出した。 「・・・なに?」 あまりにもおかしそうに笑うもんだからオレは状況が読めなくて首をかしげる。 「だって・・・いたずらしてお母さんに怒られたこどもみたいなんだもん」 くったくなく笑う牧野の表情にホッとしたオレは安堵の表情をうかべる。 「よかった。牧野怒っちゃったかと思った」 「・・・怒ってはないけど・・・でも次はげんこつだからねッ」 「・・・あい」 「でも・・・なんで?いつもはこんな事ないのに・・・」 「・・・出すとこなかったから」 「だッ、だすとこって・・・生々しい事言わないのッ!!」 急に顔を真っ赤にしてベッドから飛び降り、あわてて身なりを整えている牧野を横目で見ながら オレは自分の失態に頭を掻いた。 ---まさか牧野があまりにも色っぽくて抜くこと忘れて没頭してました、 なんて言えないよな・・・ ここまで来るとオレの牧野病も重症だな ふっと苦笑したオレにすかさずつっこんできた牧野は 時計を見てあたふたしてオレに早く服を着ろ、とせっついてくる。 ちょうど鳴り出した携帯にさすがのオレもてきぱきと衣服を身に着け 総二郎たちになんて言い訳するかな・・・と考えながら牧野の手をひき部屋をあとにした。 相変わらず頬を赤く染めたままの牧野はあたふたとドレスのシワを気にしながら オレに手をひかれ小走りでついてくる。 そんな愛しい姿に目を細めたオレは、そっと顔を寄せて唇に触れるだけのキスをした。 「好きだよ」 「・・・あたしも」 ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() |