歩いていこう
花沢類×牧野つくし


「牧野、直接司ん家行く?それとも一回ホテルにチェックインする?
まあ俺んちに泊まってもいいんだけど司に殺されそうだし。」

あたしと花沢類は、NYに来ている。花沢類がお父さんの代わりに
NYでのパーティーに出席することになり、道明寺に会いたいあたし
を一緒に連れてきてくれたのだ。道明寺を驚かせるために、あいつに
はあたしが来ることはまだ言ってない。今夜のパーティーには道明寺
もくる予定なので、そこでびっくりさせてやるつもり。パーティーに
でるのは嫌なんだけど、花沢類も女性をエスコートしてないと困るっ
て言うし、仕方ないか。花沢類にしては強引に誘ってくれたし。

「じゃあ、牧野、荷物置いたら着替えて出てきて。メイクの予約いれて
おいたから。」
「え?あ、ありがとう。」

なんかこういう事に花沢類が気が利くってす
っごく意外。

「久しぶりに司に会うんだから、馬子にも衣装、着とかなきゃ。そうい
やあいつ昔なんか間違えてたよね、このことわざ。ぷくく。」


メイクと髪のセットも終わり、あたしは花沢類にエスコートされてパ
ーティルームに入っていく。道明寺はまだ来てないみたいだ。
会ったら、なんて言おう。来ちゃったよ、かな。アイツ、皆の前で抱
きついたりしなきゃいいけど。

「あ、そうだ。司も誰かをエスコートしてくると思うけどヤキモチや
くなよ。」
「や、やきもちなんかやかないわよ!」一瞬花沢類が真剣な顔をした
気がするけど、気のせいかな。
入り口の方からざわめきが聞こえる。誰か有名な人でも来たのかしら。
「あ・・・司、・・牧野、ちょっといったん隠れよう。」
「へ?なんで?」
「司、シャレになんない人と来てるんだ。あの人の前じゃあんたと話
すどころじゃないし。気が付かれる前にでるぞ。」

そう言って花沢類は私の手をひいてずんずんパーティー会場から出
て行く。でもどうしても道明寺の顔を見たかった私はざわめきの方
を見てしまった。
他の客を談笑していた道明寺があたしに気がつく。驚いたように目
を見開く。・・・でも道明寺はそのまま目をそらすと元の談笑の輪
に戻っていってしまった。・・・どうして?
会うのは一年ぶりなのに。2〜3ヶ月前までは毎日来てた電話が最
近あまり来なくなったのは忙しいからだと思ってたのに、・・・思
いたかったのに・・違うの?


泣くまいを思うのにひとりでに涙が流れてくる。気がつくと花沢類
に車に乗せられていた。

「Aホテルまで行って。・・・あ、やっぱ俺んち」

NYにも運転手つきの車があるんだ・・なんてどうでもいいことを
考えていた。他のことを考えてないとしゃくりあげてしまいそうだ
った。

「牧野、これ飲んで落ち着いて?」

花沢類がマグカップを差し出す。その目に、言おうかどうしようか
迷っている色が浮かんでいる。

「道明寺、あたしに気がついてたよ。なのにどうして・・?」

カップをテーブルに置く。その輪郭が涙でぼやける。
言い終わる前に、あたしは花沢類の腕の中にいた。

「ごめん。まさか今日彼女と来るとは思ってなかった。父親の選挙
戦で忙しいはずなのに・・。」

花沢類はいったん言葉を切ると、思い切ったように言った。

「あんたに黙ってた事があるんだ。司は・・婚約してるらしい」
「!?どういうこと?」

類は、ぽつりぽつりと説明してくれた。道明寺の相手が時期大統
領と目されている人の娘なこと。最初はビジネスとして知り合っ
たけれど、相手に気に入られてしまったこと。彼女を怒らせるこ
とは、さすがの道明寺家にもできないこと。・・・そして今回は
道明寺も逆らえずにいること・

「あんたを嫌いになったわけじゃないよ。でも今度は司のお母さ
んが認めてくれれば、って話じゃないからね。司もこっちに来
て自分の行動の重さをわかるくらいには大人になったんじゃな
いの?でも俺はあんたの顔を見たら・・やっぱりあんたをあき
らめらんないだろうと思ってたんだけど。」
「あたし、道明寺と会いたい!会って話さなきゃ納得できないよ!」
その時、花沢類の電話が鳴った。無言であたしに受話器を渡す。
「牧野。・・・悪い。」

久しぶりに聞く道明寺の声。悪いって、何が?今日無視したこと?
それとも婚約したこと?聞きたいのに声がでない。

「もう会えねえ。類と帰ってくれ。俺の事・・・ケーベツしていいぞ。
憎んでくれ。会いにくんな。これ以上傷つけたくねえ」

あたしは自分の聞いていることが信じられなかった。あんなにいろんな
ことがあって結ばれた二人なのに。絶対迎えに来るって言ってたよね?
気がつくと電話は切れていた。花沢類の哀しそうな瞳を見たとたん、あ
たしは泣き崩れた。
花沢類が頬を両手ではさんで口づける。

「や・・・こんな時にやめて」花沢類の胸を手で押しやる。でも類はあ

たしの手首をつかむと強く自分に引き寄せた。

「もう、司はやめろ。もうこんなあんた見たくない。」
「・・花沢る・・」

花沢類の華奢な身体のどこにこんな力があったんだろうと思うくらい強
く抱きしめられた。あたしを壁に押し付けて、息もできないくらい激し
く唇を求める。

「ん・・!」花沢類の唇が首筋に降りてきたとたん、あたしは類をつき

とばした。類は身体を離すと髪をかき上げながら椅子に座る。

「司に会う?」類はあたしの目を探る。

「会えないから、来るな、って言ってた。」
「とにかく今晩はゆっくり眠りな。明日また考えよう。送ってくよ」

花沢類はコートをはおる。

「花沢類。・・キスなんてしないで。もし、道明寺と別れることに
なっても花沢類とはつきあえないよ」

道明寺、と言葉にするだけで
胸が痛む。ほんの数時間前まで、ドレスをきてうきうきしてたのに。

「なんで?俺のこと、嫌い?」
「・・嫌いなわけないじゃん。・・でも花沢類といたら道明寺のこと
ずっと忘れられないよ。」
「このあと誰とつきあったってあんな強烈なやつ、忘れられるわけな
いよ。・・俺はあんたが嫌ならもうF3とは会わないよ」

「花沢類・・・」類が一歩近づいて今度は優しく抱きしめてくれる。

「俺は・・ほんとは俺とあんたがつきあう運命だったと思ってる。司
に奪われた、って。それでもあんたが笑ってられるならそれでいいと
思ってた。でもこんな風になったらもうあんたを手放す気はないよ。」

花沢類が見たこともないくらい真剣な顔をしてる。
道明寺、本当にもうおしまいなの?

牧野は泣き疲れて、眠ってしまったようだ。俺は結局牧野をうちに泊まらせた。
そっと寝室のドアを開けると牧野がうつぶせに眠っている。頬には無数の涙の跡。
正直に言えば、司の気持ちは痛いほど分かる。同じ立場なら俺も迷わず同じ事をする。
司の相手は、下手をすれば道明寺家を潰せるほどの力を持っている。

いや・・・それより司が怖いのは、牧野を傷つけられることだろう。
俺は司の気持ちを確かめるために牧野を連れてきた。こんなに傷ついた牧野を見ている
と自分の行動が正しかったのか迷う。・・・でもいつかははっきりさせなければならな
かったことなんだ、と自分に言い聞かせる。
牧野、いつか絶対あんたの笑顔を取り戻すよ。ごめん、泣かせて。
俺は牧野のまっすぐな髪をそっとなでた。



「牧野さん、6番テーブルにモデルみたいな男の子来てるよ!牧野さんのこと呼んでる!」

いっしょにファミレスのバイトに入ってる女の子が興奮して帰り支度をしているあたしを呼びに来た。
客席には花沢類がいた。NYから戻ってきて成田で別れて以来だ。

「久しぶり。どうしてた?」

あたしが向かいの席に座ろうとすると、類は立ち上がった。

「出よ。車まわしてくる。」

店の前に類の車が停まる。助手席に座ると花沢類の香りがした。

「どこ行くの?」

沈黙に耐えられなくてあたしが聞くと、花沢類はちょっと肩をすくめた。

「さあ。」

ここはどこなんだろう。遠くにライトアップされた大きな橋が見える。
いつのまにか、雨が降り出している。オレンジ色の光が雨でにじんでいる。
類が車を停めた。

「昼休み、高等部の非常階段で待ってた。あんたが来るかと思ってたんだけど」

花沢類が前を見たまま言う。綺麗な横顔をあたしは直視できない。

「あいつ、ほんとに結婚しちゃったね。あれきり電話もないんだよ。ひどくない?
しょせんその程度ってことだよね?あっちはそうなのにあたしがひきずってちゃバカだよね。」

あたしは無理して明るく言った。花沢類が眉間にしわを寄せる。

「俺の前で強がんなくていいよ。立ち直ったフリもしなくていい。」

そんなに優しくしないで、そう言おうと顔をあげたら、キスされていた。
花沢類がこんなに切ない顔をするなんて。

「会いたかったのは、俺だけ?」

答える間もなく唇が重なる。

「好きだ・・好きだ。」

花沢類の長い指があたしの髪をとく。耳たぶにキスされて、あたしは自分でもわかるくらい
真っ赤になってしまう。

「や・・花沢類、あたし・・」

黙らせるように類はひとさし指をあたしの唇にあてる。そのまま左手はあたしの髪の中に
右手は制服の中にすべりこむ。類の舌があたしの唇を割って入ってくる。

「あっ・・や、だめ・・」ブラウスの上から蕾を探られる。

電流がはしるような感覚が走る。だめ、あたしはまだ・・!

「時間が経てば司を忘れられると思ってるならそれは違うよ」

あたしの想いを読んでいるかのように類が言う。

「結婚しようが子供をつくろうがあんたは司を忘れないよ。そんな必要もないしね。」

その言葉にあたしは絶望的になる。

「でも、思い出にすることはできるよ。自惚れかもしれないけど、全部受け入れて司以上に愛せるのは俺以外いないよ。」

花沢類・・・。類は制服から手を抜くと車のエンジンをかけた。

花沢類の部屋に入るのは何回目だろう。確か前は道明寺が出国した日だ。あの日はみんなで
ここに集まった。みんな心配してるんだろうな。
優紀や滋さん、桜子・・・みんなからの電話やメールにいっさい答えていない。
類がシャワーを終えてでてきた。バスローブ姿を見るのは初めてでどきどきする。

「これ、あんたの。」バスタオルと、新品らしきパジャマを渡される。
「あんたんちには電話しといた。優紀ちゃんだっけ?その子たちもいることになってるから。」

熱いシャワーを浴びながらあたしはまだ迷っていた。花沢類のことは好きだ。多分ずっと
前から・・・そしてこれからもずっと。
でもだからって今花沢類とこういう風になっていいのかな。
道明寺はもう結婚したんだしあいつに遠慮、とかじゃない。・・・でも。

シャワールームから出ると、花沢類がシャンパンを抜いていた。

「あんたもうすぐ卒業でしょ。2人でお祝いしよ。」

にこっ、と笑う花沢類の笑顔を見て、あたしは切なくなる。昔、この笑顔が欲しいと思った。
花沢類の笑顔を独占したいって。
グラスを受け取る指が触れ合う。

「あっ!」あたしは思わず手をひっこめた。その拍子にシャンパンが手とおなかにこぼれる。
「ご、ごめん。タオル・・。」

立ち上がろうとしたあたしの手を花沢類が?む。グラスをゆっくりテーブルに置くと、あ
たしの指をそっと自分の唇に持っていく。

小指に、薬指に・・・キスされる。あたしは息を呑む。濡れたパジャマが肌にはりつく。
類の手がそっとボタンを外す。
パジャマが肩から落ちるのを感じた。背中でホックが外れたことも。
目を開けて話そうと思うのに、まだ心の準備ができてないって言おうと思うのに目が開け
られない。
ひざまずいた類の舌があたしのおなかをぺろっとなめる。

「ひゃっ、くすぐった・・」

思わず目を開ける。類はいたずらっぽい瞳で笑う。

「可愛い。・・・耳と、おなかも弱いんだ?」

類はあたしを抱き上げてベットにそっと横たえる。
類の指がバイオリンの弓のようにを、あたしのからだを伝う。わき腹からおへそ、そして
胸の間で指が止まる。
蕾にキスを感じる。類の舌が暖かい。左手はもうひとつの丘を優しくなでている。
と、とめなきゃ・・このままじゃ、最後までいっちゃう・・!

「花沢類、待って」類の頭に触れる。さらさらの前髪のあいだから類の瞳がみつめる。

「花沢類らしくないよ。なんで急ぐの?あたしまだ、・・」
「俺らしい?それっていつもぼーっとしてるってこと?」

花沢類が怒ったように言う。

「そうじゃないよ。でもこんな強引なの、花沢類じゃないみたい・・」
「俺は押し付けたり、強引に奪うのは嫌だって思ってた。でもその結果はどう?
強引な司に奪われて、あんたはまた泣いている。もう待つのも慰めるしかできないの
もゴメンだね。俺は自分であんたを笑顔にする。もう待つつもりはないよ。」

花沢類がバスローブを脱ぐ。そのしぐさに、あの夜のことを思い出した。
道明寺家でSPに隠れて抱き合ったこと。途中で椿お姉さんが来て・・・。あの時、お
姉さんが来なかったら、結ばれてたのかな。
お前しか考えらんねえから、って言ってくれたよね。でも今ごろ彼女ときっと・・。
彼女の顔を見なくてよかった。きっともっと傷ついた。
道明寺、あたしを無視した顔が最後に見た顔になるの?

牧野の瞳が哀しげに曇る。司のことを考えているんだろうか。
俺は気がつかないふりをしてキスを続ける。はじめは優しく、だんだん激しく。
牧野、あんたに言われるまでもなく俺らしくないことをしてるよ。
あんたの傷が癒えるまで、待ったほうがいい。そんなの分かってる。
でも、俺はやめないよ。絶対にもう誰かにあんたを盗られるのは嫌なんだ。今夜、俺を刻
み付けるよ。それで司を追い出せるとは思わないけど。

牧野の脚から全てを剥がす。牧野が恥かしそうに膝を寄せる。そんな風にするともっとそそ
られちゃうんだけどな。
膝にキスを落とす。びくっと膝が震える。牧野、感じすぎ。俺はちょっと意地悪な気持ち
になって人差し指と中指で内腿を滑り降りる。
脚の付け根で指を止めると、そっと牧野の中心を開く。

「やっ・・・!」牧野が身体を起こそうとする。俺は牧野の膝の間に滑り込む。
牧野の芽が収縮するのが見える。俺は舌を尖らせてそっとつついてみる。

「やっ、花沢類、汚いよっ・・」

俺は構わずに舌をすすめる。泉が潤ってくる。

「やめて、お願い、恥かしいよおっ・・」

牧野は両手で顔を覆う。俺は蜜を周りにゆきわたらせるように指を動かした。
そっと中に入れてみる。

「あっ!んっ・・」

牧野が身をよじる。この反応って・・・もしかして司とはまだだったのか?
俺は牧野のとまどいのもう一つの理由を知った。

いいの?このまま進んでいいの?
後悔しない?まだ心の中にこんなに道明寺がいるのに。
花沢類も裏切ってるような気がする。心の全てをあげられないのに結ばれるなんて。

「牧野、いくよ」花沢類が少しかすれた声でささやく。

「・・・あたし、」
「もう聞かない。・・・俺が進むとき、息を吐いて。少し楽かも」

花沢類が少しずつ入ってくる。何かに遮られるように動きがとまる。
少し進んでは、戻り、また少し進む。

聞いていた通り痛いけど、・・・耐えられないほどじゃない。
何度か繰り返すうちに全部入ったみたいだ。

「痛くない?大丈夫?」気遣いながらそっと髪をなでてくれる花沢類を見ていたら、なんだか愛しくなってきた。
ずっと、手のとどかないどこかはるかな人だったのに。

「牧野、少し動くよ」

あたしは言葉の意味がよく分からなくてとまどう。え?入ったらお終いじゃないの?

花沢類があたしの中で、動く。痛い、なんてもんじゃない。
もうだめ、ありえないくらい痛いっ!
苦しげに目を伏せて類が動く。

「あっ、ん、やあっ・・」

感じたことのない感覚が波のようにくる。これが感じてるってこと?
類の動きが激しくなる。背中が汗ばんでいるのがわかる。

「牧野っ・・いくよ」

弾かれるように動きが止まる。あたしの中の波も静かにひいていく。

少しはにかんだように笑う類を見ていたら、迷う気持ちも消えていた。
花沢類と、歩いていこう。道明寺と行けなかったところまで。






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