花沢類×牧野つくし
![]() 1時間目の授業が終わり、トイレの帰りに音楽室の前を通ると、中からヴァイオリンの音が聞こえてきた。 そっと扉を開けて中を覗き見ると、花沢類が教壇に腰掛けて、こちらに背を向ける格好で弓を引いていた。 花沢類のヴァイオリンを聴くのは、久しぶりだ。懐かしさも手伝って、そっと教室内に入っていく。 余程集中して弾いているのか、あたしの気配に気がつかない。 壁にもたれて目を閉じて聴く。 いつ聴いても、素敵なメロディーだ。囁かれるような音色は、まるで花沢類の優しさを反映しているみたい。 と、急に音が止まった。 「来てたんだ」 花沢類が肩からヴァイオリンを下ろしながらあたしに声をかけた。 「あ…ごめん、邪魔するつもりはなかったんだけど」 花沢類の集中力を途切れさせてしまったことをお詫びする。 「いいよ、別に。もう止めようかと思ってたし」 ヴァイオリンをケースに仕舞う花沢類の手を見つめながら、内心、もっと聴きたかったと思っているあたしがいた。 「今度はもっといい音で聴かせてあげるよ。学校の備品じゃ、音が物足りないから」 え?あたし、声に出して言ったっけ? 「…何で花沢類って、あたしの考えてることが判るの?」 「牧野が判りやす過ぎるんだよ」 花沢類はくくっと笑って、唇を尖らせているあたしを見た。…話題を変えようっと。 「音楽室って、あまり使われないよね」 「うん。英徳に通う生徒は、授業なんか必要ないくらい音楽に精通しているのが普通だしね」 ふんだ。そうじゃない生徒が目の前にいるわよ。 花沢類はまた小さく笑って、ドア一つで繋がっている、隣の楽器庫へとヴァイオリンを片付けに行く。 そう言えば、楽器庫なんて入ったことないや。そう思ってその背中に付いて行く。 「うわー、凄い!」 半端じゃない量の楽器がところ狭しと並んでいる。これなら、オーケストラだって出来そうじゃない?! 「何が?」 平然と言う花沢類。こんなの当たり前といわんばかりの表情。 「だって、ろくすっぽ授業なんかしないのに、どうしてこんなに楽器があるの?びっくりだよ」 「そうかな」 まったく。どうしてこの学校は「普通じゃないこと」を「普通」にしてしまうんだろう。…勿体無い。 ふと時計を見ると、次の授業が始まる時間だった。いつの間にチャイム鳴ったんだろう、気が付かなかった。 「じゃ、花沢類、あたし戻る…」 言いながら楽器庫のドアを開けようとすると、扉向こうの音楽室から賑やかな子供の声が聞こえてきた。 え?!…ちょっと、ここ、英徳の高等部だよね?! ドアのガラスにへばりついて教室内の様子を窺う。 「あの制服。幼稚舎の子達だ」 あたしの肩越しに見ていた花沢類が、ボソッと呟いた。 「思い出した。俺も来たことあるよ。幼稚舎の頃、高等部校舎に」 「どうして?」 「ここにある楽器を実際に弾いて、自分の能力に見合った楽器を見つけるんだ。俺はその頃にはもうヴァイオリンやってたから、自分の ストラディヴァリ持ってきたけど…」 「じゃ、じゃあ、この楽器庫にあの子達が入ってくるの?」 「そうなるね」 あっさりと言ってのける花沢類。それって、ヤバくない?! 「隠れなきゃ!」 「何で」 「だって、こんなとこ勝手に入ったなんて知られたら、怒られちゃうよ!」 「そんなことな…」 何かを言いかけた花沢類の腕を引っ張って、部屋の隅にある楽器が積んである棚の背後に身を潜める。 楽器庫から出たくても、音楽室を通らなきゃ廊下に出られない構造だから、2時間目はここで過ごすことになっちゃうのね…。 棚の後ろに隠れたのはいいけど、子供達がこの棚まで楽器を探しにくる可能性だってある。 つきあたりの壁に肩を寄せ、腰を落として出来るだけ身体を小さくして隠れる。あたしに釣られたのか、花沢類も身を屈めてあたしの 隣に座った。あたしの肩に花沢類の肩が触れる。 息を潜めて少し待つと、子供達が騒ぎながら準備室に入ってきて、思い思いの楽器を手にし、また音楽室に戻っていった。 少し経つと、ドアの向こうから好き勝手に楽器を弾く音が聞こえてきた。 はぁっ、と大きく息を吐く。見つからなかった。良かったぁ。 立ち上がって棚の背後から出ようとしたら、花沢類に腕を掴まれた。バランスを崩してまた座らせられる。 『な、なによ、花沢類』 『牧野。俺、したくなった』 『…トイレなら我慢してよね』 『違うよ。俺がしたいのは、牧野と』 …はぁ?!何言ってんの?!まさか、したいって…。 『な、な、な、何を?!』 『決まってるじゃん』 口元を軽く緩めて笑う花沢類。この人、今の状況が判ってんの?! 『こんな、体ぴったり合わせてたら、欲情くらいするよ。俺も男だしね』 「ば、ばかなこと…」 立ち上がりながら思わず大きな声で言いそうになったあたしの唇に、花沢類も立ち上がって人差し指を当てる。 『しぃっーー。静かにしないと、バレちゃうよ?』 そう言って、今度は自分の唇であたしの唇を封じた。壁に、身体を軽く押し付けられながら。 抵抗できない。大きな物音を立てれば、いくら楽器を弾いているとはいえ、気づかれてしまうだろうし。 そう考えて、思いつく。……だったらここで、あんなことできる訳ないよね。 花沢類って、マジな顔で冗談言うんだから。びっくりさせないで欲しいわ。 キスくらいならいいかな、なんて思っていたら、花沢類の手があたしの胸を揉み始めた。 こ、こ、こらっ!どこを揉んでるの!花沢類っ! 『んっ〜〜〜っ』 唇が重なったままなので、小さな声で抵抗を試みる。でも花沢類の手は止まるどころか、あたしのリボンタイを解いて、次々にブラウス のボタンを外していく。 ちょ、ちょっと、花沢類っ!! 牧野の髪から零れるシャンプーの香り。触れ合う肩から伝わる牧野の甘やかな柔らかさ。 こんな状況で興奮しない男なんて居ないだろ? 唇を合わせて、牧野の胸を揉む。途端に抵抗し始める牧野。 ダメだよ、もう離さないからね。 牧野のリボンタイをすっと解いて、ブラウスのボタンを外していく。 『んんんっ〜〜〜っ』 小さな声で俺を止めようとしてる。その声を無視して、ブラの中に手を入れ、乳首を摘む。 …もうこんなに硬くなってる。牧野、正直だな。そんなとこも可愛いんだけど。 『んんっ……』 呻きが、甘い喘ぎに変わる。唇を割って舌を侵入させ、牧野の舌を捜して、絡める。 途端に喘ぎは更に甘さを増していく。 胸への愛撫を激しくする。乳首を指で挟んだり、指の腹で転がしたり。 『…んっ…んんっ…ふぅっっ…』 漏れる声が、少し大きくなってる。俺は唇を離して、牧野に囁く。 『声、出しちゃダメだよ…』 『だったら、こんなこと、しないで…』 少し上気した顔と、甘く息を切らした声でそんなこと言っても説得力ないよ、牧野。 また唇を重ねて、牧野の唾液を吸い取る。牧野の手が、俺の腰を抱いた。もう、観念したね? ブラの中から持ち上げるようにして、乳房を露にする。 俺は立ち膝で、牧野の乳房に吸い付く。花びらを散らしながら、乳首を舌で転がし、軽く噛んで。 牧野は俺の頭を抱いて、髪を軽く掻き回す。 「ぅんっ…ああぁっ……はなざわるいっ…」 意識してないと、声が出ちゃうみたいだ。 『声、出しちゃダメだってば…』 そう言いながらも、乳房への愛撫を続ける。牧野の足が震えだす。もう、我慢できなくなってるの? 右手をスカートの中に忍び込ませて、クロッチの脇から指を差し入れる。 …溢れてる。本当に可愛いよ、牧野…。 『ぁぁぁっ…だめ…はなざわるいっ…』 『こんなになってても?』 わざと、指を動かして音を聴かせる。ぴちゃぴちゃと響く音に、牧野の腰が動く。 『やだっ…んんんっ…』 声を殺して喘ぐその表情に、俺の我慢も効かなくなって来る。でも、ちょっと意地悪してやろうかな。 『牧野、欲しい?』 聞いてみる。牧野は顔を紅くして困った表情をした。この顔がたまらないんだ。 『欲しくないの?』 もっと困らせたくてまた聞く。 『…欲しい…』 牧野は俯きながら、蚊の鳴くような声で言った。 俺は少し笑って、立ち上がり、牧野の耳元で囁く。 『後ろから挿れてあげる。壁に手をついて、こっちに腰を突き出して』 牧野の腰の位置は、俺の腰の位置より少し低い。どうしようかと考えて周りを見回すと、近くにあったトロンボーンのジェラルミンケース が目に入った。ちょっとゴツいけど、これでいいか。 ケースを牧野の足元に置いて、俺も準備に取り掛かる。ベルトを外して、チャックを下ろす。 ふと見ると、牧野が、俺の言ったとおりの格好をしてる。…やべ、興奮する…。 『これで、いい…?』 恥ずかしそうに言うその声が、また俺の性欲を掻き立てる。 『うん。このケースの上に立って』 牧野がケースの上に乗ると、俺の腰と同じ高さになった。うん。OK。 スカートを捲くって、クロッチを少し横にずらし、潤おうその場所に俺をあてて、囁く。 『挿れるよ…』 花沢類があたってる。もうすぐ、中に入ってくる。…早く、早く欲しい。後ろから、しかも立ったままなんて、初めて。 こんな状況でこんな淫らなことをしてる。でも、止められない。 花沢類が差し入れられる。ゆっくり、ゆっくり。少しずつ出し入れしながら、徐々に入ってくる…。 泉がクチュクチュと、花沢類を招き入れる音を立てる。 「あっ…あっ…」 あたしは気持ちよさから、ちょっと声を出してしまった。 『牧野、声…ダメだよ』 花沢類がたしなめる。 『う、うんっ…』 判ってる。だけど、漏れる声を抑えられない。だって、挿れられただけなのに、こんなに気持ちいい。 いつもより、花沢類が大きく感じる。もしかして、花沢類も興奮してる? 『声、我慢して…』 その言葉と同時に、花沢類が腰を動かして、あたしの腰に打ち付け始めた。 『ぁっ…ぁっ…ぁんっ…』 喘ぎが、喉の奥で爆発しそうになるのを、必死で押し殺す。 花沢類、今日、凄いっ…! 反り上がった花沢類が、あたしの中を掻き乱す。うねる腰の動き。 立っていられないほどの快感があたしを襲う。 『はぁっ…はぁっ…はぁっ…』 呼吸なのか喘ぎなのか、自分でもわからないような吐息が漏れる。 どうしよう、抑えが利かないほど、気持ちいい。それに、声を抑えるのが、こんなに大変だとは思わなかった。 花沢類の呼吸が後ろから聞こえる。花沢類も必死で荒げる息を殺しているのが判った。 『ぁぁっ…んっ…はなざわ、るいっ…』 『うん…牧野、今日、……凄いよ…』 『ぁ、ぁ、ぁ、…は、なざわ、るい、だって…んんっ…すご…っ…ぁっ…』 花沢類の動きが激しさを増す。そんなにしたら、すぐ、イッちゃう…! 『…はぁっ…はぁっ…はぁっ…』 花沢類の腰の動きに呼応して、吐息が零れる。 『牧野、イキそう…?』 返事も出来ない。今、声を出したら、きっと止め処なく出てしまう。懸命にこらえる。 だけど、だけど、もう、ダメ……イっちゃう……っ…っ…っ!! 身体を仰け反らせ、背中をビクつかせる。声だけは、抑えなきゃっ…っ! 『〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っっっっっ!!!!』 一瞬だけ、呼吸困難になって、次の瞬間、大きく息を吸い込む。ハァハァと肩で呼吸するみたいに。 同じ頃、花沢類の身体に緊張が走った。そして間髪置かずに、花沢類が脈打ちながらあたしの中に放ったのが判った。 子供達が音楽室から去っていくのを待って、俺たち達はやっと楽器庫から解放された。 「もう、花沢類!どうしてあんなこと!」 顔を真っ赤にしながら、牧野が俺を責める。 「だって、したかったんだから、しょうがないでしょ」 正直に言ったのに、牧野は俺を睨みつける。 「もう二度とあんなことしないでね」 唇を尖らせて言う牧野に、また意地悪な質問をぶつけてみる。 「本当に、もう二度と、してほしくない?」 一瞬黙る牧野。本当にわかりやすいな。内心、可笑しくて仕方なかった。 「当たり前でしょ!」 語気を荒げて言い放つ牧野だけど、きっとこいつの中で葛藤が始まっているはずだ。 事実、あんなに乱れた牧野を見たのは初めてだった。 牧野の内情を察して、囁きかける。 「また、してあげるからね」 牧野がまた俺を睨む。顔が真っ赤だよ、牧野。 さて、この辺で種明かししようかな。 「でさ、牧野。どうして楽器庫に入ったら怒られると思ったの?」 急に話を変えられて面を食らった顔をしながら、牧野が答えた。 「え?だって、あんな楽器がたくさん有る場所に、勝手に入っちゃまずいじゃん?」 本気で判ってないみたいだな。 「じゃさ、どうして俺が、学校の備品のヴァイオリン弾いてたの?」 「?」 「言い方を変えるよ。どうして楽器庫の鍵が開いてたの?」 「それは…」 牧野の顔を見ながら、ポケットから鍵を出して、牧野に見せる。 「楽器庫の鍵は、ここにある。ちゃんと許可とってあるんだから、怒られたりしなかったんだけどね。早とちりの誰かさんが俺を引っ張って入ったりしたから…」 「は、花沢類っ!!」 その後、俺が牧野にひどく怒られたのは、言うまでもないか。 ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() |