情事の痕@SIDEつくし
花沢類×牧野つくし


ふと目を覚ますと直ぐ横に花沢類の寝顔がある。
情事の後、花沢類の腕の中で眠るのがいつの間にか習慣になっていた。
花沢類の伏せた長い睫毛、綺麗な寝顔。 腕を伸ばしてそっと頬に触れてみる。

「好き」

言えるはずのない言葉を口にしてハッと我にかえる。
馬鹿みたいだあたし。花沢類はまだ静さんの事を忘れてはいない。
元々あたし達はお互いの傷を癒す為だけに寄り添っただけ。

花沢類は傷ついていた。 そしてあたしも道明寺を早く忘れたかった。
ただそれだけの事なのに… いつのまにか花沢類に惹かれている
自分がいる。

「この人にあたしの想いを知られてはいけない」

きっと花沢類を困らせてしまう。今はただこうして肌を合わせるだけでいい。
だから、もう二度とこの想いは口にしない。

ゆっくりと自分の中で頭を擡げる感情を押さえ込んで
あたしはもう一度眠りにつく。
愛しく想い始めた人の頬にキスをして。

     「おやすみ 花沢類」






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