タイスの瞑想曲(非エロ)
花沢類×牧野つくし


〜〜大河原家別荘にて〜〜

確か…お互いに腕を伸ばして、間をなるべく空けるようにして
手をつないで寝た、はずだった。
ところが、夜中にふと目を覚ますと
俺の右手は伸ばしたままで、腕に彼女の肩が乗っていた。
そんなに重たいヤツじゃないが、肘の内側を圧迫されて少し指先が痺れた。

「牧野?」

小さく声をかけてみたが、むにょむにょと呟いただけ。
とにかく右腕を少しずらそうとした その途端。

「あ、○×△$εβ∬…ふふふッ」と
やけに明るい声で、寝言を言って身体を寄せてきた。
!!!!!

いくらなんでも。
俺、男なんですけど。
隣に寝てるの、散歩のふりして顔見に行っちゃうくらい、気になる女なんですけど。

まあ、牧野は司の婚約者を応援するって言っていたけど
本心からとは言えないようだし。
司だって今日はこの部屋割を受け入れて、
婚約者に襲われている(?)けれど
明日はそいつをぶっちぎって 牧野のところに舞い戻るかも。

やはりここは......我慢……か?
落ち着け、俺。ヴァイオリンのイメトレでも…。
なんか、こう、暗〜くて冷た〜い曲調のやつを。

と、思ったら、頭の中に流れたのは、タイスの瞑想曲だった。

なんでタイスの?
タイスは超美人で 娼 婦 だったんだから
牧野とは……似てないでしょう。いや、もう 全 っ 然。
瞑想曲は、タイスの改心のモティーフだが、
ちょっと気持ちを静めるのには向いていない。

オペラのあらすじを無視して聴けば 結構、甘い曲だ。
他に暗いの、冷たいの、落ち着くの、と念じてみたけど
アタマの中で 瞑想曲は鳴り止まなかった。
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ああ、わかった。
俺、あの修道士なんだ。
タイスを改心させよう、救ってやろうとして、彼女に惚れちゃう奴。
修道士だから、恋なんかしちゃいけないのに、タイスに執着しちゃうオトコ。
アタナエルっていったっけ?
アタナエルは……タイスに誘惑されたこともあったんだけどねえ。
俺、アタナエルよりも寂しいじゃん。

まったくもう、人の気も知らずに、はぁぁ…。
身を寄せたっきり、グースカ寝ている牧野を見て
ため息をついた。
バスケの勝負の後、司んちの寝室に 2人で
閉じ込められちゃった時よりヘヴィな状況だね、
どうしたもんでしょう、コイツ。

俺は 彼女のほうを向いて……。
そうっと彼女の肩に左腕を回して……。
軽く額にキスしてみた。
ほら、起きるか、離れるとかしたらどう?

もう一度だけ、額にキス。次はまぶた。そして頬。もう一度 頬。

いつの間にか タイスの瞑想曲は止まっていた。

少々ためらった後、唇にも軽くキス。
(上…上…下……正面。)

さすがに寝ている相手に これ以上はマズイ…。
目が覚めている時に (強引にでも)合意をとりつけてからでないと。
しかし、あしたの牧野がフリーだという保証はない。
考えてみると、この先 俺が触っても触られても
鬱陶しくない女なんて現れないかも。
しゃべっていても飽きないのに黙っていても退屈じゃない、
そんな女には出会えないかも。

鬱陶しくない女なんて現れないかも。
しゃべっていても飽きないのに黙っていても退屈じゃない、
そんな女には出会えないかも。

触っても触られても鬱陶しくない女?
それって自分に嘘ついてるよ、
俺は 触 り た い 。 (やっぱ、そうか、納得)
も っ と 、 も っ と 沢 山。
抱 き し め た い。 (司に遠慮せずにね)
キ ス し た い。 「 友 達 」 は 止 め に し た い。 

(勝算…あるのか?)
…………。
あ っ て も な く て も。
.........。
よ し 、 明 け 方 ま で は コ イ ツ を 寝 か せ て 
然 る の ち に…………。






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