花沢類×牧野つくし
![]() 3月の休日。牧野の存在を感じつつ惰眠を貪っていた俺に、 俺の隣で本を読んでいたはずの牧野が弾んだ声が降りてきた。 「類、雪が降ってきたよ」 春の雪は物悲しい。 春の気配の中で間違って降りてきた存在。 桜の花びらなら季節に合うのにね。 その「場違い感」は昔の俺を思わせて切なくなる。 気がつかないうちに逃してしまった恋心。 それを持て余していた自分。 「綺麗だね〜」 本の次は雪。ちっとも俺を見てくれない牧野。 俺の腕をすり抜けて、牧野は窓に佇んでいる。 うっとりと儚いものを見つめる姿は、司を待っていたあの頃に似ていて どうしようもなく寂しい気持ちになるんだ。 ――NYはもっと寒いんだろうね。 司が旅立って初めての冬に呟いた言葉。あの時も同じ表情で雪を見ていた。 「NYのことでも考えてるの?」 俺の言葉に牧野は黒目がちな瞳を向けた。首を傾げてこちらを見つめると、 俺のいるベッドの横に戻ってきた。 「何を言ってるの?」 腕を掴んで強引に抱きしめた。 「俺は、春の雪なんて、嫌い」 小さな顎を掴んでゆっくりと唇を落とす。 牧野がどういう決心で司と別れて俺を選んだか、一部始終を見てきた俺は 誰よりも知っているはずだ。 でも、本当は少しの事でも不安になる。 俺を選んで後悔してない? 司を心の奥で愛しているんじゃない? 痛いくらいの嫉妬心。 「牧野、寒いからさ。暖めてよ」 俺はそのまま白い首筋に赤い痕をつけた。 この方法しかわからなかった。 そんな自分をひどく幼いと思う。 牧野は「昨日もしたのに」とか「まだ昼間だよ」とか言っていたけど、 俺はそれを唇で塞いで続けた。 シャツを脱がし、ブラジャーを外し、 右手では硬くなった赤いつぼみをなでるように触れ、 左手で牧野の快感に身を捩る牧野を抱きしめ、唇で首筋を愛撫する。 段々と息を弾ませ悶える姿を感じながら、俺は右の乳首を甘噛みした。 「んっ、ぁあ」 思わず漏れた大きな吐息。 「イヤだって言いながら感じちゃってるよ」 わざと羞恥を煽る言葉を投げつけると、ふいに頭を抱きしめられた。 柔らかな感触。心臓の音。 そこから響く、牧野の声。 「あたし、もう花沢類しか見てないよ。道明寺じゃなくて、類のものなんだよ 体も、心も、全部。一部じゃなくて全部なんだよ」 それは十分過ぎるほどの愛の言葉だけど、胸に一本のトゲが刺さって。 俺は顔をあげて牧野の瞳を見た。 真っ黒くて意志の強い瞳。 「でも、まだあんたの中にあるだろ?司の影」 牧野は首を振る。なんでわからないのかって言いたげな顔。 「ないよ」 「あるよ」 「ないってば!!!」 俺はそっと手を伸ばして、蜜が滴る秘所に触れた。 「ここに、ある」 牧野は突然訪れた秘所への愛撫に大きく跳ねた。 そのまま有無を言わせずに余計なものを取り払った。 「全部、俺だけで埋め尽くしたいよ」 執拗な愛撫を繰り返し、水音をわざと聞かせるように撫で上げる。 牧野の白い頬が桃色に染まり乱れた黒髪が赤い唇にかかっている。 意志の強さを表す真っ黒な瞳は、今は熱情に潤んで俺を見つめている。 「どれだけ抱いたら、俺の記憶だけでいっぱいになるかな?」 耳元で囁くと、 「もう、類でいっぱいだから。本当に、ねぇ、あたしは、類、だけ」 切ない呼吸の合間に牧野は俺に告げる。 「信じられないよ」 うそ。本当は俺だってわかってる。 でも、一度走り出した嫉妬心は欲情と一緒になって濁流のように俺を飲み込んでいる。 思いつく全ての場所にキスをしたい。 愛撫して啼かせて俺のものだって所有の証を付けて どこまでいけば安心できる? どこまでだって無理かもしれない。 牧野の全てが欲しい。果てがない欲望。 「類、お願い。もう、壊れちゃうよ」 牧野が泣きそうな声で懇願する。息を切らせて、俺を求める。 「ククッ。なにがお願いなの?いっそのこと、壊してあげようか?」 「ぃやっ」 「大丈夫、痛くなんかしないよ」 そう言って、俺はゆっくりと蜜壷のなかに自身を沈ませた。 「激しく、するだけだから」 激しく突き上げ、体位を変え、耳元で愛を囁きながら 俺は彼女の中を埋め尽くす。 白いのどをそらせて、牧野がイキそうなると俺はあえて律動を止めて 気をそらした。 気をイカせられないまま、何度も突き上げられて 腰を動かすたびに卑猥な水音と牧野の艶声が大きくなる。 「類、お願い、イカせて、とめないで」 純情でまっすぐな牧野の唇から零れる卑猥な哀願。 乱れた黒髪に桃色に染まりきった身体。俺を求めるように伸ばした腕。 その手を取って激しく腰を打ち付ける。 「いや、なんか、すごい。類、類、るいっ」 名前を連呼される。俺の中にも真っ白な感覚がやってくる。 そのとき、俺はなぜだかこう口走った。 「牧野、あったかい。暖かいよ。愛してる」 牧野が一際高い声で啼いた。 それを合図にしたように俺も果てた。 気だるい心地よさの中で腕の中の牧野が言った。 「ねぇ、類。あたしはいつの雪でも好きだな」 「そうなの?あ、でも子どもって雪が好きだもんね」 そう言って噴出すと、軽くこぶしで胸を叩かれる。 「そうじゃなくて、真っ白で、汚れてなくて、 ふわふわと空から包んでくれてるみたいで、寒いのに暖かい感じで」 そこで、牧野は言葉を区切り、俺を見上げて笑った。 「なんか、類を思い出すの。だから好き」 そう言われたら、嫌いになれない。 いいよ、俺は牧野が好きなものは大事にしたいから。 少し休んだら、外を歩きたくてウズウズしてる彼女と 手をつないで雪の中を散歩しよう。 美味しいコーヒーが飲める喫茶店まで歩くのもいいかもしれない。 ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() |