美作あきら×牧野つくし
昼下がりの英徳学園の中庭。 白いTシャツに黒いブルマ姿の女子生徒が駆け抜けていく。 「ぎゃっ!!!」 女子生徒は男の足に躓いてその場に倒れこむ。 「いったぁ〜」 「ってぇ〜な……、ん?牧野?」 「あれ?美作さん?」 「おまえ、何してんの?」 「え?これから体育の授業があって…。日直の仕事して着替えてたら遅刻しそうで」 「血、出てんぞ?」 つくしの肘からは転んで擦りむいたための血が出ていた。 「もうっ!こんなところで寝転んでるから躓いちゃったじゃないのよ!!」 ぎゃんぎゃんと文句を言うつくしの手を引いて、あきらは校舎へと向かう。 「ちょっ、ちょっと!!あたし、授業があるんだからっ!離してよ」 「おまえさ、一応、女なんだから体に傷が残ったら大変だろ」 「大丈夫だよ、このくらい。唾でもつけておけば治るって」 「はぁ…。俺の繊細な神経ではそんなことはありえねぇっつーの」 あきらはつくしの手を離さず、保健室に入る。 「あれ?麻耶さん、いないんだ」 「麻耶さん?」 「ん?あ、ここの校医」 「……守備範囲、広いのね」 「別にヤッてはいねーって」 そう爽やかに返すあきらに、つくしはため息が出る。 「確か、ここら辺に……」 あきらは戸棚の中から治療セットを出してきて、つくしにベッドに座るよう促す。 「ほら、傷口見せろ」 手馴れた風に治療を施すあきら。 丁寧にガーゼを当てて包帯を巻く。 「美作さんって、ほんと器用だよね」 「ああ。うちにはやんちゃなお姫様たちがいるからな」 「ありがと」 ニコッと微笑むつくし。 改めてつくしの姿を見たあきらの心臓は、どきりと高鳴る。 ブルマの裾から露になった太もも。 ピッタリと体に張り付いたブルマは、その細い腰の形をそのまま見せている。 一瞬、自分の顔が赤くなるのを感じるあきら。 「どうしたの?美作さん?」 自分の顔を覗き込むつくしの顔が近くなる。 「あ?あ…別に……」 あきらの中で、ちょっとしたいたずら心が芽生えた。 「お礼は、ちゃんとしなきゃだよな?」 「え?」 つくしの顎に右手を添えたあきらは、そのまま潤んだ唇に自身のそれを重ねた。 離れようとするつくしの後頭部を左手で押さえ込み、その口付けは深くなっていく。 つくしの体が震えているのを感じたあきらは、そっと唇を離す。 「……んっふぅ……」 「ごちそうーさま」 「なっ何すんのよ!!」 「お礼をいただいただけ」 「お礼って……」 「ほんとはこんだけじゃ足んねーんだけど?」 「はぁ〜〜??」 「俺じゃなかったら、こんだけで済まねーぞ」 「もうっ!訳わかんない!!」 これでも精一杯ブレーキをかけたつもりのあきら。 「おまえさ、これからは体育の授業は休め」 「授業を休めるわけないじゃない。アンタたちと違って、こっちはなけなしの金で学校に通ってるのよっ!」 「ばぁ〜か。おまえ、ほんとわかってねーのな」 「何を?」 「おまえのそのカッコ。十分、男、誘ってんだぞ」 「だって…、学校で決められてるんだから仕方ないじゃない……」 「ま、司だったら、今ソッコーでおまえの処女は失われてるな」 「えっ!?」 「なんなら、どうなるか教えてやろうか?」 「なっ……」 真っ赤になりながら自分の体を抱き締めるつくし。 そんな姿もあきらをそそる。 でも……。 それでもあきらは何とかブレーキをかける。 「おまえさ、もうちょっと自分が女だってこと、自覚しろよ」 「言われなくったって、あたしは女ですって……」 「だったらそのカッコがどんだけ男をそそるのかってのも知っとけ」 自分の体を抱き締めながら俯くつくしを、そっとあきらは抱き締める。 「俺、このままおまえのこと、抱きてーって思ってるんだぜ?」 「だっだっ………」 ほんと、隙だらけの女だ…。 あきらは苦笑しながらつくしの首筋に唇を這わせた。 「やっ…やめて……」 あきらはチュッとつくしの額に唇を落とす。 「俺でよかったな、お姫様♪」 「なっ、何なのよっ!!」 「今日はもう着替えて帰れ」 「……うっん……」 着替えたつくしを校門から見送ったあきらは思う。 ―――――俺はやっぱり臆病者だ…… 明日からは、また親友の恋人って見ることにしよう。 今夜だけは…。 甘い感触を思い出しながら眠りについてもいいよな? あきらはその後姿を見ながら思った。 SS一覧に戻る メインページに戻る |