可児収×菊池理花
「おっす!馬子にも衣装やなぁ。似合ってるわ」 そう言った可児くんの顔に一瞬テレが見えて、私は今日、やっぱり着物で来てよかったなぁと思った。 1月3日。 少しは人が少なくなったであろうことを期待して、この日を初詣に選んだ。 同時に、今年初デートでもある。 今までにも一緒に初詣に行ってきたけど、着物を着たのは今年が初めて。 もうすぐ成人式なので、着慣れておくようにと、両親が仕立て上がりの着物をお店から自宅に届けさせた。 今までは、母や祖母の着物を借りて着ていたので、自分の着物はこれが初めて。 ピンク地に、桜の花を散らした着物は、それほど華美ではない。 それは長く大事に着ていきたいという、私の希望を、両親が理解してくれた為。 「可児くんは、成人式何着るん?」 めずらしそうに私の着物姿を見ている彼に、恥ずかしさを隠しながら聞いた。 「んー?普通のスーツ」 「着物着たらええのに」 「着物着たら朝まで飲めないやん。その日は一哉たちと朝まで飲むんや。あ、お前も来るやろ?」 お酒の強い男性陣の顔を想像して、苦笑いが出る。 「・・・・・・・・・洋服に着替えてから行くわ」 「なんでー!着物で来たらいいやん!みんなに見せびらかそうや。な、そうしよっ!」 「着物着てたら朝まで飲めないって言ったの、可児くんやん」 「その為に今日、こうやってお試しで着てるんやろ。それに、お前着物自分で着れるんやから、着崩れても平気やし」 なー、着物で来て!。 そうやって目の前で拝まれて、私は着物で行くことを承知した。 ・・・・・・あんな目をされたら、断りきれんし。 1月3日なのに、神社は意外に人が多かった。土曜日だってことも関係あるのかな? 可児くんが離れないように、しっかり手を繋いでくれる。 久しぶりに感じる可児くんの手の温かさに、ちょっと照れてしまう自分がいる。 2人で賽銭箱にお金を入れ、それぞれ願い事をする。 何を願ったか、何度も何度も可児くんに聞かれたけれど、それは秘密。 「なあ、おみくじ引こうや」 「えー、正月早々凶とか出たら、めちゃ凹むからやめとこ!」 「まさかー。凶はさすがにないやろ。な、行こう!」 また手を繋がれ、おみくじの列に並んだ。 それぞれおみくじを引いて、一緒に広げると・・・・・・。 「・・・・・凶。。。。」 「・・・凶や」 最悪、2人して凶を引いてしまったわ!だから止めようと言ったのに! そんな私の静かな怒りを察してか、 「まあ、凶ってことは、これ以上は悪くならないってことや。ということは、今年は昨年よりいいことばかりっていうことちゃう?」 可児くんに笑顔でそう言われると、何となく、そうかな?と思ってしまう自分に呆れてしまう。 可児くんが、私のと自分のおみくじを一緒に木に結んでくれた。 「さて、じゃー行きますか」 そう言って、可児くんが手をつないで歩き出す。 「どこへ?」 「初詣して、今年の運だめしもしたし、次にすることはひとつしかないやん」 そう言われて、頭の中が?????の私の耳元で、可児くんが囁いた。 「姫始め。着物姿の理花ってそそるわ。理花が着付けが出来てほんまによかった」 一瞬顔が赤くなったが、ふと顔を上げ、可児くんに聞いた。 「・・・・・・・・・まさか、成人式の後、朝まで飲んで、その後も・・・、なんて言わないよね?」 いくらHな可児くんでも、それはない、よ、ね??? 「もちろんそうに決まっているやん!だから着物で来てもらうんやろ?」 満面の笑顔の可児くんを見て、今日着物で来たことを一瞬後悔した。 でも、繋いだ手が温かくて、すぐにそんなことはどうでもよくなってしまった。 「神様、どうか今年も可児くんと一緒におれますように」 SS一覧に戻る メインページに戻る |