番外編
![]() 雨宮が香港に飛び立ってから、家で二ツ木と飲む機会が多くなった。 ビールとつまみのはいったコンビニの袋をぶらさげて、二ツ木が勝手におしかけてきて、 もっぱら、山田とどうした、こうした、との話を一方的に言い続けていることが大半だ。 仕方なく付き合っているようにみせかけて、実は、ひとりの縁側は広すぎて、 落ち着かないから、内心ホッとする…。 …なんて事は死んでも口には出さないが。 〜〜♪〜〜♪ 軽快な着信音が、縁側に響き渡る。 「あれ?着信音変えたの?」 「……あぁ」 「…へぇ」 わかったような顔をして、ニヤニヤこっちを見てくるが、それ以上は何も言わない。 「…何?」 「あ〜、うん。別にぃ。……サンバとマンボは違うよ?」 「…わかっている。サンバは関係ない。気分だ」 冷蔵庫にはっていたハガキを見たのだろう。 やっと送ってきた、一通のハガキ。 私がいなくても、楽しそうにやっているじゃないか、と少し面白くないあのハガキ。 決して関係はないが、サンバのリズムより、マンボの音楽のほうが、雨宮っぽいとは思う。 「もうすぐ帰ってくるね、雨宮ちゃん」 「…そうだな」 もし…もし、君が私を忘れていないならば。 もう、離しはしない。 夏が来る。 ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() |