不幸なりんこの話
紅玉りんこ


いつか、私を迎えにくる王子様──────ごめんなさい。
私、紅玉りんこはもう処女じゃありません。

ジュエルステッキを追いかけて迷い込んだ洞窟の中で本当は私は4つの誘惑をみた。
優しい女神様、小ずるい妖精、恐ろしい怪物、そしてもうひとつ…

妖艶な淫魔。

でもそのときの私の目にはそれはいつか私を迎えにくる王子様にしか見えなかったの。

王子様は優しく言った。
つらいことは快楽で流してしまおう、と。
はじめは私にも嫌、ダメですとその手を払いのけるくらいの理性はあったけれど、耳元で甘く君が欲しいと囁かれた瞬間、不思議と身体の力が抜けてファーストキスを奪われてしまったの。
はじめてのキスはとろけるくらいに気持ちがよかった。
その余韻にぼーっとしてる間に王子様はもう私の服をあらかた脱がし終わっていて、そこからの王子様の行動は恋もまだ知らない私には予想もつかなかったことの連続だった。

静止する間もなく王子様はまだふくらみきっていない私の胸に舌を這わせてきた。
頭の奥とお腹の中がしびれるような未知の感覚に私は思わず吐息をもらす。
それが合図であったかのように胸の先端を噛まれた瞬間に背中を電流が流れて、私はもういいや、って思っちゃったの。

これが気持ちいいってことなんだ、つらいことなんか忘れて気持ちよくなりたいって。

その気持ちを見透かしたのか、王子様の舌がだんだん舌の方に下がっていく。舌がおへそくらいに来たとき、私の中に何かが入ってきた。
思わず、んっ、と声が漏れる。
私の中で何かが動くたび、くちゅりと水音が鳴る。

くちゃ、くちゅり。
くちゅ、くちゅり。

その音が私の頭の中で反響して、何も考えることが出来なくなる。
でもその音が激しくなるのと同時に何かが来るのがわかっていた。
くちゅ、ちゅ。あと少し。
ぐちゃり、ぬちゃ。もう少しもう少し。

もっと、もっと!

突然、私の中から何かがいなくなった。
そして目前に王子様が歪んだ笑いを浮かべながら、てらてら光る指を差し出してきた。
それが私のもので濡れているのだと理解する前に、私はその指にむしゃぶりついて懇願してしまった。

王子様、私を気持ちよくしてくださいと。

そうしたら王子様は優しく笑いながら私を撫でてくれたあとに覆い被さってきた。
いよいよだ、と思って目を瞑る。
私を気づかうように王子様が瞼にキスをくれた。それが嬉しくて身体の力を抜いた瞬間、



残念だったね



王子様じゃない、地の底を這うような声が聞こえた。


「い、痛っ、痛い、ぁああああああああああああ、っっつ!!!!!」


その謎の声に驚く間もなく、私の内部に指とは比べものにならない質量が入ってきて私は全てを忘れて絶叫する。王子様のものではなく、もっと無機質で固いものが無理矢理私の処女地を犯している。
それは私の小さな穴には到底不可能な大きさで、ねじ込まれるように押し込まれてくるたびに激痛が走る。
ぶちんと肉が千切れる音がした瞬間、待ちかねていたかのようにそれは一気に奥まで入ってきた。
そして私の絶叫を無視して前後に激しく動き出した。
ごり、ごりっとそれと私の中が擦れあって更に激痛が生まれる。
あまりの痛みに叫びすぎて、息も苦しくて、最後に一言もう許してと叫んでから私は気を失った。



それからどのくらい経ったのかはわからないけれど、身じろぎしたときの激痛で目が覚めた。
直後、さっきまでのことを思い出しておそるおそる自分の身体を確かめてみて、愕然とした。
足の間に深々とジュエルステッキが刺さっていた。ぬるぬるした液体は私の破瓜の血と混ざり合って泡立ち、あちこちに飛び散っている。
私は震える手で、痛みに耐えながら突き刺さったままのジュエルステッキを取り出した。血濡れの柄の部分ときらきら光るハートとのギャップが気持ち悪くて、思わず私は吐いてしまった。
絶望感と苦しさでぽろぽろと涙を流しながらそっと穴を見てみる。ぴったり閉じていたはずの割れめはだらしなく開き、その中の穴は赤く腫れて見ているだけであの激痛が蘇ってきそうで私はそれ以上確かめることができなかった。


見上げた空はもう暗く。微かな星明かりに反射して妖しく光るジュエルステッキをぼんやり眺めながら私はまた意識を手放した。

きっともう、愚かな私のところに王子様は来てくれないけれど。






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