ロマンチックじゃないわ(ウェザー・リポート×空条徐倫)
第六部 ストーンオーシャン


「…」

男子監医療房棟。
白く清潔なベッドの上でウェザー・リポートはゆっくりと瞼を上げた。
見通しの聞かぬほどの闇の中、同室の囚人患者の寝息がさまざま聴こえ
うっすらと浮かび上がる蛍光のデジタル数字は午前2時を表示させている。
気がつけば真夜中。

「…」

患者達を起こさぬようウェザーは慎重に身を起こした。
夕刻からこの時間までずっと眠っていたので自然、『催して』きたのだった。
この男子監で彼に対して喧嘩を売るようなバカはいない、とはいえもともと温厚でおとなしい性格のウェザーのこと、
傷や病気を癒すためにここで休んでいる患者達にいらぬ迷惑はかけたくはない。
他のベッドにぶつからないよう、昼間の記憶と照らし合わせて病室をふらふらと彷徨う。
『中庭』での負傷はまだ癒えないがゆっくりと歩くくらいのことは出来るようになっていた。
そうだ、『中庭』に向かったあの娘は無事だろうか。
とっさのフォローはしたものの、あの時確かに響いた銃撃の音。
女子監での死人の噂は聞かないが彼女は果たして無事だったのだろうか。
ウェザーは数日前に力を貸してやった一人の少女を思い出し、闇夜に向かって低く呟いた。

幸い、医療房は夜中でもトイレだけは小さな明かりを灯し続けることが許されている。
廊下にさえ出てしまえば、トイレのドアから漏れ出る光を手すりに沿って目指せば暗闇でも簡単に歩いていけるのだ。

『―シルシル…シルシル…』

ふと暗闇に響く衣擦れの音。
そのかすかな音に腕を伸ばせばその指先にしなやかな絹糸が絡みついた。

「…君か」
「ウェザー・リポート…」

暗闇の曲がり角から姿を現したのは、先ほどまでその身の無事を案じていた少女空条徐倫であった。
絡み付いた糸をしゅるしゅると解きほぐし、徐倫が向き直る。

「どうして…」

周囲を覗うように見渡してから、ウェザーは声を潜め徐倫に問う。
囚人は、女子監と男子監間の出入りを許されていない。  
一部の…、囚人でありながら何らかのコネを持っている者、賄賂を払っている者、売春婦などは
出入りを許されるケースもあるにはあるのだが。

「まだお礼を言っていなかったのよ、ウェザー。あんたはひどい怪我を負ってまであたしに協力してくれた。
あんたがいなかったらDISCは届けられなかっただろうしきっとあたしは殺されていたはず」

徐倫本人も気づいていないが刑務所に来てから初めて、穏やかな微笑を見せた。

「いや…俺もホワイトスネイクに記憶を奪われた身…。君の父親のことは他人事とは思えなかったし
後は俺が自分の意思で勝手にやったこと、気にするな…」

ホワイトスネイクによって記憶を奪われた…その言葉に徐倫は一瞬顔を曇らせたがすぐにいつもの力強い表情を取り戻し
ウェザーに言った。

「あんたはあたしと、父を助けてくれた。本当にこれ以上ないってくらい…ありがとう」

ほんのちょっぴり頬を染め、俯き加減に言葉を紡ぐ。
男性不信の、とんでもない不良娘の、ほんの一瞬の柔らかな心根。

「それだけ伝えたかった…戻るわ。見回りの看守や、他の男囚が来ないとも限らないもの」

ふっと踵を返す徐倫の肩に、ウェザーの大きな手のひらが力強く乗せられた。
…と、いうよりウェザーがバランスを崩し、徐倫に倒れこんできたのだった。

「ウェザー?大丈夫?…やっぱり、傷が…」

徐倫は素早くウェザーに肩を貸すとその表情を心配そうに覗き込んだ。

「…く、ハァ…すまないが徐倫、そこの便所までつきあってくれないか…」
「トイレ? …その辺で済ませないの?」
「明るくなってから騒ぎになる、便所を目前に廊下で小便を垂れた馬鹿がいる、と」

徐倫の皮肉めいた冗談にも大真面目に返しウェザーは徐倫の肩へと腕を回した。

「えぇ、こんなところで立ち話させたあたしのせいだもの。病室まで送るわ」

数歩の距離をふらふらと歩き、明りの漏れるトイレのドアへと手をかけ、足を踏み入れた。

洗面台に備えつけられた大きな鏡に顔を映し、念入りに観察する。

―ちょっと筋肉つきすぎなんじゃないかしら。
―ここに来てから化粧ッ気もなくなって嫌になっちゃうわ。

すっかり色気のなくなった自分にため息をつくが、傍目から見ればそれでも少女は美しかった。
すらりとした長身に小さな顔、意志の強いくっきりとした眉、大きな瞳に長い睫毛、艶めく唇。
白い首筋に形の良い胸、なだらかな曲線の柳腰、やや大き目のヒップから伸びる長い脚。
このまま刑務所の外に出ても、決して男に不自由することはないだろう。
…本当の愛に出逢うかは別として。

ややあって背後から水音が聴こえた。
傍らの洗面台に立ち、手を流し始めたウェザーにハンカチを差し出しながら徐倫が囁く。

「他の囚人達が来たりはしないかしら…。ね、ウェザー…」

言葉の途中で、ウェザーが徐倫の差し伸べた腕を引き寄せた。

「え…?」

混乱し、浮き足立つ徐倫をすかさず胸に抱きとめ鼻先同士を近づける。
瞬間、徐倫の頬が真っ赤に染まった。

「…え、ウェザー…?あ、…  ! 」

ウェザーの厚い唇が徐倫の声を塞ぐ。
ちゅうちゅうと唇を吸い、真珠のように白い歯を舐め上げ、リードするように舌を絡ませる。

「…ん、んうぅ…」

キャミソールごしにも柔らかい胸に手を添えれば、そのうちはじけ飛んでしまうのではないかというくらいに
激しく高鳴っていた。
絹の頬を伝う涙に、いったんはその口唇を解放する。

「…っぷ、はぁ」

顔を斜め下に傾かせ、ハァハァと肩で息していた徐倫だったがだいたいの呼吸を整えるとウェザーを見上げた。

「ウェ、ウェザー…」

行為を非難するような表情だが、その瞳に怒りや失望はない。
あるのはちょっとの怯えと、煌々と燃ゆる幼く淡い恋心。

「な…に?急に。 思わず襲いたくなっちゃうくらいあたしが可愛かったとか?」

強がりを言う徐倫をいたわる様に、ウェザーはその耳元にキスをする。

「!!」
「ああ」
「あっ…あう… そんな冗談っ 全然あんたらしく…!」

ウェザーの右手は既にキャミソールの中に入り込み、左の胸をじかに愛撫していた。
それを押さえるように徐倫は胸に手をやるが、それを押さえつけて止めることは決して叶わない。

「君も…こうなることを期待していたんだろう?こんな真夜中に…」 

来るなんて何を考えていたのだか。
男といっしょに無人の便所についてきておいて、何もないと。
それに、徐倫のストーン・フリーなら簡単にここから逃げ出せるのだろう?
それをしないのは徐倫自身が突然の自体に困惑し混乱しているからなのか、それとも…
ウェザーの膝が徐倫の脚を割り開き、尻と太ももを無理矢理に収めたタイトなミニを苦しげに啼かせた。

「あぁッ! …ウェ、ウェザー…まさか」

張力に耐え切れず、ミニはひとりでにずり上げられていく。
露出した小さな白い布は表面を覆うレザーの派手な格好とは裏腹に、ひどく幼い。

「い…いやよ こんなところで、こんな下着で 全然…ロマンチックじゃないわ」

困ったようにいやいやと徐倫が頭を振る。

「ク。 ロマンチック?」

刑務所に女囚に男子便所でさらには子供が履くような下着。
確かにロマンチックなんてシロモノじゃあない。膝でぐりぐりと刺激してやりながらウェザーは薄く苦笑した。

「あ、あんっ…そこは…そんなふうにしちゃあ…大切な、場所なんだから」
「どう、大切なんだ? ここは どう使うんだ?」

膝を離し、代わりに左手を侵入させ布地越しに線を往復する。

「あぁッ…好きな人の…その、男の人を…あ…やだぁ」

徐倫には珍しくもじもじとハッキリしない返答を聞き流しウェザーはさらに左手を布地の縁へと侵入させた。
生えている範囲は小さいが、しっとりと湿り気を帯びる柔らかい茂みは、女としては十分に発育していることを
告げている。
そこから指を滑らせれば肉の割れ目へとたどり着く。

「ひぃ…」

先のほうには熱を持ち硬くなった肉粒が、小さいながらも懸命な自己主張を見せていた。
それをコリコリと転がせば、徐倫から断続的な嬌声があがる。

「ウェ…ウェザー…や、ダメ、誰か来る…」

廊下に響くコツコツという足音、やはりそれはここの明かりへと真っ直ぐに向かっている。

「さて…」

右手で徐倫の胸を、左手で徐倫の性器を弄びながら、ウェザーは考えをめぐらせた。






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