第六部 ストーンオーシャン
いつだったか、祖父のジョセフに連れられてスピードワゴン財団を訪ねた時、 承太郎は初めて彼女と出会った。 彼女は財団幹部の娘だとかで、アメリカ人の若い女というのは 派手な髪の色と派手な化粧をしているものだという日本人的先入観が 少なからずあった承太郎にとって、清楚な雰囲気と知的な瞳を持つ彼女は いささか新鮮に映った。 とびきりの美女ではないが、魅力的な女性だった。 有名なミュージシャンの父とイタリア系アメリカ人の母を持つ承太郎は、 その家系と風貌、そして硬派な性格から群がってくる女など 掃いて捨てるほどにいた。 しかし、そんな女たちには大して興味もなかったので、 気まぐれに自分で選んだ女とだけ肌を重ねた。 結果、同世代の男たちよりも女性経験は確実に少なかった。 ついぞ今まで誰とも「恋人」という関係になることはなく、 恋焦がれるなどということは体験したことがなかった。 承太郎は彼女にも、恋焦がれたというわけではない。 ただ傍にいれば心が安らぎ、その温もりに触れていたいと思った。 何度か会ううちにその気持ちは大きくなり、彼女も承太郎に強く 惹かれるものを感じていた。承太郎の鋭く深い瞳で見つめられて 唇を奪われれば、もう熱い気持ちを抑えることはできなかったのだ。 承太郎が次にアメリカを訪れた時には、2人の気持ちは既に固まっていて 両家へと挨拶に出向いた。 何も障害はなく、めでたく挙式しフランスからはポルナレフも祝いに駆けつけた。 結婚後も海洋学者として忙しく世界各国を飛び回る承太郎だったが、 間もなく娘をもうけた。徐倫と名づけ、たくましく愛らしく育っていった。 妻はそんな娘を「JOJO」などと呼んでしっかりと子育てに励んでいた。 そんな妻子を多忙ながらも穏やかな気持ちで承太郎は見守っていた。 徐倫が5歳の誕生日を迎える少し前、承太郎はまた調査・研究のため イタリアへと出発しなければならなかった。 その年に入って出国はもう3度目で、出発前夜、さすがに妻は 寂しさを隠しきれない様子である。 「・・・また、行っちゃうのね」 「これが仕事だからな、仕方ない。今回はおそらく2ヶ月戻れないかも しれないが・・・やれやれだぜ」 スーツケースにいつもどおりの荷物を詰め込み終えてから、 承太郎は寝室のベッドに腰掛けた。 「結婚してから、もう6年程だけど・・・あなたと一緒の時間は その半分くらいね」 「もう慣れただろ。それとも、いまさら愛想つかすか・・・?」 「何を言っているの。一緒にいられない時間が多くたって、 私も徐倫もあなたを愛してるわ」 承太郎は軽く言ったつもりだが、妻は真剣に返事をする。 それがたまらなく愛しく思えて、近づいてくる唇に応えるべく 妻の細い腰に手を伸ばした。 ついばむ様な口づけが、次第に深くなる。 幾度となくキスを交わし、すっかり馴染んだ互いの唇と舌の感触が今夜は いつも以上に吸い付くような気がしていた。 絡み合う舌から零れる唾液が電気スタンドの光で艶かしく光っている。 「・・んっ、っはぁ・・・」 妻から吐息が漏れたとき、承太郎は唇を離して首筋に移動させた。 優しく、時に強く口付けを落として鎖骨のあたりまで下り、殊更強く吸い付いた。 「・・・ぃたっ」 痛みを訴える声にも無言で、承太郎はネグリジェのボタンを外して一気に床へと落とす。 シルクでできたそれはいとも簡単に肌をすべり、パサリと音を立てて 妻を艶やかな姿へと変えた。 「あ、あなた。電気を・・・」 明るい場所で裸体となることを未だに恥じる妻は、身をよじって 電気スタンドのほうへ行こうとするが、承太郎はそれを許さなかった。 「今日はだめだ」 「えっ?なぜ・・・?」 「明日からしばらく見られなくなる」 だから、今夜はじっくりと見せて欲しい。 と、そこまで無口な夫は口に出さないが、妻はそれを視線で感じて頬を染めた。 「もう、昔みたいには・・・出産すると、体型は少し崩れるのよ」 「・・・ふっ、そんなことはわかってるさ」 「もう、いじわるね!あなたって昔から・・・んっ」 妻が言い終える前に、承太郎の愛撫が始まる。 いつの間にか手早く承太郎も服を床へと投げ、温かい互いの肌をぴったりと寄せ合った。 再び、深いキスを交わしながらベッドへと横たわっていく。 妻は承太郎の太く逞しい首へと腕を回してより深いところへと舌を導こうとし、 その傍ら承太郎は妻のブラジャーのホックを片手で器用に外して 大きすぎず小さすぎない双璧を露わにした。 まず右手で胸を揉み、先端の突起を指の腹で細やかに刺激すると、 妻はピクンと反応した。承太郎は顔を下へとずらし、もう片方の突起を口に含んで 舌でねっとりと舐める。 「あぁ・・・んぅ・・んっ」 ピクピクと小さな反応を見せる妻の姿に満足しながら承太郎は舌と指の動きを 速くして、一気に片方は吸い、もう片方はクネクネと捏ね回した。 「ぁっ・・・あんっんっ」 妻の吐息と共に溢れる声は承太郎にとって何よりの起爆剤となる。 胸に吸い付いたまま、秘部を隠す薄い布を下へと追いやった。そこは、 やや濃く存在する陰毛で隠れているものの、手を差し入れるとしっとりと湿っている。 「あなた、やっぱり電気を・・・」 「・・・今日はつけないと言っただろう」 「でも・・・」 妻の抗議にも承太郎は構わず、太ももを開かせてしげしげと秘部を眺める。 再度胸を揉みしだきながら、片手は秘部を開き、中の襞をなぞった。 入り口をゆっくりと確認し、太くささくれ立った指を小刻みに動かしつつ侵入させる。 「・・ぁっ!ん・・・んはぁ・・ん」 眉根を寄せて妻は喘ぎ、その声がいっそう承太郎を刺激する。 承太郎の男根もすぐに硬くなり、その大きさを増した。 ずっぷりと中指が付け根まで入り、妻の一番敏感な場所を擦りあげる。 「!・・あぁぁっ!んぅっ!・・んっ・・!」 愛液は承太郎の指を伝って手の甲をゆっくり流れてきた。 そのまま続けてクリトリスを舐め、舌で転がし、最後に強く吸い上げると 妻は背中を仰け反らせて達した。 はぁはぁと荒い息遣いの妻は、潤んだ瞳で承太郎を見つめる。 「あなた・・・ねぇ、きて?」 「あぁ」 もう一度深く口付け、強く密着した状態でそのまま妻の中へと侵入した。 しっかり包み込まれ、承太郎のペニスはひくひくと温かく締め付けられる。 細い腰をガッチリと掴まえ、承太郎はグっと最奥まで貫いた。 「あぁ・・・ん・・」 「動く、ぞ」 言うが早いか、承太郎は激しく腰を動かし始めた。グチョ、ネチャ、と 卑猥な体液の音が夫婦の寝室に響く。途中で体位を変え、後ろからグンと突き上げ、 プルプルと上下に揺れる妻の胸を両手で刺激した。もっとも、オラオラオラオラオラ! …とスタープラチナ並みの速さは妻相手には不可能であるが。 「あっ、あな・・・た・・あっあっあっ・・・んっあっ!」 「んっ・・・く、ぅっ」 承太郎が妻の中へとたっぷり精を吐き出し、そのまま2人でベッドへと沈んだ。 そして妻は、小さく承太郎の首筋へと刻印をつけた。 承太郎は妻の頭を浮かせ、筋肉の盛り上がる硬い腕をするりと下に敷く。 いつもの枕より多少寝心地の悪さを感じながらも、妻は夫の温もりを直に味わい、 明日からの寂しさを紛らわせることにした。 その翌朝、妻は徐倫を連れて空港へ見送りに行った。 搭乗時刻が近くなり、承太郎はカフェの席を立った。 「そろそろ、行く」 「ええ、気をつけて・・・」 「ねぇ、パパ。絶対、絶対早く帰ってきてね!」 いつもは特に何も言わない徐倫が突然、早く帰ってくれとお願いをする。 「あら、どうしたの?いつのまにそんなパパっ子に?」 「違うわよ〜。だって、パパがいると、夜にママとレスリングやってるでしょ? その次の日はママってご機嫌なんだもん!おうちの壁にラクガキしたって怒らないもん」 徐倫の発言に、妻は顔を染め承太郎はクラリと眩暈がした。 無邪気な娘は、さらに付け加える。 「それにねー、パパもその次の日の朝は徐倫にいーっぱいキスしてくれるでしょ? 普段はこーんな怖いお顔なのにさ」 そう言って手で目尻を吊り上げ、承太郎の真似をした。 「・・・で、徐倫、なんでそれを知ってるんだ?」 「ん〜と、この前、夜中にママの声がしたからそーーっと覗いてみたの! なんだか一生懸命だったから、邪魔しないでまた寝たのよ?えへへ、徐倫、えらい?」 「あぁ。偉いな・・・ある意味」 両手で頬を覆っている妻を横目に見ながら、承太郎は「やれやれだぜ」と小さく呟いた。 いくらセックス中だとは言え、自分が誰かに見られているのに気づかないはずはない。 気配を消してデバガメした5歳の娘を末恐ろしく思いながら、承太郎は飛行機に乗り込んだ。 SS一覧に戻る メインページに戻る |