閃きの電球(グイード・ミスタ×トリッシュ・ウナ)
第五部 黄金の風


甘い甘い。砂糖菓子の様なかおり。

自分の上で踊るのは愛らしい少女。

蕩けるような快感が全身を撫でる。
少女が唇を求める。それに答える。
くちゅくちゅ……と甘美な音が部屋に響き、本能が刺激される。
もっと、もっと繋がりたい。もっと求めあいたい。
ぎゅっと手を握ると少女も同じように握り返す。
身体を超えた……心地よい、心が一つになる瞬間。
何度も何度も唇を求めあう。やがて、少女は顔を離すとにっこりと微笑んだ。

「大好きよ、ミスタ……」


「夢かよ……」

『夢は一番良い所で醒めてしまう法則』は万国共通なのか。
彼は一人、ベットの中にいた。
チュンチュン……と外から聞こえる鳥の声で現在が朝だって事を認識する。
カーテンから射す、光は夢の中の様な曖昧でぼんやりとした照明と違い
随分と現実味を帯びていた。

「うへぇ……」

裸体で寝た性か、寝汗がねっとりと肌に絡み気持ち悪い。
夢のお陰なのか下半身は元気なのに。
頭をポリポリとかきながら、考える。

ー俗に言う「淫夢」ってやつか?

ちらりと隣を見るが勿論誰もいない。一人のベットだ。
甘ったるい夢とから寒い現実のギャップが酷過ぎて、どうしようもない気分になってくる。
そんなに溜まってるんですかい!?と
セルフツッコミをした後、枕元のクッションを壁に投げつけた。

ボスッ!と音を立て、落ちるクッション。

こんな夢を見てしまうくらい、彼女……トリッシュとはご無沙汰だった。
会っても無視。電話もメールも勿論無し。

原因は解ってる。アイツが悪い。

事件は2週間ちょっと前に起きた。

その日トリッシュは朝からご機嫌で「今日は早く帰るの?」とか
「こんな寒い日だもの、何か食べたいわよね」とか
「あー!今日は暇なのよね〜」とか。やけに彼に絡んできたのだ。
勿論、ミスタが彼女の精一杯のアプローチに気が付く訳でもなく
「あ〜早い早い」と適当に返事をしてお出かけ。
しかし甘かった、簡単と舐めてかかった『仕事』が
相手側がヘマったお陰で伸びに伸び、帰宅が深夜になったのだ。
後はご想像の通り。
あー疲れた〜と扉を開けると、鬼の様な形相で腕を組む彼女がいたのだ。

「今日は早いっていったじゃない!」
「んなの断定できる訳ねーだろぉ!こんな仕事してるんだからよぉ!」
「最悪!最悪!このワキガ!」
「ワキガ関係ねーだろ!」

ふぅとため息。本当に、『Niceboat』な展開にならなくて良かった。

だいたい記念日でも何でも無い日にいきなり押しかけたのはトリッシュの方なのだ。
いや、もしかしたら自分が忘れているだけで
何か特別の日だったのかもしれない。(女は何でも記念行事にするからな)
フーゴにもらった手帳を開いてみたが、画面は真白で綺麗なまま。
得に何もなし。
つまり……彼女の十番。ただの「きまぐれ」だったのだ。

勝手に上がって、勝手に料理なんて作って、勝手に怒って……
勿論、遊びに来てくれたり、料理を作ってくれたり、
自分の帰りを待つ女がいるのはとても嬉しい事だ。
しかし、その日彼はイラついていた。
相手側のミスで取引に手間取った事。
その日に限ってボスに咎められた事。

だが……一番の原因は『アレ』だ。
ミスタは額をポリポリとかく。

トリッシュが「他の人だったらちゃんと帰ってくるわ!」と言った事だ。
この流れで、『他の人』って言われれば
ボスであるブチャラティの顔が浮かんでしまうのは仕方ない事だろう。

行動力も人望も、力や年齢でさえ自分より遥か上の彼。
何よりもトリッシュの好きな人と噂された人物だ。

思わずカッとなり、「じゃあソイツの方に行けばいいだろ!」なんて怒鳴ってしまった。
あの時の彼女のあの表情……。

「はぁ」

とため息一つ。
ふよふよ浮いていたNo5が心配そうに顔を覗きこむ。

「モウコッチカラ謝ロウヨ〜」
「なんでオレが!!」

そこで割り込むNo1

「素直ジャネェヨナ〜」
「うるせぇ!」
「セッカクノクリスマスナノニ……」

あ、とカレンダーを見る。
12月24日。そういえばクリスマスだった。
思えば、トリッシュとはどちらかが決死の覚悟で「好きです」と思いを告げた関係ではない。
お友達から友人、自然とセックスをする様になり今日にいたる、
彼と彼女はそんな奇妙な関係なのだ。
しかし、
……今頃トリッシュは他の誰かの所にいるのか?

「ちっ…」

そんな事を考えるだけで嫌な気分になるのも事実。

あんな事を言ってしまったが、心の奥底ではトリッシュが自分以外の
誰かとクリスマスを過ごすが酷く嫌なのだ。
誰かと笑う彼女。誰かに抱かれる彼女。
想像するだけで胸にドス黒い何かが満たされるのだ。

再び空を見上げるとちらちらと白い雪が降っていた。
まさにホワイト・クリスマス。

『サンタさん。オレにもプレゼントをくださいな』

と、突然、パタンと音を立てドアが開いた。

「あ」
「あ」

ああ、何と言う贈り物。
信じてもいないサンタさんが運んできたのは夢にまで見たトリッシュ。

「あ……」

お互い不意打ちを食らい、間抜けな顔で突っ立てる。
数秒の沈黙後、先制攻撃は彼女から。

「なによ」
「何でいるんだよ……」
「何で起きてるのよ?」
「……」
「……」

暫くの沈黙。

『こいつ……まだ機嫌悪いのかよ!』

非常に不貞腐れた顔を見るにつれ、ミスタは段々腹がたってきた。
ーこっちは柄にもなく嫉妬なんかしちまったってのに!!
朝一番に喧嘩を売られたのだ。黙ってはいられない。

「あー!嫌なもん見た!もう一眠りすっかなー!!ピストルズ、起こすなよ!」
「なっ……!」

売り言葉に買い言葉。心もない事を吐いてベットに潜り込む。

「な……何よその言い方……」

トリッシュの声がプルプルと怒りに震える。

「何よ!何よ……!せっかく来てやったのに!」
「だーれーがー頼んだんだよそんなの」

ミスタは掌だけ出すとシッシッと『帰れ帰れ』のポーズを取る。
これで、トリッシュは完全に切れた。

「馬鹿!やっぱりアンタなんて大嫌いよっ!」

トリッシュは怒りに任せ、落ちていたクッションやティッシュケースなど次々に投げつける。

「おい!危ねーな!何すんだよ!」

ミスタの静止も聞かず、次々と手頃な物を投げつける彼女。鬼気迫る彼女は
ほっといたらその内、テーブルまで投げてしまうんじゃないのか?
危惧してる内にその一つがシーツの中の彼に当たった。

「てめ……このヒステリー女ッ!!何すんだよ!!」

シーツから飛び起き彼女に向かって怒る。

が。その瞬間、空気が凍った。いや、彼女の時が止まった。
怒りに満ちていた彼女の顔から紅が引き……いや更に真っ赤になり……

そして時は動き出すー。

アパート全体に響く悲鳴。

「きゃああああああああああ!!!!」
「うるせぇエエエエ!!!」

あまりもの大音響に思わず耳を塞ぐが、

「きゃああああああああああああああああ!!!!」
叫んだ。彼女は更に叫んだ。まるで夜道で下半身露出した変態に襲われたかの様に!
「何だよ!トリッシュ!何が起こったんだよ!ま……まさか!?スタンド攻撃でも受けたのかよ!?」

ミスタはベットの上に立ったまま、きょろきょろと回りを見回す。
特に異常は無し。もしや、『姿が見えない』タイプのスタンドか!?

「ピストルズ!弾に戻れ!」

『習慣』のお陰で枕元にあるリボルバーを取ると、空に向かって構える。
しかし……

「ミスタァ……」

覇気の無い顔……もといオロオロと居心地の悪い顔で飛んで来る相棒達。

「何ふ抜けてんだ!スタンドだ!トリッシュがスタンド攻撃された!!
まだこの部屋にいるかも知れねぇ!」

しかし、彼らは一層困った様な声で

「ソ…ソレ…」

と一点を指差した。

「はぃ?」

ミスタは不思議そうにピストルズの意味不明の行動を追い
彼らが指した先を見た……

きっと、ジィさんになってからだったら、
自慢話か笑い話になるんだろう。たぶん。
ミスタはようやく、トリッシュが叫んだ意味を『頭』では無く『心』で理解したのだ。

シーツを跳ね除けた事で解る事実。悪夢の偶然。
裸体の彼の下半身のリボルバーは、若さゆえまだまだ元気だったのだ。

「最低!最低!本当に最低よォオオオオ!!!」

半狂乱になったトリッシュが、手短なモノを投げつける。

「まて!!!これは誤解だ!そ……そうだ!スタンド!レクイエムだ!」
「何がレクイエムよ!この変態!変態!変態!」

まるで聞く耳を持たない。当り前だろう。
喧嘩しながらおっ立ててなんて!しかもそれを惜しげもなく見せるとは!
普通の神経じゃ考え付かない。暗殺チームの某変態もビックリの隠し技だ。

(や……やべぇ……)

ミスタは今、自分の彼女に特殊な性癖の持ち主と思われている。
このままでは激昂したトリッシュがキッチンに行き、
本当に『Niceboat』な展開になってしまう!

(『ミスタ死ね』とかで画面が埋め尽くされるなんてゴメンだぞオイ!)

だが、最悪の事態は免れた。


ある意味、もっと最悪な事態によって。

トリッシュが無我夢中で投げたティッシュケースが
どういう弾道を描いたのか、彼のリボルバーを直撃したのだ。

「ぐあああああ!!!」

哀れ鶏を絞め殺した様な声をあげ、彼は撃沈した。

「え……ちょ……」

月モノの痛みを男が解らない様に、女にこの痛みが解る訳ない。
ミスタの想像を絶する絶叫にトリッシュが目をパチクリさせる。
ゆっくりと、ベットに沈む彼に急いで駆け寄るり、

「だ……大丈夫?」

トリッシュは痛みで丸まったミスタの体をユサユサと揺らす。

「あああああ動かすなぁあああああ」

喉の奥から搾りだされる咆哮に、さすがのトリッシュも事の重大さを理解した様だ。

「ご……ごめんなさい……まさかそ……そんな所に当たるなんて……」
「ごめんで済んだらギャングいらねぇえよぉおおし…死ぬぅうう」
「え!?冗談でしょ!?」

実際には狙いが多少それてた様で、致命傷にはならなかったので
先ほどから少しづつ痛みは引いている。

しかし……

チラリと横眼で彼女の顔を覗く。
オロオロ必死に心配するトリッシュ。
さっき怒ってた顔がすぐにこれ。本当に一緒にいて飽きない奴だ。
その時、彼の頭にピコンと『閃きの電球』が灯った。

「ミスタ!ミスタァア!大丈夫?大丈夫なの?」

泣きそうな声で心配する彼女に、さも死にそうな声で呻く。

「ああああああ〜〜〜ダメかもしれねぇえええ」
「いやああ!!しっかりしてよぉおおお!!」

(二週間も訳解らない事に振り回された上に、散々変態扱いされたもんなァアアアオレは……)

「ごめんなさい!本当にごめんなさい!だから死なないでぇ!」

(よ〜しよしよし、コイツにその仕返しをしてやる……!)

必死に自分を心配しているトリッシュの横、ミスタは
心の中で舌を出し、「しめしめどうしてやろうか」とほくそ笑むのだった。

「う……ウソでしょ?」
「嘘なもんか。こうすると治りが早いんだよ」

ミスタはベットに腰掛け、隣でオロオロしている彼女の手を
まるで紳士が淑女をエスコートする様に自分の股間へと導いた。

「これを……舐めろっていうの?」

困惑しながらも股間を横目でチラチラ見ている。
普段アレだけ見てる癖に、こういう時だけ恥ずかしがるのはおかしくないか?

「そうだよ。舐めんの」
「嫌よ!どうしてあたしが……!」
「うぉ!叫ばないで!痛い痛い!!」

身体を丸め大げさに痛がって見せると、彼女は身を乗り出して心配してくる。

「え!あ!だ……大丈夫!!?」

ーしめしめ。あと少し。

「な〜〜頼むよぉお、元はと言えば誰の性でこうなっちまったか〜
賢いトリッシュちゃんなら解るよなぁぁあ?」

元はと言えば全裸で躍り出たミスタも悪いのだが。
いや、こうなった原因は二週間程前の喧嘩があって、先に突っかかって来たのはコイツな訳だし……
でも結局怪我を負ったのは彼な訳であり……

いやいや、原因を擦り付け合えばキリがない。
ともかく、怪我を負ったのはミスタの方だ。
彼は「この場の主導権くらい握らせてもらってもバチは当たらない筈だ」と考える事にした。

「うう……」

言葉に息詰まったトリッシュは怒りで膨れたり、恥ずかしさのあまりソワソワしたりしていたが
……ついに観念した様だ。

精一杯の反抗なのか、フンっと鼻を鳴らしミスタを睨みつけその前に跪いた。
ふわふわの髪が腿に当たりくすぐったい。その髪を指で弄りながらニヤリと笑った。

「そうそう。モノ解り良いじゃねぇか」

余裕ぶってニヒルに笑って見せるが、心の中では狂喜乱舞、拍手喝采状態。

(やったッ! 予想通りだッ! しゃぶれッ! おれの○○○をしゃぶれッ!)

悟を決めたトリッシュは、目を瞑ると彼自身に唇をつける。
肉厚で柔らかい唇がちゅっと小さな音て、早速刺激が電気信号となり彼の脊椎を掛けた。

「うっ!」

刺激に思わず声を洩らす。

「あ!痛かった?」

どうやら、刺激は刺激でも『痛み』の刺激と取られたらしい。

「いや……大丈夫だ」

久々に感じる感触に、まるで女を知らない童貞の様な反応をしてしまった。
トリッシュはそのまま唇で何度か触れると、ゆっくりと舌を出す。
先ほどの傷痕を労るように優しくチロチロと舐め上げ
徐々に根本に向け舌を這わしていく。

「ん……」

涎液でベトベトになった陰茎から一度顔を離すと、一気にパクリと加えこんだ。

「おっ……」

温かい咥内の感触に声が漏れる。彼の反応を待たずトリッシュは
歯を立てない様に唇で扱きながら優しく舐め上げる。

「ん……ふぅ……」

彼女から時々漏れる声が振動になり、肉棒を刺激する。

「っ……すげぇイイ……たく、こんな事どこで覚えたんだァ?」
「ふ……んふぅ……」

業と意地悪く言ってやると、彼女は眉を吊り上げた。
それにしても……
普段生意気ばかり言ってる女が一生懸命自分の性器を紗ぶるその姿。官能的だ。
時々、こちらをチラリと見る仕草もたまらない。
じゅぷじゅぷと唇で強弱をつけ扱き上げる。
グロスと彼女の涎液が混ざり、柔らかそうな唇がテラテラと妖しく光っている。
一気に噴き上がる射精感に背筋がピンと伸びた。

「うおっ…!」
「きゃっ……!」

勢いよく放出された白液は彼女の顔や髪を汚し、どろりと胸元に垂れた。

「やべ…」

本来なら顔ではなく、自分の手に放出させようと思っていたが
久々の行為に酔いしれ、タイミングを間違えてしまった。

以前、嫌がる彼女に顔射をした時があった。
ー男なら精でベトベトに汚れた顔ってモンを一度は見てみたいだろうよ。
まぁ、その後の展開はまたご想像通り。
自慢の一物が『スパイス・ガール』によってしばらく射撃不能にされたもんだ。

ヤバイ!また怒られる!と身構える。
しかし、何時まで経ってもエネルギーのビジョンが出る事も、
ましてやトリッシュの怒鳴り声が響く事も無かった。
トリッシュはとろん……とした眼で跪いたまま、
頬や胸元に垂れる精液を拭う事もしない。
やがて、流れる精液をゆっくりと指でを掬うと
まるで蜜でも舐めるかの様にちゅう……と飲み込んだ。

「苦い……」

こんな事されて、我慢できるなんてのは男じゃない。

その細腕を攫むと一気にベットに押し倒した。
スプリングが大きく軋み、突然の事に我に返った彼女が小さく叫ぶ。

「ちょ……!何すんのよ!」

先手必勝。罵倒される前にスカートの中に指を突っ込む。

「あっ……きゃ!」

思った通り。パンティ越しからも解る。
彼女の蜜壷はぐちょぐちょに濡れ、溢れだした愛液の一部が太ももをゆっくり流れていた。
思わずゴクリと喉を鳴らす。

「おいおいおい〜〜〜おしゃぶりしてて濡らしちまったのかよぉオメェはよォオ」

ワザとおちょくってやると彼女の顔がさっと赤くなった。

「だっ……!誰が!!!あんな貧相なもの!」
「でも美味そうにしゃぶってたよなぁ」
「あんっ……!違うわよ!そ……それは…っ」

素早くパンティをずり下ろすと、しっとりと濡れた性器が顔を覗かせた。
ヒクつく花びらに指を這わすと彼女は慌てて抵抗してくる。

「あっ!いじるな!勝手に障らないでよ!」

声を上擦らせながらも必死に手足をジタバタさせる様子は見ていて面白い。
もっと意地悪をしてみたくなり、彼は指を侵入させてみた。
くちゅくちゅ……と湿った音がして、指二本はすんなりと彼女の中に吸いこまれる。

「あぅ!」

じゅぶじゅぶ……指を曲げながら、かき交ぜる度に彼女の喉から嬌声が漏れる。
溢れた愛液は彼の指から掌に伝わり、ポタポタとシーツに染みを作っていった。

「なんだよぉ〜随分感度いいじゃねぇか〜〜ったく、不良娘め」
「バカっ!へ……へんな事言わないでよッ!」

生意気な口を黙らす代わりに、余った指でぷっくりとした肉芽を刺激してやる。

「ひゃんっ!ちょ…………」

既に堅く、自己主張している肉芽を指で捏ね繰り回され、更に指で中まで刺激される感触。
あまりにもの快感の大きさに身悶えしながら耐えるトリッシュ。

「あぁ……そこダメぇ」
「そこってドコだァ?オレ、バカだから解らねぇなァ?」
「バカァ!!ふあああぁああ!!」

絶頂を迎えた彼女は、一際高い声を上げるとそのままベットに倒れこんだ。
ぜぇぜぇと、肩で息をしながら酸素を取り込んでいる。

「バカ……」

言葉とは裏腹に蕩ける様な瞳を向け『コレから』に期待している。
それでも、最後の意地なのか
伸ばした手を払いのけ消え入りそうな声で「ダメよ……」と呟く矛盾。

「ったく。素直じゃねえな」

勿論、そんなお飾りの言葉なんて聞いてやらない。彼女の腰を高くあげ、四つん這いにさせる。

「あ……」

柔らかい尻肉をかき分け、そそり立った淫茎をあてがうと後ろから貫いた。

「ひっ……!ひゃあああ!!」

小さな体は、弓なりにピンと張り大きく跳ねた。
何度味わっても狭い膣内は強弱をつけギリギリと彼の雄を絞めつけてくる。

「……っ……すげぇ」

こちらも負けないていられない。激しく叩きつける様に肉棒を彼女の奥へと埋めていく。

「あぅ!ダメェ……それ強い……」

どうやら、久々のセックスに酔いしれているのは自分だけじゃないようだ。
眉間に皺をよせ、激しいピストン運動に耐えるその表情。
その中には、どこか歓喜に満ちた……みだらな『女』の顔が描写されていた。

「ぁあんっ…!やぁあ……ん……」

シーツをぎゅっと握り、彼の動きに耐える。
その間にも喉からは嬌声が溢れ、パンパン……と腰を打ちつける音と重なり
朝の静かな空間を満たしていった。

「あっ…!あぁ……」

頬にキスを落とす。
彼女もそれに答える様に顔をこちらに向けてきた。
くちゅくちゅ……と重なる唇。

「んぁ……」

離れた瞬間、お互いの唇から名残惜しそうに銀糸がひいた。

「これじゃぁ顔見れないな」
「えぇ?いいわよ…恥ずか……しいわよぉ」

彼女の言葉を無視し、そのままぐるりと態勢を変える。
今度は彼が下。彼女が上。つまり、下から貫く様な感じになる。

騎乗位になる事によって、更により深く突き刺さる。
奥を擦る肉棒の強い刺激に彼女は更に嬌声をあげた。

「やぁん!!ダメよぉ!そんなに……しちゃぁ……」
「おいおい〜〜腰振りながら言う言葉じゃねぇだろぉ?」
「ばかぁ!ばかぁ!そんなんじ無いわよぉ!」

トリッシュは彼の鍛えられた胸板を力なく叩いた。勿論、ぺちぺちと音が鳴るだけでどうにもならないが。

今彼女は、彼の上で猥らに踊っている。
ーこれって夢と一緒じゃねぇか……
頭の片隅で考えている。何という正夢。ふと、口から『ある言葉』が漏れた。
彼自身、どうしてこんな事を聞いてしまったのか、解らない。
気まぐれなのか、運命って奴か……

「なぁ、お前さ、オレの事好きか?」

そう、気がついたら口にしていた。
予想外の言葉に、トリッシュは一瞬険しい顔をした。
少しの間。
彼女は小さく答えた。

「……嫌いよ」
「お調子モノで、意地悪で、人の事散々振り回して……本当に大っキライよ」
「合うじゃねぇか。オレもお前の事嫌いだ」

我儘で気まぐれでヒステリーで……

全く、本当にイイ女だ。

吸いよされる様に唇を求めあう。
ん……とくぐもった声を洩らし、お互い見つめあう。

「素直じゃねぇ女」
「素直じゃない男」

くすくすと笑いあい、もう一度唇をかさめる、お互いが求めあい舌を啜る。
しなやかな細指が彼の掌を叩く、指を絡ませ合う。

ーきっと、心が通じるってこんな感じなんだろうなぁ

さっきまで散々ムカついていたのが、意地悪してやろうと思ってた心が
そんな事どうでも良くなっていた。

どんなにムカついても、我儘な言われても、気まぐれに振り回されても
結局最後には戻ってきてしまう。

結局は惚れたモン負けなのだ。

呼吸が重なる。絶頂に向け、お互いの動きが早くなっていく。

「っつ……トリッシュ……」
「んっ……!ミスタァ!す……好きっ大好き!あぅ!もっと……」
「ふあああああああ!!」

彼女が大きく痙攣すると胎内がきゅうぅと伸縮する。
淫茎を素早く抜くと彼女の白い肌にたっぷりと射精した。

「んぁ……ミスタァ……」
「ん……」

ぜぇぜぇと息をしながら、また口づけ。
ーまだ足りない。もっと繋がりたい。

「……ねぇ……」

ちゅ……と、甘えるような口づけ。
どうやらその思いは彼女も一緒だった様だ。

その後、2週間の空白を埋める様に何度も求め絡み結びあった。

気がつくと太陽はすでに昇り切って
昼を過ぎ、今度はゆっくりとカーブを描いて沈みにかかっていた。

久々の行為に燃えた性か、もう何もする気になれない。
シャワーを浴びるのすら気だるくて、簡単に後処理を済ませるとベットの上でぽけーっとしていた。

「なぁ」
「なぁに?」

天井をぼーっと眺めながら聞いてみる。彼女がこちらに顔を向けた。

「あの日さ」
「ええ」

あの日、と言われただけでトリッシュはピンと来た様だ。

「おまえ、何であんなに怒ったんだよ」
「え……」
「言いたくねぇなら別にいいけどさ」
「別に言いたくないって訳じゃなけど……
でも、アンタも何で怒鳴ったかくらいは聞かせなさいよ」

聞かれたく無い所を突かれ、うっ……と、ため息が出た。が一度吐いた言葉を取り消しできる訳がない。
今はさて、彼女からどんな回答が返ってくるのか。
それに集中する事にした。
トリッシュは少し間を置くと爽やかに言った。

「誕生日よ」
「は?」

目をぱちくりさせる。誕生日……やはりコイツの誕生日だったか……
悪い事しちまった。と、ノド元まで出かかった瞬間

「アンタのよ」

彼女が出したのは、意外や意外。

「え?オレ?」
「だから、アンタの誕生日。ってまさか覚えていないの!?自分の誕生日なのに!?」

うっそー!と言った感じに手をバタつかせる。

まさか当の本人すら覚えていなかった誕生日を覚えているとは……
思わずニヤけてしまう。

「可愛い所あるじゃねぇか」
「なっ!!馬鹿!調子に乗らないでよね!」

突然そんな事言われて真っ赤になったトリッシュは毛布をひっぺはがし隠れる様に包った。

「あ!さ…さみぃじゃねぇか!返せよ!」

慌てて、飛び起きるとそのままの勢いでぎゅーっと抱きしめる。

「きゃああ!ワキガが移っちゃうわ!」

彼女も楽しんでいる様だ。そのまま二人で笑いあう。

「ねぇ。後でお昼にしましょう。どうせアンタの事だから何も用意してなかったでしょ?
美味しいパスタ買ってきたから」
「用意いいな〜」
「アンタが悪いのよ」

つんと胸板を指でつつかれ、またまたくすぐったい気分になった。

で、油断してた所で彼女のターン。

「で、アンタは何で急に怒ったのよ。アタシそんな酷い事言った?」

何とか話題をそらし、誤魔化そうと思ったが逃げ場なし、やはり聞かれた。

「あ……ああ……」

しかし……さすがに恥ずかしい。ミスタにだってプライドがある。
まさか、『嫉妬したんです』なんて言える筈もない。
適当にウソでもつくかとトリッシュを横眼で見るが、

「ちゃんと話しなさいよ」

と牽制。やはり逃げ場は無いらしい。

「あ〜〜ったく」

コホンと咳を一つ。
もうこうなったら、覚悟を決めるしかない。

「あのな……笑うなよ……」






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