ご褒美があるから(ブローノ・ブチャラティ×トリッシュ・ウナ)
第五部 黄金の風


部屋の戸を「コツ…コツ…」と遠慮がちなペースで叩く音がする。
……自分の部下たちならだれもがもっとドンドン、と遠慮なく叩くし、返事をする前から「入るよブチャラティーッ?」とか「失礼します」とか言ってずかずか入ってくる。
若いからかせっかちな奴らが多いのだ。

そのまま返事せずに放っているとカチャ…とゆっくりノブが回される音がして。
グリーンアイがこっちを伺っているのを感じる。

「…入っていい?」
「宿題は全部終わったのか?」
「もうぜーんぶ片付けましたッ」

パソコンの画面から目を離さず答えるとムカついた口調の返事が帰ってきて、子供っぽい言い方に吹き出してしまった。

「そうか。それは何よりだ」

「…忙しいの?今来ない方がよかった?」

ブチャラティはウィンドウズの電源を落とし、キーボードをディスプレイに立てかける。

突き放したような言い方にもひるむまいと、少女が一歩も動かず所在なげにつったっている。
これ以上意地悪な言い方をすると間違いなくなんなのよその言い方ー、だのあなたは冷たすぎるのよー、だの、騒ぎ始めるだろう。

週末で少し疲れていて。それも面倒なので………

「いや、今日は終わりだ。」

グリーンアイの持ち主がはっと顔を上げる。いつもの通りの分かりやすい反応。もう陽が沈みそうだ。

「おいで、トリッシュ」

この見た目だけは大人っぽい少女の、ご機嫌の取り方は結構心得てるつもりだった。

なんだもっと近くに来てもいいんだが、と言ってもムスッとしてもじもじしているトリッシュの手を引いてやる。
が、そのまま抱きしめたりはしない。
握った手をぶらぶら左右にゆすってやるだけだ。子供をあやすみたいに。

「どうした?」

トリッシュの羽織ったグレーのパーカはぶかぶかで、袖口の長さが余って手が指先しか出ていない。それがあんまり可愛くて、しばらく眺めていたかった。

「あなたは私に厳しすぎるのよッ」
「そうか?こんなものだろう」

普通の親というのは……という言葉は、彼女にはかけてやれないのだ。
そんななんでもない言葉が、彼女には重すぎて。

「私のママは勉強しなさいーとか、うるさく言う人じゃなかったわ!」
「俺が言わなきゃ、お前はサボッて、」

ぎゅ、と細い指先をつかむ手に力を入れ、ブチャラティはトリッシュを上目遣いに見上げた。

「学校行かないで、俺の所に入り浸ってしまうだろう」
「そんなことないわ!私、頑張ってるもの!」
「ああ…そうだな、知ってる」

優しく引っぱり、抱きしめてやる。


今………トリッシュはネアポリスの郊外の自分の持っている小さな家に住まわせ、近くの学校に通わせている。

学校に遅刻しないこと。サボらないこと。休まないこと。宿題はまじめにやること。クラスで最低半分より上の成績はキープすること。

自分に会いにくるのに、彼女には厳しい条件をつけていた。
まだ15歳のトリッシュのためだった。

…いくら父親がろくでなしの人でなしでも、彼女自身はついこないだまで母親と慎ましく暮らしていた一般人。
もうこれ以上、危険な事に関わらせたくなく普通の学生に戻ってほしかった。

「ご褒美があるから、頑張れるの…」
「それは……よかった」


ー毎日いっしょにいたのよ、朝も昼も夜も、忘れられないわ。これからも毎日…あなたに会いたいの


茶化したようでもなく高飛車な言い方でもなくただ……熱っぽくそう言われて。
彼女が泣きそうに見えたのは、自分がここまで想われている事実にたまらない気持ちになったからか。
だからこそ、自分が流されないで厳しくしないと、彼女は普通の生活に戻るきっかけを失ってしまっただろう。
より身体をくっつけてきたトリッシュの腰のあたりを両腕を回してぎゅっと抱きしめる。

「え、…」

ちょっと驚かれたのは、この部屋でこんな事をし始めたのが初めてだからなのか。

可愛く甘えられてどうも、我慢できそうになくて。
こういう固い生地のは、脱がしづらいんだよな…と思いつつ、ボタンを外しファスナー下ろしてデニムのミニスカートを脱がしにかかる。腰骨にちょっとひっかかったけど、トリッシュが下から引っ張った。




膝の上に乗っかられ、首に腕を回される。少しだけ目を合わせ、どちらからともなく唇を合わせた。

始めは浅く、でもすぐに深く噛み付きそうなくらいに唇を吸ってやる。
足にかかるトリッシュの体重が、肌の柔らかさが心地いい。
下着はつけたままでも白い太腿はさらけ出させて、なんともいい眺めだ。

「あ…んん…」

すべすべした太腿を撫で上げながら口内に舌を入れてやる。軽く先端で舌先を舐めてやると、もの足りないのかトリッシュの方から濡れた舌を押しつけられる。
キスの合間に漏れる熱い息の音と、唾液や舌が絡み合う生々しい音が耳に響く。
下着の隙間から手を入れて、腰骨のあたりからくびれをなぞり、背中まで手を這わされると、くすぐったさと快感でぞくぞくしてきて、トリッシュは白い顎をのけぞらせた。

「や……は…」

露になった首筋に舌を押しつけべろりと舐めあげる。

「っく…ぅ…!ん…」

トリッシュが震え、膝の上からするり、と降りてしまう。
紅潮した頬で俯いたまま…自ら下着をゆっくり降ろし、これでいい?とでも言いたげにちらりと上目遣いで訴えてくる。
この子はそんな積極的な所がまた、嬉しいし可愛らしい。

「……ここに、跨がって…脚を開いて」

声が掠れていた。
……ご機嫌取りは慣れているのに、自分のほうが五つも年上なのに、抱く時にまだまだ余裕綽々になれない。
明らかに、鼓動が早い。

ブチャラティの膝に跨がり手をついて、トリッシュは彼がベルトを緩め、ペニスを取り出すのを見つめていた。
視線に気づき、少女の伏せた瞼の睫毛の長さ濃さに口には出さずに感嘆してしまう。

「………何見てんだい?そんなにじろじろ」
「えっ……」

親指で嗜めるように唇をぷにっと押してやると、我に返ったトリッシュは恥ずかしくて目を反らし、ブチャラティの首にしがみついた。
瑞々しい唇。
彼女の気持ちにつけこんで強いるような行為なんてするつもりもないのに、ここで自分を悦ばせる事を、早く教えてしまいたくなった。

「きゃっ」

細い腰を大きな掌で掴まれ、身体ごと引き寄せられ、より密着させられる。

「あ……」

お腹のところ…おっきいわ……
ゴム越しでも勃起したものの熱がはっきりと伝わって来て、顔が熱くなってきた。
もっと感じたくて、自ら下腹をそのあたりに押し付けると、顎を掴まれ唇が塞がれた。

「っふ、んんっ」

左右に割り開かれた柔らかな尻肉に、骨ばった指が沈む。

後ろに回された手がつっと撫でてきて、蕩けて愛液を溢れさせる所にその指がゆっくり埋めこまれていく。

「ん…!…ぁ……」

その感覚にきゅっと目を閉じ、ゆるく触れ合わせていた舌から顔を離すと、後頭部を抑えられてそれ以上逃れられず、ブチャラティの舌がまた入り込んでくる。

「っんんっ!ふ、ぁっ…!…」

膣に出し入れされる指が内部の愛液をさらにかき出すぬちゅ、くちゅ、という音と互いに舐め合う舌の濡れた音がとても淫らで。
身体を揺らす度割れ目に押し付けたペニスが感じる所を擦っていく。

もう…へんになっちゃう……

気持ち良くて、でもまだ足りなくて切なくて、トリッシュの瞳の端に涙が滲んだ。
ぬる、と舌が唇を一度なぞって離れて行き、長い指も引き抜かれる。

「ん…」

息を吐いてその小さな衝撃に耐える少女の、目を潤ませた蕩けた表情。上がった息に桃色の頬。
もう……絶対に一生手放せない。
脚に手をつかせて、トリッシュの身体を少し上げさせる。

「ぁ…む、むずかしいわ……」

恥ずかしそうに訴えながらも、支えてやるとゆっくりと腰を沈めて熱いものを飲み込んで行く。

「ぁあっ…」

挿入されて貫かれていく感覚に小さく悲鳴を上げた。結合部から愛液が溢れて、膣内が脈うつ太いもので満たされる。

「…気持ちいい、の……」

トリッシュは陶然と囁き、ブチャラティの肩を掴んだ。彼の方を見ると、親指で頬を撫でられる。

「っぁ!ぁん!」

全身が下から突き上げられる。内奥まで深くえぐられてトリッシュは目を伏せ揺さぶられるままに身体をしならせた。
着ていたTシャツがめくりあげられ、下着も上にぐっとずらされると、ふるんとハリのある乳房が零れる。
身体と一緒に乳房も上下に揺れ、いきなり大きな掌に包まれ揉みしだかれる。

「はぁっ!ぁあんっ」

膣内を犯すものの動きに少し慣れてきて、トリッシュは合わせて腰を振り始めた。

「っぁん…は…!……気持ち……ぃ……?」

可愛いらしい喘ぎ声の合間に、鼻にかかった声で小首を傾げて問われる。

「……ああ……」

トリッシュは谷間に埋まるブチャラティの頭をぎゅうっと抱きしめた。
膝の上でトリッシュの身体が跳ねる。動きを激しくすると膣肉がまたきゅっと絡み付いてくる。

「ぁあん!いいのぉ!っは、ぁんっ!………」

トリッシュが腰に脚を絡ませてしがみついてきて、締まりがよりきつくなる。

「……トリッシュ……く、っ………」

何度も突き上げ、柔らかな腰が逃げないよう腕を回し抱きしめる。

「は……ぁ…ぁあっ………」

一番深い所で、ドクン、ドクンと熱いものが弾けているのをトリッシュは感じた。

椅子に腰掛けたブチャラティの大腿に乗る形で、トリッシュは背を彼の胸に預けている。
上半身を少しよじらせて頬を彼の開いた胸元にくっつける。
もういい加減寒くなってきたので、スーツの中はメッシュのインナーではなく、普通に襟のついたシャツを着ていた。
初めはあの服装に驚いたものだけれど。慣れるとすぐにメッシュ越しに彼の体温を感じられるから結構好きだった。
ーまあいいわ。今の服でも……
どっちでもかっこいいから…と考えてトリッシュが一人でにやにやする。

「……なあトリッシュ…ナランチャの様子はどうなんだ?学校では…」

ブチャラティはナランチャが学校に行くのもいいかもな、と口走っていたのを見逃さず、もともと子供のころにそうしてほしかったのもあって、とりあえずトリッシュと同じ所へ通わせていた。

行く直前になってから「やっぱめんどくせえ!止める!イヤだ!」と騒いでいたのは無視して。

問いかけられてトリッシュがもぞもぞとブチャラティの方を向き、彼を見上げる。

「ああ…、ナランチャは授業中は寝てるか落書きしてるか、窓の外の空を見てるか、だけど……」
「全く、あいつは……」

ブチャラティが楽しそうに笑うのに、トリッシュはなんとなく気に障って「ド低能は簡単には治らないのよ……」と小さく毒づいた。

「トリッシュ、まだ先の話だが、お前の冬休みに旅行に連れてってやろう。外国でもいいからどこがいいか考……」
「きゃーッ!ほんとにッ!」

一瞬不機嫌になったのも忘れて、トリッシュは飛び上がった。

前みたいに大人数で大変な旅じゃあなくて二人でッ…!
なんてロマンチックなの……!
どこがいいかしら?やっぱりフランス?パリ?イギリスは…そんなにロマンチックなイメージはないわね。
日本も素敵ね、おしゃれなお店がいっぱいあるっていうし、とにかく面白いっていうわ…
ドイツもお城があるし、なかなかいいわね!
それともアメリカ?西海岸?ロサンゼルスにハリウッド?
ぁあッ…楽しみすぎるわ……!!ブチャラティと二人っきりなんて…!



「他のやつらにもアンケートとらなきゃな……あいつらの事だから意見がてんでバラッバラにバラけそうだが……」

それを聞いてトリッシュがガクーッとうなだれた。

……結局そういうことになるのね………

「……ねえ、ブチャラティ、飛行機では私を隣の席にしてね?」
「ああ、分かった」
「飛行機だけじゃあなく、ユーロスターでも船でも!いつでもよ?」
「勿論、だ」

トリッシュの様子にブチャラティが微笑んだ。

「それから…ホテルでは同じ部屋ね?」
「それは…どうしようかな?」
「もぉーッ!」
「はは……そろそろ帰ろうか?」

ブチャラティはしがみついていたトリッシュを抱きかかえて立ちあがった。
ええ、と腕の中、トリッシュは返事をする。
今日は週末で……自分の家、つまりトリッシュを住まわせている所に行く日だった。

「と、トリッシュってやっぱすげーイイ身体してるよなッ…」
「タマンネェェー!!!」「モットヤレー!!」
「俺の下のスタンドがあああーッ」
「ちょ、見えないって言ってるだろこのド低能がアアア!!!」
「………(こいつら後で再生再生うっさそーだ…)」
「これじゃ護衛チームじゃなくて覗き見チームじゃないですか…やれやれ(はあはあ)」
「ディモールトベネッッッッッッッッッ!!!!」

一人違うチームの人がまじってました。






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