鏡の世界(イルーゾォ×トリッシュ・ウナ)
第五部 黄金の風


ホルマジオが死んだ。
ホルマジオは、ポルポの葬式に来ていなかったブチャラティチームを怪しんで、一度探りを入れてくると連絡してきた。そして、死んだのだ。
ボスの娘を護っているのがブチャラティチームだということが、『予測』から『確信』に変わった…ッ!
リーダーは、すぐにブチャラティチームの動向を気にし始めた。奴らを見つけたらすぐに追跡しろ、とオレに命令した。しかし、奴らの居場所をオレは知っていた。

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ホルマジオの死体を1番最初に見つけたのはオレだった。
『鏡の世界』を歩いていたオレは、ホルマジオが、少しずつこの世界に入ってきているのを見た。オレが引きずり込んだわけでもないのに…?

「ホルマジオ!?」

周りに停車してある車がどんどん崩れていく。どうやら火事がおきているらしい。

「おい!ホルマジオ!!どうしたってんだァーーーーーーッ!?」

ホルマジオの身体には無数の弾の痕。オレは胸のポケットから手鏡を取り出し、覗き込む。ブチャラティチームの一人…えーとナランチャ・ギルガだったか…そいつの姿が見えた。

「てめェーーーッよくもホルマジオをーーーーッッ!!」

奴をひきずりこんでやろうと思ったが、ホルマジオが最後の力を振り絞り、何かを指さしているのがみえた。ホルマジオは半分この世界に来ているので、オレの存在に気がついたらしい。
その指の先には、何か紙切れのようなものがあった。『外の世界』で燃えているのか、だんだんと小さくなっていく。急いで拾ってみると、ドライビングマップだった。ドライビングマップには印がつけてあり…

「西南…いや東南へ40kmほどの…ブドウ畑…ッ!!!」

そしてホルマジオは鏡の世界に完全に入り込んできた――死体となって。ナラン
チャのヤローはいつの間にかいなくなっていたが、これでヤツらの居場所はわか
った。ボスの娘はそこにいるッ!!
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オレはブドウ畑へ向かう。ホルマジオの最期を無駄にはできない。ヤツらは警戒して移動するだろう。だからその前にッ!行かなくてはならないッ!
ブドウ畑には農家の家がいくつかあったが、不自然にも、車が2台とまっている家を見つけた。ひと気のない妙にさびれた雰囲気は、どこかにおう。
鏡の世界側からその家に近づき、手鏡を覗くと、まさにブチャラティチームが仮眠をとっているのが窓から見えた。

「見つけたぞ…ッ!」

ホルマジオの敵だ、今ここで全員殺っちまおーかとも思ったが、今はボスの娘を見つけることが最も重要だ。
オレは家に入り、階段をあがる。チームの奴らはブチャラティを残して全員寝ている。おれは、やつらの首をかっ切ってしまいたい衝動を押さえ、悠然とブチャラティの目の前を通り過ぎ、その奥にある部屋へ入った。

「…ベネ!」

まさに、部屋のベッドに娘が一人眠っている。写真で見た、あの娘だ。とうとう見つけたッ!ボスの娘ッ!

「…ん…?」

何か違和感を感じたのか、娘が目を覚ます。

「…誰か…いるの…?」

身体を起こし、布団を引き寄せている。当然、おれは鏡の中なので娘には見えていない。

「…ブ…ブチャラティ…さん…?」

オレは、きょろきょろと辺りを見回す娘を『許可』した。オレと娘は鏡ごしに目があう。

「…!!!!?」

娘は後ろを振り返るが、誰もいないはずだ。

「だッ…だれ…ッ?」
「おれの姿が見えるか…?んん…?見えるよなぁ〜〜〜〜〜?」
「…ッ!!ブチャラ…ッ」
「遅い!!」

オレのスタンド、『マン・イン・ザ・ミラー』が娘の腕をつかみ、鏡の世界へひきずりこんだッ!!
やったーーーーーーッ!おれたちが勝ったッ!!!第5部完ッ!!

オレは腕をひき、ドサッと胸にとび込んで来た娘を見下ろした。娘の髪の毛がオレの肌に触れ、一瞬ゾクッとしてしまう。

「いたた…    …!!」

目の前にいるオレに驚き、娘は後ずさりしようとする。しかしオレが腕を掴んだままだったので、距離をとることができない。

「あ、あ、あんた誰よぉーーーッ!?」

ボスの娘はオレに指をさして叫んだ。

「オレの名前なんてどーでもいーだろうが…お前がボスの娘…トリッシュだな…?」
「ッ!!!!ブ…ブ…ブチャラティさんッ!!!ブチャラティさぁぁーーーーーーんッッ!!!」

トリッシュはオレの腕を振り払い、ドアへ直行する。しかし、2歳の子供すらできる『ドアノブをひねる』という行為も、鏡の世界ではこのオレにしかできない。

「ブチャラティさんッ助けてッ!!ドアを開けてッ!!開けてぇーーーッ!!!」

ドアをひたすら叩くが、効果はない。ドアの先にいると信じている人物も、この世界にはいない。ボスの娘が絶望するのも時間の問題だ。
叫びながらドアを叩き続けるその後ろ姿を、改めてよーく見てみる。
かなりブっとんだ髪型をしているが、おれは別にきらいではない。まぶしいくらいのピンク色の髪は、白い肌と共に光っている。
曲線の美しい身体をもち、とても15歳には見えなギャンギャンギャンギャンギャンギャンギャンギャンギャンギャンサイキンの『オンナのコ』っつーやつはハツイクがいいものなのだな、とカンシンさせられた。
オレは娘にゆっくりと近づいた。

「そんなに焦って逃げるこたあない…」
「ッ!!!!近寄るんじゃあねーわよッ!!」

近づくオレを、娘は鋭く睨みつける。ボスの娘だけあってなかなか威圧感があるが、あの冷酷非情なボスに比べればかわいいもんだ。足も震えている。威嚇しているだけだ。かまわずオレは歩み寄る。

「うぅっ…  こ…殺すなら殺しなさいよッ!!」

ほうら、何もしてこない。オレは娘に詰め寄り、娘の背後の壁に手をあて、逃げ出さないように覆う。

「別に、オレたちのリーダーはお前を殺す計画なんかたてちゃあいない。ボスの情報を聞きだしたいだけなんだぜ…」

オレはそのまま続ける。

「お前はボスの正体へ辿りつく唯一の手がかり…オレたちにはお前が必要なんだ…お前はオレたちの希望なんだよトリッシュ!」
「!」

娘は驚いたような表情を見せた。

…いつだったかメローネが、女っつーのは『きぼー』だとか『うんめー』だとかの言葉に弱い、と言ってたから使ってみたが、確かに少し緊張がほぐれたようだ。

「で…でも私…父親に…あんたたちのボスなんかに会ったことないわ…顔写真すら見た事ないのよ?私からは何も聞き出せないわ…」
「そんなことはこっちが決めることだな」
「本当に何にも知らないのよッ!?」
「スタンドだ」
「えっ?」
「スタンドを見せろ」

娘のスタンド能力からボスの正体がわかるはずだ、リーダーはそういう計画をたてたのだ。
だが、当の娘はきょとんとしている。何を言っているのこの人、という目でオレを見ている。

まさか…?

オレは試しに『マン・イン・ザ・ミラー』を呼び出し、出現させるが、娘は見向きもしない。

…まさか…スタンド使いじゃあないのか…?いや、まだ目覚めていないだけだ…この娘はまだ自分の力に気づいていない…。すると…オレがしなけりゃならねーことは……

「……よく聞けトリッシュ……スタンドは…『目の前のやつをぶっとばしてやろうと思った時』と『自分の身を守ろうと思った時』発動するッ!!」
「ッ!?」

オレは娘の唇を強引に奪う。

「んっ…んううっ…ッ!」
「発動しないと意味がねーんだ…絶対に見せてもらうぜ、お前のスタンドをッ!!それがボスへの手がかりになるッ!!」

オレは娘の頭と顎を掴み、固定させ、もう一度キスをした。

「やっ…なっ……ん!」

キスをしながら、娘の股の間に膝を滑らせ、逃げられないようにする。

「んぅ……ふっ…!」

角度を変える度、娘の息が少しずつ漏れていった。
オレはちらと娘の様子をうかがい、娘の息が限界になったところを見計らって、唇を離す。

「はぁっ…!はぁっ…!」

娘は急いで酸素を補給するが、十分に息が整わないうちにオレがまた口づける。そしてそのまま自らの舌を侵入させた。

「…!〜〜〜〜ッ!」

逃げる娘の舌を捕らえ、絡ませる。お互いの舌にまとわりついていた睡液が、更に絡まり、一つになる。

「…ッ…いやあぁ!」

娘はオレの胸に両手を当て、力強くぐいッと押した。

「ん…ッ?」

油断していたオレは、女の力ごときで、上半身を後方に押しやられてしまった。急に離された唇からは、乱暴に糸が散る。
唯一繋がれた一本を、オレはちょい、と指で断ち切り、娘を見た。
片手を口に、片手を胸に当て、息を荒げ立ち尽くしている。その目には涙をにじませていた。

「…もしかしてお前…初めてだったのか?キスが?」

オレは自分の唇を撫ぜながら娘に聞いた。

「……ッは、は、は、初めてのわけッ…ないじゃないッ…あ、あ、あんたみたいなのがッ…初めっ…てなわけッ……な…ッな…ッ」

小さくしゃくりあげながら言うその言葉は、どうも、自分に言い聞かせているように聞こえる。
マジで初めてだったのか。だとしたらデリケートな年頃の女には、ショックな行為だったかもしれない。だが、オレ達には時間がねーんだ…

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「……万が一、万が一ボスの娘がスタンド能力にまだ目覚めていなかったら…。娘を襲え」

リーダーは静かにそう言った。

「…あー、リーダー?それって…ククッ…どっちの意味だ?」

メローネがそう言う。皆がその思考回路に呆れかえった。

「メローネ、メローネよぉ〜〜〜お前はそーいう考え方しかできねぇのかぁ〜〜?」

プロシュートがため息ながらにつぶやく。隣でペッシが恥ずかしそうに頷いている。

「いや…プロシュート…オレはメローネ好みの意味で言っている…」

空気が固まった。

「なな、何言ってんだよリーダァ〜〜〜〜ッ!?あんた正気か!?」

ギアッチョが大声で叫ぶ。正直、全員の代弁者だった。

「スタンドが覚醒しているならもちろんその必要はねぇ…。万が一覚醒していなかったら、だ。スタンドは『ぶちのめそうと思った時』、『守ろうと思った時』に発動するもんだ。
娘を襲えば、そのどちらかで覚醒する可能性が高い。いつ覚醒するかわからねーのを待ってる程、オレ達には時間がねぇ…。そういうことだ」

リーダーが言うのだから、マジなのだろう…。オレ達は覚悟を決めた。
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「あんたには悪いが…オレ達には時間がねぇんだ」
「あっ!」

オレは娘の腕をとり向きを変え、後方から娘を抱く体制をとる。

「お前が覚醒すりゃ終わるんだ。そこのところよく集中してくれよ…?」

「ちょ…なんッ……あぁうッ!」

オレは娘の耳をゆっくり咬む。そのまま息を吹き込みながら口に含み、静かに吸う。

「ふぁッあっ……んぅん…!」

耳が相当弱いのか、娘は一気に腰が砕けてしまう。
オレは崩れ落ちる娘を膝で支え、そのままゆっくり座り込む。オレは壁にもたれかかり、娘はオレにもたれかかる。
オレはまた耳を吸い、垂れた自分の睡液を舐めとった。

「ん…ッあひ…ッ」
「…いくらなんでも耳なんてのは自分じゃあ舐められないからな…誰かが舐めてみるまでわからねえよなぁ〜?いい気分だろ?ええオイ」
「うぅ…ッやぁ…あ」

耳を攻めながら、オレは娘の細い両腕を片手で握り、もう片方の手で自分の髪を結っていた紐を一本解いて、娘の手首に巻きつけた。

「やっやだ…ぁ…ッほ、ほどいてぇ…」
「いい子にしてりゃあほどいてやるよ」

これで下手に殴ってきたりはできないだろう。逆に、悔しさからスタンドを発動する可能性も上がるかもしれない。
それから、オレは娘の身体に触れるか触れないかの位置で指を這わせ、首、肩、腕、腰のラインをゆっくりなぞっていく。ところどころで娘はぴくんと体を振るわせ息を吐き、徐々に頬を染めていく。

「あぁっやだっ…!」

か細い声でそう鳴いたのは、オレの指が娘の胸に触れたからだ。

「おいおい触っただけだろーが…そんなんで大丈夫かぁ?敏感なことだな」
「い、いやっやめ…っはぁあっ…!」

服の上から、小振りだが柔らかで、程よい弾力のある乳房を弄る。掴むように、撫でるように、押しつぶすように、下から上へ。
娘はその度いちいち声をあげ、反応してくれる。

「やああん…っ」
「いい声だトリッシュ…」

服の間に指を滑らせ、娘の小粒な乳首をはじく。

「はあんっ…!」

声が段々と色気を帯びていく。初々しさのある嬌声は、オレの脳を刺激していった。
オレは娘の首や肩にキスを落とし、痕をのこす。左手は柔らかい乳房をなぶり、右手は娘の腹を優しく撫でる。

「んぅう…」

肩で息をする娘は、オレの指の動きにあわせて身体をくねらす。
その嬌姿はとても15歳のものとは思えなギャンギャンギャンギャンギャンギャンギャンギャンギャンむすめは15さいではなかったきがします。18はいってるんじゃあなかったでしょうか。

オレは腹を撫でていた指の位置を少しずつおろしていく。
オレが何をしようとしているかにいち早く気がついた娘は、結ばれた両手を伸ばしてオレの指を止めた。

「だっ…だめぇ…そこは…」

娘は、すっかりとろとろになった声で、力なく呟いた。

「だめなのか?」

オレはまた耳を攻め、低音で囁く。

「はぁ…ッだ、だめなのぉ…ッ!アァうっ」
「じゃあ自分で触りな」

オレは娘が重ねてきた手を逆に掴み、誘導する。娘の人差し指を伸ばし、オレの指をパソコンのマウスをクリックするような形でその上に重ね、下の蕾に触れてやる。

「あぁッ!やらぁぁッ」
「自分で触ったことないのか?一度も?」
「ひゃんッそ、そんッなぁんッな…の…ぁうぅッ!」

娘の指(もといオレの指)を、初めはゆっくりと、それから段々速く、下着の上からその形をなぞった。ビクッとはねる身体を、オレはしっかり抱きかかえてやる。

「あッぅッ…やめ…きゃあぁっ!」
「もう少し入れてみな…」
「んあぁッ!つああッ…はああッ!」

下着をずらし、娘の指を割れ目の奥に突っ込んでやる。じゅぶり、とたっぷりの愛液の中に沈んだ音がした。

「んんん…濡れてるな…思ったよりずっと…。なぁおい?わかるだろ?」
「ひんッい、いわ、ないれェッ…!きゃああんっ」

指を内壁に当たるよう曲げてやると、それに合わせて身体が浮く。
指が動く度、水は増え、音は大きくなり、益々娘は魚のようにはねる。
オレはもう一本自分の指を侵入させる。

「い、いやぁっそんなっッは、はいんないッィわよォォッ」

実質三本目だ。さすがにきついかとも思ったが、娘の言葉とは裏腹に、オレの指は奥へと滑り込む。
内側を広げるように奥から手前へ。ぐじゅぐじゅと音をたてる娘の蜜は、オレの指を伝っていく。
オレと娘の指、そして娘自身の身体の動きが大きくなる。

「はぁッあッ…やっアぁぁッいやああッ!!」
「ッッッ!!」

指だけでそうなるとは思わなかったが、娘は大きくはね、絶頂に達した。

余韻に浸る娘から指を抜いてやり、液にまみれたそれを、娘の口元へ持っていく。

「おい…この段階まできちまったぞ…」

無言で息をする娘の唇に、その蜜をゆっくりと塗りたくる。

「怒らねーのか?」
「…」
「…!」

ドアの外から微かに音が聞こえる。『外の世界』の足音だ。
オレは娘を抱えてベッドに座らせ、部屋の窓を開けた。それと同時に、小さくノックされたドアが開く。

「……トリッシュ…」

ドアを開いたのはブチャラティだ。多分定期的に様子を見ているのだろう。本人は部屋に入るわけではなく、開いたドアの隙間から、トリッシュが部屋にいるかどうかの確認をしている。
だが、残念ながら『外の世界』にトリッシュはいない。

「…っトリッシュ!?」

ブチャラティは護るべき人間が中にいないことに気づき、勢いよく部屋に入る。

「トイレだったら部屋を出て、オレの前を通るはずだが…ッ」

部屋を見回すブチャラティは、窓が開いていることに気がついた。入り込む風で、カーテンとヤツの髪が静かになびく。

「まさか…ッそんな…ッ!!さらわれたっていうのかぁーーーーーーーッ!?」

ブチャラティの声に他のメンバーもどやどやと部屋に入ってきた。先に入ってきたのは…えーとあれはフーゴにアバッキオ…それに、なんつったか…新入りとかいう奴だ。

「どうしたんですブチャラ……  !!!!」
「おいッ!ボスの娘がいねえじゃあねーかッ!」
「まさか…敵にさらわれた…ッ!?」
「わからない…だが、その可能性は高い…ッ」

ブチャラティは唇を咬みながら答えた。

「外はオレのエアロスミスのレーダーが見張ってたハズだぜぇーッ!?この家のまわりに別の誰かが近づいてたら、仮眠をとっていたとしてもッ!オレが気づいてるッ!」

そう言ったのは、ナランチャだ。ホルマジオを殺した張本人…。
またもやひきずりこんで殺してやりたい衝動にかられるが、今やるのはまずい。こっちの世界にはトリッシュがいる。
オレは静かに奴らの様子を見張る。

「ブチャラティ、ナランチャは今日の戦いで負傷しているし、言わずもがなド低脳…もしかしたらこいつ、本当に見落としたのかもしれないぞッ!」
「ンだとコラァーーッ!」
「やめろてめーらッ!」

勃発しそうだったフーゴとナランチャの喧嘩をブチャラティが制する。

「…オレの責任だ…全て……一番近くにいたのに、気がつかなかった…」
「今からでも間に合います、ブチャラティ。急いで捜しましょう。」

新入りの言葉に頷いた全員は、下の階へ降りていった。

「…フフフ…まぁ気づくわけねぇな…。」

手鏡をしまい、トリッシュに振り返る。

…そういえば……今のトリッシュの位置だったら、部屋の鏡から奴らの姿が見えたハズだ…なのにコイツ…助けを呼びもしなけりゃあ開いたドアから逃げもしねー……
トリッシュを見下ろすオレの目を、本人はじっと見つめ返している。とろんとした、甘い表情。その中に、どこか期待の色がうかがえる。

「まさか…お前…」

トリッシュは結ばれた両手を伸ばし、オレの手をとった。トリッシュは、なおもオレを見つめてくる。求めるような…そういう目で…
こいつは…まさかこいつはッ!!オレから身を守ろーとも、怒りと屈辱感でオレをぶっとばそーともしていねぇッ!むしろ…むしろ…ッ!

リーダー…今まで一度もなかったが…あんたの読みが外れちまった。
だが誰が想像した?こんな展開を?あのメローネすら……無理矢理ならともかくとして、こういう流れは考えちゃあいなかっただろう。

向こうから求めてくるっつー展開を?

「……オレ達の目的は…ボスの正体を掴むことだ…」

オレは片足だけベッドに乗せて、トリッシュの隣に座る。

「そして…今のオレの目的は…お前のスタンドを覚醒させること…」

オレの手を握るトリッシュを撫でながら、オレは続ける。

「その目的のために、オレはお前を襲ったにすぎない…だからこの方法が失敗に終わった今、お前の肌に触れる必要はもうねーんだ…」

トリッシュを拘束する紐をほどいてやった。

「だが、お前の方は中途半端なことされて物足りないっつーことだろ?初めて経験した『いい気分』なんだろ?それがもっと欲しいっつーことだろ?おい?」

トリッシュは変わらぬ表情でオレを見つめる。

「お前は『オレ』を求めてるんじゃあなく、『快感』を求めている…そういうことだろ?」

トリッシュはようやくオレから目をそらし、伏せた。

「ならオレは、『男』としてお前に責任をとってやるッ!計画だからじゃあない、私的感情からじゃあないッ!『女を抱いたギャングの男』としてッ!始末をつけてやるよ…ッ」

オレはトリッシュの肩を掴み、キスをする。
舌を入れ、わざと大きな音が鳴るようにトリッシュの舌を舐める。
先ほどと違うのが、トリッシュの方もーーおぼつかない動きではあったがーー舌を動かしている点か。

「ぅ……ふぅ…」

トリッシュは一生懸命絡めてくる。口内で睡液を絞り出し、舌へ乗せ、オレの舌に塗りたくる。ちゅぐ、ちゅぐ、という水音が響き、お互いの官能をくすぐる。
いよいよオレも息が限界に近づき、一旦舌を引く。しかしトリッシュはそれを追ってくる。口外に出た舌から、睡液が滴り落ちる。
「あーあーあーあー待て待て待てッ!げほっ」

ようやくトリッシュの舌から逃れたオレは、何とか呼吸にこぎつける。お互いの舌を繋ぐ糸を、今度はトリッシュが切った。

「どうしたの…?フフフッ」
「ったく…調子乗ってられるのも今の内だぞ…ッ」

ちょっと前までいやいや喘いでた癖に、ずいぶんと余裕そーな態度になったもんだ。オレはトリッシュをベッドに押し倒した。その勢いのまま、首筋にキスを落として鎖骨を吸う。

「んッ…ッ」

オレはまたトリッシュと唇を重ねる。トリッシュはオレの頬にそっと触れ、優しくオレの髪を撫でた。
キスをしながら、オレはトリッシュの服と下着を脱がし、肌を露わにさせる。下目に肌を見ると、白い、緩やかな丘が見える。それの頂に位置する、髪ほどビビッドでないピンク色。それをオレの指が捉え、腹でつぶす。

「きゃふっ…ぅん…!」

トリッシュはオレの口付けを避け、喘いだ。

「どうした…?フフフ…」
「ああぁッ…ひん…ッ!」

トリッシュは頬を赤く染めていく。
オレはとりあえず上だけを脱ぐ。それから腰を引いてトリッシュの胸の位置まで顔を動かし、降ろした。そして、トリッシュの乳首をちゅっと吸い上げた。

「ひぁあああッ!!」

トリッシュの身体がびくんと揺れる。
オレはそれを軽く咬み、舌で舐める。

「はぁ…はぁ…ッあぁ…」

さっきの余裕はどこへやら、だ。身体にはすでに点々と汗がにじみ出て、髪の毛がじわりと湿る。
オレは乳房から顔を離し、トリッシュの顔面にかかる髪をかき分けてやった。トリッシュが口を開く。

「心臓が…」
「…ん…?」
「心臓が鳴ってるわ……あなたのも…とても速く…」

オレの胸に手を当て、トリッシュはそう言った。

「感じてる」

自分では気づかなかったが、確かにオレの鼓動は早くなっていた。

「…ん…お前のせいだな…」

トリッシュの額に軽くキスをし、指の爪をトリッシュの太股の上に滑らす。

「すぅ…ッふッぅ…ッ」

つぼんだ花びらがゆっくり開花するような動きで、五本の爪を広げる。トリッシュは声を漏らし、身を震わせ、よじる。
足の付け根から膝へ。膝の裏からまた付け根へ。じわじわと撫で回していった。

「うふぅッ…はぁッ…あぁッ…ッ!やっ…いやぁあ…ッ」
「…嫌か……そうか、なるほどな、早くここを触れって意味か?」
「きッッ!いぁああッ」

トリッシュの『入り口にあるモノ』を、親指の腹と人差し指で、きゅっとつまみあげる。

「あぁぁ……はぁあ…はぁあ…っ!」

二本の指で弄りながら、中指を中に滑り込ませる。大量の蜜を感じた。中に入れた指を折り曲げ、かき混ぜるように動かした。壁に指を押し当てる度に、ぐじゅっぐじゅっという音が大きく鳴り響く。

「さっき以上だぜトリッシュ…聞こえるだろ?『お前』のッ『鳴き声』が…ッッ」
「あぁッ…んやだあぁッ…つ…うああぁっっッ!」
「やだぁじゃあねーだろッ!こんなに興奮してるじゃあねーか…ッ!」
「ひっ!あああッ!んはぁッ!」

はっきり言えばこの時、オレの方がトリッシュ以上に興奮していただろう。
指をちょいとやれば鳴る水音、その後はカンノーリみたいな、濃くて甘い声が約束される。
二つの音がオレの耳に流れ込み、溢れて、かき乱し、狂わす。
ちょっとした中毒症状だった。オレはその声が聴きたくて、指を複雑に、的確に、しかし乱暴に動かし、速度を上げる。

「鳴けぇッ!トリッシュッ!!もっと叫べッ叫べッッ叫べッッッ!!!」
「やああッ!!ァあッんああッ!はあッはあッ!やあっうぁああッ!」

無意識の内に指も二本に増やしていて、腕の力も合わせて狂ったように攻めていた。実際オレは狂っていた。臨界を超えたオレは、指を引き抜き、ベルトに手をかけた。

「ま…ッ!!待ってッ!!あぁッ!!ハァーハァー…ッ!待ってッ!!!」

トリッシュは必死に訴え、そしてオレの胸に手を当てた。

「!!!」

トリッシュがオレの心臓の音を聞いている。オレも意識を自分の鼓動に向けた。尋常じゃあなかった。

「はぁあ…ッはぁあ……私…あの……は、は、初めて……だから……あの……はぁ…はぁ…」
「……ッ!…………あぁ…そうだったな……悪い……」

オレは荒くなった息を整える。

鏡の中…水のように澄み渡った、冷たい世界。そこで手に入れた『暖かさ』が原因なのだろうか。トリッシュの暖かさがオレを狂わせたのだろうか。

オレは落ち着くために目を瞑る。同じく肩で息をしているトリッシュは、腕をオレの首に回し、引き寄せた。

「あなたの心臓の音……素敵」
「…ははっ…臓器のはたらきっぷりを褒められたのは初めてだなぁ」
「お母さんみたいなの…」
「!……」
「強くて優しいの…私のお母さん…ずっと私を守ってくれたわ…一人でずっと…」
「……病死だったっけか?」
「………   さっきの問いだけど…」
「…ん?」
「答えはノッスィンニョーレ(いいえ、違います)よ…」

トリッシュはオレに触れるだけのキスをする。

「私は『快感』じゃあなくって…『あなた』が欲しいわ」
「…! ……ふん…ませたこと言いやがって…。」

オレはトリッシュの耳元に近づく。

「……いいのか?処女だろ?後悔…と か 」
「大丈夫よ。でも…優しくしてちょうだいね」
「…わかった…」

ようやく呼吸がマシになってきた。オレは静かにトリッシュにキスをしてから、自分の衣服をすべて脱いだ。
わかってはいたが、『自身』は随分と血の巡りがよくなっている。
トリッシュはそそり立ったオレ自身を下目で視認した。トリッシュの身体が、緊張で強ばっているのが見てわかる。しかし本人は、
「こんなの平気よ、私」と言わんばかりの顔をして、強がっている。
「無理に見なくたっていいんだ、最初はな」
「そ、そんなじゃあないわよっ」

何に照れてるんだか。焦るトリッシュを、可愛いやつだと撫でてやる。

「あなたの名前、聞いてないわ」
「名前?あぁ、そうだったな…。…イルーゾォだ」
「そう…イルーゾォ…。」

トリッシュは大きく息を吸い、その割には小さい声で言った。

「えっと…その…イルーゾォ、い、い…あの…」
「何だ?」

トリッシュが何を言おうとしているのかはわかりきっているが、オレは本人がそう言うまで何もしないことにした。

「えっと、えっと…あの…あぁもう!」
「ちゃんと言いな。わからねーだろーが」
「い……えっと…い…いれ…て…?」

精一杯、勇気を出して言ったんだろうが、残念ながら不合格だ。

「何を?」
「!!!」

トリッシュは顔を真っ赤にしながら、恐る恐る指をさした。

「そ、それ…」

オレは口の端を上げ、ため息をつく。

「おいお〜い、ものには名前があるんだぜ?テストの解答欄に『あれ』とか『それ』とか『これ』とか書いて百点が取れるか?」

トリッシュは唇を咬みながら目を瞑り、オレの視線を避ける。そして、呟く。

「あ…あなたの………ぺ…ペー…ネ…をい、い、いれて…」
「よくできましたぁーッと」

オレはトリッシュの髪をヨシヨシと撫でて、『あなたのペーネ』ってやつをトリッシュの肉唇にあてがった。

「不安を煽るよーで悪いが…まぁオレは女じゃあないから、そこんところよくわからんが…マジで痛いらしい…最初はな…我慢できるか?」
「…我慢できる」
「よし 力抜け」

オレはゆっくりと、腰を動かし、トリッシュに沈ませる。

「きぁぁああッッ!!い、いたッ…くッあアアッアあぁアッ!ひあ…ッ!」

トリッシュは声をあげる。嬌声というより悲鳴だった。やはりこれから起こる『破瓜』の代償は、かなりの負担であるらしい。
トリッシュは腕を上げ、空中を掻いている。何がしたいのか理解したオレは、体勢を低くしてやる。

「ッ」

背中にトリッシュの爪が食い込んだ。
逃げる自分の腰を抑えようと、オレに思い切りしがみついたのだ。
オレを離すまいとする健気な姿に、愛おしさを感じた。
オレはゆっくりと奥へ進む。

「……はぁっはぁっ…、は、はいっ…た…?」
「ん…半分くらいだな」

オレが答えると、ぎくりとした表情になる。

「大丈夫か?」
「…大…丈…はぁっ…はぁっ…ブ…よ」

オレは動かずに、トリッシュを少し休ましてやる。

「…いくぞ…ッ」

じわじわと長い痛みが続くよりは、この方がいい。オレは残りを一気に貫き入れる。

「ッいああああああぁぁぁぁぁぁぁぁッッ!!!!」
「うッ」

トリッシュの爪が背中をえぐる。オレの背中とトリッシュの『中』から小さく血が流れた。

「はぁっ…はぁっ…はぅっ…うぅ…」

トリッシュの瞳は涙できらきらと光っていた。急に艶っぽい顔になったなぁ、と思う。

「ま…、まだ動かないで…」
「わかってる…」

トリッシュが深く呼吸をすると、『中』も深く上下する。それを自身が感じていると、何故か先程のトリッシュの言葉がよぎった。


…くだらない。

「ふぅっ…いいわ…きて…」

トリッシュが決心した表情で口を開いた。

「あぁ」

オレは少しずつ、ゆっくり腰を引いた。そしてまた戻す。

「んぅうう…っ!」

狭い壁の中を行き来すると、二つの肉が蜜の中でずちゅ、ぐちゅ、と厚い音を出す。繋がった場所から電流が、二人の身体に分かれ、走る。電気が脳へ届くと、何かがはじけて、白い渦を巻いた。そして脳は、もっと強く、欲しろ、と命令をくだす。

「あぁッはぁぁッ…うああッ!いぃ…づッ…」
「くッ…もーちょい…力抜けったら…」

初めは一定の動きを繰り返すだけだったが、オレは次第に速度をあげていく。

「はぁっ!はぁッ…!…っあぅぅッ…」
「うぅッくッ…」

自身から伝わってくるトリッシュの体温を、全身で感じる。冷たい世界で唯一の、もう一つの生命、もう一つの体温。それが、オレを感じて鳴いている。その心地よさがオレを上気させて、呼吸を乱していった。
トリッシュとオレが混じり、水音を、己を打ちつける音を、欲の鳴き声を奏でた。

「あうッ!んッ!い、い…イル、ゥ…ゾォ…!!私の…名前を呼んで…ッイルーゾ…ォッ!」
「…あぁ…呼んでやるッ…!トリッシュ……トリッシュ…トリッシュゥゥウウウッ!!」

激しい律動と音の洪水が肉体を刺激していく。お互いを激しく求め合い、狂ったようにその名を叫ぶ。

「はぁんッ…ぁッ!もう…ぁぁッ…!イルゥ…ゾォッ私…ッ…ッ!」
「トリッシュ…ッ」

オレは深く鋭い突きをして、全てを放った。

「ん…」

シーツがこすれる音がする。トリッシュが目を覚ました。オレはその隣で天井を見上げていた。横目でトリッシュをちらと見る。

「よぉ…起きたかトリッシュ…」

腕を伸ばし、髪を撫でる。ピンク色がふわっと指に絡みつく。

「…イルーゾォ…私…」

オレは意味もなく上体を起こす。
行為はとっくに終わったが、オレの身体は暖かかった。
トリッシュが後ろから抱きついてくる。

「ね!」

トリッシュは明るく声を上げた。さっきとは大違いだ。

「結ってあげる!」

気づけば、オレの髪はぐしゃぐしゃで、髪留めの紐も数本解けていた。
トリッシュは全ての紐を解き、手櫛でオレの髪をすいていく。

「やっぱり、あなた、お母さんみたいなのイルーゾォ」
「…はっ…あんなに突いてやったのにか?」
「んもぅっ!」

トリッシュは頬を膨らませている。

「そうじゃあなくて…!もちろん私はあなたのこと『男』だってちゃあんと認めてるわ。ナヨォっとしてるからお母さんみたいだーとかそういう意味じゃあないのよ」
「ならどういう意味なんだ」
「わからないわ」
「なんだあそりゃあ…」

ふふっとトリッシュは笑い、オレの髪を二本、結び終える。自分でやるのと違って、やはり綺麗で丁寧だった。
急に、行為の時にもよぎったトリッシュの言葉がうかぶ。

「お前もだ」
「え?」

思わず呟いてしまった。

「…何でもねぇよ」
「ふぅん…そぅお…」

後ろにいるからよく見えないが、明らかに意地の悪い視線を送り、にまにましていやがる。
三本目が結い終わった。

「ねぇ…思い出した、ここって…どこなの?」
「んん?」
「よくわからないけど…あの、窓を開けっぱなしだったじゃない、私…あの…すごく…」
「喘いでた」
「もうっ!」

プンプン怒るトリッシュにオレは短く笑う。

「気にしなくていい。ここには今、オレとお前しかいない。」
「どうして?」
「……あー…」

思えば、初めはトリッシュのスタンドを目覚めさせる為に襲ったんだった。
だが、一向にその気配はないし、本人は父親…ボスのことを何も知らないと言っている。
情報の価値観はチームとトリッシュでまるで違うのだが、何だかどーでもよかった。
もちろん、組織を裏切った、ボスを追う立場という道を抜けようとは思わない。
だが、『トリッシュから』ボスについて根堀り葉掘り聞き出す、ということに関心をなくしてしまっていた。

「お前は知らなくていい…。」
「何なのよ!」
「知らなくていいんだ。いや、知るんじゃあない…こんな力の争いは」

納得いかないトリッシュのため息が聞こえる。だが、これ以上聞いても無駄だ、と諦めたようだ。四本目が結えた。

「前髪をやるからこっち向いて」

トリッシュが言うので体ごと振り向くと、トリッシュが不意をつき、キスをしてきた。深くはないが、愛情は感じる。

「私が映ってる」
「ん?」
「あなたの瞳に、よ。鏡みたいに。」
「!」
「私の瞳にはあなたが映ってるでしょう?イルーゾォ…触ることができないもう一人のあなた」

どこか切なく、遠くを見るような目だ。


――どっかの国に『鏡花水月』っつー言葉があるらしい。鏡や水なんかに映った花だとかは、フツー触れることはできない。目に見えていながら。
トリッシュは、自分の鏡に映っている光景を客観的に見て、『鏡花水月』の切なさを感じたのか――。


――瞳という名のトリッシュの鏡には、オレが映っている。映るオレに触れることはできない。
だが、もう触れることはできない人間が…遠くて近い人間が、トリッシュにはもう一人いるのだ。
触れられないという同じ条件のもと、オレとその人物をだぶらせて、トリッシュはオレを「〜みたい」と言うのだろうか。
皮肉にも、鏡の中に触れられる力を持つこのオレを――。


どちらもつまらない、ただの推測だが。

「詩人みたいなしゃれたことを言うなぁおい。小説でも書いたらどうだ?携帯電話とかで」
「やめてよそんなイマドキなことぉッ!おぞましいわッ!」

トリッシュは自分の肩を抱き、ゲェッ!と渋い顔で言う。オレはハハハと笑う。ジョーダンだよ、と。
トリッシュが最後の一本にとりかかる。

「あー、ひとつ思ったんだけどよぉ〜」

なあに?と顔を覗き込む。

「お前、寄せて上げてんのな」
「ぇ」

トリッシュの服を脱がせた時、どうも見栄えが違うな、と思ったのだが、その原因は下着にあったようで。

「まッオレはそんなの全然気にしないけどな… あれ」

トリッシュの指が止まる。何だかワナワナと震えている。

「お、おいおい気にしねぇって言ってるじゃあねーか!」

『命令ヲ、シテクダサイ』

「!?」

トリッシュでも、オレでもない別の声が聞こえた。辺りを見回すと、トリッシュの後ろに、誰かいる。

『トリッシュ、命令ヲ』

女性のようだが、確実に人間ではない。オレの能力的な意味でも、姿形的な意味でも。

「ま…まさか…ッッまさか…ッ!!」

そう、まさにまさに。トリッシュのスタンドだった。

『命令ヲ!トリッシュ!』

「…ぶっとばすッ!!」

指摘された事実を恥ずかしがって(タブン)、顔を真っ赤にしたトリッシュが叫んだ。

「ッ!!スッ、スタンドだけッ!外へ出ることを『許…ふあああああああーッッ!!!!!!!」


静かで冷たい鏡の世界。
暖かな生命の鼓動が、また一つ。






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