第三部 スターダストクルセイダース
「DIO様ですか。たった今、街に出たばかりですよ。任務成功の報告は私が伝えておきましょう」 館に戻るなり聞かされた言葉に、マライアは眉を寄せた。 「ああ、そう」 「……そちらはDIO様の寝室ですが? 」 「知ってるわよ! どこに行こうと勝手でしょう?」 マライアは不機嫌を隠しもせず廊下を奥へと進む。 テレンスは冷めた目で彼女の背を見送り、小馬鹿にしたように片方の口の端を上げた。 いつ来ても暗い館の中にコツコツとヒールの音を響かせて 館の奥、ある部屋の扉を開ける。 高価な調度品や貴金属が無造作に置かれ、 執事によって改められたベッドはシーツに皴ひとつない。 誰もいない部屋に微かに残る血と情交の跡の匂いだけが、 DIOがさっきまでここにいた証明だった。 主が居ない事は分かっていたが、それでも溜息が洩れてしまう。 あの方に可愛がってもらう。その為だけに、休む間もなくここへ報告に来たのに……。 その証拠に、暗殺者として任務をこなしている間、ずっと体の中に押し込めていた熱が やり場を失くして疼いている。 赤い絨毯の上を猫のように静かに歩き、整えられたベッドに片膝を乗せた。 心音があまりに切なくて、背を丸め、甘えた仕草でシーツの上に額を擦りつける。 洗いたてのそれは腹が立つ位乾いた匂いで、 もっと深く、その向こうにあるものを嗅ぎとろうと眼を伏せてうずくまる。 部屋の中に微かに残る気だるい気配にのみ意識を集中させた。 最後にDIO様が私に触れたのは任務に就く前の晩。 (この部屋で……このベッドで……) 甘い記憶に酔う。広いベッドの隅で腰を高く掲げる。 指がそっと自分の体をなぞる。 爪と同じ真紅を塗った唇から喉へ、喉から胸へ、胸から腰へ、 服の上から自分の形を確かめるような緩やかな愛撫は進む。 (やはり、お前は紅が似合うな……) あの晩、私の体のそこかしこに甘く牙を立てながらDIO様はそう言ったわ。 愛撫は記憶を呼び起こし、記憶は更なる欲を煽る。 指がもどかしくタイトスカートをたくしあげ ……僅かな躊躇の後に、黒色のショーツを下ろした。 SS一覧に戻る メインページに戻る |