3部その後(デーボ×ミドラー)
第三部 スターダストクルセイダース


承太郎にDIOが倒された後、その生き残っていた部下たちは世界中に散り散りになった。
かつてジョースター達を殺そうとし、逆に痛い目を見た者の中には、二度と奴らと関わり合いになるのはゴメンだとばかりに
消息を絶った者も少なくない。
だが、この『呪いのデーボ』と名乗る男はそんなタマナシ野郎どもとは違った。
デーボにとって傷を受ける事は日常茶飯事だが、かつてないほど全身を切り刻まれ返り討ちにされたあの時の恨みは忘れない。
かろうじて九死に一生を得たものの、絶対安静の状態を商売敵に襲われ病室ごと爆破されかけるわ
復帰した後も仕事をしくじった事を知られすっかり評判が落ちるわで
自分をこんな目に遭わせ、殺し屋としての経歴に傷をつけたポルナレフへの(逆)恨みの念は増すばかりだった。
必ず追い詰めて復讐してやると、デーボは裏世界の情報網を駆使し執念深くポルナレフを探したが
ある犯罪組織について調査していたという情報を最後に足跡は途絶え、一向に行方は掴めなかった。
デーボがあの女と再会したのはそんな時だった。

『女教皇』のミドラーといえば、デーボほどではないが裏の世界では名の売れた刺客だ。
同業者である以上当然その存在は知っていたし、DIOが生きていた頃には何度か顔も合わせている。
元DIOの部下で、今もなお殺し屋稼業を続けている者の一人だった。
久々に会う彼女は、相変わらず目のやり場に困るような衣装で指定の場所に現れた。

「久しぶりね、『呪いのデーボ』……あんたから接触してくるなんてどういう風の吹き回し?」

仕事をしくじった事が広まってから、かつての顧客からは刺客としての実力が衰えたと見限られ
同業者の中には、今のうちに『呪いのデーボ』の首を取って名を上げようとする連中が現れ出し
標的を狙いながらも別の刺客に狙われる、デーボにとっては気の休まる暇のない毎日だった。
基本的に誰も信用せず一匹狼のデーボだったが、さすがに今度ばかりは危機感を覚え
今回の仕事のために護衛役を務めてくれる強力なスタンド使いの共犯者を求めていたというわけだ。

「いいわ、困った時はお互い様だものね。 引き受けてあげる」
「!? ……お前、何を考えている?」

駄目でもともとぐらいの気持ちで、恥を忍んで旧知のミドラーに協力を求めたが、予想外のいい返事にデーボは内心驚いた。
この返事が罠で、ミドラーが裏切らないという保証はどこにもなかったが、デーボは彼女を共犯者として認めた。
そして、その判断は正しかった。
今、デーボはひとり祝杯を挙げている。
仕事の成功を見届けた後、手負いの状態でミドラーのねぐらに連れ込まれたのだ。
殺し屋のアジトというイメージからはかけ離れた、リゾートホテルのような洒落た内装だった。
こんな女に借りを作ったら後で何を要求されるか分からねー、とデーボは断ろうとしたが
背中の傷は自分では手当てできない。
鎮痛剤だと渡された薬は用心して飲まなかったが、ミドラーの手によって傷口をわざわざいびつに縫われ
今に至るというわけだった。
しばらくして、ミドラーがタオル一枚でバスルームから出てきた。
デーボがいる事などまるで気にせず、無防備な様子で髪を拭いている。 湯上りのいい香りが鼻をくすぐった。
なに勝手に人の酒飲んでるのよ、と横から手を伸ばして瓶を奪い、直に口をつけて飲み干してしまった。
手の甲で口を拭う乱暴なしぐさも何故か絵になっている。
酒が入ったせいか、いつもよりよく回る舌でミドラーは唐突に訊いてきた。

「ねえ、あんたまだポルナレフを恨んでる?」

愚問だった。 一日たりとて奴への恨みを忘れた日は無い。
するとミドラーは何を思ったのか「DIO様が死んでから、あたしもう何もかも虚しくなっちゃった……」などと言い出した。

「あたしがそれを知った時には部下も館も全て消えていて、はじめからDIO様なんていなかったみたいだった。
それでもしばらくは、DIO様が死んでしまうなんて信じられなくて……ようやく受け入れられた時、この世に確かなものなんて何一つないんだって思ったわ。
あたしもこのままでいいのかなって、そんな気になって……
もう、この仕事を最後に足を洗おうと思ってるの。 いつまでも続けられるような商売でもないしね……」

デーボにとってDIOは一時の雇い主に過ぎなかったが、ミドラーにとっては身も心も捧げるに値するだけの男だったらしい。
DIOを失った事で心が折れてしまったのか、殺した相手への憎しみや仇討ちさえ考えられず儚げにうつむく様は
もはや以前までの凄腕の刺客ではなく、ただ打ちひしがれた一人の女に過ぎなかった。
油断しきったその姿を見て、デーボは本能的に一つの考えに思い至った。

(……商売敵を黙って引退させるという手はねえ)

どのみち用済みになった共犯者、仕事の成功ついでに消すぐらい躊躇いはない。
ミドラーの首を手土産に自分を売り込めば、評判は前以上に高くなるだろう。
殺すなら今だ、と悪魔の暗示を持つ自分のスタンドが囁いてくるようだった。
そんなデーボの心中も知らず、何か湿っぽい話になっちゃったわね、とミドラーは笑う。

「あんたの傷だらけの下品なツラを見られるのも、これが最後か……」
「下品は余計だ」

軽口を叩きながらも、ミドラーはこちらを潤んだ眼で見上げてくる。
顎から唇へとたどる指先に誘われるようにどちらともなく唇が重なったが、デーボは眼を閉じなかった。
こんな事で情に流されるのか? と自制するが、さっきまで口にしていた強い酒よりもミドラーの唇の甘さがデーボを酔わせた。
どんな美酒にも勝るそれをもっと味わいたくて舌を絡める。
内心殺意を抱いていた相手だというのに、今は貪る事で頭が一杯になっていた。

「……せっかくだから、最後にちょっと楽しまない?」

シーツにしわ一つないベッドに座り、ミドラーはデーボを誘った。
デーボの顔は大小無数の傷が走り、陰惨な眼差しも手伝ってまともに見られぬほどの悪相だが
ミドラーはむしろ愛しそうに、ひとつひとつの傷を唇と指でなぞる。
普段男を男とも思わぬこの女の仕草に、今ばかりは油断させられてしまう。
有り得ない事だが、まるでこの自分を醜い傷跡までも愛しているように錯覚してしまうからだ。
本人にとっては勲章のようなものだが、顔だけではなく全身いたる所に残された傷跡までも、いたわるような口付けと愛撫が施される。
デーボに劣らず修羅場をくぐり抜けているはずのミドラーの身体には、対照的に傷ひとつない。
相手の油断を誘うためとはいえ、ほぼ半裸のような格好はいかにも危なっかしいが
鋼鉄の壁にもチタンの盾にも変化するスタンドが、いつも彼女の身を守っていた。
こちらからもその柔肌に触れて戯れようとしたが、ミドラーは関心なさそうにデーボの手を退けた。

「ふふっ、結構立派なの持ってるじゃない」

用があるのはこっちだけ、とでもいうようにデーボの顔に尻を向けて、血が集まりつつある肉棒を興味津々で弄り出した。
なんとも失礼な態度だが、ほとんど四つんばいになったミドラーはこの上なく無防備な姿態を晒していた。
指で弄るだけでは飽き足らず、ご自慢のふたつの膨らみで赤黒い怒張を挟み込んでいる。
胸に手を添えてむにむにと愛撫しながら、つんと勃った自分の乳首も同時に指の腹で刺激する。
残念な事にその様子はデーボには見えなかったが、柔らかい谷間に収まりきらずはみ出た先端に熱っぽい吐息がかかった。
それだけではなく、生温かい舌がねっとり絡みつく感触までも……
ミドラーの唇が自分のものを貪っている、と思っただけで暴発してしまいそうだ。
恨むどころかこんないい思いをさせられては、デーボお得意の能力が発揮できないのも当然だった。

「熱い……ひょっとして、さっきの殺しの時から興奮してたの?」

そう言うミドラーも同じようなものだった。
高く上げられた見事な桃尻の谷間の奥に、情欲の蜜が滲んでかすかに光っている。
それを見たデーボが目の前の丸い尻を掴み、左右に押し拡げると美味そうな肉色の粘膜が剥き出しになった。
後ろの穴までまじまじと観察されているのに気付いたミドラーは、じろじろ見てるんじゃねーわよこの変態! と怒鳴ったが
全く聞いていないデーボはためらいなくそこに顔を近づけた。

「ん……んぅぅっ!?」

その感触にミドラーはびくりとした。
包皮から頭を出した愛らしい雌芯を転がすように刺激され、喉の奥で甘い声を上げる。
左右の繊細な襞を味わうように舐め上げられ、汁気の多い果実を貪るようなはしたない音を聞かされる。
熱く湿った息で嬲られ、すでに快楽を覚えている後ろにまで舌を這わせてくる。
巧みというほどでもないが執拗なデーボの舌で犯され、ミドラーはたまらず肉棒を口から離してしまった。

「あっ、や、やめ、んふっ、だめえぇっ」

もっとも敏感な小さい蕾を卑猥な音を立てて吸われ、、ぞくりとするような甘い声を上げた。
唾液と蜜でぬるぬるになった前後の器官はどちらもひくひくと震え、物欲しそうにしている。
特に後ろを弄られるのはご無沙汰だったが、デーボはそんな事は知る由もない。
ミドラーとしてはもっとたっぷり可愛がって焦らすつもりだったが、逆に焦らされる羽目になり
目の前の肉棒を舌ではなく下で味わいたくてたまらなくなってしまった。
身体を離してシーツの上に横になり、弄ばれほころびかけた割れ目を自ら指で開いて誘った。
見た目は控えめでお上品ではあるが、中身はとびきり貪欲で淫猥な粘膜へと待ち望んでいた雄が沈み込んでいく。

「んあぁっ……すごいっ、いい……」

ミドラーの腕が太い首に回り、荒縄のように編まれた髪を引っ張って早く動け、と急かす。
首にしがみついて、もっと、もっと、とうわ言のようにいじらしく繰り返しながら
さっきまで自分自身が弄んでいた肉棒で責められ、淫らな舞踏のように腰を揺らして悦んでいる。
華麗なステップを踏むためのしなやかな脚はデーボの腰をしっかりと挟み込んで、離れないで欲しいとでもいうようだった。
さっきまでの態度と比べると、まるで娼婦から生娘に変わったようだ。
変幻自在の分身と同じく、この女はいったいいくつの表情を持っているのか分からない。
もし、今のこの表情こそが本当のミドラーだったら……と余計な事を想像し、いくらなんでも自惚れ過ぎだと打ち消す。
滾った白濁を腹の上に吐き出す頃には、もう殺す気は失せていた。

(あー、クソ……結局うやむやになっちまった)

まるで本当の恋人同士のように髪など撫でてやりながら、情事の酔いが醒めない中、殺すには惜しい女だと改めて思う。
柄にもなく感傷的な気分になっていると、ちょっと失礼、とミドラーが腕の中から身を乗り出した。
ベッドに座ったまま電話の受話器を手に取り、どこかにかけている。

「もしもし……こんな遅くにごめんなさい、どうしてもお伝えしたい事があって」

通話中だというのに、デーボはかまわずちょっかいを出す。
厚かましい男を色っぽく睨みながらも、ミドラーはその手を止めようとはしなかった。

「……はい、こっちの都合で申し訳ないんですけど(あっ)キャンセルさせていただくわ。 前金もお返しします
(ん、だめよ)そんな、相手が『呪いのデーボ』だから怖じ気づいたわけじゃあないのよ(やめちゃだめ……)
ただ、殺すにはちょっともったいない、いい男なの」

デーボの手が止まった。
電話の相手はなにやら喚いているようだったが、ミドラーはしつこい男は嫌いなの! と逆ギレして受話器を叩き付けた。
悪戯っぽい顔でこちらを見て、続きしちゃう? と誘われても、デーボは固まったまま動けなかった。
まさかミドラーが自分を殺す依頼を受けていたとは……
とすると、こちらの申し出をあっさり受け入れたのも口実に過ぎなかったというわけだ。
呆気に取られているデーボに、不敵にして妖艶な殺し屋の表情で笑う。

「本当はあんたがイッたのと同時に首をかっ切ろうと思ってたんだけど、あんまりよかったからタイミングを逃しちゃった
最期にいい思いさせてあげよーと思ったんだけどね」

デーボの頬の傷がひきつり、こみ上げる何かを堪えるように肩が大きく震える。
全く油断のならない女だ。 もう笑うしかなかった。

「ずいぶん舐めたまねしてくれるじゃあねーか、この悪魔め!」
「きゃあああーーーーッ」

笑い転げながらもつれ合ってベッドに倒れる。
じゃれ合っている最中、デーボの目が剣呑な光を帯び、いきなりミドラーの身体をうつぶせにひっくり返した。
ミドラーは逃れようとするが、後ろからデーボの巨体に圧し掛かられて身動きが出来ない。

「ちょっと、何…… !!」

無理矢理腰を持ち上げられ、尻を突き出した四つんばいの格好にされてミドラーは雲行きがおかしいことに気付いた。

「そんな性悪女はちょいとこらしめてやらんとなぁーーーー?」
「や、やめ……! 本当にブッ殺されたいの!? このド低俗野郎!!」

黙れ、とでも言うように甘噛みするよりも強い力で首根っこに歯を立てられる。
あと少し力を込められたら食いちぎられるかもしれない、と思いミドラーは反射的に身体をすくませた。
すでに一度自身を受け入れていい具合にこなれた処に、今度は無理矢理後ろから押し入る。
何度も勢いよく抜き挿しすると、腰と尻とがぶつかって乾いた音を立てた。
抽送のたびに結合部から漏れる粘着質な音は、いかにも今犯されているといった感じだ。
こんな下品な男なんかに……とミドラーは唇を噛んだが、さっきより奥まで届くような感じに、屈辱感とは裏腹に思わず嬌声を上げてしまう。
その様をデーボは下卑た台詞でからかい、ミドラーの頭に血を上らせた。

「ゲス野郎!! 変態ッ!! こんな粗末なもんでいい気になってんじゃあ……あぁんっ、ふあぁっ!」

耳まで紅潮させながらも肩越しに睨まれ、蔑むようなきつい視線で射られてもデーボは逆に興奮するだけだった。
突かれるたびにぷりぷり揺れるふたつの乳房にも目をつけ、両の掌で鷲掴みにした。
色の薄い少し大きめの乳輪を、かさついた指先で小さな円を描くような動きで嬲る。

「前から思ってたんだがよぉ、全く無駄にでけえ乳だな」
「ひあぁっ、つ、爪立てるんじゃないよっ!」
「まあ、どうせ最後なんだから好きなようにさせてもらうか」

砂糖菓子のような乳首をきゅっ、と強めに捻られ、ミドラーは悲鳴を上げた。
こんなに敏感なくせに、いつもは申し訳程度の星型の胸当てしか着けていないのもおかしなものだ。
男の夢の塊を好き放題に揉みしだきながら、嗜虐心をそそられたデーボは背中の傷が開くのもかまわず
いよいよ盛りの付いた犬のような勢いで腰を送り続ける。

「んはぁぁ! あ、あぅ、もう、ゆるしてっ……」

子宮口にごつごつと当たるのがたまらなく、ミドラーは自分から尻を高く上げてねだった。
入り口から締め付けられてますます具合が良くなり、デーボはせっかくだから種付けもしてやろうと一番奥で吐き出してやった。

「や、あぁ、なかっ……いっぱい、出てるぅっ……」

熱い精をたっぷりと注がれ、上気した背中が震えるのを見てデーボは心底満足した。
しばらくして、互いの体液にまみれた雄がずるりと抜かれ、支えを失くしたようにミドラーはベッドにぐったり突っ伏した。

「……はぁっ……はぁ……」

あまりに激しい情交にまだ息が整わず、眼には涙さえ浮かべている。
それを見て、デーボは何を思ったのか後戯のついでに腕枕をしてやろうとした。

「暑苦しいッ!!」

ミドラーの美脚が繰り出され、2mを超える巨体はベッドから蹴り落とされた。
床にまともに頭を打ちつけながら、さっきまでヒイヒイ言っていたのにどこにそんな余力があったんだと
デーボは単純に疑問に思った。

翌日、二人は高飛びのため空港に向かった。
ポルナレフが消息を絶った地―イタリア行きの旅券を手にしたデーボに「それじゃあね」とだけ言い残し、
ミドラーの麗しい後姿はすぐに人の波にまぎれて消えた。
映画のようなドラマチックな別れなどは最初から期待していなかったが、ずいぶんあっさりした台詞に
少し拍子抜けしつつデーボは搭乗ゲートをくぐった。




ファーストクラスの座席に収まったミドラーは、窓の下を流れる雲を見ていた。
なめらかな膝の上には、美女とは不釣合いな不気味な人形が載せられている。
大事なこの子を誘拐して来たのに、あいつはいつ気づくかしら? と、ミドラーは形のいい唇を吊り上げて密かに笑った。

デーボがトランクを開け、人形と引き換えに残されたメッセージを見つけるのは、現地に着いてからのことだった。

『 To Devil
かわいい坊やと旅行に行ってきます。 もし気が向いたらいつでも取り返しに来てね☆
From HighPriestess 』






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