第三部 スターダストクルセイダース
無人の博物館のようなDIOの館内に、不釣り合いなほど妖艶な女が一人、見事な脚線美を誇る脚を組んでゆったりと座っている。 優雅な仕草で指先に挟んだ煙草から、一筋の紫煙が高い天井へと立ち上っていく。 目深に被った赤いフードの陰から気怠げな美貌が覗き、同じく赤い唇がため息と共に薄く煙を吐いた。 その『バステト女神』の暗示を持つスタンド使い・マライアは、回廊の向こうから歩いてきた男に気付き、からかうような声をかけた。 「あら、ヴァニラ・アイスじゃないの」 ヴァニラは一瞬、この女の姿を見なかったことにして立ち去ろうと思ったが、マライアは暇つぶしに格好の獲物が 来たとばかりの表情で、見せつけるように脚を組み替えた。 「ねえ、せっかくだから付き合いなさいよ、退屈だわ」 無視する事もできたはずだが、ヴァニラは立ち止まった。 感情のない目で見下ろされても、マライアは気にもせず勝手に喋り始めた。 この女は機嫌も話題も猫の眼のようにころころと変わる。 それをよく知っているヴァニラは相槌さえ打たずただ黙って聞いていたが、一方的なお喋りにさすがにうんざりして口を開いた。 「……話はそれだけか」 その無愛想な一言が気に入らなかったのか、マライアは微かに柳眉をしかめ、ヴァニラの腕に煙草の火を押し付けた。 「…………」 いきなりこんな仕打ちをされても、ヴァニラは悲鳴どころかうめき声すら漏らさなかった。 微動だにせず、いつもと同じ無表情のままでマライアの眼を見据えている。 「何とか言いなさいよ……つまんない男ね」 やがて火の消えた吸い殻を放り捨て、舌打ちしてマライアは去って行った。 ヴァニラはその後ろ姿を視線だけで追う。 その眼差しは、怒りとも軽蔑とも違う昏い感情をはらんでいた。 奔放で気まぐれなマライアに対する苛立ちと共に、胸中でどろどろと渦巻く情動をヴァニラが自覚したのはいつだったろうか。 ヴァニラは必死にそんな劣情を押し隠していたが、マライアにはとっくに見透かされていた。 DIOの所有物である自分に決して手を出せないのをいい事に、この悪女は彼を挑発して弄んでいるのだった。 (あいつ、あたしの脚を舐めるように見ていやがったわ…… まあ、ひざまずいて乞われれば足ぐらい舐めさせてやってもいいけどね……フフッ) 去り際に投げかけられた視線を思い出し、あの得体の知れない男は頭の中であたしをどうしているのだろうと想像して、 マライアは赤い唇を歪めた。 自分とヴァニラが共にDIOのものである限り、それが叶う事は決してないのだ。 数日後、ヴァニラはDIOに呼ばれ、主人の寝室を訪れた。 失礼いたします、と寝室に入ったヴァニラは、DIOの他に先客がいる事を粘ついた音と荒い息遣いから察した。 『食事中』かと思ったが、薄暗い室内に目が慣れるにつれ主人と共に寝台の上にいる者がよく知った人物である事に気付き、 目を見開いた。 闇に半ば溶け込む、黒猫のようなしなやかな肢体の主はマライアだった。 何も身に着けてはおらず、DIOの膝の上で大きく脚を広げて恥知らずな格好を晒している。 マライアは自分の目の前で、よりによって主人であるDIOに抱かれていた。 DIOと彼女がどういう関係か知っているにも関わらず、ヴァニラは主人の前だというのに膝をつく事も忘れその場に棒立ちになっていた。 マライアはDIOの指使いに陶酔しきっている様子だったが、そこでヴァニラの存在に初めて気づいたように、こちらを一瞥した。 その眼差しにヴァニラははっとして、慌てて後ろを向いた。 「も、申し訳ありませんでした!」 取り込み中に寝室に入ってしまった事を謝罪し、出て行こうとしたヴァニラをDIOは何故か引き留めた。 「待て……呼んだのはわたしだ。 用件も聞かないまま勝手に出ていくつもりか?」 そう言うDIOとマライアの口元が同じ笑みを含んでいるのを見て、初めからあの女が主人に吹き込んだ悪ふざけなのだと ヴァニラは察しがついた。 DIOの言う用件とは、今しなくてもいいような他愛のない話だったが、ヴァニラをすぐに解放する気はないようで、 わざと話を長引かせていた。 ヴァニラの報告に答える合間にDIOがマライアにねだられて唇を重ねるたび、二人の舌が絡み合うかすかな濡れた音まで はっきりと聞こえてくる。 目の前で繰り広げられるあまりに淫靡なショーに、ヴァニラは必死に平静を装いながらも、マライアへの憎悪と DIOへの忠誠とのジレンマに身を灼かれるようだった。 とても見ていられずヴァニラは無意識に眼を伏せていたが、DIOの前では視線さえ自由にはできなかった。 「なぜ眼を反らす? それともわたしの眼を見られないほど後ろめたい事でもあるのか?」 「……決して……そのような事は……」 どうにかなってしまいそうで、ヴァニラはそれだけ答えるのが精一杯だった。 生々しい情交から眼を反らす事さえ許されず、ヴァニラはいっそ自分の眼を潰してしまいたかった。 マライアのこの悪戯がヴァニラの嫉妬心をかき立てる事を狙っていたとすれば、予想以上の効果をあげたと言っていいだろう。 そしてマライアも、DIOとの交合をヴァニラに見られている倒錯的な状況はいつもより彼女を燃えさせていた。 「んあぁっDIO様ぁ……! マライアの中にいっぱいお情けを下さいっ、一番奥にDIO様のを下さいませぇっ」 ヴァニラは生殺しにされながら、マライアの嬌声を、主人に揺らされる肢体を、彼女の中から溢れる自分のものではない白濁を、 目の前の全てを非常な自制心を以て堪えた。 永遠とも思える時間が過ぎ、ようやく退室の許しを得てヴァニラが立ち上がる頃、彼の掌には爪が食い込んで血が滲んでいた。 「……失礼させていただきます」 「待ちなさいよ、ヴァニラ」 すっかり憔悴しきったヴァニラをまたもや呼び止めたのはマライアだった。 何がおかしいのかにやにやと笑っている。 「あんたがあたしをいつも頭の中でどうしてるか、知らないとでも思ってたの?」 その言葉にヴァニラの頭の中は真っ白になった。 ひた隠しにしていた劣情をマライアに気づかれていた事と、それをDIOの前で暴露された事と両方の衝撃だった。 「ほら、あたしがDIO様に抱かれてるの見てそうなったんでしょ? ご主人様の前で浅ましいこと! 盛りのついた犬でも もっと分別があるんじゃなくて?」 マライアの指摘する通り、ヴァニラの性器は彼女の媚態に煽られてがちがちになり、隠しようもなく布地を押し上げていた。 崇拝するDIOに何と言われようとも構わないが、DIOの前で無様な姿を晒した上、それを元凶であるこの雌猫に嘲笑されるのは 我慢ならなかった。 「もうそのへんで虐めるのは止してやれ、お前の媚態を見れば誰でもああなるだろう」 DIOは助け船を出したが、マライアの方はもっとなぶってやりたいらしく、不満げな表情をした。 「それにしてもヴァニラ・アイスがお前に懸想しているとは知らなかったな……せっかくだ、アイスにもお前の味を教えてやろう」 その言葉にマライアは雲行きが怪しいと感じたが、まだこの時はDIO一流の冗談だと思っていた。 「DIO様、ご冗談を……」 「悪ふざけを提案したのはお前だろう? 責任を取ってやれ、マライア」 DIOは猛獣に生き餌を与えるように、一糸まとわぬマライアの身体をヴァニラの方に突き出す。 ヴァニラとまともに向かい合う形になり、今にも衣服の前を突き破りそうな勃起を前にしてマライアは顔をひきつらせた。 話が違う、とマライアは思ったが、DIOはこちらの方が面白そうだと筋書きを勝手に変更したようだった。 彼にとって女とは食料か道具に過ぎないとはいえ、自分の寵姫をこの得体の知れぬ男に与えるとは、DIOの悪趣味も極まっていた。 「お前の好きなようにするといい」 そのDIOの言葉に、ヴァニラは歓喜のあまり笑みを抑えられなかった。 彼が感情を顔に出すのはめったにない事だったが、ヴァニラのその凄惨な表情が笑顔だと分かる者は誰一人いないだろう。 ヴァニラはついさっきまでDIOがマライアを抱いていた寝台の上に、虎が獲物を組み伏せるようにして、差し出された褐色の裸身を 力任せに押さえつけた。 「いやあぁぁ!!」 これから何が始まるか理解したマライアが悲鳴を上げても、DIOは止めもせずに傍観している。 必死にあがいたが、ヴァニラの手は鉄の枷も同じでパワー型のスタンドを持たない彼女にははねのけられるはずもなかった。 ヴァニラがマライアの体に触れたのはこれが初めてだったが、こんなに柔らかくよい香りがするものだと知り、 ますます頭に血を上らせたヴァニラはマライアに圧し掛かったまま、下に履いていたものだけを脱ぎ捨てた。 筋肉で張り詰めた身体の中心で、グロテスクな肉の柱がそびえ立っている。 これをマライアの穴という穴に突き立てるのを何度妄想したかヴァニラ自身も分からない。 いや、それよりも、いつも指をくわえて眺めるばかりだったあの見事な脚をまず堪能したい。 その思いつきに、ヴァニラはマライアの片脚をおもむろに持ち上げ、彼女の体温でほどよく温まったムスクの香りに陶酔しながら、 すべすべした内腿に頬摺りをした。 柔らかい内腿の肌に熱く湿った息がかかるのを感じ、マライアはたまらない嫌悪感に身をよじらせる。 「ひぃっ!! いやぁぁ!! 気持ち悪いッ」 その必死の叫びに、今まで見下されていたこの自分が、嬌慢なマライアを追い詰める側になったのだ、とヴァニラは ぞくぞくするような優越感を覚えた。 追い詰められた女豹のようなマライアの表情に煽られ、ヴァニラは彼女の脚を撫で回しながらもどかしく自分の手で扱き始めた。 息を荒げて逸物を擦り立てる様は滑稽そのものだったが、自分を見下ろす底の知れない据わった目に、マライアは改めて この男の異常さを感じた。 悪寒を覚えるマライアの背中はいやな汗でじっとり湿っていた。 「!!」 擦り始めていくらもせずにヴァニラは達した。 肉棒の脈動に合わせて、びゅく、びゅく、と長く放出された精がマライアの長い睫毛に、褐色の頬に、紅が落ちてもなお肉感的な唇に 降りかかり、粘つく尾を引いて汚していく。 この早漏、と唯一自由になる口で罵ってやりたかったが、驚いた事にあれだけの量を出してもヴァニラは萎えておらず、 あれっぽっちでは足りないと言わんばかりに精気を漲らせていた。 自分がマライアに施した淫猥な化粧にヴァニラはまたもや新たな劣情が湧いてきたらしく、開かせた脚の間の豊かな毛並みに縁取られた 秘処を無骨な指でこじあけた。 露出した鮮やかな色の粘膜に、ヴァニラは思わず息を呑んだ。 一刻も早くここに突き入れたいという欲望のままに、ヴァニラは自分の肉棒を無防備な粘膜へと近付ける。 「い……いやぁ、そんなの……」 それはマライアがこれまで見てきたものの中でも、人間離れした大きさを誇っており、生殖器というよりは棍棒か何かのようだった。 あんなものを突っ込まれると思っただけで身震いしたが、ヴァニラが狭い肉の間に押し入ってきた時、マライアは 締め殺される猫のような悲鳴を上げた。 最前にDIOを受け入れてある程度こなれてはいたが、それでも裂けてしまいそうだった。 とうとう奥まで巨大な肉塊に占拠され、琥珀色の眼には涙がいっぱいに盛り上がり、あまりの苦しさに息をするだけで精一杯だった。 「いやあぁ、う、動かないでぇっ」 圧迫感に耐えかねてマライアは蔑んでいた相手に懇願したが、ヴァニラは聞いてなどいなかった。 ただ、自身を包み込んでくる肉の感覚と温かさが全てだった。 技巧も何もなく腰を前後させ、にゅるにゅると絡まってくる内部の襞々の艶めかしい感触に呻き声を漏らす。 適度な窮屈さがたまらなく、ヴァニラは途中まで抜いてはまた奥まで突き入れるのを繰り返していたが、マライアにとっては 棍棒を突き込まれているようなもので、遠慮のない腰の使い方に腹を突き破られそうだった。 「くっ、うぅっ……し、死んじゃうっ……」 マライアの意志とは関係なく、粘膜を守るための生理的な反応で身体は潤い出し、皮肉にも抽挿を滑らかにした。 マライアの中に抜き挿しされるたびに、濡れた肉と肉のぶつかる生々しい音が閉ざされた寝室の中に響く。 「マライア……マライア……!!」 ヴァニラは激しく腰を突き込みながら、譫言のように何度もマライアの名を呼んだが、その声は今まで聞いたことがないような 暗い熱を帯びていた。 いつも感情を押し殺した、引き結んだ口元はだらしなく開かれて犬のようにせわしなく息をつき、口の端からは飢えた獣のように 唾液が滴り落ちていた。 本人は自覚していないが、一端感情を暴走させると歯止めが利かなくなるたちらしく、いまやヴァニラは獣と化して生き餌を貪っていた。 人形でも扱うように両脚を掴んでマライアの下半身をぐっと持ち上げ、DIOに繋がっているところがよく見えるようにして、 宙吊りになった脚の間にたて続けに腰を打ち込む。 「あっ……! あっ、ああっ!!」 今までとは違うところに当たり、マライアが甲高い声を上げた。 本人の意志に反して、ヴァニラを受け入れたマライアの肉体は悦びを覚え始めていた。 巨根で一方的に蹂躙されながら、お互いの茂みが湿って肌に張り付くほどマライアの秘処は濡れており、ぬめぬめと光る太い肉柱で 擦り上げられるたびに鮮烈な快感が走り、思わず腰が浮いてしまいそうだった。 あまりに良過ぎて、そのつもりがなくても相手を悦ばせるように締め付けてしまう。 (だ、だめぇ、こんな男のでイかされちゃうっ) そう危惧してはいたが、この大物を最後まで味わいたいという思いがマライアになかったとは言い切れない。 ずんっ、と一際深く突かれた衝撃に、マライアの形のいい丸い尻がヴァニラの手の中で跳ね上がった。 「ああ……っ!!」 「ぐうぅっ」 無数の襞々に根本から食い締められ、ヴァニラも低く呻いてたまらず腰の動きを止めた。 白濁で汚された顔のまま、マライアはヴァニラの肉棒で突きのめされてイってしまった。 (ヴァニラのくせに……このあたしをっ……) ヴァニラと繋がったところをぴくぴくと震わせ、汗にまみれた肢体がシルクのシーツの上で脱力した。 気位の高いマライアが貶められ、屈辱感に噛みしめられた唇、そして快感に潤んだ眼は、普段の彼女を知る者が見れば 思わず欲情をそそられるに違いない表情だった。 あまりに感じすぎて勃ったままの乳首を誰かに指先で軽く弾かれ、マライアは反射的に指の持ち主の方を向いた。 「…………!!」 愛する主人が自分の痴態を見下ろしていた事に気付き、マライアの火照った全身から血の気が引いた。 「ほう、わたしの前で犯されながらイったか。 大した淫乱ぶりだな」 DIOの冷酷な嘲りの言葉に、ヴァニラに貫かれたままのマライアの両眼から涙がこぼれた。 この悪女にまだ残っている純粋な部分を踏みにじるような、心ない台詞だった。 「お願いです、DIO様……み、見ないで下さい……」 マライアは震える声で懇願した。 DIOを愉しませるために、マライアはこれまで閨で様々な余興を演じてきたが、この男に犯されているのをDIOに見られるのだけは 耐えられなかった。 しかし、いじらしいまでの哀願にもDIOは心を動かされる事はなく、さらにマライアを辱めるような台詞を口にした。 「マライアの具合はどうだ? 言ってみろ、アイス」 その言葉に、ヴァニラは一瞬で発情した雄から忠実な臣下の表情になり、主君の下世話な問い掛けに生真面目に答えた。 「突く度に愛液が湧き出て滑らかになって、たくさんの襞々がまるで舐め上げてくるようにいやらしく蠢いております」 さっきまでの暴走ぶりが嘘のように、冷静な顔であからさまな内容を口にする姿に例えようもない狂気を感じたマライアは 犯されている時よりもヴァニラを恐ろしいと思った。 今のマライアにとっては全てが悪夢のようだったが、本当の悪夢はこれからだった。 「マライアはいつもわたしの精を中に出してほしいと所望するのだ。 お前も存分に放って、悦ばせてやれ」 「はっ、今出してご覧に入れます」 「!!」 DIOに返事するや否や、ヴァニラは煮詰まった劣情を精と一緒にマライアの胎内へとぶちまけた。 それは自分の限界やマライアの締め付けによるものと言うよりは、DIOに命じられたからそうしたようなタイミングの絶頂だった。 肉棒の中の管を震わせてどくっ、どくっ、と射精しながらも、より奥へと精を送り込むように一心不乱に腰を振りたてて抽挿を続けている。 「あ……ああ……」 中に出された。 この狂った男に、DIO様の前で汚されてしまった。 ヴァニラの熱い体液で腹の中を満たされながら、マライアは目の前が真っ暗になるような気がした。 「いやぁぁぁ馬鹿! 馬鹿ッ! この変態ッ死んじまえ!!」 逆上したマライアは泣きながら絶叫したが、息を荒げてマライアを味わうヴァニラには聞こえていなかった。 圧倒的な力で、粘膜が擦り切れてしまいそうなほど激しく抜き挿しされ、腹の奥に硬い肉がごつごつと衝突した。 もうヴァニラにはマライアが愛しいのか憎いのかも分からず、自分の下で身悶えるこの褐色の肢体を、中も外も自分の白濁で どろどろにしたいという欲望があるばかりだった。 ……マライアはDIOに見られながらヴァニラに犯され、幼女のように泣きじゃくっていたが、もう声も枯れ果ててしまい 見開かれたままの虚ろな眼は現実ではなく、ただ闇ばかりを見つめていた。 彼女の心までもが暗黒空間に飲み込まれてしまったように、やがて何の反応もしなくなり、ぐったりとしたマライアを ヴァニラは延々と突き続けた。 萎え果てて先走りさえ出なくなっても、余興に飽きたDIOにやめろと命令されるまでヴァニラは行為を止めないだろう。 例えこんな仕打ちを受けても、マライアもヴァニラもDIOを憎むことはできない。 自分に決して逆らえない者の心を弄ぶ、悪魔の所行だった。 朝はまだ遠く、救いのない饗宴はいつ果てるともなく続いた。 (Fade Out) 「……はっ!」 マライアは両膝にうずめていた顔を上げ、あたりを見回した。 どうやらうたた寝していたらしいが、それにしても何というリアルな悪夢だろう。 見慣れた館内の景色、今その回廊の向こうから歩いてきたのは夢で自分を弄んでいた男…… 「ア……アイスッ!! よくもあたしにあんな事を!! 覚えてなさいよこのビチグソがーーッ!!」 「…………?」 顔を真っ赤にして覚えのない事をまくしたてるマライアに、何のことかわからんが騒がしい女だな、とヴァニラは いつもと変わりない無表情で呟いた。 SS一覧に戻る メインページに戻る |