番外編
『いつか王子様が迎えに来てくれたら』 思春期の乙女にはありふれた幻想だが、 この理知的な少女の夢見た内容は、もっと現実的だった。 『今この部屋に悪い男の人が現れたら』 縛られた私を見つけて、寝台に上がって。 本来なら並列すべきでない、まったく逆のベクトルを持った二つの夢想。 しかし少女はこの被虐を思い描くたびに、 胸の奥がざわめき、熱いものがこみ上がるのを感じていた。 禁忌から目を背けて、夜が訪れるごと鼓動を早める夢を反芻するのは、 いわゆる少女じみた待望と等しい心持ちであった。 そして、現在。 成長した少女は、脚の間で動く男を見ていた。 望まない相手だった。声を上げ全身で拒みたかった。 なのに手足は何かに戒められているかのように動かない。 砕けた心からいつか覚えた熱が溢れ出し、 体液になって下衆な男を悦ばせた。 かつての恋が実った時だった。 SS一覧に戻る メインページに戻る |