特別な「好き」
北田秀一×わぴこ


いつものように朝がくる。
目覚ましを止め、僕はベッドから起き上がって背を伸ばす。

朝一番の僕の頭に残っているのは…昨日のわぴこだった。
珍しく思い詰めていたわぴこに声をかけた時、いつもと違うシリアスな返事が返ってきた。
あのときのわぴこの顔は、いつもの幼さが残っていながら…なんていうか…
やけに目に焼き付いて離れなかったし、その日はずっとわぴこが気になってしまった。
とにかく部屋を出てリビングに向かった。母さんが朝食を用意してくれている。

「おはよう、ご飯出来てるわよ」
「うん、いただきます。」

席に着いて箸を進めるが、わぴこの事をずっと考えているから、ご飯の味なんてわからない。

いつもと違う僕の様子に気づいたのか、母さんが声をかけてきた。

「秀一、今日はどうかしたの?……違うわね、昨日学校から帰ってからずっとおかしいけど」
「え゛っ…そ、そんなことないよ。僕はいつもどうりだよ」

それでも母さんは心配に僕の手をとる

「生徒会…上手くいってないの?」

そりゃあ、千歳さんがいつも高級ティーセットや部屋一杯の花を買うからいつも赤字に悩まされるけど…

しかし母さんは何かわかったのか、手を離し微笑んだ。

「わかった。秀一、あなた好きな人ができたんでしょ?」

心臓の音が高まる。やっぱり女の人ってこういうことがわかるんだろうか?

僕は間違いなく、わぴこに恋をしている。
寝ても覚めても、昨日のあのときから…

「あら、もしかして図星?秀一もスミにおけないわね〜」
「な、何言ってんだよ。もうすぐテストだから…その…」

顔が真っ赤になっていくのが自分でもわかった

「で、相手は誰?わぴこちゃんかしら?」
「わ、わぴこは……関係ない…だろ」

早く部屋に戻りたかった。一気にご飯を口に詰め込む

「ごちそうさま!」

僕は足早に部屋に戻った。

「あらあら、初々しくてかわいいわね〜」

モヤモヤとした気持ちを押さえ、僕は制服に着替えカバンを手にした。

「行ってきます」
「ふふ、わぴこちゃんと仲良くね」

も〜…母さんは…

けど、今日も今からわぴこの顔を見れると思うと嬉しさが込み上げてきた。
家の門を開け、道にでる。

「はよーん!秀ちゃん!!」

突然の声に僕はビックリして後退った。
すぐ側にわぴこがいる。

「どーしたの?大丈夫?」
「びびびっくりしたじゃないか、いきなり横から声をかけるなんて」

僕の心臓はわぴこの不意打ちでもう爆発寸前だった。

「ね、いっしょに学校行こ☆」
「あ、ああ…」

突然の出来事とはいえ、わぴこと一緒に学校に行けるのは嬉しかった。

「今日はねー、ぽてちが一袋10円の日なの、それでね、ぎょぴちゃんと一緒に…」

わぴこと肩を並べて歩いている、それだけで心が満たされる

「ねぇ、秀ちゃん聞いてる?」

ボーっとわぴこを見つめいた僕はハッと気づいた。

「あ、うん、聞いてるよ。」

やばい…意識したらますますわぴこが可愛く見えてきた。
そうこうしている内に校門に着いた。

「あ、ちーちゃーん、ぎょぴちゃーん!」

千歳さんとぎょぴちゃんを見つけ、わぴこは走っていく。

「あ…」

同じクラスと言っても、離れていくわぴこを見て少し寂しかった。

と、いきなり肩に誰かの腕が回る。

「朝っぱら何ボーっとしてんだよ、秀ボー」
「葵…今日は真面目に来たんだな。」
「今日はバーゲンが昼からだ」

僕は葵と一緒に学校に入った。

キーンコーンカーン…

授業の終了を告げるチャイムが鳴る。

「それじゃあ今日はここまで、来週は中間テストです。」

溝口先生のテストという言葉で、今から給食で浮かれいた生徒達の顔が少し曇った。
更に溝口先生は追い討ちを掛けるように言った

「え〜…前みたいな無茶は言いませんが、今回のテストで赤点を3つ以上取った人は夏休みに補修を受けてもらいます!」

教室内が一斉にどよめく。

「いいですか、これはもう二年生全体で決めたことですから、変更は聞きません。以上!」

そう言って先生は教室を出ていった。

「補修か…いつもどうりやれば大丈夫だと思うけど、気は抜けないな」

一方、隣の席の葵は頭を抱えていた。

「くそ〜…なんてこった。楽しい夏休みを補修に奪われてたまるかよ」
「なら、勉強教えてやろうか?」

しかし葵は首を横に振った。

「ダメダメ、俺は数字とか文字の羅列を見てると頭痛くなるんだよ」

葵はため息をついて机に突っ伏した。わぴこの方は相変わらず給食の方に夢中である

「ぎょぴちゃん、今日はね、ヤキソバパンにすぱげっちーとポテトサラダにデザートはあんみつだよ♪」

机を給食を食べる形に合わせる。当番が皿に盛り、各々がそれを自分たちの机に運んだ。

「いっただっきまーす」

わぴこは待ってましたとばかりにヤキソバパンを頬張った。

「おいしい〜」

僕はやはりその仕草に気を取られ、食事が進まなかった。

「秀ちゃん…あたしの顔になんかついてる?」

僕の視線に気付いたわぴこが上目遣いで見てくる。

か…可愛い…

赤面しそうなのを抑え、目を逸らす。

「いや、そ、その…あんみついらないから、わぴこにあげようかなぁ…なんて思ってたんだ」

その言葉にわぴこは目を輝かせる。

「ほんと!?」
「ほんとほんと、はい」

僕はわぴこにあんみつを渡す。わぴこは嬉しさのあまり、辺りを飛び跳ねた。

「わぴこ!ジッとしてなさいよ、ホコリが立つでしょ!」

千歳さんが注意している間に不良牛があんみつを奪って食べた。それに気付いた千歳さんが逃げる不良牛を追いかけ回す…

「ったく、自分が一番走り回ってんじゃねーか…」

食べ終えた葵がその光景を見ながら呟く。教室には笑いが広がる。

そんな中でも、僕が上げたあんみつを美味しそうに食べているわぴこを見て、僕の心の中は幸せで満たされていた。

今日最後の授業が終わり、帰る準備を終えた生徒は次々と教室を後にしていく。

「…はぁ」

結局、今日も何の進展なしか…
そりゃあ自分からアプローチしなきゃ振り向いてくれないけど、あのドの付くほど天然で恋愛にまったく鈍感なわぴこに通じる訳ないよな…

いつもながら難しい相手に恋をしてしまっと、放課後人の少なくなった教室で思いにふける。

「き・た・ださーん」

不意に後ろから声をかけられ、ビクッと反応してしまう。
振り向くとそこには違うクラスの海野さんがニコニコしながら立っていた。

「うふふ、ビックリしました?」

ふぅ…今日はやたら何かと驚いてばかりだ

「何か用?」
「はい、あの…もうすぐテストですよね。それで、わからない所があって教えて欲しいんです」

僕は断る訳にもいかず少しの間、海野さんに勉強を教えることになった。

(そういえば、わぴこ今日はぽてちが10円の日って言ってたな…葵も同じ事言ってたし、まさか)

海野さんが問題を解いている間、僕は相変わらずわぴこの事を考えていた。

(葵か…気づけばいつもわぴこと一緒にいるんだよな…)

その時、僕はわぴこと葵が一緒に楽しそうに買い物をしている姿が頭に浮かんだ。
そうして、次第に焦りとか苛立ちとかそういうのが込み上げてきて、僕は葵に対して嫉妬すらし始めていた。

「…さん、北田さん」
「あ…ごめん、問題解けたの?」

僕はプリントを手に取る。
なんだ…完璧じゃないか、これなら聞きにくる必要なんて…
プリントを眺めている僕は熱い視線を感じた。海野さんは僕をジッと見つめている。

そうだった…この子は僕の事が…
そして沈黙を破って海野さんは口を開いた。
教室には僕達2人しかいない。

「あの…北田さん」


ガラッ!
突然教室の扉が開く。



牛が立っていた
海野さんの親友であり、牛達のアイドルのウシ美ちゃんだ。

「民子ちゃん、ここにいたのね」

もはやムードはブチ壊された

「あ、あら…どうしたの?ウシ美ちゃん」
「どうしたのって、今日は一緒に買い物に行くって約束したじゃない」

本当だったのか海野さんはハッとした。

「ごめんなさい!私ったら」
「いいのよ、今からでも十分時間はあるわ、行きましょ、先に行ってるわ」

そう言ってウシ美ちゃんは教室を去っていった

「ごめんなさい北田さん、私…」
「いいよ、先に約束してたんでしょ」

ノート類を片付けて、海野さんは足早に教室を出て行った。

校門を出て、1人帰路に着く。
最近1日がまるで一瞬のように過ぎ去っていく…
わぴこに恋をしてからそう感じるようになった

ため息の数は増え、勉強に手がつかない時もある。

「わぴこにちゃんと理解してもらうには…どうすればいいんだろうな」

わぴこに僕の事は好き?と聞けば100%「好き」という返事が返ってくるだろう。でもそれは、千歳さんにも葵にもぎょぴちゃんにも平等な「好き」なんだ。一緒に居て楽しいとか面白いとかそういうレベルでみんなが好きだとわぴこは思っている。
誰かを特別に好きになるということは、わぴこにはまだわかっちゃいないんだ。

「いいか秀一、女性というのはな、男性よりもずっと早く大人になるんだ」

前に父さんは僕にこう言った、女性は男性が気絶する程の痛みに耐え、子供を産む。そのために女性は精神的にも肉体的にも男性よりも早く大人になる。
父さんはちょうど僕の年頃に人は一番悩み、一番成長すると言った。それは間違いじゃないと思った。

「こんなこと、今までは考えもしなかったのにな…」

家に着く、部屋に入ると制服の上着を脱いでベットに大の字に寝転んだ。
寝よう…夢の中でなら、わぴこと一緒に居られる。
それがどんなに虚しいことか解っていても、僕はただ目を閉じるしかなかった。

何時間眠っていたんだろう、母さんの呼び声で目を覚ました。

「秀一、電話よ」

電話…?誰からだろう

「わぴこちゃんからよ、なんだか、急いでるみたい」

寝ぼけまなこをこすり、僕は受話器を取った。

「もしもし…」
「秀ちゃん!?大変なの!わぴこ、わぴこ…」

わぴこの声は震えている。何かあったんだろうか?

「わぴこ…落ち着いて話して、一体どうしたんだ?」

受話器越しのわぴこは苦しそうな息を立てている。

「…血が…血が出て」

今にも泣きそうな声だ

「血…!?どこか怪我したのか!?」

僕は焦った。苦しそうななわぴこが口にした「血」という言葉が、酷く僕を焦らした。

「わぴこ!今どこにいるんだ!」
「秀ちゃん家の近くの…公衆電話…」
「わかった!すぐに行く!」

僕はすぐに着替え、全力でわぴこがいる公衆電話まで自転車を飛ばした。

無我夢中でペダルを漕いだ。やたら公衆電話までの距離が遠く感じる。
自転車のライトが闇を裂きながら疾走する

公衆電話へは五分程でついた、自転車を降りた僕はわぴこを探す。

「秀ちゃん!」

わぴこは近くの公園のベンチに座っていた。

「わぴこ!どこか…怪我したのか!?」

わぴこの顔色は悪い…
体は小刻みに震えている。

「あ、あのね…家に帰ってからちょっと気分が悪くなって、お風呂に入ろうと思ってスカートを外したの、そしたら…」

そこまで言うと、わぴこは立ち上がって僕の目の前でスカートをたくし上げた。

(わわわっ…////)

だが、僕の目に映ったのは純白のパンツではなく、赤い血に染まったペンギンさんパンツだった。

「いっぱい血が出てきて、気持ち悪くて、それで恥ずかしくてお母さんやお父さんにも言えなくて、秀ちゃんお医者さんの息子だから治してくれると思ったの…」

…はぁ、いくら医者の息子だからと言っても僕にはまだ知識は父さんに教えてもらった簡単なものしかないし…
何より「生理」というのは治すものでもない。

とにかく、大きな怪我とかじゃなくてよかったと内心ホッとした僕は、とりあえずわぴこを家に連れて行くことにした。

(わぴこが僕の家に来る…か)

事情はどうであれ、僕は嬉しかった。




家に着くと母さんが玄関で待っていた。

「秀一、わぴこちゃんは一体どうしたの?」
「実は…」
「…まぁ!それは大事なことじゃないの、わぴこちゃんおめでとう!」

わぴこは何のことかよくわからず、キョトンとしている。

「で…どうしよう?」
「とりあえずわぴこちゃんの家に電話しときます、後お母さん赤飯炊いてくるわね。」

母さんはそう言うと電話のある部屋へ向かった。

「じゃ、わぴこ、僕の部屋に来る?」
「……うん」

まだ気分の悪そうなわぴこを僕は自分の部屋へと案内した。

部屋に連れてきたのはいいけど…どうしよう
シーンと静まり返った部屋の中、僕とわぴこの間には気まずい雰囲気が流れていた。
僕は焦った。

「あ、あのさわぴこ、とりあえず…その」

なんと言えばいいのかわかんなかった…

「秀ちゃん、お風呂借りてもいい?」
「そうだね、いつまでも血で汚れたままじゃ気持ち悪いよね、うん」

わぴこに言われるまま、僕は浴室へ案内した。

「着替え…どうしよっか」
「ん…」

ウチには母さんの下着しか女性の下着なんて無いし

「ぼ、僕のトランクスしかない…けど…」


何を言ってるんだ、僕は
これじゃあ変態じゃないか!!

「いいよ、それで」

へ?

わぴこの意外な返答に、僕は呆気にとられた。
着替えのため、カーテンを閉める。

「覗いちゃだめだよ、秀ちゃん」
「あ、う…うん」

なんだかよくわからない気持ちになった僕は、トランクスを取りに部屋へと戻ろうとした。

しかし…
シュル…っという衣服を脱ぐ音に僕の足は止まった。
待てよ、よく考えろ…
わぴこが今、僕の後ろで服を脱いでるんだぞ…

そっと振り向くと、パサッという音と同時にわぴこのスカートが床に落ちた。
わぴこと僕を遮るカーテンの下に目を走らせる。
続けて、ブラが外され、セーラー服の上に落ちる。

(ブラ…付けてたのか)

わぴこにも胸が…などと妄想していると、最後にあの血まみれのパンツが脱ぎ捨てられた。

(これで…わぴこは全裸に…!)

カーテンに遮られていても、目の前には生まれたままの姿のわぴこが立っているように感じた。

気がつけば僕はカーテンに手を伸ばしていたが、ギリギリの所で理性がそれを抑えた。

僕は欲望を振り切って、部屋へと戻った。

部屋に入った僕の心臓は、まるで短距離を全力疾走したかのように激しく脈打っていた。
カーテンの向こうではわぴこは裸だったのである。
見てもいないのに余計な想像が頭の中で次々と映し出され、僕の体は熱を帯び初めていた。

(うぅ…勃起してる)

実を言えば僕はまだオナニーをしたことがない
思い描く恋の中ではいわゆる「本番」というものが無かった。
ムラムラする感情を押さえ、僕はタンスからトランクスを取り出した。

「これを…今からわぴこは履くんだよな」

ゴクリ…

シーンと静まり返った部屋に息を呑む音が鳴る
大きく深呼吸して興奮を少しずつ鎮めて、僕は風呂場へと戻った。





「わ、わぴこ…下着置いとくよ」

ドアの向こうからはシャワーの流れる音しか聞こえない。
僕は返事を待たず声をかけた。

「あ、あのさ…身体の方は大丈夫…かな?」

無言…まるでシャワーだけが流れているような沈黙。
心配だけど入る訳にもいかないので、僕はリビングで待つことにした。



「わぴこちゃんのご両親にはお電話したらね、ウチで今日泊めることになったの」
「ぇ…」
「だからね、あなたの部屋に泊めてあげなさい」

田舎ノ町では、近所付き合いというものは非常に良いため、まるで家族のような付き合いをしている家が多い。
信頼関係も厚いため、こうして他人の家にお泊まりするということは珍しいことではない…けど

「僕の部屋に!?」
「なーに?嫌なの?」

そうじゃない、そうじゃないけどっ
複雑な思いが駆け巡り、僕はめまいがしそうだった。
母さんは僕の肩にそっと手を置いて、耳元でこう囁いたんだ。

「頑張ってね♪」

あ、あんたって人は…
混乱する中、風呂場のドアの開く音がした。
わぴこが上がったようだ。
僕は覚悟が定まらないまま、夜を迎えることになった…

お風呂から上がったわぴこはまるでいつもの元気さは無く、ぐったりとしていた。
まだ気分が悪いのか顔色もよくない。

「ここは母さんに任せて、あなたはご飯を食べちゃいなさい」

急かされて席につき、母さんはわぴこを連れて二階へと上がっていった。
…僕は気になって箸が進まなかった。
焦りに似た感情がただ僕を苦しめる。テレビを点けたり消したりして、ただ待ち続けた。

痺れを切らし二階へと上がろうとした時、母さんが降りてきた。

「お布団の準備はできたわよ、さぁ〜秀ちゃん、あなたもお風呂に入ってきなさい」

母さんはやけにニヤニヤとしている…
もう僕は完全に母さんの手の上だ。
観念してお風呂に入ることにした。

風呂場にはわぴこのセーラー服が綺麗に畳まれていた、手に取ってみる。

「意外に小さいんだな…」

視線をずらすと洗濯カゴにわぴこのブラジャーを見つけた。

「こ、こ、これがわぴこの…」

恐る恐る手を伸ばす…

「何してんの?」




心臓が止まった。




「わぴこちゃんかと思った?」

母さんだった、カーテンの隙間から全て見ていたのである。

「○□△×〜〜ッッ!!」

僕は恥ずかしさで死にそうだった。

「あらまぁ、秀ちゃんったら可愛いわねぇ」

もう何も考えず、真っ赤になって湯船に沈んだ。






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