進藤一生×香坂たまき
![]() ベッドの上に投げ出された肢体。 月明かりを受け、妖しく浮かびあがる。 白く輝く肌には、無数の赤い痣。 しなやかな肢体を惜しげもなく外気に晒し、たまきはぐったりとし横たわっていた。 緩く閉じられた瞼がゆっくりと開き、そして、また閉じられる。 つう、と流れる涙は、なによりも美しい。 進藤は、半分意識を失っているたまきの上に跨ると顎を掴み 先ほどあれだけ貪った唇に再び口付ける。 「んっ・・・・・ふっ・・・・ぁあっ」 舌が絡み合い、歯列をなぞる。 脱力したたまきを労わる様子は微塵も無い。 ひたすらたまきを求め、その口内を蹂躙する動き。 何度も与えられた感覚ではあったが、いつも新鮮で、慣れる事は無い。 眠りかけた快楽の波が、また身体の芯を揺さぶる。 息苦しく吐息を漏らせば、それすらも呑み込んでいく、彼。 やがて、彼の指がまた素肌の上をさすらい、あっという間に震える腰まで降りた。 彼が目指しているものがなんであるのか、鈍った感覚の中でもはっきりと気付き たまきは怯えたような目を向けた。 「やっ・・・・・・も、もうっ・・・・・ダメっ・・・・・・」 今夜、何度も進藤を受け入れた場所。 それだけではない。 指や舌先でいいように弄われ、すでに何度絶頂を体験したかわからない。 3回までは数えた。 しかしそれ以降は、思考事体が飛んでしまい記憶に無い。 気を失い、次の揺さぶりで目が覚める。 その繰り返しであった。 もう、これ以上彼の愛撫に耐えられそうになく、身体を起こすことさえままならない。 「何を言うかと思えば・・・・・・。まだ、許さないぞ?・・・・・・」 呆れたような響き。 そして掠れた甘いささやきが耳朶を打ち、その残酷さにたまきは肩をびくりと震わせた。 腰を掴まれ逃げることができず、やがて、あっさりと彼の長い指先をくわえ込む。 すぐに恍惚とした声があがり、たまきの背がしなる。 「・・・・・・何が駄目なんだ。こんなにも濡れて・・・・・・まだいけるな」 「あっ・ぁ・・・・・そ、それはっ・・・・・・一生っ・・・・・のっ・・・・・・ふぁああっ!!」 「俺の・・・・・なんだ?」 悪戯っぽく問いかける彼の声が、僅かばかり乱れる。 たまきは堪らずに首を左右に強く振り、自分の指を噛んだ。 「声を出せ。今更抑えられる訳ないだろう」 口の中に指が入り込む。 そして声を殺すために入れていたたまきの指を掻き出した。 「っああああっ!!!!」 同時に、泉の中に指先が根本まで入り込み、その感覚にたまきは声を上げる。 蜜がごぽりと溢れる感覚。 「うンっ・・・・・ふっ・・・・・はあっ・・・・・はあっ・・・・・ああああっ!!!」 すでに腰には力が入らない。 びくりと身体を震わせても、緩慢な快楽が身体を支配するのみ。 「いったのか?」たまきの身体の反応を見て、進藤はたまきの顔を覗き込んだ。 汗と涙とで濡れた顔。 いつもは真っ直ぐな視線をむける双眸も、甘く細められ、長い睫毛の影が見える。 その表情が、ぞくりと進藤の情欲を逆撫でする。 この顔が、何度も自分を駆り立てた。 進藤すらも記憶にないほど、たまきの細い身体を貫いた。 何度も絶頂に導き、その果てを見せてきた。 これがたまきの限界かもしれない。 だが、進藤の中にはまだ熱がある。 滾るほどの、果ての無い欲望。 もっとたまきを貫きたい もっと、自分で満たしたい。 無限の欲望を、いつから抱いていたであろうか。 このような衝動、今まで抱いたことはなかった。 たまきと出会い、抱くようになり、今まで感じたこの無い熱情を感じる。 一度だけでは足りない。 たとえたまきが果てようとも、この己の中に滾る熱が冷めるまで 枯渇する想いが満たされるまで、抱き続けたいと、そう思うようになった。 そして、全てを奪いたいと、自分の支配下に置き めちゃくちゃにしたいとさえ望む。 暗い欲望を孕ませ、それを叩きつける存在。 進藤は一度女の身体を解放すると、枕もとの卓へと手を伸ばした。 その引き出しに、それはある。 取り出したのは小さな紙の包み。 それを開くと、中には白い粉が一つまみ入っていた。 それを零さないように、進藤はぐったりとしたたまきの顎を掴むと流し込んだ。 「ぐっ・・・・・ごほっ・・・・・・ごほっ!!!」 たまきがむせる。 進藤は包み紙を卓の上に戻すと、そこにあった水差しから器に水を注ぎ それを口に含んでたまきの唇に重ねた。 口の中に張り付く粉。 それが、彼の口から注がれる水によって喉へと下っていく。 たまきはこくり、と音をたててすべてを呑み込んだ。 「い・・・・・・一生・・・・・何、を・・・・・・飲ませたの?!」 味は特に感じない。 しかし得体の知れないものを流し込まれ、不安そうな眼差しで見上げてくる。 進藤は微かに口許に笑みを浮かべると、再び唇を重ねた。 「うっ・・・・・・ふっ・・・・・はぁ・・・・・んっ・・・・・・」 彼の指先が髪の中に差し入れられる。 その感覚にぞくりと背筋を何かが這う。 やがてその感覚が増幅していき、口付けの激しさも相まって、吐息があがっていくのがわかる。 「あぁ・・・!・・いっせ・・・いっ・ねぇ・・何?!・・身体がっ・・・・はぁ、・・・熱くて、変・・・んんっ・・・・・っ」 胸の中心から何かが湧き上がってくる。 そしてそれによって全身が支配されるような、そんな衝動。 しかし、それをどう処理して良いのかわからず、たまきは戸惑いの声を上げた。 顔を覆い、身をよじる。 その仕草だけで、進藤の中の熱を掻き立てる。 進藤は身体を起こすと目を細めてたまきの柔らかな肢体を見下ろした。 「今・・・楽にしてやる」 そう、たまきの髪を掻き分けて耳元にささやきを落とすと、そっと肩口に唇を這わせる。 たったそれだけの行為。 それなのに、たまきは身体をびくりと大きく波立たせた。 全身が、敏感になっている。 彼の指の動き一本逃さぬように、唇の動き全てを感じられるように 神経が研ぎ澄まされているような。 こんな感覚になったことは今までない。 先ほどまで気だるかった身体が、突然息を吹き返したように感じられた。 たまきの白い肌に更なる赤い花を散らし、進藤の唇が降りる。 胸の膨らみを荒々しく掴むと、その頂を強く吸う。 「っ!!!!」 たまきの口から、声にならぬ叫びが漏れた。 それでも構わず、進藤は、淫らな動きで色づき張り詰めた突起を舌先で弄う。 「ふっ・・・だ、だめっ・・・そ、そんなっ・・・・・・・あああっ!!!」 たまきは思わず進藤の頭を抱え込んだ。 びりびりと、彼の口に含まれた胸の先端から全身に、甘く強い痺れが広がっていく。 そしてそれは、まるで毒を含んだ時のように、頭の芯をぼんやりとさせ、全身の動きを奪う。 肌は粟立ち、身体の芯は大きな熱を孕む。 もっと触れて欲しい、もっと、強く、激しく・・・。 そう、どこかで望んでいる。 先ほどまで、もうこれ以上は彼を受け入れられない、そう思っていたのに。 自分がおかしくなってしまったような戸惑い。 この変化は一体なんであろうか。 思いつくとすれば、彼が先ほど飲ませた、粉・・・。 「い・・・っせいっ・・・・・・嫌っ・・・あっ・・・・・あぁっ!・・・っ・・・!!」 大きく開かれる足。 進藤の肩へと乗せられ、動かぬよう固定されてしまう。 大きくさらけ出されたその場所に、彼の指が再び沈む。 「っぁぁぁアアア・・・・・・・」 ゆっくりと沈められていくその動きにあわせて、聞いたことも無い水音が響く。 「たまき・・・・・・聞こえるか?」 指の角度が変わり、それまで緩慢な動作だったものが、急激に高みへと導くものへと変わる。 彼の指先が、的確に弱い部分を攻め立てる。 そのたびに、粘着質の、淫らな音が鼓膜を打った。 「ひっ・・・・・やあああっ!!!!だ、だめぇっ!!!」 たまきはその音に恐怖心を抱き、思わず耳を塞いだ。 止めたいのに止まらない。 たまきの気持ちとは裏腹に、下肢は淫らに花開き、蜜を溢れさせる。 「き・・・・・・聞かないっ・・・・・・でっ・・・・・はあっ・・・・・あああっ・・・・・!!」 うねるような快楽。 たまきは涙を流し、進藤を見上げた。 「ふっ・・・・・・それは無理な相談だ」 そう告げると、進藤はたまきの泉へと口付ける。 ぴちゅ、と卑猥な音。 まるで蜜を飲みつくそうとするような動き。 進藤の喉が、こくりと動いた瞬間、たまきは羞恥心から身体を震わせた。 「たまき・・・」 甘い囁き。 そして、何度も泉に口付ける。 その度にたまきは背を逸らし、喘ぎを発した。 次から次に襲い来る快楽と戦い、シーツを強く握り締める。 汗ばんだ身体には自分の髪が張り付き動きを束縛する。 「くく・・・・・・何を嫌がっている。こんなにも濡らして・・・・・・腰まで振ってるじゃないか」 「ちがっ・・・・・・・あうっ!!!」 彼の嘲笑に否定の声を上げるが、すぐに花芽を軽く歯噛みされ、途切れてしまう。 腰を動かしているつもりはなかった。 しかし彼にそう指摘され、そして押さえ込まれているその力強さに かなり蠢かせていたということに気付く。 なんと淫らな動きをしてしまったのであろうか。 けれど、とめることなどできない。 どんなに制止をかけても、彼の動きに合わせるように身体は動いてしまう。 それは、彼によって慣らされてしまった、身体の正直な動き・・・。 亀裂に這わされていた舌が上へと上る。 腹部を撫でながら、舌の動きとは逆に手が下肢へと向かった。 先ほどまで舌が埋まっていた場所に、指が衝きいれられる。 何本かはわからない。 けれど、ばらばらと動くその激しさに、たまきは綺麗に背を反らせた。 「もっ・・・・・・いやぁぁっ・・・・・はっ・・・・・・ああぁっ!!!」 荒い吐息が胸にかかり、たまきの息も上がる。 胸元に顔を埋める進藤の首を掻き抱き、たまきは懇願の声を上げた。 進藤は身を起こすと、乱れた息を吐き出す唇を塞ぐ。 激しく貪り、自分の熱い吐息を送り込む。お互いに、限界まできていた。 「・・・一生・・・・・・・・・」 掠れた、甘い声。 進藤は躊躇うことなく、たまきの足を大きく開かせると、己を打ち込んだ。 「ふああああああっ!!!!!!」 背に回された指が爪を立てる。 あっさりと際奥まで到達するその感覚は、快楽の波をいっきに押し流す。 「っ・・・・締め付け過ぎ・・だ・・・・」 進藤の、苦しそうな声。 その低い声音に、また、身体の内が彼を締め付けた。 「・・・・・っ・・・」 耳朶を甘く噛み、舌を押し付ける。 ぴちゃ、という濡れた音に、たまきは小さく悲鳴をあげ、進藤の胸板に身体を押し付けた。 薬が、かなり効いているようであった。 果てたはずのたまきの身体は、初めの頃のように強く進藤を縛り付けた。 それどころか、それ以上の強さと暖かさ、そして蜜をもって彼を受け入れる。 「クッ・・・・・・」 挿入を繰り返しているうちに、下に敷かれたシーツはたまきの蜜で大きな染みを作り出している。その感触を膝に感じながら、更に蜜をあふれ出させるかのように、腰を打ちつけた。 「ひっ・・・・・あふっ!!ふああああっ・・・・・・・ンっ、ああアアアっ!!!」 快楽に耐えるたまきの顔はそこにはない。 今は進藤の与える激しさと熱とに溺れ、酔うように喉を逸らせる。 その顔が、心底美しいと、進藤はそう、思う。 熱っぽく潤んだ双眸、淡く開かれた薄紅の唇からは嬌声が漏れ 解れ毛が汗と涙とで頬に張り付く。 これ以上に美しいものが、この世に存在するだろうか。 たまきのこの面を見るまで、「美」というものに関してそれほどの興味は無かった。 女の趣味も、見るに耐えない顔でなければ別段こだわりはなかったし 人並みの「美」を感じることはあっても、それにこだわったり執着するようなことも無かった。 けれど・・・。 「ンっ・・・あぁあっ・・・はあっ・・・・・ああンっ」 乱れ、求め、快楽に酔うたまき。 その姿のなんと美しいことか。 そして、この顔が見られるのは自分だけ。 自分の手によって、この姿は作られる。 そう考えるだけで、進藤の身体の芯は燃え立つように熱くなる。 逸らされた顔。 露になった白い首筋に口付けを与え、無理やりこちらを向かせて唇を吸う。 「もっと鳴け・・・たまき・・・」 舌を絡めると、たまきもそれに応える。 繋がった下肢も反応し、蜜がまた、溢れた。 きっと、もう手放せない。 もしもたまきが離れたいといっても、きっと離す事は無いだろう。 そんなことは、許さない。 腰を引き寄せ、強く押し付ける。 やがてたまきの身体がびくりと大きく揺れ、今まで以上の高い嬌声があがった。 同時に吐き出される吐情。何度目かのそれをたまきはすべて飲み込み、そして気を失った。 白濁した意識から目覚めると、室内は僅かに白んでいた。 進藤はたまきの顔にかかる髪を掻きあげると、そっと腕にかかるぬくもりを見下ろす。 そこには、ぐったりと、まるで死んだように眠るたまきの姿。 進藤は、そっとたまきの額に口付ける。 そして肩に回した手で己の方に抱き寄せ、腕の中に閉じ込めた。 足を絡ませ、たまきが逃げぬよう、束縛を与える。 身体が、幾分だるさを感じる。 ここまで情欲に溺れたのは初めてかもしれない。 それでも・・・まだ、どこかで熱が燻っている こうしてたまきを抱きしめている間も、その燻りが炎に変わる瞬間が近付いているようで・・・。 また、あの顔が見たい。 その欲求が自分をまた、支配するであろう その瞬間がくるまで、進藤は、たまきの身体を更に強く抱き寄せた。 ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() |