消毒
進藤一生×香坂たまき


「一生」

進藤のマンションの玄関からたまきの声が聞こえた
だがその声は、いつもの様に自信に満ち溢れた声でなく、すべてに絶望してしまった様な声だった
 
「おいどうした…何があった!?」

たまきの服はあちらこちらが引き裂かれ、白い肌が所々露出していた
その姿は一目で「襲われた」と分かるものだった
 
「あ…たし…」

焦点の会わないたまきの瞳から大粒の涙が零れ落ちた

「あたし…もう…一生に抱いて貰える体じゃないの…」

進藤は一瞬、驚いて固まった。頭で、いつものように冷静になれず、焦る。

「とりあえず、中に入れ」
玄関に突っ立っているボロボロになっている香坂に自分の着ているものを羽織らせ、部屋の中に入れた。


顔には痛々しい痣。
進藤は香坂をソファーに座らせ、自室からTシャツとジャージを持ってきた。


「風呂に入って来い、あがったら怪我を消毒しよう」

そっと背中を摩ってやる。香坂は下を俯いたまま、力無くバスルームに向かった。

香坂は触れられた場所を隅々まで洗った。
身体が赤くなるまで。
殴られた恐怖、触られた屈辱が蘇る。手の震えが止まらなかった。

鏡に映る自分が痣だらけで痛々しく、目を逸らした。
進藤から受けとったジャージは大きすぎて、少し大きいTシャツだけを身につけて、バスルームから出る。

コーヒーの匂いが立ち込めていて、心が少しだけ落ち着いた。

「こっちへ来い。」

傍には救急箱が用意されていて、顔から手、脚と消毒された。冷たくて、かなり滲みる。

「…もういいわ、自分でやるから。」
「じっとしてろ、化膿したら困る。」

一通り消毒を終えて、熱いコーヒーを手渡される。
そして、背中を摩られ、ゆっくり抱きしめられた。

彼の優しさと温かさに、堪えていた涙が溢れ出す。
泣き顔を見られたくなくて、進藤の広い胸に身体を預けた。

彼の、匂いがした。

彼の匂いだと解っている。
抱きしめていてくれているのは愛しい人だと解っているはずなのに 
たまきは無意識のうちに進藤を突き飛ばした。 

「っ…!」

小さな悲鳴と共に。 
明らかな拒絶だった… 

「あ…ごめん、なさい……」

たまきは自分のとった行動に驚き、動揺を隠し切れずも謝った。 

彼の腕の中は1番安心出来る場所のはずなのに 
抱きしめて、大丈夫だと 
言って欲しかったはずなのに 
いざされるとそれを拒んでしまった自分。 
もう、どうすればいいのかたまきは解らなくなった。

彼の傷つく瞬間の顔を見てしまった。

彼の匂いが一番好きなのに、彼の腕が一番好きなのに、彼の温かさが一番心地が良いのに。

…どうしてなの?

今日のことを身体が鮮明に覚えているからか、進藤まで拒絶してしまう自分が、弱すぎて情けなく感じた。
1番愛してる人を困らせ、傷つけてしまう。

「…ごめん、なさい…。」

ただ、謝ることしか出来ない自分に悲しくなる。

「気にするな。今日は、もう休んだ方がいい。」

そう言って優しく離れようとする進藤の服の袖を震える細い手で引っ張る。

「…ここに居て欲しいの。」

どうしていいのか、わからない。けれど、きっと彼を困らせているのは確か。


お願い、どうか面倒な女だと思わないで。
私を一人にしないで。

「…ごめんなさい、今のは忘れて。私どうかしてるわ。」

今日だけで何回謝っているだろうと頭の隅で考えた。

進藤は優しすぎる。だから我が儘を言って、甘えてしまう。

でも、迷惑かけたくないと思う自分が居て、仕事を優先して欲しいと思うのも確かで。
矛盾ばかりな自分に嫌気がさした。

「…このままだと、あなたに嫌な思いをさせてしまうわ。」

それに、と続ける。

「…もう…私はあなたに抱いて…貰えるような身体じゃ…ないから。」

だから別れましょ。

その言葉だけを言うだけで、かなり時間がかかった。
自らの腕を力強く抱きしめ、ゆっくりと本心を口にした。瞳から一筋の涙が静かに流れた。

この身体は汚れてしまったと、心の中で呟いて。
進藤の顔を見ることが出来ずに俯く。傍にあった大きな影が動いた。

「…お前は、他の誰でもない。俺が愛してるのは、お前だけだ、たまき。」

香坂を見つめる進藤の目は真っ直ぐだった。香坂の目から大粒の涙が溢れ出す。

ぽたり、と雫が露になっている細い太股に落ちて、濡らしていく。

「愛してる…なんて、やっぱり、あなたには似合わないわ。」

涙は止まることは無かったが、彼女は微笑んでいた。

今日、初めて見た彼女の笑顔だった。

「やっぱりお前は笑ってる方がいい。俺はその笑顔があれば、何も要らない」

再びそっと抱き締めるてみる
たまきはびくりと反応したものの、今度は拒まなかった。 
それを見て進藤も安心さたように微笑む。 

「ありがとう…」 

そんな進藤に向かって、たまきは辛うじて 聞き取れる声で呟いた。
こんな自分をも受け入れてくれた彼だからこそ 
自分も彼を受け入れたい。たまきは意を決して口を開いた。 

「一生。私の身体…消毒して…?……お願い……」

「お前、身体は大丈夫なのか?」

心配そうに見つめる進藤に微笑んで頷いた。
今は、ただあなたを感じたい、と進藤の耳元で静かに囁いて。

いきなり、ふわりと身体が浮き上がる。細い身体を抱き抱え上げられていた。
そのままベッドルームへ連れていかれる。
足で扉を開けた彼の顔見ると、真剣な表情をしていた。
静かにベッドに身体を降ろされると、そっと口づけをされる。

月の光に照らされる香坂の美しい顔に触れて、もう一度口づけを交わす。

優しく触れるだけのものから、だんだん深いものに変わっていく。

「一…生、っ…待って。」

舌が絡み合う。息が苦しくなり、身体が酸素を求める。
唇を離すと、進藤は白い首筋に唇を移して、息を吹き掛けた。
ぞくぞくとした快感に胸の先端が尖って、Tシャツの布を持ち上げた。

その様子をじっと見つめる進藤に、

「やだ…っ、あんまり見ないでよ。」

涙ながらにそう訴え、胸を隠した。

「そう言われると余計に見たくなる。」

香坂の言葉を完全に無視して、香坂の手を除けて、Tシャツの上から胸を揉んでいく。

「あ…っ、ん…!」

愛撫の刺激が、だんだん強くなり、喘ぎが漏れる。
Tシャツをめくり上げられる。胸の頂を吸われ、脚をじたばたさせると、押さえ込まれた。

「…っ、は…ぁ…っ…!」

止むことのない愛撫の嵐に目を閉じて喘ぐことしか出来ない。
そっと目を開けると、彼と目が合って恥ずかしくて、下に目を逸らした。

「嫌なことは忘れさせてやる。」

彼の低い声に、捕らえられた気さえした。
蜜が太股を伝う感触がした。






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