彼の体力
進藤一生×香坂たまき


「なんだこのカルテは!!!」

人気の少ない医局に怒号が響く。
空気を振るわせるその怒気に、たまきは思わず身を竦めた。

「こんな書き方じゃ専門外の人間が解らないだろっ!!!」

「解ったわよ!やり直せばいいんでしょ!!」

「当たり前だっ!!」

付き返されたカルテを押し抱き、たまきは自分の席に戻る。
が、なんだか進藤の様子が変な気がして
カルテを開きつつも、ちらりと進藤を見やる。
カルテの不備で突き返されることは稀にあったが
常ならば厳しい言葉一言で終わるはずであった。
頭ごなしに怒鳴られることなど、そうそうない。
いつもと、雰囲気が違う。
いつも共にいるたまきは即座にそれを感じ取った。

カルテに目を通す進藤の顔。
いつもより青白く見えるのは気のせいであろうか。
眉間に刻まれた皺も、いつもよりも深い気がする。

もしかすると・・・
1つの心当たりが浮かび、たまきは音を立てないように立ち上がると
ゆっくりと彼の横に歩み寄る。
進藤が気付き、振り返る瞬間を見計らい、額へと手を当てた。

「!!!!進藤先生!!貴方すごい熱よっ!!?!」

手にじわりと伝わる熱に、たまきははっと息を呑む。

「なんてことはない。」

たまきの手を鬱陶しそうに振り払い、進藤はカルテへと視線を戻した。
あくまで何事も無いように装い、仕事を続けるつもりだ。

「何処がなんでもないのよ!!ベッドで休んで!!」

「煩い。自分のことは自分がよく分かってる!大丈夫だ。」

「駄目よ!主治医の言う事が聞けないの?!」

いつも以上に、強く言ってくるたまきに、進藤は苦々しげに舌を打つ。
これ以上言葉を発しても無駄だと判断したのであろうか
あえてたまきを無視し、無理やりカルテへと意識を向けた。

その態度に、たまきは思わず進藤を睨みつける。

「そう、言う事が聞けないなら・・・別れるんだから」

「何?!」

思っても見ないたまきの宣言に、進藤は凄まじい形相でたまきを睨みつけた。
それに僅かに怯みつつも、ぐっと堪えるとたまきは挑むように彼を見上げる。
進藤の顔に、明らかな苛立ちが浮かぶ。

「私は、本気なんだから」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・まったく・・・・・・」

空中でぶつかり合う視線と視線。
逸らしたのは進藤の方だった。
深く息を吐き出すと、カルテを机の上に置いた。

「分かった」

それだけ返事をし、進藤は立ち上がり歩き出す。
たまきはほっと胸を撫で下ろすと、その場を大まかに片付け、進藤の後を追った。

 「やっぱり風邪ね。しばらくゆっくり休むのよ?」

今日使う予定のない処置室のベッドを借り、大まかな診察を行い
たまきは進藤の腕に注射を打つと、机に向かってカルテを書きながら話しかけるも
返事が一向に返ってない。
怪訝に思い、進藤がいるベッドへと振り返り見ると、ぐったりと眠り込んでいる進藤の姿。
よっぽど辛かったのであろう。
それなのに、無理をして、虚勢を張って
大丈夫だと言い張って・・・・・・。

たまきは小さく微笑むと、進藤の枕元に歩み寄り、そっと覗き込んだ。
まだ顔は青白いが、眉間の皺は解かれている。

「良かった・・・ったく、世話が焼けるんだから・・・」

やり方は少し強引だったかもしれない。
けれどそのお陰で今、彼はゆっくりと身体を休めている。
寝息も穏やかで、もう心配することは無いだろう。

「本当に、仕事好きの頑固者・・・・・・」

たまきは布団を引き上げ、肩までかけてやる。
そして目覚めたときのため、水を取りに行こうと踵を返したその時だった。
くい、と白衣を引かれ、先に進めなくなる。
振り向けば、白衣の裾を進藤が掴んでいた。

「一生?」

起こしてしまったのだろうか。
そう思い彼を再び覗き込むが、彼はまだ眠っていた。
寝ぼけて掴んだのかもしれない。
でも、これでは動けない。
どうしたものか悩み、きょろきょろと周りを見やる。
外は昼を過ぎ、だんだんと日差しを緩めている。
出来る事ならば、ここに仕事を持ち込んで
進藤の分まで少しでも先に進めたかった。
しかし、掴まれてしまえばこの場を離れることすらできない。

「仕方ないわね・・・・・・」

たまきは小さくため息をつくと、その場に座り込んだ。
ベッドに寄りかかり、進藤の顔を覗きこむ。
穏やかな寝顔。
こんな顔を見て、誰がさっき怒鳴り散らしていた人物だと思うだろうか。

たまきは穏やかに微笑むと、ベッドの上にことりと頭を乗せ
じっと進藤の顔を見つめ続けた。

遠くで騒がしい音が聞こえる。

たまきはその音に、はっと我に返った。
目覚めれば、辺りは薄暗く、部屋の隅のほうはよく見て取れない。
窓の外は夕闇が訪れ、空の色は緋色から深い藍の色合いを醸し出していた。

どうやらたまきも眠っていたらしい。
慌てて身体を起こし、進藤を見るがまだ目覚めてはいない。
あの騒がしい音は、もしかしたら自分達を探しているのかもしれない。
そうは思うも、あまりに気持ちよさそうに眠っている為、起こす気になれない。

「とりあえず、私だけでも戻らないと・・・」

立ち上がりかけ、進藤に掴まれている事を思い出す。
進藤の手をそっと開かせ、白衣を抜き出そうとした、その時だった。

「!!!!」

力なく握られていた手が、突然たまきの腕を掴んだ。
その行為に驚き、たまきは目を見開き進藤を見る。

鋭い、視線。
睨んでいる訳ではないが、射抜くようにこちらを見上げてきている。
その鋭さに、たまきはドキリと胸を高鳴らせた。

「進藤・・・先生・・・?」

何も言わず、ただ見つめる進藤に、たまきは不安になり口を開く。
すると、いきなり腕を強く引かれ、ベッドの上に引き上げられた。
どこにそんな力が残っていたのだろうか
たまきは目を白黒させながら、覆いかぶさってくる進藤を見上げた。

「んっ・・・・・・」

齧り付くように唇を塞がれる。
熱い舌が口内を動き回り、自分のそれを煽るように絡みつく。

「んんっ・・・・・ンむっーーーっ!!・・・・・・はあっ」

 やっとのことで解放され、たまきは息苦しさから息を大きく吐き出した。

「ちょっ!・・・いきなり何するのよ・・!」

口を開いた瞬間、また深く口付けられる。
じたばたと暴れる身体を押さえ込まれ、両腕はシーツに強く押し付けられる。

濃厚な口付けに、頭がぼんやりとしてきた時、進藤の手が動く。
服の上から膨らみをさぐり、掴み上げる。

「ま、待ってっ・・・・・・ダメよっ!貴方まだ熱があるのよ?!ゆっくり休まないとっ・・・・・・」
「黙れ。お前の言うことを聞いて、休んでやったんだ。俺の言うことも聞くのが道理というものではないか?」

「そんなっ・・・・・無茶苦茶なっ・・・・・・あ・・・・・・!」

進藤の両手が、服を脱がしにかかる。
たまきは咄嗟に腕をつっぱり、彼の身体を押し返す。
ここでこんなことをしては、体調が悪化してしまう。

「ダメだってばっ!一生っ!!」

「・・・・・・面倒な・・・・・・」

必死に抵抗をするたまき。
お互いに揉め合い、やがて進藤の手が緩む。
ほっとしたのも束の間、進藤の口から気だるそうに
ひやりとする声音が落ち、たまきは思わず身を竦めた。

たまきの手が再び伸びる。
肩を強い力で掴まれ、身体を裏返される。
抵抗しようともがく身体を抑え込まれ
後ろ手に一つにまとめられ、何かで縛られる。

「!!何で縛るのよ?!」

突然の暴挙に、たまきは狼狽の声を上げた。
しかし進藤は止まろうとはしない。
振り返ろうとした瞬間、目の前を何かがで覆われた。

「これで、嫌でも大人しくなれるだろ?」

「ま、待ってっ・・・・・・やめてっ、怖いっ・・・」

たまきの胸中が恐怖で支配される。
縛られ、目隠しをされ、一体どうなってしまうのか。

そんな不安を余所に、進藤の手が服の隙間から中に差し入れられた。

「い、いやぁっ」

まさぐられ、膨らみを荒々しい手で掴まれる。
いつもより熱い、手。
やはり熱がまだあるのだろう。

「ふっ・・・・・ううっ・・・・・あああっ」

指先が、突起を摘む。
いいように転がされ、背筋を甘い痺れが駆け上がる。

「だ、だめっ・・・・・・やぁっ」

「うるさい口だな。・・・・・・そこも塞いで欲しいのか?」

からかう様な、それでいてぞくりとする声音。
たまきは咄嗟に唇を噛み、口を閉ざした。

「ふっ・・・冗談だ・・・それじゃつまらない。」

進藤の、骨ばった手が身体の線を辿る。
その動きに合わせ、たまきの細い身体が跳ね上がる。

「いい声で啼け・・・・・たまき・・・・・・・」

狂気じみた囁き。
その深く低い声に、たまきは心臓を鷲掴みにされた感覚に襲われた。
鼓動が止まらない。
そしてそれを煽るように、進藤の手が再び膨らみを揉みしだく。

「あっ・・・・・ああっ・・・・・・ぃっ・・・・・・」

彼の手から逃れようと身をよじる。
しかし、彼の手は執拗に胸を弄う。

「いやらしい身体になったものだな・・・・・・。こんなに硬くして・・・・・・そんなに触れて欲しいのか?」

「ふぁあっ!!」

張り詰めた突起を強く摘み上げられ、口からはあられもない喘ぎ声が漏れた。

たまきは恥ずかしさに顔を背けた。
目隠しをされ、両腕も拘束されて
こんな形で身体を弄われるなど初めての経験で。
自分は見えないのに、彼は自分の姿が見えている。
次に彼が何をするのか、分からない不安。
そして、いつも以上に言葉で責め立てる進藤。
全ての行為がたまきの羞恥心を掻き立てる。

やがて、下着に手が掛かり、そのままずり下ろされる。
解放感に包まれる下肢。
いつも以上に外気を感じるのは気のせいだろうか。

「あ・・・・・・」

足の先から、下着が滑り落ちる。
それを感じた次の瞬間、身体を引き起こされ、胸に、硬い熱を感じた。

それが、進藤の胸板だということに気付くのに、それほどの時間は要さなかった。足と足の間にもぬくもりを感じ、彼の身体を跨ぐようにして向かい合っているのだということを知る。

「・・何をしようと・・・してる、の?」

「いい姿だな、たまき」

くくっ、と喉の奥で笑う声。
自分がどんな姿でいるのか、たまきには想像することもできない。
だが、進藤の煽る言葉が、頬を上気させた。

進藤はたまきの服をたくし上げ、背中を摩りながら膨らみを目指す。
小さな、けれど確かな柔かさのあるそこへ。
予測の付かない動きに、たまきの身体は過敏に反応する。
それを暗い笑みでうっとりと見つめながら、進藤はたまきの突起を親指の腹で強く擦り上げた。

「ふあっ!ンっ・・・・・・い・・・いやぁ・・・・・」

「ならばやめるか?」

「お願いっ」

焦燥の声を上げると、進藤がまた笑った。
手が、焦らすように滑る。
腰の線を滑り落ち、足の付け根を通り、そして・・・・・・。

「はっ・・・・・・!!!!!」

ちゅくっ、と微かな水音。
長い指が、泉に埋められた瞬間、たまきは息を呑んだ。

「・・・濡れているな・・・・・・」

「ああアっ・・・・・・ンっ・・・・・・あああっ」

指先にたっぷりと蜜を絡め、何度もそこを行き来する。
その度に、たまきの身体は小さく跳ねた。

「わかるか?どれだけ濡れているか・・・・・・」

くちゅり、と指をくねらせ、わざと音を立てる。
その生々しい音に、たまきは大きく肩を震わせた。

「や、やめてっ・・・・・・音、立てないでっ・・・・・・ああっ!」

 たまきの頬が羞恥で濃く染まっていく。
その様子に気を良くした進藤は、更に音を立てるべく、激しくそこを掻き回した。

「ひぁっ!!やっ・・・・・・そんな、乱暴にっ・・・しないで!・・・・あぁ、ンっ!!」

足を閉じようにも、彼の身体を邪魔をしてそれを許さない。
いつもならば、彼の肩にしがみ付き羞恥心と快楽に耐えていられたのに。
両手は後ろ手に縛られ、縋りつくこともできない。

 ちゅくちゅくと、今まで聞いた事も無い音が、たまきの耳を侵す。

「俺の手をこんなにも濡らして・・・見せてやりたいよ・・・」

「んんっ・・・!や・・・・ぁっ・・・!・・・・貴方の・・・所為・・・よっ!!」

「俺の所為?だが・・・・・・実際に濡らしているのはお前だぞ?」

進藤の手が、大腿の内側を撫でる。
べっとりとした濡れた感覚。
かなりの蜜があふれ出しているということを否が応でも感じさせられた。

たまきは自分の身体が自分のものでないように思えた。
いつも以上に、身体が敏感になっているように感じられてならなかったのだ。
進藤に身体を触れられるだけで、そこからくすぐったいような感覚が全身に広がる。

「何本入っているか、分かるか?」

「うっ・・・・・・ふうぅっ」

たまきは首を激しく横に振る。

「これなら・・・・・・わかるか?」

「ひあぁぁっ!!!!」

彼の指先がつぷ、という音を立て更に深く侵入し、敏感な場所を突く。
たまきは堪らず、背をしならせた。
突き出されるように曝け出された胸の双丘。
その頂を、進藤は口に含む。

「あっ・・・・・・うっ・・・・・・んっ・・・・・・やぁぁっ」

「答えろ・・・」
 
喘ぎばかりを上げるたまきをあざ笑うかのように
進藤は胸の突起を舌先で転がしせがむ。

「そ・・・・・・んなっ・・・・・わからな・・・・・・あああアアアっン!!」

 身体の奥深くを掻き混ぜられ、ねっとりと胸を舐めとられる。
いつも以上に陰湿な動き。
たまきの腕が、進藤を求めるように何度も引きつる。
しかし腕は束縛され、思うように動かない。

「解らない?・・・・なら・・・・・・・これなら解るだろ?」

と、身体がふわりと浮いた感覚に襲われる。
次の瞬間には、背中に硬い床の感覚。
仰向けにされたと気付くが、下半身をすぐに固定されてしまう。

たまきは嫌な予感がし、逃げようと、もがくが
すぐに押さえ込まれ、その濡れた泉に何かが押し付けられた。
生暖かく、ぬるりとしたやわらかい物・・・・・・。

「っや・・・!・・・ぁあああっ!!」

水音が聞こえる。
耳朶を打ち、まるで脳内を犯されるようであった。
敏感な場所を、何度も行き交うそれ。
腰を抱え込み、奥深くから蜜を誘うように、強く何度も吸う。
その感覚だけが、やけに生々しく身体に刻み込まれていく。

「あ・・・・・・ンぅ・・・・・・ああっ・・・・・・はああっ!」

知らず知らずのうちに腰が揺らめく。
しかし、がっちりと押さえ込まれ、思うように動けない。
そのもどかしさと、何度も耳の奥に響く水音とに
たまきはどうにかなってしまいそうであった。

それでも進藤は、決してすぐには絶頂を迎えさせてはくれない。
焦らすように、それでいて進藤だけが満足する行為を与える。
どんなに足掻いても、どんなに強請っても、すぐには解放してくれない。
それが、進藤のやり方・・・・・・。
それに耐え切れず達した時など、許容を超えた責めで身体を貫かれる。
そうして教え込まれたのは、「焦らす行為に耐える」ということだった。

 しかし、目を覆われ両腕を拘束され、尋常ではない体位で身体を弄われる

その状況が、いつもの忍耐力を弱めさせている。
ただでさえ、焦らされているというのに
言うことを聞かない視覚や両腕のもどかしさが拍車をかけている。

「達するなよ、たまき」

低い声が、楽しむように釘を刺す。
たまきの体が、びくっと僅かに震えた。
たまきの息は、これ以上ないほど上がっている。
限界がそこまできているらしい。

頬を染め、空気を求めて意味ありげに開く濡れた唇。
目を布で覆われ、後ろ手に縛られたその姿は
これ以上ないほど嗜虐心を煽った。
今、間違いなくたまきは自分の手中にいる。
自分が支配し、そして自分の指の動き一本でどうにでもできる状態なのだ。
進藤の背筋を、ぞくり、と何かが駆け上がっていく。

「・・・お前は、俺のものだ・・・・・・全て・・・・・」

再び、焦らすように舌先をくねらせる。
はっとたまきが息を呑む感覚に、ひっそりと笑う。
蜜が、とめどなくあふれ出し、進藤の頬にかかる髪までも濡らしていた。

「達したいか?」

試すような口調。
たまきは見えぬ目で進藤の姿を探し
気配のする方向へ向けて、ちいさく頷いた。

「そうか・・・なら・・達け」

足を大きく開き、自らの腰を深く埋める。
たまきの背が、引きちぎれるほど大きくしなる。

「っ・・・・・・ああぁぁぁっ!!!!!」

焦らされた身体に、それは大きな衝撃をもってたまきに襲い掛かる。
白い首が引き絞られ、高い声が零れ落ちた。

内部の激しい収縮。
進藤を締め上げ、更に内へと引き込む。

「ふっ・・・・・・貪欲だな・・・・・・入れただけで達するとは」

「あ・・・・・うっ・・・・・・あああっ・・・・・い・・・っせ・・・」

嗚咽交じりの甘い声。
自分がどれだけ酷いことをしているか、訴えてくる。

「動くぞ」

「だ、だめっ・・・・・・も・・・・・少し待って・・・・」

「聞こえんな」

喉の奥で笑い、腰を打ち込む。

「うっ・・・・・ふあああっ・・・・・・あっ・・・・・・あっ・・・・・・あああっ・・・・」

緩急つけて打ち込まれる楔。
そのたびにたまきの身体が波打つ。
ずぷずぷと、淫らな音が室内に響いている。
目が見えないというだけで、音をこんなにも激しく感じてしまうものなのだろうか。

「・・っや・・・・激しっ・・・い・・・、っせっ・・・・・・あああっ」

絶頂を迎えた身体に、激しく進藤が出入りする。
時折、無理やりな動きが混ざり、鈍い痛みが走ったが
それすらもやがて、快楽に変えていく。
いつも以上の激しさ、そして肌に感じる体温。
接している場所は限られているが、離れた肌にも彼の熱を感じる。

恐らく熱が上がってきているのだろう。
進藤の体調から考えても、もうこの辺りでやめたほうがいいのかもしれない。
しかし、進藤にその気はなく、さらに自分を求めてくる。
そうなってしまえば、たまきにはどうすることもできない。
ただ、彼が望むままに、身体を預けるしかないのだ。

「んぁっ・・・・・・っ」

 力の抜けた身体を、突然横にされる。
後ろ手に縛られていたため、自重と彼の重さとを受けていた手は痺れており
その体位によりその痺れからは解放される。
しかし、体内には激しい衝撃が走り、たまきは、身体を硬直させた。

「たまき・・・・お前は・・・・・・俺のものだ・・・・・」

先ほどよりも深く繋がり、最奥に彼の熱をありありと感じる。
そして、耳元に降りる低く、掠れた声音。
全てが、たまきの身体を熱くさせた。

「・・・・ンっ・・・・・素直に・愛してる・・・・って・・・言えな・・・の?!・・・・んんぅっ」

言い終わる前に唇を塞がれ、口内を蹂躙される。
口の端を流れる唾液さえも吸い取られ、息つく暇もないほど、貪られる。
たまきからも恐る恐る舌を絡めるが、進藤の動きについていけず
されるがままの常態であった。

だけどこの瞬間。
言葉に出来ない想いが、伝わるような感じが
それが何よりもたまきは幸福だった。
たとえ、こうして目隠しをされ、束縛されようとも
それだけ、彼のことだけを考えることが出来る。

彼の想いを、熱を、漏らさぬよう感じ取ろうとする。
傍から見れば、酷い行いかもしれない。
けれど、その端々に、確かな進藤の想いを優しさを感じることが出来るのだ。

「うっ・・・・・・くっ・・・・・・・あっ、あっ、・・・・・・ああああああっ!!!!」

 視界が白く霞む。
深い場所を何度も突き上げられ、耳元に、彼の激しい息遣いを聞いた瞬間
張り巡らされていたあらゆる糸が切り離されたように、全身に浮遊感が襲った。
体内に、吐き出される熱い、もの。
それを全て飲み込み、たまきはぐったりとベッドに伏せた。

「たまき・・・・」

進藤の手が伸び、目隠しと束縛とが解かれる。
突然の解放感に、ぴくり、と身体が反応を示す。

目の前には、着衣を乱し、いつもより熱い息を吐く進藤の姿。
息が僅かに切れているのか、肩が上下していた。
たまきはその姿に心臓が大きく高鳴るのを感じた。

「まだ、物足りないか??」

にやり、と笑う進藤。
その笑みに、自分の身体の中にまだ進藤がいることに気付く。

「あ・・・・・・」

思わず軽く締め付けてしまったことに、たまきは恥ずかしそうに頬を染め
視線を逸らした。

「病人相手に・・・・主治医が聞いて呆れるな・・・」

「なっ!!、最初は、貴方がっ・・・・・!!!」

「ふっ・・・・・・だがそれに乗ったのはお前だ」

「目隠しされて、縛られて、どう抵抗しろって言うのよっ」

「・・・さぁな」

「どうしてそう・・・・!!」

言い返そうとするたまきの肩口に、進藤の唇が降る。

「も・・・・・・ダメよ。貴方は休むの。これ以上したら、もっと身体を壊すわよ」

「そうか?さっきよりも、だいぶ体調はいいがな」

「気のせいに決まってるじゃない。医者が何言ってるの・・・」

「なら、試してみるか?」

「!!!!!」

 進藤の手が動く。
身体の位置がまたしても変えられ、たまきはその衝撃に、ぎゅっと目を瞑った。

 いつも以上に手に負えない進藤。
不調になるとそれに拍車がかかるように思うのは自分だけだろうか?

彼に再び貫かれながら、たまきは彼の体力よりも
果たして自分の身体が持つのか、ふと不安に駆られたのだった。






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