進藤一生×香坂たまき
![]() 「…おい!」 「…何?」 煙草を燻らしに屋上にやってきた彼が見たのは、約1ヶ月ぶりの彼女の姿だった。 進藤に気付いて、はっとするも、ふいと顔を逸らしてしまった。 進藤も何を言って良いか判らず、長い沈黙が続いた後、ようやくしぶしぶながら口火を切った。 「今夜は、帰ってくるんだろうな?」 「・・・・いいえ。」 たまきは言うと後ろを向いてしまった。 「大体、帰るって何?私たち一緒に暮らしてるわけじゃないのよ」 わざと進藤を怒らすような挑発的な物言いと嘲り。 ため息をついて、進藤は言った。 「まだ怒ってるのか」 しょっちゅうあるわけじゃないが、たまに彼女の癇に障ることをしてしまうことはあった。 気の強い彼女と、口下手な自分。 それでもお互い惚れてしまっているのだから、なんとかなるようにはなってきたけれど。 1ヶ月も部屋に来ないなんて、初めてだった。 それほど彼女を怒らせてしまうとは。 同じ病院でも職場が違うので、この1ヶ月、ほとんど彼女の顔を見ていなかった。 進藤の問いかけに答えず、そっぽを向いているたまきの顔を、ちゃんと見たいと思って足を進め、 2人の距離を縮める。 白衣のポケットに両手を突っ込んで屋上からの景色を眺めている彼女の、腕を強く握った。 「ちょっ、何するのよ?」 やっと間近で見られた彼女の顔は、眉を上げ瞳を見張り口をへの字に結んだ、冷たい怒りの表情だった。 胸に哀しみと苛立ちのようなものを感じる。 「いい加減、帰って来い。お前も子どもじゃないだろう」 「お前はやめて!」 「ちゃんと謝ったじゃないか。何が不満なんだ?」 「謝った?あれで?」 掴んでいた腕を大きく振り解き、またそっぽを向いてしまう。 「貴方何も解ってないわ!」 何を解っていないというのか。 彼女の心が理解できなかった。 いや、本当はうっすら判っている。 自分の態度に怒っているのだろう。 誤解して勝手に怒り出した彼女に、苛立って冷たい態度を取ってしまった。 もっと優しく丁寧に説明してやれば良かったのだろうが、そんなにたくさん言葉が出てこなかったのだ。 彼女の気持ちも察し、俺も悪かったと表面的に謝った自分の態度が、 彼女の瞳には傲慢に映ったのだろう。 気持ちを伝えるのが下手なところは、お互い似ていると思う。 彼女がこんなに怒っているのは傷ついたからだと解ってやりたかったが、 同時に、何故こういう性格の自分のことも解ってくれないのかと苛立ちも募る。 もどかしい。 解ろうとしない彼女が。 そんな彼女を持て余している自分が。 どうしようもなくもどかしい気持ちが、進藤を動かした。 「たまき」 後ろから抱きすくめた。 「ちょっ…」 「帰ってきてくれ。頼む」 「・・・・・・」 精一杯気持ちを伝えたくて、だけど出た言葉はたったそれだけのシンプルなもので。 改めて、自分のこの性格を呪いたくなる。 それでも彼女の心には何か響いたようで。 今度は振り解かれはしなかった。 口唇を尖らせ哀しげに瞳を揺らし、何か考え込んでいた。 久しぶりに感じる、彼女の体温は温かく、焦がれていたものをついに抱いたことに、胸が熱くなった。 愛しい女。 どうしてそれを口に出して言ってやれないのだろう。 全身に感じる彼女の鼓動。 服の上から感じる、柔らかな肌。 口唇を寄せた彼女の髪の滑らかさ。 香水とともに昇る、この距離でなければ判らない、甘い香り。 1ヶ月も失くしていたものに触れられたことが、進藤を昂らせた。 「…ずるいわよ」 彼女が尖らせた口を割って言った。 「何の解決にもなってないじゃない」 そう言いながらも進藤の手を振り解こうとする様子はなく、 手をポケットに突っ込んだまま動こうとする様子もなかったが、 俯いた瞳にこころなしか涙が溜まっているような気がした。 「たまき・・・」 口唇を髪から首筋に移し、そして項に這わせた。 「ちょ、やめてよ!」 たまきはびっくりして抗議するが、進藤は止める様子はない。 項から首の付け根、そして鎖骨へと口唇が這う。 「っ・・・何処だと思ってるのよ!」 「・・・なら、帰ってこい」 「なっ・・・」 「来ないなら、止めない」 鎖骨の上を、強く吸う。 「ちょっ・・・!止めて・・・そんなところ、見えちゃうじゃない・・・」 「・・・だからだ」 「いや・・・ねぇ、本当に止めてよ。跡が残ったら・・・」 プライドの高い彼女には、耐えられないだろう。 判っていて、進藤はやっていた。 堪らず、進藤の身体を振りほどこうとたまきはもがいた。 そんな彼女の抵抗が可愛いものと思えるほど、進藤は更に強くたまきを抱きしめる。 たまきがむきになってもがけばもがくほど、愛しさと残虐な気持ちが生まれた。 何故、帰ってくると言わないのか。 自分と会わなくて、平気なのか。 俺は、こんなにもこの女を求めているというのに。 ならば彼女にも、俺を求めさせてやる。 進藤の手がおもむろにスカートの中に入り、腿を辿り脚を少し開かせた。 「えっ・・・」 気付いたときには遅く、彼の手は下着の上から彼女の敏感な部分をなぞっていた。 「止めてよ!ここ病院よ?貴方正気なの!?」 抗議の声を聴こうともせず、進藤は柔らかな愛撫を続ける。 彼女は進藤の腕を取り、必死に止めようとする。 「い、や、っ・・・!」 瞳を瞑り必死に力を込めて止めようとするも、進藤の力に敵うはずもなく。 こんなのは嫌だと思っているのに。 自分の意思とは裏腹に身体の芯が熱を帯び始めたのが判った。 その屈辱が彼女の身体から力を奪う。 進藤の手が下着の脇からすっと侵入した。 1ヶ月ぶりの、直接触れる彼の指の感触。 小さな突起に触れられた瞬間、身体がひゅっと跳ねた。 「・・・っ・・・」 喉の奥で必死に声を噛み殺したのが、進藤には判った。 「どうした?此処が、いいのか?」 耳朶を噛まれ、囁かれる。 「やっ…止めて…」 抗議の声が少し震えていた。 徐々に湿ってきている。 しばらく突起を弄んだ後、 「此処も、いいんだったな・・・」 進藤の長い指が、突起の下の敏感な割れ目へと移動する。 割れ目の周りをこそばすようにでなぞられ、たまきは思わず瞳を瞑った。 「や…止めてったら!」 「止めていいのか?こんなになってきているのに・・・」 湿りははっきりと蜜とわかるくらいになり、少しずつ溢れ出していた。 それを確認して、進藤は割れ目の中へ長い指を侵入させた。 「ぁっ・・・」 思わず声を上げた彼女に、密かな悦びを感じた。 進藤は彼女の中を緩やかに掻き回し、敏感な部分を探り当てる。 ゆっくりとした丹念なその愛撫に、蜜はさらに溢れ出し、指が動くたび淫らな音が響いた。 「・・・お願い。本当に、止めて?誰か来たら・・・」 彼女の抗議が懇願へと替わり、見れば息遣いも荒くなっている。 進藤の腕を掴む手も力なく添えられ、たまきは進藤の身体に寄りかかるようにしている。 立ってられないのだろう。 そんな彼女に、愛しさが募る。 こんな姿を誰かに見られるなんて、彼女には耐えられないだろう。 俺だとて、この表情を、この啼き声を、もう俺以外の誰にも晒させたくない。 それでも。 止めるわけにはいかなかった。 懇願を無視し、指を更に一本、侵入させた。 「ひゃ・・・っ・・・」 思わず漏れる淫らな声を、必死に我慢しようとしている。 その声をもっと聴きたい。 ならばどうしても彼女を帰ってこさせなければ。 人指し指は浅いところをゆるゆると刺激し、中指は奥へと侵入させる。 同時に、親指で敏感な突起を擦った。 「あっ・・・ん・・・ん・・・」 必死に押し殺すも漏れてしまう声と同時に、無意識にかたまきは腰を揺らし始めた。 止め処なく注がれる優しく激しい愛撫に、溢れ出たものが彼の手を伝い漏れてゆく。 自分の手でこんなにも乱れてくれる彼女に愛しさが込み上げ耳の後ろに舌を這わすと、 「ぁん・・・」 いつもベッドの上でしてくれる反応を示す。 嬉しくて、もっともっと追い詰めてやりたくなって。 進藤に身体を預け、力なく空を彷徨う瞳は妖艶で。 息も絶え絶えに喘いでいる彼女に、限界が近いのではと悟り。 浅く貪っていた指をも奥へと進ませ、ふたつの指で彼女の中を少し深く貫くと、 「はっ・・ぁ・・ん・・・」 濡れた声と同時に彼女の中がきゅうっと絞まり、達したのが判った。 指を挿し込んだまま、進藤はしばらく指を締め付けてくる熱い感触を愉しんだ。 やがて指を引き抜き、彼女の白い額に口付けすると、たまきはがくっと崩れ落ちた。 慌てて彼女の腕を掴む。 「大丈夫か?」 手をついて、肩で息をしている。 こんな場所でした所為もあるのだろうか。 あんな粗雑なやり方で、こんなにも彼女が感じて、まさか達してくれるなんて。 それともやはり彼女も、自分のことを恋しいと想ってくれていたのだろうか。 抱きしめてやりたい衝動に駆られ、その身体に手を伸ばすと、たまきがきっと顔を上げた。 眉を寄せて進藤を睨みつけるその瞳には、涙が溜まっていた。 「酷いわ。」 その言葉に、進藤ははっとした。 先ほどの自分の自惚れを自嘲し、自分がしたことの重大さを急に悟った。 彼女を陵辱してしまったのだ。 進藤は狼狽した。 「・・・すまなかった」 その言葉にたまきの瞳に溜まった涙はついに零れ出した。 いく筋もいく筋も、頬を伝う。 「こんなこと、するなんて…信じられない。」 「・・・お前に、帰ってきて欲しかったんだ」 「こんなことで誤魔化される女だと思ってるの!?」 彼女の言葉に、自分という男の愚かさを知る。 「すまない…」 「・・・どうして、そうやってちゃんと謝ってくれないの?」 溢れた涙を拭って、彼女は言った。 「・・・どう言えば良いのか、解らないんだ」 そう呟く進藤を見て、たまきははっとなった。 哀しげな瞳でこちらを見つめている。 たまきの胸はズキッと痛んだ。 この男(ひと)がそういう男だって、解っていた筈なのに。 いつも決定的な主導権を握っているのは彼のほうだけれど。 あんなに怒っている自分に対してまで、ちゃんと順を追って全部説明しようとしない、 そのいつも通りの彼の態度が無性に許せなくなって。 こんなときくらい、いつも以上に必死になってくれても良いじゃない。 どんなことになっても私が離れていかないって、余裕気でいるつもり? そんな思いがどうしようもなく強くたまきを支配し、 むきになって、意地を張って会いに行かなかった。 本当は会いたくて会いたくて仕方がなかったのに。 だけど彼は、何処までいっても彼のやり方しか出来なかった。 余裕などではなかった。 そういう男だったのだ。 気付いてやれなかった。 喧嘩の原因は、自分の誤解だってことは、判っていたのに。 彼にこんなことをさせるほど追い詰めた原因は、私にあるのだ。 たまきは自分がどれだけ彼を傷つけていたかを悟り、 自分の愚かさと申し訳なさで、俯いてしまった。 「ちゃんと、仲直りしてから、抱いてもらいたかったのに・・・」 潤んだ瞳で呟いた。 「すまなかった。どうすればお前の気持ちが済む?」 「…もうこんなことしないで。ちゃんと、部屋で抱いて」 「っ!…帰ってきてくれるのか?」 「・・・もう、限界なの。貴方に会えないなんて・・・」 切なげな瞳で言うと、そっと立ち、不器用に進藤の胸にぼすっと顔を埋めた。 切なさと愛しさが混ざって、進藤はたまきを思い切り強く抱きしめた。 「俺だって、とっくに限界を超えてる。お前が隣にいない生活なんて」 抱きしめた腕の中で、彼女の肩が震える。 声を押し殺して泣く彼女を、いっそう強く、優しく抱き締めた。 「・・・ごめんなさい」 泣きながら押し出したような呟きに、何故彼女が謝るのかと進藤はいたたまれなくなった。 今夜は嫌になるほど激しく、優しく彼女を抱いてやろう。 そうして、疲れきって眠る彼女の柔らかい寝息と、体温(ぬくもり)を抱いて眠ろう。 それがどんなに幸せなことだったのかを、もう一度心に刻みつけながら。 少し緊張しながら玄関のドアを開けると、リビングに明りがついている。 足を進めその扉を開くと、キッチンから仄かに湯気が上がっていた。 その、黒いワンピースの後姿を認め、安堵と喜びが湧き上る。 強く強く抱き締め、貴方に会えないのはもう耐えられないと泣いた彼女だが、 あんなことをしてしまったのだ、やはりもう赦してくれないかもしれない。 そんな気持ちに怯えていた。 「お帰りなさい」 振り返って微笑むその顔が、美しく、懐かしく、恋しい。 「ただいま」 そんな気持ちを抱いて、微笑んだ。 「ちょうど出来たところよ。時間がなかったからおかずは少ないんだけど」 そう言いながらてきぱきと料理を器に盛りテーブルに並べる。 1ヶ月の空白を感じさせないような日常に、一瞬眩暈がしたような気がした。 付き合い始めたころ、彼女が手料理をするというのが似合わなくて驚いた。 「失礼ね」 シカゴに居た頃はよく作ってたのよ、向こうの外食はカロリーの高いものばかりだから。 そう言って出されたのは手の込んだ和食が多く、味も旨かった。 どう?と勝ち誇ったように見詰め訊いてくる彼女の笑顔に辟易した。 外科医なんだから手先が器用で当たり前だ、と薄く笑って返すと、 むっと細い頬を膨らませむくれる彼女が、余りにも可愛く見えた。 後でベッドの中で、旨かったと素直に言ってやると、子供のように無邪気に微笑んだのを覚えている。 「座って?」 はっとして我に返り、テーブルの上を見ると、 湯気のたった白いご飯に味噌汁、きんぴら、魚の切り身―多分、鰆か―が2人分。 「お前、何時に帰ってきたんだ?」 「え?・・・9時半頃だったかしら・・・」 確かに品数は多くはないが、そんな時間から、これだけのものを作ったのか。 もっと簡単なものでよかったのに。 彼女も仕事で疲れているだろうに。 「どうしたの?食べましょ」 さっさと椅子に座りいただきます、と手を合わせる彼女を見て、自分も椅子に座り箸を進める。 「…旨い」 素直に言ってやると、驚いたような顔でこちらを見た。 「珍しい、貴方がそんなこと言うなんて」 からかうように微笑む彼女は、もうあのときのことは忘れてしまったのだろうか。 いや、忘れていたのは自分も同じだ。 妻を失ってから初めて手に入れたこの幸福に、初めの頃は静かに胸が振えていたというのに。 いつのまにか、当たり前と思うようになっていたこの日常が、いつまた失うかもしれないと今日気付かされた。 「どうしたの?」 箸を止め瞳を漂わせている自分に、たまきが眉を寄せ訊いてくる。 「いや…」 またはっとして、再び箸を進めだす。 「食べ終わったらお風呂入ってね。沸かしといたから」 「・・・お前は?」 「先に頂いたわ。シャワーだけ」 「そうか、わかった」 また少し微笑んで、進藤は箸を口に運んだ。 頭を拭きながら浴室から出、冷蔵庫のミネラルウォーターを口に含んだ。 と、ソファに座っていたたまきが、何故か少し恥ずかしそうに目を逸らしていた。 怪訝に思うと、自分の上半身が裸であることに気付いた。 その反応に、彼女が自分を意識してしまっていることに気付いて、嬉しくなった。 ソファへ足を運ぶと、彼女の隣に座る。 「・・・風邪引くわよ」 「いつものことだろ。何照れてるんだ」 「・・・別に、照れてなんか・・・」 「じゃあ、こっちを向いてくれ」 「・・・」 細い顎を掴み、振り向かせると、見詰められた美しい瞳はゆらゆらと揺れていた。 緊張、不安、期待、怯え、喜び、哀しみ・・・ そんな感情の全てを湛えているようで、胸が詰まった。 優しく口付けをし、胸に引き寄せた。 「…久しぶり、この鼓動(おと)…」 たまきは進藤の左胸に耳を当て、微笑んだ。 「もう、帰ってきてくれないかと思っていた」 「え?」 「すまなかった」 「…喧嘩のこと?」 「それもあるし…昼間のことも」 「…もういいのよ」 「お前を、傷つけた」 「…私も悪いの」 「お前は悪くなんかないだろ」 進藤の胸の上でううん、と首を振る。 「貴方のこと、ちゃんと解ってなかった。ごめんなさい」 そう言うとたまきは進藤の身体に腕を回した。 「…たまき」 しばらく抱き合ったあと。 「一緒に、暮らさないか?」 進藤の言葉に、たまきは瞳を開けた。 「え?でも今だって半同棲みたいなものじゃない…?」 「中途半端なかたちは辞めたい」 「…ねぇ、それって、もしかして」 「ああ、そういうことだ」 たまきは身体を起こして進藤を見詰めると、真剣な彼の瞳に射抜かれた。 「もう、離れたくないんだ。失いたくない。お前の帰ってくる場所は、俺のところだ」 その言葉と彼の深い瞳に胸が詰まり、たまきの瞳は濡れた。 それを見た進藤に、また抱き寄せられる。 「二度と、離れないでくれ」 少し震えたその声に、進藤の胸の上でたまきはこくん、と頷いた。 「…でも、此処じゃ、部屋が足りないのよね…。だから今までも越してこなかった訳だし…」 小さな声で独り言のようにたまきが呟いた。 この部屋には寝室のほかに進藤の書斎しかなく、 たまきの大量の医学書や文献を置き仕事をする場所がなかった。 「新しい部屋を捜そう。もっと広いところを」 「え…?」 たまきは驚いてまた身体を起こした。 「…いいの?」 この部屋は、進藤が車椅子の妻と暮らすために用意したものだと、たまきは知っていた。 日本を離れるときにすら手放さなかった、進藤の亡き妻への想いが詰まった部屋。 「いいんだ」 たまきを安心させるように進藤は微笑むと、その柔らかい髪を撫でた。 「…俺は甘えていたんだ。お前が傍に居てくれることに」 早紀が教えてくれた。 永遠に失うことの耐え難い苦痛と哀しみを。 俺はたまきを、失いたくない。 そんな想いで彼女を見詰めていると、たまきの表情がみるみる崩れていった。 急に首に手を回し、口唇を塞がれた。 想いをぶつけるような、熱いキス。 口唇を放すと、彼女の頬が涙で濡れていた。 「ありがとう…」 切なげな、儚げな、深い瞳で見詰められた。 きっと、苦しめていただろう。 早紀への拘りを、捨てきれなかった。 そんな自分を受け容れ、たまきは進藤の傍にいてくれた。 この、プライドの高い女が。 ずっと傷つけていたのかと思うと申し訳なさと共に愛しさが込み上げ、今度は進藤がたまきの口唇を奪った。 昼間で懲りたはずなのに、どうしても女を慈しむときは、その身体を満たしてやりたいと思ってしまう。 男ってものはどうしようもないなと自嘲しながら、彼女の甘い口唇を割り、歯も割らせようとすると、 たまきの方から柔らかい舌を絡ませてきた。 熱い舌と舌が激しく絡まり合い、吸い取り合い、貪り合い、息をするのも忘れるほど。 久しぶりのその感覚に頭が痺れていると、彼女の重みでソファに押し倒された。 「好きよ…」 進藤の胸の上で囁いたその瞳は切なげに光り、ぞくりと妖艶に映った。 彼女の柔らかい髪に指を差し込み、梳きながら手を頬に移動させる。 両手でほっそりした頬を包み込むと、また口内を貪り始める。 何度も喉を鳴らして自分の唾液を飲み込んでくれる彼女のその音に欲情し。 ずっと緩やかに背中を擦っていた手で、ワンピースのファスナーを下ろし。 ぷちっ、とブラのホックも外した。 ワンピースを脱がすのももどかしく身体の脇から差し込んだ進藤の大きな手は柔らかい膨らみを掴み、ゆっくりと、やがて激しく揉みしだく。 「…っ・・・っ・・・」 口唇の隙間から甘い吐息が漏れると、また進藤は欲情する。 何もかもが、1ヶ月ぶりの刺激。 いや、3ヶ月、半年、1年、それ以上にも思えるほど。 失っていた時間が永く感じられた。 同じ部屋で過ごすのも、隣で眠るのも、男の欲望を満たすのも。 何もかも、今はもうたまきでなければ駄目だというのに。 大きく包んだ手の指で、膨らみの先端を挟む。 「ぁっ…」 声を聴きたいと放した口唇から、甘い啼き声が漏れた。 もっと、もっと聴きたいと、指の腹で柔らかく擦り、きゅっと爪を立てた。 「ん・・・あっ・・・あぁん・・・」 甘く甘く耳を刺激する嬌声に進藤は耐えられず、強引にたまきの腕からワンピースの袖を外し、腰へと落とした。 ぷるん、と露になる、形のいい胸。 「良く見える…こんなに硬く尖ってるのまで・・・」 見詰めながら囁くと、ここが明るいリビングだということに気付いたのか、たまきは急に羞恥に襲われる。 咄嗟に胸を隠そうとするその両腕を進藤は掴んだ。 「駄目だ。もっと、ちゃんと見せてくれ…」 その言葉と視線に犯されているようで、たまきの背中にぞくぞくっと稲妻が走った。 「や…そんなに見詰めないで…!」 両腕を掴まれ身動きがとれず、恥ずかしさに目を瞑る。 「どうして?お前のほうから、押し倒してきたんじゃないか」 進藤が愉しそうに薄く笑うと、 その身体に馬乗りになっている自分の状況すらもとてつもなく恥ずかしくなり、 たまきの白い肌は羞恥の紅い色に染まる。 「こんなに積極的なお前は、久しぶりだな…」 「…だって、待ちきれなかったんだもの。ずっとこの身体が欲しかったのよ」 頬を赤らめて切なげな表情でそう言うと、進藤の熱い胸に白い掌を這わせた。 そんなたまきの頭を引き寄せ。 「そうか。なら、もっとちゃんと自分で味わえ」 頬を染めながらもそのことばの意味を知り、たまきはそっと進藤に口付けた。 口唇の周りを柔らかく舐め、それから口唇をその角ばった顎、喉、首の先、尖った喉仏・・・と、啄むようにキスをし、舌を這わせてゆく。 首筋から根元、太い鎖骨を降りた口唇は、小さな突起へとたどり着いた。 先に指で、ころころと転がしてみる。 それからゆっくり口に含み、丹念に舐めあげた。 「そうだ、上手だ・・・」 もう片方の突起も口に含み、舌先で転がした後、今度は甘く噛んでみる。 ぴくん、と進藤の身体が反応したのが判った。 悦びが込み上げてくる。 また下へと口唇を移動させ、割れた腹筋に舌を這わせ、その先にたどり着いたのは、固い膨らみ。 それは、さっきからずっとたまきの腹の下に感じていたものだった。 服の上から、そっと掌で包み込む。 熱い… その熱さが、愛しかった。 服の上から軽く擦ると、更に膨れてくる。 我慢できなくなって、たまきは進藤のズボンと下着を一緒に摩り下ろした。 自由になったそれが、堂々とそそり立つ。 こんなに明るい場所で見るのは初めてかもしれない。 その先端の亀裂に、そっと口付けてみた。 欲情してしまっている自分に、進藤の視線がじっと纏わり付く。 こんな淫らな姿を明るい中でその表情さえも克明に見られているかと思うと、 羞恥と同時に身体の芯が熱くなった。 口唇から割って出た柔らかい舌でそっと舐める。 また硬くなり、膨れ上がった。 声には出さないが、敏感に反応してくれていることに悦びを感じ。 根元を掌でぎゅっと握り、浅いところをちろちろと舐め回した。 それから裏筋を根元から先端まで一気に舐め上げる。 「・・・っ・・・」 進藤が声を押し殺したのが判った。 何度も何度も舐めあげる。 膨れきったところで、先端全体を口に含む。 舌で丁寧に舐め、先端の亀裂に軽く歯を立てた。 「っ・・・おい・・・」 その声は聴こえなかったようで、たまきは更に、大きく口を開き奥まで含む。 たまきの小さな口腔では到底全部含みきれず、先端が喉の奥を突く。 「たまき・・・もういい」 それでもたまきは辞めようとせず、口を前後に動かし始めた。 細い指で両脇の袋にも刺激を与えながら、たまきの動きはどんどん激しくなってくる。 口の端から唾液が零れ出すのも構わずに、たまきは夢中で進藤自身を味わった。 と、急に強い力で腕を引かれ、進藤の胸元に引き寄せられる。 「もういいと言ってるだろ!」 すると叱られた子どものようなあどけない顔をして。 「だって・・・味わいたかったんだもの、貴方の味」 達した彼から溢れ出るものを全て飲み干したかった。 口内に広がる、あの苦みすら恋しかった。 「・・・しょうがない女だな、お前は」 進藤は意地悪く笑いながらも優しくたまきに口付けし、 進藤のものをずっと含んでいた口内を全て吸い尽くしてくれた。 そして口付けをしながらたまきの膝裏に手を這わせた。 スカートを捲し上げ、下着が露になると、膝裏からゆっくり擦るように腿を撫でる。 内腿に手を滑り込ませたとき、ねっとりとした感触が進藤の指に絡まった。 もう、こんなところにまで伝い漏れていた。 「すごいな…」 進藤の言葉に羞恥を感じつつも、たまきは言った。 「そうよ、もう、待てないの…」 口唇から漏れる淫らな言葉が進藤の首にかかる。 こんなに敏感になっているのは、何もかもが久しぶりのことだからか。 それとも進藤のものを愛撫させたことで、気持ちが昂ぶったのか。 それとも、昼間のあのせいで感じ易くなっているのだろうか。 「ちょっと待ってろ。」 進藤は持っていた小さな袋を徐に開け、素早くそれをそそり立った大きなものに引き被せた。 そしてたまきのぐしょぐしょになった下着を引きずり下ろす。 「たまき、来い」 たまきは進藤の手に腰を支えられ、その熱いものを自分の上に置いた。 先端が触れるだけで、達しそうになる。 眩暈に襲われながら、ゆっくり自分の身体を沈み込ませた。 「くっ…んんん!」 大きくて硬いものが、自分の中を貫いている。 ずっと、ずっとずっと欲しかった、それ。 挿入される瞬間の、あの妙な違和感も忘れて、たまきはしばらくその愛しい感触に酔いしれた。 進藤もまた、ずっとずっと焦がれていた彼女の中の感触を愉しんでいた。 熱く熱く、いつも以上に熱く感じられるそこが進藤をきつく包み込んでいる。 その感触と悦びを存分に味わった後、内側からたまきを促した。 促されるままに、ゆっくりと、腰を回すようにしてうねらせる。 「ぁっ・・・あん・・・あぁん・・・」 敏感な部分に触れるたび、たまきは淫らな声を出した。 やがて進藤が、激しく腰を動かし始めると、たまきの動きも大きくなっていった。 「あっ・・・ひゃっ・・・んっ・・・あんっ・・はうぅん・・」 たまきの身体は激しく上下に揺れ、その啼き声の間隔が徐々に狭まってゆく。 進藤が腰を打ちつけるたびに、くちゅくちゅと淫らな音が鳴り、 室内に響くたまきの甘い嬌声が、進藤の欲望を更に更に刺激する。 もっと…もっと聴かせてくれ・・・ そう願いながら腰を打ち付けるも、先ほどのたまきの愛撫のせいか、進藤自身の限界も近づいていた。 息を吐き、我慢しようと息を整えるも。 自分の目の前でこんなにも乱れてくれる愛しい存在に、理性を奪われそうだった。 リビングの照明に晒されて、彼女の華奢な、美しい体の艶かしい曲線も、脚を大きく開き進藤のものを飲み込んでいるその淫らな姿も、普段の冷静さを忘れて顔を歪まして啼くその切なげな表情も。 全てを自分の脳裏に焼き付けよう。 手を伸ばし、揺れているたまきの2つの膨らみを掴む。 揉みしだくと固い突起が掌に擦れて、それも愛撫となる。 「あぁぁん!」 その愛撫に、ひときわ大きな声を上げて白い喉を仰け反らせた。 「あ・・っ・・ン・・もう駄目・・一生ぇ・・お願・・ぃ・・」 濡れた瞳に妖艶に哀願され、 進藤はたまきの腰を更に沈めると、たまきの再奥を突いた。 「ひゃああぁぁっ!」 背中を大きく仰け反らせ、悲鳴のような声を上げる。 だが、それだけで許しはしない。 「ひゃっ…あっ・・はっ・・ン・・はぁん・・」 何度も何度も、彼女を追い詰める。 再奥に自身を突き付ける。 彼女にも、刻み込ませてやりたい。 もう二度と、離れようなんて思わせないように。 彼女の身体と、その心に。 俺自身を。 自身も限界を悟り、一際強く彼女を奥の奥まで貫くと、 「あっ・・あああぁぁぁぁっ!」 悲鳴と共に、彼女が達した。 締め付けられていた進藤のものが、さらにぎゅうっと強く掴まれ、 その力に進藤もまた達してしまった。 自身に被せていたものの中から、少しずつ零れ落ちたそれは、ソファに染みを作った。 ひくひくと痙攣する彼女の内側に自身を埋めたまま、 捕まってしまったのは自分のほうかもしれないと、快楽の中でぼんやり思った。 自身を引き抜いてやり、崩れ落ちてきた彼女を抱きとめると、その胸の中でうっとりと瞳を揺らす。 そんな瞳をさせているのは自分なんだという誇りが、進藤の胸を満たす。 彼女を抱き締め、ひとつになれた歓びを噛み締める。 やがて気持ち良さそうに瞳を閉じてしまった彼女を見て、 耳元で囁いてやる。 「お前、どうして部屋着に着替えてなかったんだ?」 その言葉に、たまきは朦朧とした意識が少し戻ったようで。 「シャワーを浴びたときに着替えればよかっただろ?」 だけどたまきは答えようとはせず、胸の上で顔を逸らす。 「俺に、脱がせて欲しかったのか?」 意地悪に聴いてやる。 「っ!……解ってるなら聴かないでっ!」 開き直ったように言うが、羞恥に締め付けられてることは容易に想像できた。 「こっち向けよ、たまき」 無理やり顎を引き寄せると、怒った顔の中に恥ずかしそうに口唇を噛む彼女。 「…貴方だって、脱がせたかったんでしょ?」 私にだけ恥ずかしい思いをさせるのはずるい、と言ってやった。 「ああ。何しろ久しぶりだからな」 だけど進藤はさらっと言って笑い、結局たまきひとりが恥ずかしさでいっぱいになる。 「…もう!せっかくひとが余韻に浸ってるのに…」 「…そんな暇はないんだ、たまき」 「え?」 顔を上げたたまきをソファに座らせて、腰に纏わりついていた黒ワンピースを両手を上げさせて脱がせると、 片足に纏わりついていた下着も剥ぎ取る。 そうしてふわっと、彼女を抱き上げた。 照明が全裸になった彼女の隅々まで照らし出し、その姿に進藤は喉をごくん、と鳴らせた。 「こんなもので足りると思ってるのか?」 「…っ!」 「1ヶ月もおあずけさせられたんだ。それなりの覚悟はしてるんだろうな?」 そう言うと、進藤は寝室へと足を進めた。 恥ずかしげな瞳で俯いていたたまきは、やがて観念したように進藤の首に手を回した。 「ねぇ、一生…」 寝室にたどり着き、彼女をベッドに優しく横たわらせると、たまきが口を開いた。 「お願い。優しくしてとは言わないから、少しは手加減して?」 進藤を見上げ、甘い瞳で言う。 「明日も仕事なの。立てなくなったら、困るのよ…」 困ったように笑うその顔も妖艶で。 「さぁな。何しろ今の俺はもう、自分を抑えられないからな」 妖艶な瞳を見つめ返し囁いてやる。 そんな、と小さな抗議を呟く彼女に言ってやった。 「でも、優しくはしてやるよ」 髪に長い指を差し入れ、優しく何度も梳いてやる。 するとまた切なげな瞳をし、たまきは首に手を回してきた。 優しく口付けて、すぐに口唇を放す。 しばらく啄むようなキスを繰り返す。 やがて彼女の口唇を割り、歯も割らす。 浅く舌を侵入させたかと思うと、また放す。 何度も繰り返しているうちに、切なくなったのか、彼女のほうから口唇を求めてきた。 「そんなんじゃ、手加減してやれないぞ?」 意地悪に微笑んで言うと、泣きそうな顔で懇願された。 「もういいわ。貴方の、好きにして…」 その言葉に強い力で彼女の顔を掴むと、深い口付けを落とした。 苦しげな吐息が漏れ、息が上がる。 それでも貪欲にふたりは、お互いの口唇だけを貪った。 どれくらい経っただろうか。 口唇を放すと、お互いの息が上がっていた。 たまきの瞳がとろんと快楽の色に濡れているのを見ると、 ほとばしる衝動になんとか耐えながら、進藤は口唇を落としてゆく。 その舌が首筋を這うだけで、びくっとたまきの身体は震えた。 さきほどの口付けのとき、進藤の指だけがたまきの耳の裏を優しく撫でていた。 想いをぶつけ合い、奪い合い、与え合うようなそのキスと愛撫だけでも疼く身体を感じていたのに。 その奥から既に溢れ出ているのを感じる。 たまきは自分がどうなってしまうのだろうと思った。 進藤の口唇は鎖骨からそっと身体の裏へ回った。 上半身を抱き起こし、背中を抱くと、そこにも口付けてゆく。 項、左右の肩甲骨、そしてその真ん中に口付けし、強く吸い、舌で愛撫する。 「あ…」 思わず声が漏れた。 「お前、此処がいちばん感じるんだろ…」 呟くその吐息すら愛撫になる。 「やっ…しゃべらないでよ、そんなところで」 強がって言いながらも快楽に息が乱れる彼女の両の膨らみを掴むと、柔らかく揉みあげる。 「…っ…は…っ…」 「我慢するなよ…」 尖った先端を指の腹で転がしてやる。 「あっ…ぁん…はぁン…ん…」 指先での刺激と背中での刺激に、抑えていた声が漏れ始めた。 とろっとまた溢れ出すのが判った。 早く触れて欲しい。 でも、こんなになっている自分を、知られたくない。 ふたつの思いの狭間でたまきは更に濡れた。 進藤の口唇が更に下がり、腰の辺りを愛撫する。 「はあぁん…」 びくんと身体が跳ね上がり、声を抑えることも出来ない。 「一生…私、おかしいの。今日はなんだか…」 「おかしい?どんな風に」 「その…いつもより敏感になってて…だから」 「…だから?」 「…驚かないで…」 瞳に快楽を湛えながらも羞恥に締め付けられながら言う。 「…どれ」 徐に進藤がたまきの内腿に手を滑り込ませた。 ……」 とろっ、と熱い液体が進藤の指に纏わり付く。 シーツを濡らし、太腿にまで濃密なものが流れ出していることに、言葉を失っている進藤。 その様子に、ついに知られてしまったことに、耐え切れずたまきは瞳を瞑った。 「やっ…やだ…もう…黙らないでよ…!」 「…何を言って欲しいん「だ?」 意地悪く進藤が笑う。 「べ、別に何も…」 「言わなきゃ、何もしないぞ?」 「………」 「こんなに濡らして…何も欲しくないわけないだろう」 「………」 「ほら、たまき…」 膝から腿の付け根にかけて撫でながら、進藤が促す。 「…触って…?」 その言葉を合図に、進藤の長い指がたまきの中心へ動いた。 「あぁっ…!」 びくん、と身体を震わせるたまき。 ぴちゃ、と淫らな音をさせて進藤の指がたまきの泉を撫でる。 「あぁ…ん…」 「触るだけでいいのか?」 指は泉を薄く愛撫している。 「やっ…意地悪しないで…」 「ちゃんと言えよ…」 耳元で囁く。 「だから…いつものように…」 「ように?」 「…中へ挿れて…」 よく言った、と誉めるようにたまきの頭を撫で、進藤は指を侵入させた。 くちゃ、とまた淫らな音がなる。 「あぁっ・・ん!」 浅いところで出し挿れを繰り返す。 「ぁん…はぁ…はぁん…」 くちゃくちゃという水音と、たまきの淫らな啼き声が室内に響く。 「…もっと…」 「ん?もっと、なんだ」 「…もっと奥まで…」 恥ずかしさに瞳を伏せたたまきににやっと笑うと、進藤は急に指を引き抜いた。 「あぁっ…?」 途端に名残惜しげな声を出した自分にまた羞恥が募る。 そんなたまきを押し倒すと、進藤はたまきの脚を大きく開いた。 「あっ…やっ!」 じっ…とそこを見詰める進藤。 「すごいな…太腿までてらてら光って、ひくひく動いてるのが此処からでも判る。お前にも見せてやりたいよ」 「やぁっ…!」 羞恥にたまきは手で顔を覆う。 「こんなになってるお前は、初めて見たな…」 「…だ、って、初めてだもの、こんなになったの…」 そう呟くたまきを見ると、潤んだ瞳から涙が伝い漏れていた。 「貴方のせいよ…!」 責めるような瞳で言う。 「まだ半分もしていないのに、そんなに良かったか?」 にやっと笑う進藤。 「馬鹿っ!!」 また顔を覆ってしまう。 「たまき…」 「…それだけじゃないのに、解ってて意地悪言うの?」 顔を覆ったまま呟くたまき。 そっと身体を起こし、顔を覆ったたまきの手を優しく解くと。 艶を含んだ、優しい瞳がたまきを射抜いていた。 その瞳に、たまきの瞳はまた濡れる。 そっと優しいキスが落とされ、また進藤の顔は下がっていった。 開いた脚を固定し、その間に顔を埋める。 「きゃっ…!」 ひくひくと痙攣している突起に優しく口付けし、それから泉を舐めた。 くちゅ…と水音が響く。 太腿を舐め上げ、溢れ出た蜜を吸い尽くして、太腿の付け根を舐めると、 また蜜が溢れ出す。 そのたびにそれを絡め取ってやる。 焦らされる愛撫に、またたまきの瞳は濡れる。 言葉の替わりに細い指を彼のくせっ毛の髪に差し入れた。 徐々に口唇はまた近づいていき、絡め取りながら泉へ触れると、また蜜が溢れ出した。 泉の周りを舐め回し、舌を尖らせてその中へ挿し込んだ。 「あっん…」 指よりも柔らかく熱いものが、たまきの中を掻き回している。 一際大きな啼き声が進藤の耳を刺激する。 「あっ…ねぇ…もぉ…お願ぃ…」 それでもぴちゃぴちゃと舐め続ける。 「ねぇ…一生…焦らさ…ないで…」 涙で掠れた声で懇願する。 そっと指を這わせると、小さな突起は更に大きく痙攣していて、たまきがもう求めていることが解った。 それでも。 そっと指を挿入する。 「ひゃ…ぁ…っ!」 2本の指を軽く出し挿れし、奥のほうへと押し進めると、 待っていたかのようにたまきの中はそれを強く咥え込む。 その感覚に麻痺しながらも自分の欲望を抑え、舌で外の突起をころころと転がしながら、更に1本加えた指で何度も突いてやると、たまきの中がきゅうっと締まったのが解った。 「ぁああっっっんん!!」 一際高く甘い声が上がる。 締め付ける感覚を愉しみながら顔をたまきに近付けると、汗と涙に黒髪が肌に纏わり付き、息を上げながらたまきが切なげな瞳で睨んできた。 目の前で抜き取った指に絡まったたまきの蜜を吸い上げると、また羞恥に頬を染めたが。 「もう…貴方って…やっぱり酷い。」 零れた涙で髪を濡らしながら、罵りの声を上げた。 「どうしてだ?」 「どうしてって…そんなの…解るでしょ…」 怯むたまきの涙を拭いてやり、何度も髪を梳いてやる。 「まだ、何か欲しいものがあるのか?」 「っ!……」 「ちゃんと言わないと判らないな」 意地悪に微笑んで訊いてやると、艶を含んだ瞳が観念したかのように切なげに呟いた。 「貴方の全部が欲しいのよ。お願い、挿れて…?」 そう言うとそっとそそり立った進藤のものを掴んできた。 髪を分け、たまきの額に口付けすると、たまきの脚をさっきよりも大きく開いた。 たまきの泉にそそり立ったものの先端を付けると、それだけで進藤のものはどくん、と鳴った。 「あっ…」 それはたまきも同じのようで、声を上げる。 その表情を見詰めながら、ゆっくり、先端だけを沈み込ませてゆく。 「あっ…あぁあ…はっ…」 目を瞑り啼く彼女の表情は妖艶で。 また少し焦らしてやろうと浅いところを掻き回す。 「あん…あっ…あぁんっ…っ…」 知り尽くしている進藤がたまきの敏感な部分に触れるたび、くちゅくちゅという水音と共に彼女の淫らな声が響いた。 「っ…もっと…もっと奥まで…っ!」 たまきが羞恥を纏いながらも懇願する。 「もう…待ち…きれな…のっ…お願ぃ…っ!」 進藤の髪に指を差し入れて掻き回した。 そんな淫らな彼女に誘惑され。 進藤は深く、深く身体を沈み込ませた。 「あ…ああぁぁぁっ…っ!」 渇いていた地面に雨が染み込むように、ずっと欲してた場所に進藤のものが触れたことに悦んだ。 身体を密着させ、強く抱き締める。 何もかもが重なり、ひとつになったことが嬉しくて。 遠のきそうな意識の中で、たまきは気付いた。 何かが、いつもと違う気がする。 進藤のものが、いつも以上に熱い気がする。 たまきの中でいつも感じる、少し擦れるような違和感が、ない。 もしかして彼は、避妊をしていない…? そう気付いたとき、進藤が激しく動き始めた。 「あっ!…あ…いっせ…一生っ!…あっ…」 ぎりぎりまで引き抜き、また強く打ち付ける。 「ひゃぁっ!…あ…あぁあ…あ、なた…?」 「これが、俺自身だ。ちゃんと感じてくれ…」 艶を含んだ低い声が、上がった息と共に漏れた。 「あ…あぁ…ん…あつ…い…っ!…」 息も絶え絶えにたまきは叫んだ。 彼に直接挿れられたのは、初めてのとき以来。 いつも2人を隔てていたものは今はなくて。 胎内に感じるその熱さは、いつもは口にしてくれない彼の熱い心の中と同じなのだと、感じた。 どくどくと脈打つそれも、ぎゅっと締め付ける胎内も。 密着させたお互いの身体から聴こえる、お互いの鼓動が交ざり合い、 まるでふたりの身体の境界線が消え、ひとつになってしまったかのようだった。 こんな、歓びがあるなんて。 進藤の律動に揺れながら、快楽に潤んだ瞳でたまきは思った。 身体を起こし、たまきの膝裏に手を当てると、脚を自分の肩に乗せた。 そして、更に奥深くたまきに沈み込ませる。 「ひゃああぁぁぁっ…っ…」 淫らな格好で、たまきは更に快楽に身悶えた。 割れた腹筋がたまきの敏感な突起を擦り、 徐に伸ばされた手は、たまきの双丘を下から激しく揉みしだいた。 「ぁん…一生…いっせ…ぇ…」 思考は麻痺し、たまきの脳裏にあるのは愛しい者の名前だけ。 進藤の指がたまきの胸の果実をくりっと捻る。 「ぁあんっ!…も…ぅ…あたし…っ!…」 激しく身体を揺さぶられながら限界を悟り、告げると。 一際深く沈み込んだ彼自身をいっそう強く締め付け。 「くっ…」 それとほぼ同時に、たまきの奥に熱い熱いものがほとばしった。 これが、初めて知る、彼自身の感触…。 痺れた身体と記憶の中で、ぼんやりと思った。 その熱さを子宮に抱きながら、霞む視界を閉じた。 気がつくと、彼に抱きこまれ眠っていた。 心地よい腕の感触。 久しぶりの、愛しく安らかな場所。 それに微笑みながらも、まだ覚醒しない頭の隅でぼんやりと、ピルを飲まなきゃ、と思った。 腕をそっと払い、起き上がろうとするも、腰に力が入らない。 そのうちにまたぎゅっと強い腕に抱き寄せられた。 自分を抱き締める彼の、安らかな寝顔をじっと見詰める。 あぁ、一体どれくらいぶりなのだろう。 この、仕事場では見られない彼の無防備な表情を、こうして見詰めていられるだけでも幸せなのに。 でも、とたまきは思った。 さっきたまきの中に放たれた熱いものには、同時に彼の哀しみも含まれていた。 このひとは寂しいのだ。 一体どれくらいの寂しさと哀しみを独りで乗り越えてきたのだろう。 その哀しみを、初めてたまきにぶつけてくれた。 そう思うと、涙が溢れてくる。 弱音を吐けないこのひとを、これ以上独りにしてはいけないと思った。 どれだけ喧嘩をしても、解り合えない日があっても、ずっと傍に居てあげたい。 傍に居たい。 傍に居て欲しい。 溢れた涙はいく筋も零れ落ち、シーツに染みを作った。 これからは何度でも、彼の哀しみを飲み込んであげられる。 そう思うとたまきは歓びにまた一筋涙を流し、進藤の胸の中に顔を埋めた。 安らかに寝息を立てる進藤は、また、そんなたまきをぎゅっと抱き締めた。 もう二度と離さない、とでも言うように。 ![]() ![]() ![]() ![]() 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