進藤一生×香坂たまき
![]() 無防備過ぎる… 進藤は目の前の女を見てまた1つ、ため息をついた。 「また、ため息ついてる。幸せ逃げるわよ?」 冗談混じりに言ってくる彼女の能天気さに、またため息が漏れる。 …誰のせいだと思ってるんだ… そう言ってやりたくなった。 そりゃため息も出るだろう… そんな姿でいられたら男なら、誰でも 当の本人は気にしていないみたいだが その姿に俺は、興奮していた。 髪をタオルで拭きながらバスローブでうろついている彼女を意識しないよう、心掛けようとしてしているのに 彼女がそうはさせてくれない。 「ねぇ、貴方も何か飲む?」 冷蔵庫を開けながら声を掛けてくる。 「いや、俺はいい」 それだけを返すに、精一杯だった。 彼女を見れば理性は失われていく一方だ。 見てはいけない。 そう思うのに、水を飲み下す音にまた彼女に目を向けてしまい 整った横顔に、思わず見惚れる。 すると視線に気が付いたのか、こちらを向いて小首を傾げる。 「何?」 「…いや………」 何でもない、そう言ってさっきから読んでもいない雑誌に再び視線を戻す。 彼女はもう1度首をかしげながらも水を冷蔵庫に直すと 何やら自分の方へ向かってきているようだった。 足音が近づいてくる。 「ねぇ、やっぱり貴方今日は少し変よ?」 自分の後ろについた気配を感じるや否や、ふわりと首に腕を回される。 背後から感じる、彼女の温もりと、香りに、自分が更に動揺しているのが解る。 「誘ってると勘違いするだろ…」 理性が飛んでいきそうだ… そう危険を感じ、彼女に離れてもらおうと言ったのだが 返ってきた言葉は意外な物だった。 「そうだと、したら?」 耳元で静かに囁かれる。 「何だと?」 甘く妖艶に響いてきた囁きに思わず耳を疑った。 振り返って見ると彼女は自分を真っ直ぐに見つめていた。 「女は誰もが自分の魅せ方を知っているものよ?」 目眩を覚えた。 麻薬のような、危険な… 媚薬のように自分を熱くさせ、狂わせる そんなどこまでも甘い囁きに 「じゃあ俺は」 「蜘蛛の巣に架かった蝶、って所かしらね」 そう言って妖艶に笑う彼女には口では表せない程の色香が漂っていた。 こんな罠ならば、いくらでもかかりたい。 こんな甘い、甘い罠ならば…いくらでも、何度でも… ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() |