粉雪
進藤一生×香坂たまき


地下の駐車場から地上に出ると、いつの間にか降り出したのかちらちらと粉雪が降り始めていた。

つい1時間程前、医局で患者のオペの方法についてたまきと口論になった。
患者の体力を考えた治療を優先させる彼女。少しの可能性があれば、その方法を選択するべきだと主張する自分。
周りの医師達は、いつまでも終わらない言い争いに半ば呆れた様子でいた。
最後には神林が、

「二人の強い思いはわかるけど、治療は個人でするものじゃないよね、特にここでは。しばらく、この患者のことは僕に預けてくれる?」
「えっ?」
「はっ?」

どっぷりと二人の世界にはまっていたので、神林の声に二人で驚いた表情になる。
特にたまきは、神林の話した内容を理解すると、あなたのせいだと言わんばかりに唇を噛んで見上げてくる。
大きな溜め息をついて、あえて彼女の視線には会わせないようにした。
気付けば、もう終電にギリギリの時間で当直の者以外は慌てて医局を出て行った。
進藤は、今日はたまたま車で来ていたので、ゆっくりと帰り支度をして医局・

医局を出ようとすると、今日は当直でないはずのたまきが自分のデスクで、まだ先程の患者のデータを真剣な眼差しで見つめている。
もう終電は出たはずだ。泊まっていくのだろうか。それとも、タクシーで帰るのだろうか。ついでに乗せて帰ろうか。
少しの間逡巡するが、先程の口論していた時の少々憎たらしい表情を思い出すと、医局を黙って後にした。


正面玄関の前に差し掛かると、タクシー乗り場の前で寒そうなに自分の身体を抱きしめ立っているたまきがいた。
タクシーを待っている様だが、運悪く雪も降り始め回送のタクシーも出払っているのだろう。
減速して彼女に近付く。窓を開けると、もともと白い肌が寒さでさらに青白くなっていた。

「この雪じゃタクシーを待ってても凍え死ぬぞ。本格的に降り出す前に乗っていけ。」
「……。いいわよ。来なかったら泊まっていくからいい。」

自分の命令口調が気に入らないのか、堅い表情ねまま視線を逸らす。

「お前、ここんとこ帰ってないだろう。今日は大人しく乗っていけ。」

例の患者のことで、ここ数日泊まり込みで治療に当たっていた。
進藤も同じだが、意地を張って仮眠室やソファを使わない彼女の身体は自分以上に疲労しているはずだった。
さらに雪は粉雪からぼた雪に変わろうとしていた。
たまきの足の先から冷気が上がってくる感覚がする。
たまきは悔しそうに空を仰いでいる。
進藤はドアを少し開けてたまきに乗るように視線を送る。たまきは、白い息を吐くと黙って助手席に座った。
場所は知らないが、自分のマンションと最寄り駅を挟んだ反対側のあたりに住んでいるはずだ。
それくらいのことは知っていた。
進藤が無言で車を出しても方向は間違っていないのかたまきも何も言わなかった。まだ寒そうに自分の身体に手を回しているが、青白かった頬は少し赤みをさしてきたようで安心する。

正直に自分の気持ちを言ってしまうと、生意気なこの女医に自分は心惹かれていた。
もうずいぶんと前から、彼女を見ている。
そして彼女も自分のことを、自惚れではなく意識しているとわかっていた。
自分のわずかな感情の波に彼女は気付いていることが多いし、また彼女の他人には決して見せることのない弱さを自分は気付いてしまうことがあった。
患者のことや治療のことでは口論は絶えないが、何も言わなくても分かり合えることがあるし、医者としてお互いに誰よりも信頼していた。
そして、彼女が本当は彼女自身を支えてくれる手を欲していることもわかっていた。
でもだからといって、そんな気持ちを素直に出せる彼女でないし、自分も然り、それに自分の中には永久に忘れることのない大切な存在がいる。
果たしてそんな自分と一緒にいて彼女が幸せになれるのかと思うし、彼女を幸せにできる男は他にいるように思う。自分は一人でも今までもそうしていたし、これからも生きていけると思っていた。
だから、彼女の気持ちに気が付いていても、敢えて一歩踏み出すことはなく、距離を置いた関係を意識的に自分は作っていた。
そしてそんな自分に、もどかしく感じている彼女の苛立ちや寂しさに気が付いていても、知らない振りをしてきた。



隣で黙って運転を続けるこの男に自分はいつまで振り回されるんだろうと思う。
今まで出会った男の中で一番腹の立つ何かと気に食わない存在なのに心惹かれている自分が信じられない。
恋とか愛とか、そんな言葉で片付けられない。
自分の全てが彼の全てを欲している。
でも、彼には死んでしまった奥さんがいる。よく知らないが、とても愛していたらしい。
あんなにストイックに自分を捧げている仕事でさえ、彼女を亡くした時には辞めていたのだから、何者にも代え難い存在だったはずだ。
以前の私なら、そんな男は逆に気味悪く感じてたはずだ。
それに自分が一番でないと気が済まない性格なのに明らかに別の女性を深く愛しているとわかっている男に惹かれてしまった。
自虐行為としか思えない。情けなくなる。もうどうにでもなれ、という気持ちになってくる。
どうせ、この男に私の入る隙間などないのだから。

「ねえ。」

先程の不機嫌な口調とは打って変わって、少し明るい声で聞いてくる。
進藤は返事はせず、視線で返し、次の言葉を促す。

「奥さんが亡くなって何年?」
「さあ、数えてない。」

表情を変えず進藤が答える。
亡くなってどれくらいなんて彼には関係ないのかもしれない。
彼の心の中に彼女は生き続けているのだろうから。

「医者の立場からの興味なんだけど、女に飢えたりしないの?」

わざと不躾な質問をしたつもりだが、進藤は表情を変えない。
少し自分の方が動揺するが、それは出さない。

「あなたが奥さんをとても愛していたのは知ってるけど、男の生理は別でしょ。女を抱きたいと思わないの?逆に奥さんを思い出して人肌が恋しいと思わない?」

進藤は黙っていたが、車が信号で止まると視線だけ横目でたまきを見た。

「どうだろうな。」

その答えは彼女にとって意外だった。
思わない、って直ぐに返ってくると思っていたからだ。

「仕事中は患者のことで頭がいっぱいになるし。そういう存在が近くにいればそんな気持ちにもなるかもしれないな。」

口角を少し上げ横顔でもわずかに笑っているのがわかる。
自分の質問の意図など見透かされているような気がする。
近くにいないということか。そんな存在皆無なんだろう。
進藤の余裕の表情を見てそう思う。
誰にも心揺るがされることはない、と。

「そう。なあに、奥さんとはよっぽど相性が良かったのね。心も身体も。」
「子供はできなかったの?ああ、でもあなた昔も仕事人間だったんじゃないの?作っている暇ないわよね。」
「奥さんとは付き合い長かったの?もしかして純愛?あなたからは想像できないけど、優秀な正義感いっぱいの進藤先生を支えてたくらいだもの健気な

奥さんだったんでしょうね。」
矢継ぎ早に次から次へと言葉が出てくる自分にもびっくりするが、反論も肯定もせずにいる進藤の何を考えているかわからない様子に、ちょっと不安になる。
呆れているんだろうと思う。




その時、急に車が止まる。
えっ、と辺りを見回すと覚えのない場所だった。
雪が降っており余計に闇に包まれているようだ。
信号もないような場所で、何故急に止まったのか理解できなくて、どうしたの、と進藤の方を向くと暗闇の中自分を無表情で見ている。
その視線に動けずにいると、ふいに手が伸びてきて車のシートががたんと倒される。

何が起きているのかわからず、びっくりして思わず目を瞑る。

「男と二人きりの時にそういう話をするってことは、お前が慰めてくれるってことか。」

ゆっくりと目を開けると今までの無表情とは違う、男の強い視線があった。
鼻先すれすれまで近付いて低く艶のある声で話しかけてくる。
たまきの心臓が早鐘のように打つ。
今までこんなに近くで進藤の顔を見たことがない。

「何言ってるの?ちょっと離れて。」

進藤の胸を両腕で押すがびくともしない。
その腕を掴まれる。
そして手のひらを舐められた。たまきを熱い視線で見つめたまま舌先で指の間を舐める。
瞬間、たまきの背中に冷たいものが走る。

「あっ…。」

その声に進藤は動きを止める。
今度は首筋に柔らかいものを感じる。
そして耳の裏側を舐められる。
抵抗したいのに力が出ない。
軽く噛まれるように歯を立てられる。
進藤は執拗にたまきの首筋や項、鎖骨の辺りを愛撫してくる。
けれど、キスはしない。
それ以上触れることもしない。
進藤の熱い手や唇に翻弄されながら、それに気付く。
多分、からかわれている。
瞬間自分を取り戻し、あらん力を振り絞って進藤の頭を振りほどいた。

「痛っ…。」

たまきの手が幸か不幸か進藤のこめかみあたりにヒットし、進藤がたまきから身体を起こしシートにもたれる。

「お前なあ。抵抗するなら無駄に煽るな。覚悟してからにしろ。」

呆れたように苦笑して頭をさすっている。

「ここからはどう行けばいいんだ。」

よくよく周囲を見てみると、そこはいつもたまきが利用している地下鉄の駅の近くのようだった。
ちゃんと送り届けるつもりで、進藤はここまで来たのだ。
たまきの心臓は、まだ爆発しそうに早く打っているのに、何もなかったように冷静な余裕な表情の進藤を見ていると悲しくなった。
自分はこんなにも進藤を感じてしまっているのに、この人は何も感じていないんだ。
一度は熱くなってしまった身体が冷え冷えとしてくるのがわかる。
でも、心の熱は溶けそうになかった。
瞬間、たまきは進藤に抱きついていた。

「おい、」

何か言おうとする進藤の唇を塞ぐ。
無理矢理にたまきをはがそうとするが、たまきは力いっぱい進藤にしがみつく。
唇こそは離れてしまったが、進藤の首筋に顔を埋める。進藤もそれ以上無理に離そうとせず、大きな溜め息をついた。

少し意地悪をしてやろうと思った。
早紀のことを、プライベートな夫婦生活のことまで聞いてくるたまきを逆に痛いとも感じたが、不器用な彼女な対して苛立ちも感じた。
大切にしたい気持ちもある。
でも、壊してしまいたい気持ちもある。
一生触れないと決めていても、自分の手で翻弄されるたまきも見たいとも思う。
無表情の中で逡巡していた自分に対して、いつまでも早紀の話を止めないたまきに苛立ち行動に出てしまった。
たまきの自分の愛撫で出た甘い声に瞬時理性が飛びそうになったが耐えた。
そして、たまきの一撃が冷静さを取り戻させてくれた。
なのに……今、甘い匂いと柔らかな肌が隙間なく進藤に密着している。
たまきから見れば冷静に見える進藤だが、彼自身はたまきを振りほどく自信がだんだんとなくなっていた。
まいった、と思う。
だから、距離を置いていたのだ。
歯止めが効かないのは自分の方だ。元来、人一倍感情的な方だ。
走り出したら自分でも驚くほど止められないのだ。
でも、結局自分から距離を詰めてしまったのだが。




「香坂。頼むから離れてくれ。」
「あなたが、離せばいいでしょ。」
「………。」
「嫌なら、殴ってでもはがせばいいのよ。」
「こんなところでできないだろ。誰かに見られたらどうする?」

呆れたように話す進藤に腹が立つ。
する気なんか無いくせに。

「誰もいないじゃない。」

駅から少しだけ離れたこの場所は元々人通りが少ないうえに、夜も更け雪も積もっていた。

「それに寒いぞ。」
「だから、早くして。」

だったら家で、という話かもしれないが、この人は今離したら二度ともう距離を縮めることはないだろう。
きっと、今までと同じくうまくはぐらかすのだ。




進藤の胸板に、自分の胸を押し付ける。
でも、押し付けて相手に感じさせるほど大きくもなく、今更ながら自分の小さな胸を呪う。
進藤のシャツの裾から手を入れ素肌を撫でる。
そして首筋に舌を這わせた。
進藤が息を吸ったのがわかった。
自分にも触れて欲しくて、再び唇を塞ぐ。
最初は反応がなかったが、たまきが舌を絡めるより先に進藤の熱い舌がたまきの冷たい舌に絡んできた。
だんだんと激しくなりお互いに夢中になる。
進藤の大きな手がたまきのシャツの裾から背中に侵入してくる。
たまきの肌はするりと滑らかで、進藤は息を飲んだ。
多分、もう止まらない。

はやる気持ちを耐えて、動きを止める。

「後悔するぞ。いいのか?」

無理矢理たまきをはがすと顔を上げさせる。

「それはあたしが決めることでしょ。あなたからの指図は受けない。」

たまきは自らブラのホックを外し、進藤の手を膨らみに導く。
その先端は既に硬くなり始めていた。
ゆっくりと揉みしだくと、たまきは甘い声を上げる。

「あっ…、あん…んっ…。」

小ぶりで進藤の大きな手にすっぽりと収まってしまうが、その柔らかさにだんだんと進藤の手は激しくなる。
そして、たまきを助手席のシートに押し倒すと、シャツをたくし上げる。
暗い車内だが積もる雪の白さの明るさではっきりとたまきの両の膨らみを見ることは出来た。
雪の白よりも白く、そして先端はほんのりとうすく桃色だった。
思わず舐めるように見てしまう。

「あっ……、」

それに気付き、たまきは自分の腕で隠そうとするが進藤がそれを許さない。
自分から飛び込んできたのに今更何を隠そうとするのか。
先端には触れず、焦らすようにゆっくりと唇を寄せてくる。
片方の胸は揉みしだかれ、もう片方は舌が這わされる。
時に歯を立て激しく吸われ、紅く跡が幾つも残る。
先端を舌で転がすと、たまきは甘い吐息を何度も漏らす。
そして、再び唇が塞がれると、息つく暇もなく進藤の舌がたまきの口内に侵入してくる。
その舌はとても熱く、たまきは焼けそうだった。
耳の裏や首筋を余すことなく進藤の舌が這う。
くまなく舐められ、身体中の水分が無くなってしまうのではと思われる程吸われる。
進藤の熱い息が首筋にかかる。
たまきの身体が震える。
両の膨らみを愛撫していた熱い手は徐々にたまきの中心へと降りてくる。
そして、スカートの裾から大きな手がたまきの太腿を撫で回す。
不意にストッキングが乱暴に破られる。
進藤がもどかしげに脱がしにかかる。
寒いはずの車内は二人の熱で温まっていた。
フロントガラスが曇る。
最初の冷静さはなく、熱い視線でもって自分の身体にくまなく愛撫し続ける進藤に切なくなりふいに涙が出てくる。
それに気付くと、進藤が優しい表情で顔を寄せてくる。

「怖いか?」

声は出ず、首を振って答える。
頬を流れたたまきの涙を唇で受けると、再び熱い舌がたまきの舌に絡んできた。
たまきの下着の横から進藤の手が侵入してくる。
もう既にそこは充分にぬかるんでおり、その感触に進藤の雄の部分が熱く反応する。

突起に触れると、たまきが艶のある声を上げる。

「んんっ……!あっ…、やっ…」

その声に欲情する。
突起を擦るとたまきの下半身が跳ねる。
たまきは快楽に身をゆだねており、その表情は艶やかで進藤は興奮した。
たまらず、たまきの中心にある襞をかき分け指を侵入させた。
その中は、進藤の指をまるで飲み込むように蠢く。
彼女が自分を感じている証拠だった。
指を増やし、彼女の感じる場所を探し刺激する。
早く彼女の中に自分自身を入れてしまいたい衝撃に耐え、彼女の自分の手で乱れる姿も見たい欲求もありたまきの中をかき乱す。
車の外はしんしんと雪が降り、気温は氷点下をきっていたが、進藤の肌はじわりと汗ばんでいた。

「あん……んっ!…やっ…もう、だめ…!」

たまきの背が今まで以上に反らされる。
たまきは目を開けたまま視線を宙にさまよわせて肩で息をしている。
進藤はたまきの頬を両手でそっと包む。

「大丈夫か?」

少し放心していたたまきだったが、意識を進藤に戻すと、まだ息を切らしているが進藤に微笑む。

「大丈夫…よ。」

しばらくたまきの頬を撫でている進藤に、たまきが少し眉間にシワを寄せる。

「まさか、これで終わりじゃないでしょうね。」

不機嫌になるたまきに進藤は苦笑する。

「あたり前だろ。俺がまだだ。」

身体の大きな進藤が動くには、どうしても車内では狭く、彼は運転席のシートを深く倒すと横になり、素早く服を脱ぎ捨てる。
まだ動けずにいるたまきを抱き寄せると自分の膝の上に跨がせて乗せる。
たまきの下腹部のすぐ下で進藤の熱を感じる。

「あっ……」

思わず声が出てしまう。
進藤も、たまきがスカートを巻くし上げ自分を跨ぐ姿に、自分自身をたまきに晒していることで再び興奮する。

「お前が動くんだ。できるか?」

進藤は左手でたまきの腰を掴み浮かせると、右手でたまきの中心にある突起を刺激する。
進藤から下から見上げられ、自分の恥ずかしい部分を刺激され気が狂いそうになる。
先ほど、自分の刺激で止めどもなく溢れていたはずなのに、再び少しの刺激で溢れてくるたまきの秘部の様子がわかると進藤はとうとう我慢できなくなって、一気にたまきの腰を引いて自分自身にたまきの腰を沈める。
先ほどの進藤の指と違い、太くて大きなそれは、しばらく性行為をしていなかったたまきの中を鈍い痛みとなって刺激してくる。

「つっ……!」

わずかにたまきの表情が険しくなる
進藤にとっても、女のその中は久しぶりの感触であり、またそれがたまきの中だと思うと、まとわりついてくる肉の塊に一気に持って行かれそうになる。
たまきは鈍い痛みに耐えられず、進藤に身体を倒すとしがみつく。
そんなたまきに進藤は気付き、動くのを耐えていた。

「大丈夫…か?…辛いか?」
「うんう…最初だけ…だから。…だから動いて…。」

掠れた声でたまきが答える。
進藤は探るようにゆっくりと動き出した。
鈍い痛みがありながらも、ある部分はたまきの快楽を誘う。
進藤の動きが激しいものへ変わっていく。
たまきも刺激を受け鈍い痛みが、だんだんと快感へ変わっていく。

「ああっ、…あんっ…あんっ…んんっ!」
「…うっ…」

たまきは進藤の胸に手を付いて身体を起こす。
進藤の肌からは汗が噴き出しており、たまきの手がすべる。
身体を起こしたことでより深く進藤のものを飲み込む。進藤から下から激しく突かれ、たまきの身体が上下に激しく揺れる。
たまきもより深い刺激を求めて腰を動かす。
快楽に身をゆだね乱れているたまきを下から眺めていると、もうどうしようもなくなってくる。

「あっ…だめ…あたし…もう…んんっああああん……!」

進藤自身も、その快楽に耐えきれず、夢中で腰を打ち付けるとたまきは一際大きく声を上げ達した。
そして、たまきの膣内がきゅうっと進藤を締め付け、そのあまりの感触に進藤も自らの熱を吐き出す。
一瞬、意識が遠のく。
進藤に倒れ込んできたたまきをきつく抱きしめる。
進藤の呼吸は乱れていたが、徐々に落ち着いてくる。
まだ、たまきは意識を取り戻さない。
冷静になると、身動きしないたまきの髪をかき分け顔を覗く。

「…香坂、…香坂。」

名前を呼ぶと、たまきは意識を取り戻した。

「大丈夫か?」
「…そう思うなら、少しは手加減して欲しいわね…。」

意識は取り戻しても、まだたまきは身体を動かせずにいた。
進藤は自分の上の暖かい重さに、どこかで満たされている自分に気付く。
たまきの髪を何度も撫でている。

「あなたは後悔してるの?」
「そうだな。」

その進藤の言葉にたまきは悲しくなる。
でも、自分で決めたことだ。
後戻りはしない。

急に寒さを感じる。
曇っていたフロントガラスもだんだんと、曇りが晴れてくる。

「寒いわ。帰りましょう。」

努めて冷静にたまきは言うと、進藤の身体から離れる。
助手席のシートに戻ると進藤に背を向け、外からも見えないように少し身体を屈めて乱れた衣服を直す。
先ほどの快楽と、進藤の暖かな胸や手や唇を思い出すと泣きそうになるが、絶対に泣かない。
ふいに、背中に温かな体温を感じる。

「なんで、もっと早くこうしなかったかと後悔してるんだ。」

進藤が後ろからたまきを抱きしめてくる。
えっ、と振り返ろうとするが、さらに進藤がきつく抱きしめてくる。
他の男の方がたまきを幸せに出来るなんて……、今はもう他の誰にもその白い肌を触れさせたくない。

「逃げてたんだな俺は。」

あまりもあっさりと枷が外れて、そんな自分に呆れて笑えてくる。

「何よ。訳がわからないわ。」
「分からなくていいんだ。さあ、今から俺の部屋に行くぞ。」

脱ぎ捨てた自分の服を身に付けると、サイドブレーキを下ろす。

「ちょっと待ってよ。ちゃんと説明してよ。」

進藤の自己完結について来れないたまきは不機嫌に進藤の腕を掴む。

「まだ足りないんだ。今までの溜まった分がまだあるからな。おまえだってそうだろ。」
「はっ、な、なに言ってるのよ!」
「俺が好きなんだろ。なら黙って付いて来い。」
「!………。」

進藤の強い口調と優しい眼差しにたまきは何も言えなくなる。
そして、これから起きることに期待している自分もいる。
進藤は、たまきのそんな表情を満足げに見ると少しだけ頬を緩め、アクセルを踏み込んだ。






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