進藤一生×香坂たまき
![]() 「あ…」 図らずも、ふたりきりになってしまった。 彼がこちらを見やる。 呼吸が止まりそうになる。 そして…身体が訴える。 「んふっ…んん…っ」 半ば強引に、唇を奪われる。 頭では抵抗しようとしても、 身体がいうことを聞かない。 そうこうしているうちに、舌を押し込まれた。 「んんっ…ぅ…」 口の中を探るように、 進藤の舌がねっとりと動きまわる。 彼はいま、医者ではない。 完全に“雄”になっている。 目の前に差し出された獲物を飽くことなく貪りつづける。 彼の口付けはいつも熱く、激しい。だが、今日はいつもと違っていた。 甘い。 甘すぎる口付け。 いつまでもこうされていたい。 しかしもう、私の身体は限界に達していた。 「し…どぅせん…せ…っ」 完全に身体の力が抜け、床に座りこんでしまった。 「…どうした?まさかキスしただけでイッたのか?」 「……っ…」 また、それだ。 自分は清々しい顔をして、分かりきった恥ずかしいことを平気で言う。 自分の顔が真っ赤になっていくのを感じた。 「続きは今夜だな…覚悟しとけよ。」 屈んで耳の中に舌を差し入れ舐めまわし、 なんとも艶めいた低い声で囁くと、 首筋にキスマークをつけた。 「や…っ…そんなとこに…」 「今夜は必ず帰ってこい。…分かったな?」 冷たい、でも熱をはらんだ強い目で見つめられると、なにも言えなくなってしまう。 ただ、小さく頷いた。 「…いい子だ。」 そう言うと、彼は触れるだけの口付けを落とし、部屋から出ていった。 今日は満月。 男は狼に変わるかもしれない。 ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() |