矢部淳平×太田川奈津
![]() 香坂先生、お元気ですか? 救命は相変わらず忙しくて、でも元気にやっています。 抜けるような青空だった。 病院の屋上は冷たい風が吹いて、だからか、隣にいる温もりを今にも抱きしめたい衝動に駆られる。 「ねえ、矢部くん」 「なに?」 「ううん、やっぱ何でもない」 なんだよーって言いながらくすぐったそうに笑う。 なんだか胸がほこほこしてあったかい。 あぁ、愛しいってこういう感じなんだなぁと真剣に思う。 「太田川ってさー」 不意に呼ばれてドキリとする。 なんだか頭の中を見透かされたみたいで無意味に照れる。 「なぁに?矢部くん」 「可愛いよな」 ――っ! 笑顔でそんなことをさらりと言われた。 「なっなに言ってるの!矢部くん!?」 「昔飼ってたウサギに似てるんだよなぁ」 そんな真摯な目で言うことがソレ!? 「もう矢部くんなんてしらないっ!」 メシ食ってるときが特に似てる!なんて言って1人で盛り上がってる矢部くんを置いて立ち上がる。 なに怒ってんだよーって言う矢部くんの声は完全に無視だ。 だってだって、期待したうちがばかみたいやん! 鈍感で、不器用で、正義感が人一倍強くて、優しくてあったかい…… 香坂先生、お元気ですか? シカゴの冬はどうですか。 香坂先生、私、好きな人ができました。 ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() |