必勝法
秋山深一×神崎直


「話しがあるから俺の部屋に来い」


そう言われて、きっとゲームに勝つ方法を思い付いたのだろうと直は軽やかな足取りで秋山のいる部屋へと向かった。

「秋山さん…?」

ゆっくりドアノブを回し、少し開けたところで顔を出してみる。しかし姿が見えない。
部屋に入ったとこで直は薄暗い部屋を見渡し、人影を探す。

部屋の奥へと進んだ所で、ドアの開く音が耳に入った。それに反応して直は瞬時に振り向く。

直の目に入ったのは探していた人物であった。


「秋山さん…!…どこに行ってたんですか?」

「すまない、少し風に当たっていた」

落ち着いた表情でありながらも少しだけ申し訳なさそうに秋山は呟いた。
気にしてないです、と直は優しく微笑んで見せた。
居なくなってたのには少しびっくりしたけども。

「それで話があるって言ってましたよ…ね?」

「このゲームの必勝法を思い付いた。」

直はやっぱりと言わんばかりに嬉しそうに微笑んだ。小さくガッツポーズして見せる。

「秋山さんはやっぱり凄いです!
それで、その必勝法ってのは…?」

秋山さんの側に居るとどうしてこんなにも落ち着けるのだろうと、直は安堵の笑みを浮かべた。
それに対し秋山は無表情であり、口を開こうとしない。
ただ此方を静かに見つめているだけ。

この沈黙が少し恥ずかしくなったのか、直は照れ笑いして見せると秋山の顔を見つめながら首を傾けた。

「秋山さん…?」

口を開く気配がない。
すると秋山は、直の肩を強く掴んでは勢い良くベッドへ押し倒した。
その一瞬の出来事であるかのような行動に直の頭の中は真っ白であった。
突然の事に目をぱちくりさせる。
目の前には相変わらず無表情な顔で自分を見下ろす秋山の姿。

「そうだな、この方法を教えるためにはまず条件がある。」

見下ろしながら静かに呟く姿を見て、いつもとは違う秋山の様子に直は背筋が少しゾッとした。
嫌な予感がする。

「yesかnoを答えるだけでお前の運命は変わる」

「な…んですか…?」

気迫に負けて上手く声が出せなかった。雰囲気のせいでもあるだろうか。
力が抜けて動かせない身体を懸命に動かし、上半身だけ起き上がらせて問う。

さっきの微笑みはもうない。

秋山は口端を吊り上げて静かに微笑むと、直の耳元に己の唇を寄せ…
「お前が俺に身体を捧げたら教えてあげよう」
と小さく呟いた。

途端に直の頭の中で警報が鳴り響く。
身体は硬直し、顔をひきつらせて、直は頭を思いっ切り横に振った。
こんなの秋山さんじゃない。これは悪い夢なんだ。

そう、このゲームだってずっと夢だったんだ。長い長い夢。

「私…疲れてるみたいです。ごめんなさい、少し部屋に…」
「駄目だ」

ベッドから降りようとすれば腕を掴まれてしまった。夢にしてみたらやけに痛い。
夢であってくれと強く願うが、腕を掴まれた痛さは夢だと感じさせてくれなかった。

「秋山さん…腕、放して下さい…」

いくら腕を振ってもぴくりともしない秋山の手に、直は恐怖すら感じられた。
男女の力の差は怖い。

「今お前が部屋を出るのならば、答えはnoになるな。それでいいのか?」

直は顔を秋山か背け、唇を噛み締めては暫くの間黙った。
秋山は答えを聞くまでは絶対に腕を離さないだろう。腕に篭もる力強さがそう感じさせてくれる。

秋山さんがこんな卑怯な人だったなんて信じられない。

心の中で呟くと、直は秋山の顔をキッと睨み付けた。

「秋山さん今日は何だかおかしいです…。だから、秋山さんも疲れてると思うので寝て下さい!」

直はタンスの上に置いてある時計に目をやった。
思えばもう夜中の2時過ぎだ。部屋に来てから1時間は過ぎている。

「答えで決まる」

秋山は表情を一切変えない。ポーカーフェイスと言うやつだろうか。
今の直にはその表情に苛つくばかりだ。

「じゃあnoです。」

身体を捧げるなんて変な冗談を言うな…と思いながら、直は真っ直ぐ秋山を見つめながら言い放った。
やっぱり秋山は表情を変えない。何を考えているのか全く分からない人だ。

「そう、だったらお前は1億の借金を背負わなければならないな」
「…!?」

冷たく吐き捨てる秋山の無表情な顔を見て、直はまたも硬直してしまった。

目眩がしそう。


身体を捧げる…って言うのも嫌だし、1億の借金を背負うのも嫌。
頭を回転させて他の答えを探してみるが全く見つからない。

「1億の借金を背負うよりも、俺に身体を捧げた方が安いと思うんだが」

「秋山さん…っこんなやり方、卑怯です!!」

「だったら…俺にお礼をしたいってこの前言ってたよな?それじゃあ、お礼は俺に身体を捧げろ」

「…っ!!」

「それに自分で必勝法を見つけてみるか?俺に頼ってばっかだったから、無理だと思うけど?」

「………」

何も言い返せなくなってしまった直は、腕を掴まれたまま途端に全身の力が抜けて床にへたり込んでしまった。仕舞には目尻に涙が溜まる。


答えはもう一つしかない。


「…………yesにします…。」

「…契約成立だな」

ぐいっと腕を引っ張り上げ、そのままベッドへ直を投げ倒した。
逃げられないようにと秋山はすぐに上から覆い被さる。

顔と顔がとても近い。
両腕は押さえつけられ、股の間に秋山の足が割り込む。
ピンに刺された蝶のように、直は身体を動かすのが叶わない状態になった。

今からする事を急に怖くなり始めた直は、切ない表情で秋山を見つめた。

抵抗して来ないと悟った秋山は押さえつけた両腕を解放し、黙ってワンピースのボタンを一つ一つ取り外す作業を始める。
その光景に直の動悸は次第に激しくなっていった。顔も赤いに違いない。

「秋山さん…っあの、やっぱり…」

動かせる両手を使って作業を中断させようと試みる。
その行動に対し秋山は小さく舌打ちすると、直の唇を思いっ切り塞いだ。

突然の事に驚いた直は、すぐには状況を理解出来なかった。
引き離そうと考えている内に、とうとう舌まで入ってきた。

「んっ…ふぁ…秋……山さっ…」

初めての感覚に直の頭は真っ白になる。
胸板を叩いたって唇を離す気配は感じられない。秋山は小さい頭を掴んでは直の口の中を犯し続けた。

呼吸さえもさせてくれない程。

秋山は直の逃げ惑う舌を絡めてきて、ゆっくりと歯列をなぞり始めた。
いつの間にかワンピースのボタンは全部取り外し終えている。片方の胸の上に大きな手が乗り、直は身体を強ばらせた。

小さく声を漏らすと、秋山は唇を解放して怪しい笑みを浮かべて見せる。
プツンと唇から銀の糸が二人を繋いでは切れた。

やっと唇を解放してくれたので直は急いで酸素を取り入れながら、秋山の様子を伺う。

「…あの…秋山さん……」

「何だ?」

「ほ、本当に…す…するんですか…?」

片方の胸の上に手を置いたまま、秋山は目線を胸から直に向ける。
少しだけ冷たい眼差しに涙が出そうになるのを堪え、直は必死で声を出した。まだ上手く呼吸を整えられてないためか、途切れ途切れの言葉しか言えない。

「冗談で此処まですると思うか?」

ブラジャーを上げると、秋山は胸の先端を摘みながら揉み始めた。
さっきよりも直は身体を強ばらせ、艶のある小さな声を漏らし始める。

「ぁっ…!痛っ…」

もう片方の胸にも手を添え、最初は優しく、そして段々と強く揉みだした。

胸の先端部分を舌で舐め回す。
そんな行為に直はびくんと身体を反応させた。

「気持ちいい?」

そんな事を聞かれて顔を真っ赤に染める。こういう場合、どんな答えを出したらいいか分からなくて、黙って行為を受け入れていた。
身体がムズムズし始めるのは気のせいではない。

胸の愛撫を終えると、お腹からショーツの中へ手を滑らせ、 クチュクチュといやらしい音を立て始めた。

「…っぁ…!そんなところ…っ」

「…もう濡れているな」

直は羞恥心でいっぱいになり、思わず両手で顔を隠す。
声を出したくないのに自然に出てしまう自分の口がすごく恨めしく思う。

すると、カチャカチャと金属が擦れ合う音が聞こえて来たので、指から隙間を作って覗いてみると、ズボンを降ろす秋山の姿が見えた。
驚かずにはいられない直は、焦った表情で秋山の顔を不安気に見つめる。

ズボンの下からは堅く反り勃った自身が現れた。

直は息を呑んで暫く見つめるのだが、段々恥ずかしくなってきたのですぐさま目を逸らす。

秋山はショーツを完全に脱がし、蜜蓋へ自身をゆっくりと近付けていく。
直は恐怖心で目をぎゅっと閉じた。本当はこの場から逃げ去りたい。

「…力、抜いとけよ」
秋山の言葉と同時に、自分の中に何かが入ったのがすぐに解った。
あまりの痛さに涙が零れ出る。

「ぅあ…ぁっ…!ゃ…ぬ…いてくだっ…!!」

逃げようとする直の腰をしっかり掴み、秋山は無表情で挿入を続けた。
悲痛の声が漏れる中、ゆっくりと腰を動かし始める。

「あんまり締め付けるな…。段々お前も気持ち良くなってくる」

秋山の言う通りに身体は敏感に反応を見せ、直自身も色っぽい表情に変わってきた。
声さえも段々艶のあるものに変わった。

「はっ…ん…ぁ…っ…んっ」

気持ちよさそうな声と悟った秋山は激しい律動を始める。同時に直も律動に合わせて身体が動き、いやらしい声を漏らしながら二人は絶頂を迎えた。

蜜蓋からは止まる事を知らない蜜が溢れ出ている。
直はこのまま深い眠りへと堕ちていった。


秋山は眠る直の顔を見つめながら、目尻に溜まっていた涙を優しく手で拭き取る。
本当はもっと優しく接してあげたかったのだけれど、接し方が不器用な彼は優しくしたいと思えば思うほど冷たくなる自分を恨んでいた。

本当はnoと答えても必勝法を教えるつもりだった。


……抑えが利かなくなったからかもしれない。

秋山は自分の髪の毛をくしゃくしゃにし、小さな溜め息をついて直に毛布を掛けてあげた。






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