魔性の『M』
秋山深一×神崎直


――だっていつもだったら・・・・そんな思考がカンザキナオの頭をぐるぐると回る。
灯りを落として、ベッドの中で抱き合って、優しくキスされてそれからなのに・・・。

蛍光灯の明るい白い光の中、自分だけ全裸にされて・・・・恥ずかしさで蒸発してしまいそうになる。

「秋山さぁん・・・!」
「駄目」

恋人は表情も変えずぴしゃりと言い捨てる。
せめて灯りを落として欲しい。そんな要求はものの一秒で却下されてしまった。


事の発端は何気ない一言だった。

「お邪魔します」
「ずいぶん遅かったな」

今晩ナオは高校時代の先輩に会いに行った後、そのまま泊まりに来る事になっていた。
ナオが秋山の部屋のチャイムを鳴らした時、すで時刻は23時も半ばを回っていた。

今日の彼女の服装は水色のワンピースとそれに合わせたターコイズブルーのボレロ。
パールのついたリボンチョーカーが細い首筋を引き立てていて良く似合っていた。
そういえばナオのミニスカートときちんとアクセサリーまで着けた姿を見るのは初めてだ。

「へぇ・・・」

不覚にも見蕩れかけた秋山に明日のデートのため頑張ったんです。とナオは嬉しそうに微笑んだ。

ナオは勝手を知ったキッチンで愛用のマグカップにミルクをなみなみと注ぐと、秋山の向かいの定位置にちょこりと座る。

「それにしたって、こんな時間になるなら駅まで迎えに行くから連絡入れろ」
「ごめんなさい・・・なんだか盛り上がってるから帰り辛くって・・・」
「楽しめたか?」
「はい!先輩と同級生だけだと思ってたら、先輩の大学のお友達もたくさん来てたんです」
「・・・・・それってもしかして男か?」
「はい。先輩にも久しぶりに会えたし、みんなでたくさんお喋りしてすごく楽しかったです」

秋山の質問の意図を全く理解せずナオは上機嫌だ。

――それは合コンじゃないのか・・・。
彼女も知らなかった事とは言え秋山には面白くない。

飲み会についてどう切り出そうか・・・・
思案している秋山をよそにとナオはそうだっ!と何かを思い出した様にぽんっと手を打った。

「秋山さん、聞いてください。」
「どうしたの?」
「私、もしかしたら変な事を言っちゃったのかも知れなくって」

ナオはつぶらな瞳で秋山の顔をまじまじと覗きこむ。

「えっとですね」
「うん」
「今日、直ちゃんはかなりMっぽいよねって言われたんです」
「・・・・・・・何それ」

唐突にして不穏な単語により一瞬にして不機嫌な顔つきになった秋山に気づかず、ナオは話を続ける。

「みんなの部活の試合の話になって、それで」
「ディフェンス、オフェンスの話になったんです。そこから何か別の話をしてたみたいなんですけど・・・」
「そこで直ちゃんはもちろんMだよねって言われたんです」

ものすごくイヤな予感が秋山の胸の内をよぎる。

「だから、私は性格的にすっごくMなんです。やっぱり分かりますか?って言ったら大笑いされちゃって・・・」
「・・・・・・え?」

――予感的中。何を言ってるんだコイツは・・・!

「だって・・・攻めがSで守りがMなんですよね・・・」
「そしたらみんなそれで正解って言ってたんですけど・・・また笑われちゃって・・・」
「私・・・何かおかしな事でも言っちゃったんでしょうか?」

一瞬、目の前が真っ暗になった気がした。
頭を抱えてしまいそうになる。
たしかにそう教えたのは自分だ。だからと言って男達の前で明言する事は無いだろう・・・・。
そんな秋山の心情を露知らず、ナオはちょこんと正座をして小首をかしげ秋山の意見を待っている。

世界で一番人畜無害な小動物 カンザキナオ。そんなキャッチフレーズがぴったりだ。
純粋無垢で天然ボケで・・・だから時折りとんでもないことをやらかす。
妹の様な娘の様な可愛い恋人なのだけれども。

「・・・・・・」
黙っているのは熟考中とでも解釈したのかナオはさらに話を続ける。

「あっ・・・でもみなさんすごく親切なんですよ」
「ちゃんと帰れた?って心配してメールまでくれたんです」

ほら、と嬉しそうに携帯の画面を秋山へ向ける。
そこには男の名前からの複数のメール。

「先輩はすごく面倒見が良くて優しい人なんです。だからそのお友達もいい人ばっかりなんですよ」

「ふぅん・・・」

秋山は一瞥すると事も無げに携帯を取り上げ部屋の隅に放り投げる。

「あっ!」

何するんですかーっとナオは驚いた顔で抗議する。

「怒りたいのはこっちの方だ」
「合コンに出て、初対面の男にアドレスを教えて」
「挙句の果てに・・・まあ、それは置いておくとしても・・・」

さすがにナオの失言の件には自分にも責任の一端が有る為、言い淀んでしまう。

「合コンじゃないですもん!」
「どこが?」

一呼吸分の沈黙が流れた。

「・・・あ、そっか!あれが合コンってヤツなんですね」

ここまで来てやっと彼女は件の飲み会の意図を理解したらしい。

「でもだって・・・行ったコト無くって、合コンだって思わなかったんですもん」
「あの・・・ごめんなさい」

ため息を一つ吐くと秋山はナオを背中から力任せに抱き寄せた。

「あ・・・秋山さん!?」
「えっと・・・・なんで、あの何・・・するんですか・・・?」

さすがに不穏な空気を感じ取ったナオは恐る恐る秋山に尋ねる。

「お仕置き」
「え?・・・きゃっ・・・」

サイドのファスナーは難なく下ろされ薄手のワンピースははらりと床に落ちた。

「あっあの・・・ちょっと・・・」」

手品の様な手際の良さで下着はするすると下ろされ、あっという間に華奢な身体は明るい照明の元へ晒された。

手首を飾るブレスレットはその華奢さを強調し、ご丁寧に首の後ろにリボンまで付いたチョーカーは他に何も
身に着けていない裸体において別のものを連想させる。
恥じらいのあまりナオは半ば涙目で秋山をじっと見つめる。

――もうこれを外につけていくのはは禁止だな。

そして今に至る。

一糸纏わぬ身体にきらきらと光る装飾品。
不安げな瞳にはなんとも言えない色気がある。
この怯える小動物に全く自覚は無いのだろうが・・・。

後ろから秋山に抱きすくめられる。
背中から伝わる秋山のシャツの感触。
まだ明るいままの部屋と普段と変わらない様子の秋山。
ナオの白い裸体だけが妙に非日常的だ。
秋山は首筋に口付けると、まだ堅さの残る双房を触れるか触れないかの指使いでその輪郭をなぞり上げる。

「ん・・・っ」

そのくすぐったさと快感の紙一重の刺激に、桜色の頂点がぷくりと立ち上がる。
身に纏うものが何も無いため身体の変化を隠すことも出来ず、ナオは羞恥に頬を染める。

「や・・・だめです・・・」

やわやわと揉みしだかれて、先端を摘まれ断続的にナオの声が洩れる。

「あ・・・・」

せめて声を漏らすまいとナオは口元へ寄せた自らの指を噛み耐えようとする。

「・・・・っ」
「声、聞かせなよ・・・」
「・・や・・・です」

秋山は愛撫の手を休めずにナオの様子を伺っていたが、何かを思いついたように脱ぎ捨てられたワンピースを引き寄せると
ウエストのリボンをするりと抜き取りナオの両腕を後ろ手に縛り上げた。

「あっ・・・なんで・・・ひどいです・・・」
「お仕置きだからね」

ナオの恨みがましい視線を物ともせずに秋山は愛撫を再開する。

「今日の・・秋山さんは・・・意地悪です」
「気のせいだろ」

敏感な首筋と耳元を唇で、未成熟な乳房を器用な指先でいたぶられナオの水蜜桃を思わせる小さな肩も桜色に上気している。
摘まれ、口を寄せられるにつれて無意識に下腹部に力が入ってしまう。
ナオは身体の反応に気付かれぬ様、両の脚をぎゅっと閉じた。
もちろんその反応を秋山が見逃すはずも無く、耳元で囁かれる。

「そこもして欲しいのか?」

ナオはほとんど反射的にぶんぶんと大きくかぶりを振った。
あまりにも大げさな否定は肯定と同義だという事に全く気付いてはいない。
必死で脚を閉じ抵抗を試みるが耳元をぺろりと舐められ、力が抜けた隙にするりと秋山の指がそこに侵入した。

「・・・くぅ・・・ん」

そこはすでにたっぷりと熱いうるみで満たされていた。
ちゅくちゅくとわざと音を立てて花裂をなぞり上げる。

「もう濡れてるぞ・・・」

耳元で意地悪く囁かれ、ナオは堅く瞳を閉じた。

「だっ・・・て」

秋山は花弁に沿って指を往復させるだけでそれ以上の事をしようとしない。
次第にナオの息遣いが荒くなっていく。

「あ、あきやまさん・・・・」

一番敏感な果芯には敢えて触れず、その周辺をくるくると刺激する。

「や・・・ん」
「次はどうして欲しいんだ?」

口元をかすかに上げて笑う秋山の表情は獲物を狙うネコ科の動物を思わせる。
何かを訴えるように秋山を見上げたナオは、秋山の瞳に魅入られ身をすくませた。

「そんなっ・・・の・・・」

秋山は果芯の周りへの愛撫を中断し、指先を蜜口へと移動させた。
そこを探り当て指先を僅かに進入させると、幾重にも重なり合った内部の花片がぴくりと震えた。

「う・・・・ぁ」
深く指を埋没させずに入り口の狭い部分を押し広げるように刺激する。
体中のどこよりも柔らかなそこはきつく収縮し、秋山を捕らえようとする。

「ん・・・・ん」

身体の奥が何かを求める。
それを満たして欲しくてナオは秋山に哀願した。

「秋山さ・・・ん、わたし・・・もう」
「何?」
「私・・・・」

秋山が欲しい。
今まで感じたことの無い飢えにナオの双眸からぽろぽろと涙が零れた。

「いいよ」

真っ直ぐに秋山に見据えられて視線を離すことが出来ない。

「どうして欲しいか言ってごらん」

ナオは瞳を閉じて小さな吐息を漏らすと下さい、と小さく呟いた。
秋山は返事をする代わりにナオの瞼に優しく口付けた。

ナオの身体を向合う様に反転し抱きなおす。
かちゃり、とベルトのバックルを外す音がナオの耳に微かに聞こえた。

「秋山さ・・・ん」

体中が熱くて必死で秋山を求める。

「自分で入れるんだ」

耳元で囁かれナオは潤んだ瞳を大きく開き、何かを訴えるように秋山を見つめる。

「そんな・・・こと・・・」

ふるふると首を振って訴えるナオの髪を駄目、と呟いてぽんぽんと叩くように撫でるとナオは意を決した様に
小さくこくりと頷いた。

ナオは膝立ちで秋山に跨り、恐る恐るといった様子で腰を下ろしていく。
恥ずかしくて下を見ることが出来ない。
手を使うことの出来ないナオは、ただそこに触れる感触だけを頼りに身体を合わせようとする。

「ん・・・」

それはちゅぷりと音を立て滑り、思うように捕らえられない。
弾かれて花裂を滑るその感触だけで背中にぞくりと甘い感覚が走る。

「・・・っ!」

僅かに位置をずらしもう一度花奥にあてがう。
触れてる面積はほんの僅かなのにそこがやけに熱い。

今度はさらにゆっくりと腰を下ろす。
一番狭いところを押し広げられる感覚に体中の力が抜けそうになる。

「・・・・ぁ」

出来るだけゆっくりと秋山を受け入れるはずが、内部の最も狭い箇所まで受け入れたところで思わず力が抜け
半ば以上が勢いよく挿入された。

「・・・・・・・・・っ!」

ずきん、と甘い感覚で体中が満たされる。

「ふ・・・・ぅん・・・」
「気持ちいい?」

身体の奥に確かな質量を感じてナオはこくこくと頷いた。

ナオは瞳を閉じて秋山を感じることに集中する。
身体の中で感じる熱が心地いい。

「・・・あ、秋山さん」

秋山はナオの髪を優しく撫でる。

「お前の中、いつもより熱い」

秋山はナオの顔を覗きこむようしてにやりと笑った。

「・・・・・ずっと我慢してたからか?」
「・・・っ!」
「・・・ちがっ・・・っあ!」

秋山の言葉をナオが顔を真っ赤にして否定しようとした瞬間、秋山はナオの身体を下から突き上げる。

「だめっ・・・です」

突かれる度にじわりと広がる快感にナオの身体の力が抜ける。
両手の自由が利かないナオは秋山の胸に身体を預け、抗議した。

「はいはい」
「ん・・・」

秋山はナオの予想を裏切りあっさりと動きを止めると、再びナオの髪を優しく撫で下ろす。

秋山の態度を不審に思うよりも先にナオは自分の身体の反応に戸惑う。
もっと・・・して欲しい。
もの足りなさで身体がますます熱くなる。

「・・・秋山、さん」

ナオの反応を見透かしていたように秋山はただナオの髪を撫でる。

「駄目なんだろ?」
「俺が動いちゃ・・・」

囁く秋山の声はまるで悪魔のようだ。
完全に見透かされている自分の反応にナオは泣きたくなる。
瞳を潤ませるナオとは対照的に、予想通りに事を進めた秋山は満足げな表情をしている。

「あ・・だっ・・・て」

ずきずきと切ない飢えを必死で訴える。

苛められ追い詰められた泣き顔が他のどんな表情よりも艶めかしい。
困ったもんだと秋山内心呟く。


「手伝ってやるから動いてみ・・・」
「あ・・・は、い」

秋山はナオの細い腰に手を添えるとゆっくりと上下させる。

「ん、・・・ぁ・・・」

いかにも不慣れな様子でナオは身体を上下させる。
両腕を塞がれてバランスを取り辛いためか、その動きはたどたどしい。
焦らすつもりがこれでは自分が焦らされている。
思わず秋山は苦笑するが、必死なナオはそれに気付かない。

「や・・・あ」

吐息の甘さからナオが大分感じているのが伝わってくる。
ただ快感が強ければ強いほど体の自由が利かなくなり、ナオはその動きを止めてしまう。
身体は高まっているのに、昇り詰めることが出来ずナオは切なげに吐息を漏らす。

「ふぁ・・・・」
「秋山さん・・・たすけ・・・て」

自分だけでは熱くなった体の欲求を満たすことが出来ず、ナオは秋山に懇願した。
その必死な様子が愛しくて秋山はナオを強く抱きしめた。

「あの・・・」
「ん・・・?」
「いつもみたいに優しく、して下さい・・・」
「駄目」
「・・・どうして?」
「今日は手加減してやらない」
「なんで・・・」

ふいに身体を引き離された。
嫌われてしまったのかも知れない・・・思わずナオは泣きそうになる。

「お前が自分で考えるんだな」

考えても考えても答えは出てこない。
秋山は今にもでも泣き出しそうな潤んだ瞳でぺたり、と座り込んだナオの背をそのまま前へと倒す。
そしてそのまま後ろからナオの腰を抱え上げた。

「え・・・?
「やっ!・・・駄目ですっ・・・」

秋山の目前に全てを露わにする様な姿勢を取らされ、ナオは思わず抗議の声をあげた。
そんなナオの抗議を意にも介せず、秋山はナオの背中を包み込むように覆いかぶさる。

「んっ・・・・!」

一息に最奥までを貫かれた。
ぼんやりと期待していたよりも遥かに圧倒的な圧迫感。
勢いで蜜液がとくんと零れた。

「ーーーっ!」

ナオの身体が弓なりに反りびくんと痙攣する。

「入れただけでイっちゃったのか?」

限界まで焦らされたナオの身体は、秋山を最奥まで受け入れただけで達してしまった。

「・・・・ぁ」

「まだ、終わりじゃないぞ」

ぐったりと頭を垂れるナオのうなじに口づけすると秋山は抽送を始めた。

一度達したナオの身体は普段よりもずっと敏感になっているようだ。

「あぁ・・・っ!」

普段よりもずっと直接的に最奥に当たる感覚は頭の中にまで響いてくる。
いつもとは全く違う体勢でのその行為はナオの身体に未知の感覚をもたらした。

「・・・あっ・・・」

内部の初めての領域を擦り上げられ、自然に押し出される声を抑えられない。

「やっ・・・ん」
「気持ちいい?」
「・・・っ」

背後から貫かれ、力の入らない身体を両肩で支える不自然な体勢。
何度も激しく突かれて息が詰まる。
苦しいだけの筈なのに自分の意思とは裏腹に身体はどんどん昂ぶっていく。

ちゅくちゅくと淫らな水音とナオの甘い声が夜の空気に溶け込むように響く。
突かれる度に身体の中心が蕩けてしまいそうになる。

「・・・ん・・・ぅ」

何度も何度も強い刺激を与えられ、ナオが再び達しそうになるとその速度が緩められる。
急激に高揚させられて達することも許されず、ナオの口から切なげな吐息が洩れた。

「あっ・・・も・・・許して、くださ・・・い」
「どうして?」

髪から頬、首筋を優しくなで上げられる。
突き上げてくる激しさと優しい手つきの愛撫とのギャップに胸がドクンと鳴る。

「だって・・・」

ナオはいつも以上に制御できない自分の身体に怯える。

「私・・・おかしくなっちゃいま・・・す・・・っ」

もう一度ゆっくりと、けれどためらい無く最奥まで突かれた。

「・・・っ!」

ぞくぞくとする電流の様な快感が背筋を駆け抜ける。

「ナオ・・・」
「・・・は、い」
「お前は、誰のモノだ?」

表情は見えないがその声色と息遣いで秋山も昂ぶっていることが分かる。
嬉しさと愛しさでナオの胸がトクンと高鳴った。

「あっ・・・!」
「わた・・・し・・・私・・・は・・・っ」

答えようとする度に激しく貫かれ、言葉を紡ぐことが出来ない。

「あ・・・んっ」

言ってごらん・・・耳元で囁かれそのまま耳朶を甘噛みされて身体が震える。

「くっ・・・ふぅ・・・・」
「わ・・・たし・・・」
「私は・・・あきやまさ・・・んのモノ、です・・・っ」

ナオは息も絶え絶えの様子でようやく答える。

「よく出来ました」

秋山はにまりと極上の笑みを浮かべた。

「それじゃ、ご褒美をあげようか」

するりと伸びた秋山の指先がナオの一番敏感な果芯を捕らえる。

「あっ・・・ダメっ・・・」

もう一つ求めていた刺激を与えられ、ぴくんっとナオの身体が大きく震える。
優しく押し込まれるように刺激され、身体の力が抜けてしまう。
なんとか身体を捩って逃れようとするが、腰をしっかりと抱え込まれているためそれもかなわない。

「やっ・・・んぅ・・・」

身体の中からの蕩けるような感覚と身体の中へ響くような甘い痺れにナオはただひたすら翻弄される。

「あっ・・・・あぁっ」

拘束されていた腕のリボンがするりと解かれた。
ようやく不安定な姿勢から開放され、ナオは両手を付き秋山の動きに意識を集中させる。
二つの異なった快感は身体をぞくぞくと駆け巡り、ナオの脳裏に真っ白な光が弾ける。

「もっ・・・わた、し…」
「・・・いいよ」

固くシーツを握っているナオの手に秋山の手が重ねられた。

「・・・・・・・っく」

一際激しい動きの後に秋山の吐息が微かに聞こえた。
きつく抱きしめられる腕の力と荒い息遣いにに安堵しながら、ナオはゆっくりと意識を手放した。

大人しく秋山の腕の中でまどろんでいたナオがいきなり素っ頓狂な声をあげた。

「・・・・・・あーっ!」
「私、わかっちゃいました!」

「さっきの答えってもしかして・・・・・・」
「何?」
「・・・・・もしかしてヤキモチですか?」
「・・・気付くのが遅いぞ」

何を今更・・・呆れた表情の秋山を全く意に介せず、秋山さんがヤキモチ・・・とナオは嬉しそうに何度も呟いている。
そんな呑気な恋人の様子を見ていると、嫉妬した自分が馬鹿の様に思えて秋山は思わずため息をついた。

「ナオ・・・指輪とか、欲しくないか?」
「えぇっ!本当ですか?」
「ああ」
「やったぁ!」

まあ取りあえず、コイツ真っ先に必要なものは害虫除けだ。

――世界で一番人畜無害な小動物。
前言撤回。
彼女の潤んだ瞳に勝てるヤツなんていないハズだ。
少なくとも自分は全戦全敗中だ。

そんな秋山の複雑な心境にまったく気付きもせず、ナオは思わず微笑み返さずにはいられないほどの喜色満面の笑みを
浮かべてはしゃいでいる。

カンザキナオの場合『M』は魔性の『M』なのかも知れない・・・。
その微妙な単語はあまりにナオにぴったりとハマり過ぎて、秋山はもう一度盛大な溜息をついた。






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