秋山深一×神崎直 私がお風呂から上がると、枕元のヘッドライトの灯りを残して部屋の照明は落とされていた。 先にお風呂を使った秋山さんは、お布団の中でうつ伏せになり難しそうな本のページをめくっている。 私に気付いて顔を上げると「おいで」と言って本を閉じて私の方へ身体を向けた。 こっちを向いた秋山さんを見て胸がトクンと鳴った。 お風呂上りの秋山さんが好き。 まだ濡れている髪は無造作に後ろへかき上げられて、普段は長い前髪に隠れている端正な顔立ちがすぐ目の前に有る。 その薄茶色の目にじっと見つめられるだけで頬が熱くなるのを感じる。 逸らす事無く相手の目を真っ直ぐに見つめるのは彼の癖なのかも知れない。 (秋山さんの目、すごく好きなんだけど…心臓に悪いかも) 目の前に居る妙に彼にドキドキしてしまう。 今まで意識してなかった事が不思議なくらい彼の全てが魅力的に見える。 前髪をかき上げる仕草も、タバコを扱う指先も、本を読む横顔も。 (何だかドキドキしすぎて病気になっちゃいそう…) あんまり秋山さんを意識しないようにして彼の隣に潜りこむ。 自然な仕草で抱きしめられて、秋山さんのまだ少し湿った髪がひんやりと頬に触れた。 「しても…良い?」 耳元で囁かれる、いつも通りの秋山さんの言葉。 「ごっ…ごめんなさい!」 「あ、あのっ何だか…ちょっと頭が痛くって」 「なので…今日は…その」 「大丈夫か?」 「はい…」 「悪かったな…気付いてやれなくって」 「いっ…いえ!!一晩寝ればきっと治っちゃいますから!」 「湯冷めしないようにな」 秋山さんはそういって私の首の辺りまでお布団を掛け直してくれた。 (秋山さん…ごめんなさい…) 本当は抱かれるのが怖くて…初めて秋山さんに嘘をついてしまった。 優しい秋山さんの態度に私の胸は罪悪感でいっぱいになる。 最近自分の身体がおかしい…ような気がする。以前はこんな事無かったのに…。 背中合わせで眠っている秋山さんの微かな寝息が聞こえる。 先に背中を向けたのは私の方だった。 秋山さんに嘘をついてしまったのが申し訳無くって「おやすみなさいっ」と言って勢いで思わず背中を向けてしまった。 背中から伝わってくる秋山さんの体温。 ぴったりと密着したそこから自分の体温とそれより少し低い秋山さんの体温が溶け合っていくようだった。 近頃何だか秋山さんと居るのが少し怖い。 秋山さん本人が怖いんじゃなくって、秋山さんに抱かれるのが怖い。 もちろんこういう事をするのは初めてじゃないし、今までは全然平気で寧ろすごく嬉しかった。 でも最近、それが少し変わってしまった。 (秋山さんはずっと優しいのに何でなんだろう…?) 今日も求められていたのに断ってしまったのが、すごく申し訳ない気分になる。 しかも嘘までついて体調の心配をさせてしまった。 とにかく私の身体がどこもおかしくないことを確認しようと小さく息を吸った。 (とにかくこの状態をなんとかしなくっちゃ) 覚悟を決めて、おへそ近くまでシャツのボタンを開ける。 パジャマ代わりに借りている秋山さんのシャツ。 かすかに秋山さんの香りがする。 それに意識するだけで胸がドキドキした。 まずは自分の胸に手を当てて、いつも秋山さんがそうする様に触れてみる。 力を込めず指先を滑らせる。 …くすぐったいだけ。 (これが普通なのに) どうして秋山さんが触れるとあんなにどきどきしてしまうんだろう。 それでも何度か指を往復させると胸の頂点がぷくりと立ち上がる。 すべすべとした肌の感触の中で、そこだけビロードの様にしっとりとした感触をしている。 怖々と摘んでみる。 途端にきゅん…となんとも言えない感触が胸の奥に伝わる。 (あ…そうだいつもこんな感じだ…) 秋山さんといつもしていることを思い起こしてみる。 まず抱きしめて、キスをしてくれる。 胸に優しく触れられて、その先端にもキスをしてくれて。 (それが、さっきみたいな感じ…だったはず) 背中や髪にもずっと触れてて…。 秋山さんの動きを思い出しながら私は指を下着の中へ潜り込ませた。 下着の奥の狭間を指でなぞってみる。 しっとりとした感触。 いつもの様にとろりとした感触とまではいっていない。 (良かった。ここも普通だ…) 一旦指を戻して下着を膝まで下ろす。 (確かいつもは中指…だったよね?) 指を口に含んで入りやすい様に湿らせる。 意を決して中へ挿入してみる。 僅かな抵抗はあるものの問題なく指はソコに収まる。 (この後、秋山さんはどうしてるんだっけ?) 彼がいつもそうするように指を中で折り曲げ、引っ掛けるようにゆっくりと出し入れする。 「…あっ」 何度か往復させていると奥の方が潤んでくる。 「……ん…」 かすかな快感。 (でも、秋山さんがしてくれると…もっと気持ちいいのに) 身体の様子を調べるだけのはずなのに、おかしな気分になってしまう。 取りあえずは一番怖かった、ずきん…と響くような感じは起こらなくて安心した。 (秋山さん…) 秋山さんとの行為を思い出しながら触れていたせいか、無性に彼が恋しくなる。 でも今更彼を起こすなんて…出来るはずもない。 (なんで私、こんな事してるんだろ) (隣に秋山さんが居るのに) 「ん…ふぅ」 (身体は大丈夫みたいだから…もうやめなきゃ…) 「…ぁ」 意思に反して指は動き続けてしまう。 (どうしよう…なん…か、やめられないよぅ…) 秋山さんのシャツを口元までたくし上げて噛みしめ、声を抑える。 「…っ」 「どうした?」 「…んっ」 眠っていたはずの秋山さんから不意に声を掛けられた。 声を押し殺すことに必死で秋山さんが起き上がる気配にはまったく気が付かなかった。 「息が荒いけど体、辛いのか?」 純粋に心配してくれている秋山さんの瞳。 「だっ大丈夫です!何でも無いんです!!」 「顔も赤いし、熱が有るんじゃない?」 私は慌てて起き上がり、顔の前で両手をぱたぱたと振った。 「……ナオ?」 秋山さんはいぶかしげな表情を浮かべている。 私は彼の視線の先を辿った。 そこには私のおへそまでボタンの開いたシャツに、膝近くまで下げられた下着。 「あっ!」 (この格好ってどう見ても…どうしよう…!?) 「あのっ…えっと…ごめんなさい…」 どう説明していいのかまったく解らず、取りあえず秋山さんに謝罪してしまう。 「で、君は何をしてた訳?」 思わず布団の上に正座している。 「えっと…その…」 一生懸命に言葉を探す。 出てきたのは小さな意味を成さない声の羅列。 消え入りそうな・・・というよりも消え入ってしまいたい。 頬杖を付いている秋山さんの視線にますますいたたまれない気分になってしまう。 「まあ、体調が悪くないんだったら別に良いんだけどな」 「…あの、これには…訳が……」 秋山さんがため息交じりの苦笑いを浮かべた。 「気にすんな」 秋山さんの声はやっぱり優しい。 (……秋山さんにすごく悪いことしちゃった気分だ…) 「あの…だからっ…」 「最近、私カラダがおかしいんです」 「何それ?」 突然の私の言葉に秋山さんは呆気に取られた様な表情を浮かべた。 「前までは平気だったのに…なんだか変な感じなんです」 「その…秋山さんと……エッチ…してる時……」 何とか誤解を解きたくて、拙い言葉で必死に説明する。 (こんな変なこと言っちゃって、嫌われちゃう……) 「それで…自分で触って確認してたってこと?」 「…そうなんです…」 「それで?」 「えっと…自分で…してると…その……」 「別に、普通かなぁって…感じだったんですけど」 「うん」 (私ってば…なんでこんな話をしてるんだろう…) 「その…指でされてる時とか…秋山さんのが入ってる時とか…」 「私、ずきんっ…てなっておかしくなっちゃいそうで…」 「そうなの?」 「はい…それで、エッチするの…怖くなっちゃって…」 秋山さんが嫌いとかじゃ絶対無いんです…!と慌てて付け足すと「分かってるよ」と笑ってくれた。 「でっ、でも自分でしてるときは指でも大丈夫だったんですけど…」 「指なら大丈夫…ねぇ」 「じゃあいつもと違う事も試してみる?」 秋山さんがにまりと笑って身体の位置を私の下半身の方へずらす。 「あっ!!」 指以外でと言われれば乏しい私の知識でも何となく察しが付いてしまう。 なんとか逃れようとするが、あっという間に押さえつけられてしまった。 「ダメです!!そんなの…っ」 「…汚い…です」 「ふぅん」 「そんなわけ無いよ」 抵抗も空しく、下着は最後まで脱がされ両脚はあられもない角度に押し広げられてしまった。 「あのっ…やっぱりダメです!!」 「駄目って言っても駄目」 動転する私を余所にまったく普段どおりの声で言い切ると秋山さんはためらい無く私のソコに口をつけた。 ちゅっと濡れた音を立てて狭間に沿って秋山さんの舌が滑る。 「ーーっ!!」 初めてそこを舌で触れられて、思わず腰を浮かせてしまう。 (やだ!…恥ずかしすぎて…死んじゃいそう…) 「も、これ…許してください…」 涙目で懇願するけれども秋山さんは全く聞く耳を持ってくれない。 「これだけじゃ君の身体がどうなのかわかるはず無いだろ?」 「う…」 ぴちゃぴちゃと小さな音が妙に響いて聞こえる。 (や…そこ、変な感じ…) 柔らかくて温かい舌は指とは全く違う未知の感覚をもたらした。 秋山さんの髪が太ももをサラサラとくすぐる。 それが私に今どんな体勢でいるのかを思い出させて、恥ずかしくて仕方ない。 (こんなに恥ずかしいのに…気持ち良いって思っちゃうなんて) (私…やっぱり変だ…) 切れ込みの一番上の膨らんだ突起に秋山さんの唇がぴったりと密着する。 一番な敏感な箇所に触れられ息が詰まる。 柔らかで弾力の有る唇で強弱を付けながらやわやわと突起を吸い上げられる。 「あ…あんまり…強く吸っちゃだ…めです」 時折り尖らせた舌が剥き出しになった頂点をちろりと刺激した。 「やっ…んーっ!!」 瞼の裏に白い光がチカチカする。 「あっ…あっ…んっん!!」 「やっ……くぅ、ん」 緩められることの無い舌からの刺激。 無意識に背中がしなり頭が真っ白になる。 「…ぁ…う…」 初めての感覚に深く息が洩れた。 腰の辺りが電流が流されたように甘く痺れている。 「イっちゃった?」 ぐったりした私の身体を秋山さんが抱きしめてくれた。 (あ…今のがイっちゃうって事なんだ…) 「ん…はい…」 「どんな感じ?」 「何だか頭がぼんやり…します…」 「…で、今のは君が怖いって言ってた感じ?」 「…似てたけど、ちょっと違う…気がします」 「気持ちよかった?」 「……う、…はい…」 「はは、まあまずは上出来だな」 「じゃあ続き、するぞ…」 「え?続き…ですか?…っえ…ぁっ」 抱きしめられたまま秋山さんの指で再びソコを刺激される。 脚を閉じようとしても秋山さんの脚が間に差し入れられててかなわない。 触れるか触れないかのタッチでくるくるとソコを掠める。 「ふっ…や…あぁっ…」 与えられる感覚は自分でするソレとは似ているけれども全く違う。 秋山さんの指は巧みに動いて、私の弱い部分を探り出す。 手加減なんてしてくれないのに、自分でするよりもっともっと意地悪に焦らされる。 器用な指と唇だけで私の身体は翻弄されて、洩れる声が抑えられない。 「あっ!だ…め……っ」 「我慢して」 「でもっ…でもっ」 「このままだと俺との事が怖いままだろ?」 「…っ…ぁ、はい」 背中がぞくぞくとする。 (あ…また…もうダメっ…!!) 再び頭の中が真っ白になり不思議な浮遊感とその直後の落下感。 「……う、ぁ」 荒く息をつく。 だけど息を整える余裕も与えられずにまた快楽を与えられる。 指は再び動き出し、今度は周りの襞ごと軽く押し当てられるように円を描く。 「あ、あぁ…ふ・・・」 一番敏感なところを押し込まれるとピリピリと甘い痺れが身体の中心に広がる。 ふふ、と秋山さんは少し意地悪そうに笑う。 「で、君は口と指だとどっちが良かった?」 「え…あ、そんなの…んっ」 恥ずかしくてそんな事口に出せるはずが無い。 (だけど…言わないと絶対に許してもらえ無そう…) 「……口の方が…好きです…」 「じゃあ、お望み通りに」 「ま…まだ、するん…ですか?」 「そ、観念するんだな」 (なんで…秋山さんってば、こんなに楽しそうなんだろ…?) 「ふっ…ぁ」 再度秋山さんの唇が私のソコに降りてきた。 「あっ…ん…ふ、ぁっ」 「…っ!」 柔らかくなぞり上げられ、摘まれ、甘噛みされて、押し当てられる。 「やっ、ひゃっん…っ!」 もう何回達してしまったのだろう。 唇でずっとソコを愛撫され続けている。 絶頂に達するほど、どこもかしこも感覚が敏感になりますます達しやすくなってしまう。 快感は微熱に変わり、体中が熱い。 つま先辺りは痺れてしまった様に冷たく、感覚が無い。 秋山さんの指と唇が動くたびに制御出来ない身体がビクビクと跳ね上がる。 喉の辺りから甘いモノがこみ上げてきて、ただ意味の無い声をあげ続ける事しか出来ない。 「あ、あきやまさん…」 「も、ほんとにほんとにダメ…です」 (これ以上されたら…壊れちゃう……) 「私、身体…やっぱり変なんです…」 秋山さんの瞳を見つめて懇願する。 「じゃあ、そろそろ許してやろうか?」 ちゅうっと音を立てて秋山さんが私のとろとろに溢れた部分を吸う。 その水音にいかに私が感じてしまっていたかを思い知らされて今更ながら頬が熱くなる。 「力、抜いてな…」 私の上に覆いかぶさる秋山さんの背中に腕を回す。 「ん…」 「ふ…ぅ」 ゆっくりと秋山さんが私の中に這入って来た。 「あ、くっ…」 私の中はいつもよりすごく敏感になっていて、秋山さんがトクンと脈打つ感覚まで感じられた。 確かな存在感に安堵する。 「はっ…ん…」 狭い箇所を押し広げられる圧迫感。 引き抜かれ擦り上げられるぞくぞくとする刺激。 いつまでも慣れる事の出来ないそれをただ背中にしがみついて耐える。 秋山さんに最奥を突かれる度に甘い声が零れる。 ずきんと染みる感覚。 トクトクと私の鼓動が早まる。 (まだそんなに激しくされてないのに…またあの感じだ…) 「怖いのか…?」 私の身体がぴくりと震えたのに気付いて秋山さんが心配そうに視線を向ける。 こくこくと頷いて身体を秋山さんに預ける。 (でも、秋山さんのために…我慢しなくちゃ…) 「もう少しだけ、我慢できるか?」 「…はい…っ」 良い子だ。と秋山さんは私のおでこにキスをしてまた動き出した。 ずきずきと体を蝕む快感に目が眩らむ。 甘く、息苦しいくらいのそれは波紋を描く様に全身に広がる。 体中の全てで秋山さんと繋がっている様な感覚。 秋山さんの全ての動きが熱くて胸が切なくなる。 (秋山さん…秋山さん…) 私は心の中で何度も愛しい人の名前を呼んだ。 「あっ…や…ぅ」 「も…っ、やぁ…ん」 身体の中心に限界近くまで蓄積された快楽をどう開放して良いのかが解らなくて、必死で秋山さんに訴える。 「あきや…ま、さん…あっ…」 「流石にまだ、ここだけじゃイケないか」 秋山さんはくすりと笑って繋がって粘着質な水音を立てるソコに手を伸ばす。 「やっ…!」 何度も絶頂まで押し上げられた突起をまた柔らかく揉みしだかれる。 「んっ!…あっ…くっ!!」 きゅうっと身体に力が入る。 余計に狭くなった内部を擦られて小さく声をあげてしまう。 きつく感じたのは秋山さんも同じだったようで「…っ…締め過ぎだろ」と苦笑されてしまった。 「大丈夫だから、もう少し力抜いてな…」 「う…はい…」 また秋山さんが動き始める。 緩急をつけたその動きに、私の心臓がドキドキと鳴り出す。 (ん…ど…しよう、キモチ良いよぅ…) 少しでも気持ちを落ち着けたくて別の箇所へ意識を集中しようとしても、秋山さんの指から与えられる電流の様な刺激に意識は否応無くソコに引き戻されてしまう。 どんどん甘い感覚は昂ぶっていって、それだけにさっき達してしまった時よりも更に深いところへ落ちていってしまいそうで怖くなる。 「あっ…秋山さ、ん」 「どうした?」 「わた…し…怖い…です」 「…大丈夫」 「俺が居るから…」 秋山さんは私の唇にキスをすると優しく微笑んでくれた。 「っ…ん…ん…」 「ねえ…気持ちいい…?」 「…っは、い…私、も…う…」 「…いいよ」 秋山さんは嬉しそうに極上の笑みを浮かべた。 「俺もナオとイキたい」 耳元で囁かれる。 耳に掛かる吐息はいつもよりずっと熱くて、秋山さんも私と同じ様に感じてくれているんだと思えて…嬉しい。 「あっ…」 「私っ…私…っ…」 体中が溶けてしまいそうなほど気持ちが良くて…ただそれがすごく怖くて秋山さんの胸に顔を押し付ける。 「大丈夫、怖くないから…」 「んっ…ぁ」 何度も大丈夫だから。と言って秋山さんは抱きしめてくれる。 その声に安堵しながら私は落ちていく感覚に身を任せた。 「ーーっ!!」 真っ白に薄らいでいく意識の中、私をきつく抱きしめる秋山さんの腕の感触がとても心地よかった。 ふと気付いて固く閉じたままだった目を怖々と開けると、いつも通りの秋山さんが髪を撫でてくれていた。 頭がまだくらくらとしている。 「あ…」 「お疲れ様」 悪戯っぽくそう言って秋山さんは私の頬にキスをする。 「で、あの…やっぱり……私の身体、おかしくないですか?」 「別におかしいとは思わなかったけど…」 「けど…?」 「君は感じ易過ぎるのかもな」 「ーっ!」 秋山さんの言葉に思わず枕に突っ伏す。 ははは、と秋山さんは楽しそうに笑っている。 少し気持ちが落ち着いて思い返してみると、今晩は色々と相当な事をしでかしてしまった気がする。 恥ずかしくって枕から顔が上げられない。 あんなに恥ずかしい声をあげて、取り乱してしまって…。 大声で叫んで足をバタバタとさせたい位だった。 もちろん身体からぐったりと力が抜けてしまっていて、実行する体力は残されていなかったけれど。 「どうしよう…私…あんな事しちゃって」 「ん?」 「…もうお嫁にいけなくなっちゃいます…」 結構本気で落ち込んでいる私を見て、ぷっと秋山さんが吹き出した。 (そんなに笑わなくったって良いのに…) 秋山さんはまだ肩を震わせている。 ひとしきり笑った後秋山さんは私を抱き寄せた。 「まあ…どうしても貰い手が付かなかったら」 「……俺が貰ってやるよ」 最後は小さいけど優しくて…少し真面目な声だった。 「約束…です」 まだ力の入らない身体から何とか小指を差し出す。 「…いいよ」 秋山さんは私の指にその小指を絡めるとそっとキスをしてくれた。 SS一覧に戻る メインページに戻る |