エイプリルフール(非エロ)
秋山深一×神崎直


「ナオ、今日何の日か知ってる?」
「今日ですか?4月1日は・・・エイプリルフールですね」
「そう。エイプリルフールは何をして良い日だっけ?」
「嘘をついて良い日です」
「正解。ね、あんたさ、秋山にちょっとした悪戯仕掛けてみない?」
「悪戯?」

ことりと首を傾げるナオに
フクナガはにんまりとした笑みを向ける。

「やる事は簡単よ。まず、秋山の家に行く」
「ふむふむ」
「ヤツの家の中に上がり込む前に、目薬を注す」
「ふむふむ」
「扉が開いた瞬間、こう言い放ってやるだけよ」

「秋山さんなんか、大っ嫌いです!」

最愛のヒトから突然、大嫌いと言われて
秋山のその明晰な頭脳は完全にフリーズした。
ビキッを音を立てて固まった彼に
電源を切った張本人は明らかに動揺している。

「あ、秋山さん!?だだだ大丈夫ですか?」

目の前でパタパタと両手を振るが、まったく何の反応も示さない。
いよいよ本気で焦り始めたナオは、殆ど涙目になりながら謝罪した。

「ごめんなさい!大嫌いなんてウソです!秋山さん大好きですから!!
だから・・・戻ってきて下さいー!」

今まで壁の向こう側のさらに向こうの世界を見つめていた秋山の目が
ひたり、とナオに据えられる。

「べつに、気にしてない。そういえばエイプリルフールだもんな今日」

明らかに胸を撫で下ろすナオに、秋山は優しく微笑むかける。

(良かった・・・いつもの秋山さんだ)

けれど罪悪感は払拭できない。
しばらく腕を組んでナオは何か思案するように眉間を皺を寄せるが
やがて意を決した様に、その大きな目で彼を見つめる。

「秋山さん」
「・・・何」

ふいに感じた柔らかい感触。
それを味わう暇も無く、すぐさま彼女は唇を離した。
さっきとは別の意味で真っ白になった秋山の前で
ナオは恥ずかしそうに、ふわりと笑った。

「お詫び、です」
「・・・・・・」
「?秋山さん?」

「ぶっ、あははははははははは!」
「もう、笑い事じゃありません!本当に心配したんですから」
「はー、ごめんごめん。秋山もバッカだねー」
「二度とあんな嘘つきたくないです・・・」
「で、どうしたのそれから。ヤったの?」
「やっ・・・!?そんなわけないじゃないですか!」
「何よー、つまんないわねアンタ達」
「だって・・・」
「だって?」
「秋山さんそれから様子がおかしかったんですよ!」
「はあ?」
「箪笥の角で小指ぶつけるし、雑誌逆さに読んじゃうし、リモコン片手にリモコン探すし・・・」
「ぶはー!!」





後日、秋山はエイプリルフールの嘘の発生源をナオから聞いた。
さらに後日、フクナガは食中毒で1週間ほど入院をした。
その原因は、未だ不明である。






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