ハートを撃ち抜け!
秋山深一×神崎直


安眠を妨害されるというのは、かなり腹立たしい事であり。
心地良いベットで快眠を満喫していた俺の耳元で突然ギャーギャー騒ぎ出したそれを、
思わず窓の外に放り投げたい衝動に駆られる。
だけどそんな事をしたって後悔するのは自分だというのは充分承知しているので、
二度ほど深呼吸をして、気を落ち着かせる。
いくぶん頭の中がクリアになり、気も落ち着いたので、
さっきから迷惑なメロディを奏でている携帯の通話ボタンに指を、

「……あ」

切れた。部屋に再び静寂が戻る。え、あ、うん。何だろう、このやりきれない気持ち。
俺は再び携帯を枕元に置くと、冷蔵庫にミネラルウォーターを取りに行く。
だが、ベットから立ち上がったその瞬間、再び携帯電話が派手なメロディを歌いだした。折りたい。
今度は素早く通話ボタンを押した。

「あ、あの……私、です」

俺の知り合いに苗字や名前が『ワタシ』の女の子はいないんだけど、何て皮肉を言うような雰囲気ではない。
小さくああ、と答えた俺の声に、彼女はどこか安堵のため息を漏らす。まだ何も言ってないんだけど。

「えと、あの、ですね」
「何?」
「えー……お、お家の前に、き、来ちゃいました」

時計に視線を向ければ夜中の三時十五分。女の子が一人で出歩く時間ではない。
ああもう、本当に。何なんだこの子は。世の中の危険というものをまるっきり理解していないのか。
俺の気持ちも少しは考えて欲しい。

(最近は他の男の視線に晒されるだけで腹立たしく思うのに)(……馬鹿じゃないか)

というか、別に電話しなくてもインターホンを押してくれればそれで全て解決じゃないか。
本当、よくわからない。

ドアを開けばワンピースの裾を濡らして、どこか寒そうに震えている彼女がいた。
秋山さん、と可愛らしい笑顔を浮かべ、でもすぐにごめんなさいと謝る。
俺は気にしていないから部屋に入るように催促すると、彼女はまたふわりと笑った。
外はいつの間にか雨が降っていて、今更ながらに彼女の薄着加減にため息が漏れる。
もう、君だけの体じゃないんだ、とはとても口には出来ないけれど。
コーヒーでも飲む?と提案しようとしたが、前を歩いていた彼女が突然俺の方に振り返り、
その細い枯れ木みたいな腕を俺に向けて広げた。
抱きしめて、ください。彼女の震えている声。少し、不安げな表情。
そのどれもが愛しくて、俺は胸の巣食うこの薄汚い感情を吐き出してしまいたくなる。
ああ、愛しているなんて、とてもじゃないが言えないけれど。
もしワガママを言わせてもらえるのなら、今すぐにでも君を鎖で繋ぎとめていたいけれど。
どっちも出来るわけないから、俺はこの弱っちい少女を、力一杯抱きしめた。
きゅ、と俺を抱きしめ返してくる彼女が更に可愛くて愛しくて。

(ああ、君は男を誘うのが本当に上手だな)(俺以外誘うなよ、何て)

ふと鼻腔をくすぐる花の香り。彼女が使っているシャンプーの匂いだった。
体の奥底が疼く。もういよいよ俺も末期症状みたいだ。諦めてるけど。
いつもより荒々しいキス。彼女の驚いたような瞳に笑顔を向けてやる。とびきり、意地の悪い笑みを。
彼女を廊下の壁に押し付けると、キスの続きを始める。舌を彼女の口内に進入させる。
舌と舌を絡ませ、深く、深く彼女とのキスを味わう。
頭がくらくらとする、甘美で淫快な味。ああもう、君は俺を捕らえて放さない。
彼女の背中に回していた右手を彼女の割と大き目のサイズの胸に当てる。
ぴくり、と彼女の体が震えた。ゆっくりとその感触を楽しんでいると、彼女が恥ずかしそうな声を漏らす。
だけど、さ。そんな声を聞いて止める男なんていないと思う。俺を含めて。

右手をそのまま下ろしていく。彼女がその意図に気付いたのか、甘い声で俺の名前を呼んだ。
ロング丈のワンピースの裾を捲り、彼女の可愛らしいピンクのフリル付きの下着を足首まで下げる。
彼女は顔を真っ赤に染めて(いや、廊下は暗いからよくわからないけど)唇を噛み締めていた。
まるで羞恥心と戦っているようで、そんな表情が俺の加虐心を煽る。
顔を彼女の秘所に近づける。彼女の驚きの声に何?と顔を離すと、今度は非難の声があがった。
俺はワンピースの裾を彼女に咥えさせると、耳元で囁いた。

「もし、咥えてるワンピースの裾を放したら、お仕置き、な?」

彼女は驚愕に目を見開き、俺はその表情に満足げに頷いた。まぁ、放しても放さなくても同じなんだけど。
再び彼女の秘所に顔を近づける。香る女の匂いに、背筋にぞわり、と快楽への期待が走る。
しかしまずは彼女の太ももに唇を添える。舌で舐めれば彼女の体が面白いほどに震えた。
そのまま舌を太ももに這わせる。捲れあがったワンピースのせいで俺がどんな行動に出るか彼女から見えないのだろう。
彼女の秘所が一目でわかるほどに潤っていくのがわかった。こういうとこ、本当Mだな。
白い内ももに赤い刻印をいくつか刻んだ俺は、そのまま舌を彼女の秘所へと動かす。
充分に濡れたそこは突然舌から与えられる刺激に、純情なほどの反応を示した。
溢れ出てくる蜜液を舌で味わい、わざとらしく音を立てながら吸えば、彼女が一際大きな、ぐぐもった声を出す。
蜜の味を存分に味わいながら、舌で丹念に秘裂を愛撫する。
顔を上下させ、時折淫核に口付けをすれば、彼女の足が快楽に負け自身を支えられないのか、ガクガクと震えだした。
だが俺は両手で彼女が崩れ落ちないように支えると、また蜜液を求め力強く吸いあげる。
彼女の呻き声にも耳を貸さず、ただただ脳を桃色に染めてくれる媚蜜を求めた。
甘くて蕩けそうな、熱い彼女の味。
十二分に味わって、顔を離せばもういろんな所が濡れてきらめいていて、思わず綺麗だ、何て思ったり。
立ち上がって彼女を見れば、潤んだ瞳と垂れ下がった目尻が否に色っぽかった。
俺の内なる獣が騒ぎ立てる。

「気持ちよかった?」

耳元で弄るように囁くと、彼女は小さく頷いた。
基本的に、彼女は俺に盲目的とも言えるほどの信頼を寄せてくれている。
だからライアーゲームの最中はどこか母の面影を彼女に見ていた。
けど、気が付けばいつのまにかそれは恋愛感情なんてモノになり変わっていて、俺自身酷く驚いた。
あのカンザキナオに、だ。
けど、今思えばそれは必然だったのかもしれない。そう思えるし、思いたかった。
どっちにしても、俺は彼女の事が大好きで愛していて、もう一人で猛る想いを押し留めるのに必死で。
たまに今日みたいに想いが暴走したところで彼女は受け止めてくれるのだけど。

(あー、これじゃあどっちが主導権握ってるのかわからないな)(……案外俺のほうが縛られてたり)

それはそれで面白いかもしれない。まぁ、どっちでもいいか。
俺は右手の中指で彼女の秘所を撫でる。ゆっくり、ゆっくりと。
その度に彼女が顔を切なそうに歪める。ああ、こんな顔すら愛しい。
撫でていた指を一思いに奥まで突き刺す。彼女の瞳が俺を見つめる。
彼女の中はもう万全の状態で、俺の指を受け入れる。指を少し曲げ、壁を擦る。
ワンピースを咥えた口から甘い吐息が漏れる。苦しそうな、切なそうな、切望する瞳。
いいとも。君が望むのなら、何だって与えてやろうと思えるから。
指の第一関節を曲げ、コリコリとしたポイントを探し当てる。彼女が一際強く指を締めつける。
指の動きのスピードを増していく。ビクビクと震える彼女のに悪魔の囁き。

「我慢、しなくていいよ」
「んっ、ふ、んぅ!」

あー可愛いな。もっとこの想いを言葉に出来ればいいのだけれど、生憎俺はあまりこういった類の台詞は言い慣れていない。
俺の口が吐き出していた言葉はいつも嘘で、相手の裏をかく事ばかり考えていた。
もう、そんな事する意味は無いのだけど、だからって急に愛してる、とか君が欲しい、とか。
柄じゃない。

「あ、ふぃやまひゃ、んッ!あ、や、やぁ!」

彼女が震えたと同時に、俺の手を濡らす大量の蜜液。床に小さな水溜りが出来る。
指を引き抜けばべとべとに濡れた右手。舐めてみれば甘い、あの媚液の味。
とうとう力が抜けたのかへたり込みそうになった彼女を支えると、咥えさせていたワンピースの裾を放させる。
一度軽くキスをするとごめんね、と彼女に囁いた。
もう、止めれそうに無かった。

もはや何の役にも立っていない彼女の両足。足を開かせると、彼女の秘所に自分のソレの先端を当てる。
くちゅり、と湿った音が聞こえ、すぐに根元まで飲み込まれた。
そのまま彼女の両足を抱え(いわゆる駅弁、てやつだ)ゆっくりと前後に動かす。
彼女は感度が割といいので、少しの動きで強い反応を返してくる。
秋山さん、と何度も俺を呼ぶその声にくらくらしながらも、俺は貪るように彼女の中を行き来する。
時に小刻みに、時に大きく。
彼女の腕が俺の首に回され、顔と顔の距離がぐっと近づく。
吐き出される甘い匂いの息に、俺のモノが更に猛る。

「あ、や、んんッ、あ、きやまさ、う、あ、ふ、んぅ!」
「ん……気持ちいい?」
「い、です、あ、やぁ、す、きです」
「ああ、うん。俺も、好きだよ」

もうこれ以上言うのは恥ずかしくて(いや、していることも十二分に恥ずかしいんだろうけど)唇を塞ぐ。
塞いだ唇から漏れた俺の名前を呼ぶ声が聞こえたのと、俺が彼女の中で果てたのは、同時だった。



「その、悪かった」

あれから二回ほど延長戦にもつれ込み、その後疲れ果てた体に鞭打って、彼女を急いで沸かした風呂に入れた。
お互いさっぱりとし、リビングでくつろいでいたとこで俺は彼女に謝った。
何て言うか、色々暴走してしまった。最近の俺はどうも感情のコントロールが上手く出来ていない。
頭を下げた俺に彼女は慌てて顔を上げてください、と言った。

「その、最近はどうにも感情的になってしまって、な」
「いや、あの、気にしないで下さい」

そう言って微笑む彼女に、俺は胸を撫で下ろす。
しかし同時に、まるで彼女の優しさに甘えているようで罪悪感が胸を突いた。
あのですね、と唐突に切り出した彼女に、俺は顔を向ける。

「実は今日はその、相談をしに、来たんです」
「ああ、そうなんだ。で、何?」
「あの、ですね。最近、えーと……は、恥ずかしいんですけど、最近、ですね、体が変なんです」
「……何か病気かも、て事?」
「いや、そうじゃなくて!あの、えと、最近、あ、秋山さんとえ、えっちな事してると、ですね」
「あー……嫌だった?」
「い、いいえ!そ、その反対で!すごい、き、気持ちいいんです!」

どうしたらいいですか、秋山さん?何て俺に聞かれても。どう答えろって言うんだ。
ああもう、本当に。君は馬鹿正直なのか、馬鹿で正直なのか。

「あーんー……じゃあ、さ」
「はい」
「とりあえず、俺の傍から離れなければ大丈夫なんじゃないの?」






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