秋山深一×神崎直 ![]() 「おじゃましまーす」 呑気な声で、誰もいない部屋に挨拶をする。 扉を閉めてリビングのソファにゆっくり腰かけると、部屋を見回した。 ここは秋山の部屋。 今日会いたいと秋山に連絡を入れたら、仕事がまだ少しあるから先に部屋にいろ、との指示を受けた。 恋人同士になって、最近もらえた秋山の部屋の合鍵が、妙に愛しく思える。 「そうだっ!夜ごはんでもつくってあげようかな!」 新妻みたいだ、なんて自分で思っては恥ずかしくなり、顔を赤くして。 冷蔵庫をあけると 「……からっぽ…」 酒やら水やらの飲料と、必要最低限の食糧しかない。 秋山はあまり自炊をしないらしい。 これでは料理もできない。 「…買いに行こうかな。」 そう思い、秋山に、夕飯の買い出しに行っても良いですか?、とメールを送った。 返信がくるまでの時間を、何に費やそうかと考えたあげく、テレビをみる事にした。 丁寧に主電源から消してあるところが秋山さんらしい、と思わずにやける自分に気付く。 テレビをつけるとブゥンという音と共にニュースを読む声が部屋に響き始める。 1チャンネルでとめられていたことが、ニュースを見ている秋山を簡単に想像させて、また顔が綻んでしまう。 ふと、テレビの下に目を移すと、DVDデッキに目が止まる。 どうやらディスクが入っているようだ。 「なんだろ…?映画かな?」 普段秋山がどんなものを見ているのかに興味が沸いて、あんまり勝手にものに触るな、と普段から言われていたが、 つい再生ボタンを押してしまった。 突然パッと画面が明るくなる。 『あぁ…っ、やだぁ…ダメぇ…!』 『だめ?…っはぁ…お前のココはこんなに濡れてるのになぁ…?』 『あぁぁっ…!!』 「…っ!?」 突然耳に入ってくる女性のあられもない嬌声。 淫らな男女の光景が目に飛込んでくる。 『あんっ…イク…!イっちゃうぅ…!』 「―――― っ!!」 ナオは堪らずにテレビの電源を切った。 分けも分からず、目をパチクリさせる。 「こ、これ…アダルトビデオだ…!」 秋山がこんなものを見ていることへのショックとか、自分も普段はこんな風なのかとかいろいろなことが頭で渦を巻く。 そもそも他人の行為を見たことが無かった。 胸の鼓動が早くなる。 「や…やだ…ドキドキする…」 頬も真っ赤なのだろう。 それが分かるほど体が熱っぽい。 収まって欲しくてギュッと瞳を固く閉じる。 しかし、脳裏には先程のビデオの事ばかりが浮かんできてしまう。 そして、秋山のことも。 「…あ…あきやまさん…っ」 うわ言のように呟くと、じわりと身体の奥から熱が込み上げてきた。 「なんだろ、この気持ち…」 なんだか分からない高揚感に襲われる。 それは秋山に快感を与えられている時によく似ていて、 「やだ…収まんないよ…」 深呼吸をしようと息を吐けば、それはだんだんと熱い吐息へと変わってゆく。 「秋山さんにされてるようにしたら収まるかな…」 そう言うと恐る恐る下着の上から疼いているソコをそっと指で撫でた。 「んっ…」 途端にビクリと身体が跳ねて、蜜が溢れ湿っているのが下着越しにも解る。 よくないことだと思うのに指を止めらない。 こんなところをもし秋山に見られでもしたら、 彼に軽蔑されてしまうかも知れない。 そう考える自分もいるのに、 快感を求める自分もいる。 「…ふぁっ…」 ぎこちない手つきながらも確実に快楽を拾い、次第にくちゅりといやらしい水音が鳴り始めた。 もう直ぐで達しそうな所で、携帯の着信メロディが鳴る。 「っ!やだっ!」 秋山さん、と表示された携帯電話に向かいながら、急いで服の乱れを直して電話に出た。 「も、もしもし…?秋山さん?」 『今から帰る。夕飯は買ってくからつくんなくていいよ。』 「は、ぁ…っ、はい…わかりました…」 乱れている呼吸を整えようとしても、切れ切れにしか話せない。 勘の鋭い秋山には気付かれてしまったかも知れない。 案の定、彼は暫く黙り込んでしまった。 『…お前、今俺の部屋にいるんだよな』 「はい…そうですけど…」 『…そうか。……』 「…?あきやまさん?」 『勝手に触るなって言っただろ』 「…えっ!」 バレた。 確実に。 意地悪な口調の声を聞いて、すぐに理解する。 「あ、あのっ……」 『一人でヤってんの?』 「……え?」 『今、一人だよなって聞いてんの。』 「はっ…はい!」 『じゃあ、今すぐ帰るから続けて。』 「…え?!」 予想外の言葉に驚く。 『続けて。』 「えっ…嫌ですよっ!」 意味をやっと理解して、必死に拒否するが、秋山は優しく耳元で話す。 『中途半端じゃ、満足できないだろ?俺が教えてやるから、その通りにするんだ。』 「…うぅ……わかりました…」 抵抗しきれずに、承知してしまう。 しかし、電話ごしに声を聴かれるのは、しかも一人でしている時の声を聴かれるのはさすがに恥ずかしい。 『いい子だ。』 その声で、彼が今どんな表情をしているかが容易に想像がついた。 たまに見せる意地悪な微笑み。 忘れかけていた熱を、再び体が取り戻しはじめる。 しばらく電話でのやりとりが続くうち、ナオも恥ずかしさを忘れて乱れるようになっていた。 「…やっ、んあぅ…ふっ」 『足を限界まで開いて、…指を中で曲げて』 ナオは片手に携帯を握り締めながら足に絡み付いている下着を蹴るように脱いで 言われた通りに足を広げた。 そして、もう片方の手は溢れかえる蜜壷の中でクッと指を曲げる。 「…ぁんっ!」 ある部分を掠めたら途端に腰がビクリと跳ねた。 『見つけたか?そこがお前のイイ場所だ』 何度もそこを触ったらトロリと大量の蜜が溢れ出す。 「あ…んぁ…っ!」 ゆっくりと指をスライドさせる。 電流が走ったみたいに身体が痺れた。 「んあぁっ…いやぁ……!」 高みへ上っていく感覚に溺れそうになった瞬間。 ガチャ… 「っ!?」 ドアの開く音。 ナオは慌てて服を直してドアの方へ近付く。 「…あっ…秋山さん…?」 角から玄関を覗き込むと、手にビニール袋と仕事用の荷物を持った秋山が携帯電話を片手に立っていた。 『「おまたせ」』 耳元と目の前から秋山の声がする。 堪らなくなってナオは泣き出しそうになりながら、携帯を床に落とし、両手を愛しいひとに差し出して名前を呼んだ。 「…っ…あきやまさん…」 頬は真っ赤に染められ、息遣いも荒く、中途半端に 乱れた服が妙に色っぽい。 「…君って本当に…」 誘うの巧いよね、と言いかけてやめた。 ナオが抱きついてくる。 細い腕が自分の腰に回されてキュッと力が込められる。 「…ただいま。」 そう言うと、胸板に軽く押し付けられていた顔が自分の方へ向き、 「おかえりなさい!」 と、とびきりの笑顔が帰ってきた。 愛しくて、思わず口付けをすると、 「んふっ…」 とナオが官能的な吐息を漏らす。 何かを言いたげだったので、出来るだけ優しく聞いてやる。 内容は把握できるのだが。 「どうした…?」 「あっ…秋山さん…あの……あのっ!」 「ん?」 「…秋山さんに…最後までしてほしいです…っ!」 予想通りの答えに、満足げな笑いを浮かべると、秋山はもう一度深く口付けをした。 ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() |