秋山深一×神崎直 (あ……) 耳朶を甘噛みされブルッと震える。 夕食後の満腹感の中で秋山の腕の中にすっぽりとはまり、後ろから受ける優しい愛撫。 ちゅ、ちゅ、とこめかみから頬にかけて降りてくるしっとりとした感触に首をひねっていくが 視線の先の優しい眼差しに、恥ずかしさからそっと目を伏せた。 こういう関係になってから久しいが、未だに慣れない。 秋山から求められることを待ち望んでいる自分がいる反面、 変化していく内部の感覚についていけず、戸惑う自分がいた。 触れられたところからとけていってしまいそうな錯覚に襲われ怖くなるのだ。 しかし、そんな意思とは関係なく身体はどんどん熱くなっていく。 自分からせがんで初めて秋山と一つになって以来ずっと、 キスやハグなどの軽いスキンシップがあってもそれ以上に至ることはなかった。 今でも抱きしめられたり、耳元で囁かれたりするだけで下腹部がジンジンとしてきてしまう。 しかし、“体の奥がおかしい”と伝えることが、自分から秋山を行為に誘うことになると知ってからは 恥ずかしくてどうしても言い出せなくなってしまった。 秋山は長くまっすぐな指をそっと滑らせ顔を上げさせると、 半開きになって誘うみずみずしいデザートをほおばった。 啄ばむような触れあいに続き、深く舌を挿し込む。 柔らかい舌を絡め合い、どちらの唾液かもわからなくなるころには 胸に心地の良い重みがかかっていた。 初めは直にせがまれたかたちでようやくつながれたが、 最終的には自身の身体の疼きをおさめるために、何度も彼女を抱いた。 二度目は自分からけしかけたとはいえ、 抱けば抱くほど華奢な身体に溺れていく自分を抑えることができなかった。 しかし、ようやく満足した時に自分の下で脱力した彼女をみて なんともいえない罪悪感めいたものを感じてしまったのだ。 (彼女を壊してしまうかもしれない…) それからというもの、持ち合わせた理性をフル活用し自制の日々を送っている。 「ぁ…」 抱きしめたまま形の良い胸に手を這わせる。 首筋に唇を押しつける度に小さな感嘆の声が上がる。 (あぁ…もぅ、ダメ…) 欲情が羞恥を押さえつけ、更なる愛撫を求めようと口を開いた時だった。 自分を拘束していた力が緩み、とん、と頭部に重みがかかった。 「風呂…行ってくる」 つややかな髪の流れに頬擦りされ、名残惜しげにそっと身体が離れていく。 「……は、い」 開いた口はタイミングを逸し、承諾の言葉しか出せなかった。 大きな溜息が浴室に響く。 (やばいな…) こんなにも自分が強欲だとは思ってもみなかった。 特に女性関係に関しては限りなく淡白であるとの自負があったのに、今の自分は何だ。 彼女といると、いや、今や彼女のことを考えただけで めちゃくちゃに愛したいと思ってしまう自分に、嫌悪に近い感情を持っていた。 「っくそ」 拳で叩いた水が跳ねる。 と、入り口のほうに気配を感じた。 「ぁの…秋山さん…?」 「………なに」 「あの…ぁの…一緒に、入っても…いい、ですか?」 恥ずかしさを懸命に堪えた声が、遠慮がちに聞こえた。 「…何、言ってんの」 思わず顎にかかるまで深く沈みこむ。 「私も…お風呂に入りたいん、です」 「…じゃ、ちょっと待ってて。今すぐ出るから」 「いっ今がいいんですっ」 ガタガタとした物音の後に目の前の戸が開いた。 「っおい!」 ザバッと起き上がり、思わず入り口から背を向ける。 「なっに考えてんだよ!」 返ってくる声はなく、かわりに水音が聞こえてきた。 突然の予期せぬ出来事にさすがの秋山も困惑し、続く言葉が出てこない。 考えあぐねてると、キュッ、と鳴らし音が止まった。 「…おい」 返事はない。 「なに、考えてんだって言ってんだろ」 「…聞こえてる?」 ひた、とこちらに向いた足音に焦る。 「っなんだよ。くんなって」 視界の端に白い脚が見えた。 「ちょっ、やめっ」 目を思い切り逸らし抵抗を試みたが、湯の高さが上がったことが敗北を語っていた。 「…どういうつもり」 「ハァ、気持ちいぃですね…」 「人の話、聞いてんの」低い声が室内に反響した。 「……だって…秋山さん、最近…近くにいてくれないですもん…」 「は?いつもいるだろ」 こんな状況ですっかり直のペースにはまり、語気が強くなる。 「もっと、近くです」 背中に感じた感触に身体が大きく揺れた。 細い指がそっと触れているだけにもかかわらず、 その感触は理性を崩すのに充分と言えるほど秋山にとっては大きかった。 ギリギリのところで耐えると、そっと深呼吸をし、理性を呼び止めた。 「…とりあえず、さわるな」 「…どうしてですか?私…もっと、秋山さんに触れたいです」 「ちょっと黙って」 「いやです」 両手で触れ、背中に頭をもたれさせた。 「あのな」 「身体がおかしいんです、秋山さん、自分に言えって…だからっ、こないだみたいにしてください!」 「っんぅ!」 振り返って頭を掴み、欲しがる唇を塞いだ。 先ほどとは違って息もつかせぬ荒々しい口づけに直は翻弄されていく。 片手を下に滑らせ、桃色の尖端をたたえた膨らみを揉みしだいだ。 「んん…ぁ…あぁ」 首筋から肩に舌を這わせ鎖骨の上できつく吸い、 そのまま身体を下りていき、尖端を口に含む。 「ぁ…あ、きやま、さぁん…んぅ」 室内に響く嬌声が更に秋山の脳内を刺激した。 荒々しい愛撫のせいか浸かった湯のせいか全身を桃色に染めた直は、ハッハッと荒い息を上げる。 その息遣いで秋山は我に返り、細く息を吐くと胸に顔をうずめ抱きしめた。 「…もう、キミに怖い思いをさせたり傷つけたりしたくないんだ」 「あきやまさん…」 直は秋山の髪に口づけ顔を上げさせると、潤んだ瞳で至福の微笑を浮かべた。 「だい、じょうぶです…だから……もっと、して」 精一杯の彼女の一言に秋山はいったんぎゅっと目を瞑ると、ザバッと彼女を抱き上げ そのまま浴室を後にし、ベッドに降ろすと上から覆い被さった。 「っはっあぁ、ぁ、んん」 尖端を口に含みながら舌で円を描く。 両手を身体のラインに這わせ、見知ったポイントを刺激していった。 「ゃあ、は…ん、っきや、ま、さぁん…ぁあ」 舌で脇腹を愛撫しながら下へと降りていく。 脚の付け根を舌でなぞると小さな身体がびくん、と震えた。 「あぁ…ん」 そのまま内腿を舐め上げる。 「っあきやっさっ、やっ、それぃやっ」 「いいんだろ」 「や…っだ、どんど、ん、からだっおかしっくな、て、あぁあっ」 「大丈夫だよ、最後にはちゃんと治まるから」 開かせた両足を押さえつけ割れ目を舌でたっぷりと舐め上げた。 「っっっあぁああ!!」 溢れる蜜をじゅる、と吸い上げる。 「やだぁっ!そんな、のきたな、い」逃れようと秋山の頭に手を伸ばす。 「汚くなんかない。おまえの、美味いし」 両手を掴み両足と一緒に押さえつけた。 「いやぁ、あぁ…ぅ、んぁあ」 「大丈夫だよ」 ささやかな抵抗を無視し、更なる高みに昇らせようと蜜まみれになりながら愛撫を続けた。 「…ぁ、はぁ…んんぅ、あぁ…」 丁寧に舐め続けているうちに直の身体から力が抜け、愛撫に素直に従うようになってきた。 そこで、あえて避けていたぷくりと腫れた突起を舌でつん、と突く。 「っきゃぁ!!」 突然の強い刺激に身体が跳ねる。 秋山はにやりとほくそ笑むと、舌の腹でざらりと舐めあげた。 「っあぁ!ゃあ!!」 もがこうとするが捕われたまま動けない。 四肢の自由を奪われた状態で与えられる快楽に、頭がおかしくなりそうだった。 「あっあっあぁ、ゃあ、あ、んんぁ」 舌で転がすと、はちきれんばかりの膨らみを見せ、秋山の嗜虐心をそそる。 イキたくてもイケない状況に、それがどういうことなのかわからない直の瞳からは 大粒の涙が零れていった。 「あ、きや、…さんっ…ゃあ、こわ、い」 必死の言葉に、びくりと肩が大きく揺れる。 押さえつけていた力を緩めると、直は両手で顔を覆い、幼子のように背を丸めた。 「…あ…」 頭の芯がすぅ、と冷えていくのがわかった。 「ご、めん…」 震える直に困惑し、今更ながら自分の行為を悔やむ。 「ほんと…ごめん。ごめんな」 後ろからそっと抱きしめる。 「俺が悪かった…ごめん…」 腕の中から細い声が聞こえてきた。 「…ちが、…私…とけちゃいそうで…、わけがわかんな、くなっちゃって…こわ、くて」 「…それって…俺が、怖いんじゃなくて?」 「…わたし…あきやまさんのこと、こわいなんて…思ったこと、ないで、す」すん、と鼻をすする。 「ぁの…きもちよくて、自分がどっかいっちゃいそうで…」 鼻声の恥ずかしげな声に、無理強いして怖がらせたと思っていた秋山は、安堵の息を漏らした。 耳元にそっと唇を押し付けると 「どっか…イきたくないの?」 「んぅ……だって…」 「俺も、一緒だよ?」吐息混じりに囁く。 「…ぁあ…きやまさん、も?」艶のある声に熱をもった身体が疼いた。 「そう」 「ずっと、一緒だから、怖くないだろ?」舌を挿し込みねっとりと輪郭をなぞる。 「っぁ…は、ぁん」 「な?」 「ぁ…きや、まさ…」とろんと潤んだ瞳を向けて、麻薬のような甘い誘いに身を委ねた。 「あ…っぁは、ぁ」 尖端をつまみながら背骨に沿って舌を這わす。 嬌声に合わせてびくびくと腰を反らせたところに指を滑らせ、丸い尻のラインを擦る。 「ふ、ぅん…あぁ、ぁ、きや、っさ」 「大丈夫。ここにいる」 「っあ!ぁあっ」 後ろから割れ目に手をもっていくとそこは蜜でとろけていた。 「すごいな」 秋山は上体を起こすと直の腰を抱え上げた。 「っ!やっ、はずかし…やだぁ」 起き上がろうとする直の背を手で押さえ、四つん這いにさせる。 本人の言葉とは裏腹に、欲しいとヒクつく襞に指を飲み込ませた。 「っくぁっ、は、ぁ」 シーツに顔を押し付け快感に悶える。 「言うこと、聞いて」 「く、ぅん…ん、ぁ」 ちゅぷちゅぷと出し入れされる指の動きに合わせてシーツの間から快楽の声が漏れてくる。 そのままもう一つの穴に舌を這わせた。 「っきゃぁ!!いやぁっ!あぁ!!」 逃げようとする腰を掴みゆっくりと弄る。 究極の恥ずかしさと初めての感覚に直の瞳がシーツを濡らした。 「ゃあ…っきやま、さ…ゆる、して」 割れ目からは蜜がとめどなく流れ、腿を伝いシーツに落ちる。 その蜜をすくうように親指を下から割れ目に沿わせ、雫を溜めた突起をぐりっと押した。 「きゃあぁぁっ!」 全身が大きく震え、蜜がぼたぼたと落ちる。 「まだだ。まだ、イクな」秋山の言葉に遠のく意識を必死でつなぎとめた。 崩れ落ちそうになった腰を抱えなおすと、溢れる蜜の中心に自身をあてがう。 すっかり解れたソコは、あっという間に秋山を飲み込んでいった。 「っく、ぅ」 純真な顔つきからは想像できない内部のうねりが、秋山を痺れさせる。 「あぁ…、きや、まさ、ん…んん」 シーツに押し付けられた横顔には、ようやく迎え入れられた喜びが彩っていた。 ゆっくりと腰を動かすと、くちゅ、くちゅ、と蜜が絡まり卑猥な音が響いた。 「あぁ…ん、んぁ、ぁ」 「ふ…おまえの中、ホントすごいな」 弾む息遣いの間に言葉が滑る。 「んん…あ、ぁき、まさ…あぁ…」 ゆっくり動かされることでじんわりと快感が広がり、確実に脳内を支配していく。 (あぁ…へんになっちゃう…) 秋山の動きに合わせて自然と腰が動く。 「ぁ…ん、ん、んぅ」 「…もっと、ほしい?」 「あ、ぁ…、は…ぃ…」 素直な返事に目を細める。 「いい子だ」 「っきゃあぁ!!」 子宮口への大きな衝撃。 全身が串刺しにされたように快感が突き抜け 咥えている内部がきゅう、と秋山を捕らえて離さない。 「っ…そんな、締めるな」 「あぁ、ん…っきや、さ…」 もっと、もっと、とねだる締めつけに応え、いっそう激しく打ちつけ始めた。 「きゃ!あっ、あっ!あぁぅ、んぅっ、あっゃあ」 快楽に溺れた口元から雫を垂らす。 「そんな、イイ?」 一番敏感なところに向かって突き立てる。 「っゃあ、あぁん、ぁあっ、それ、だめ、だめっ」 「だ、いじょうぶだよ、そのまま」 「ゃあっ、こわいっ、やっ、あぁっ」 「大丈夫だよ」 「ずっと、一緒にいるから」 激しく突きたてながら直が安心して高みに昇りつめられるよう囁いた。 内部が達する前兆をみせ、きゅうきゅうに咥え込む。 「…くっ、ダメだっ」 「っぁあああ!!!」 尻がブルブルと震え達する直の内部の痙攣に誘われるまま、秋山も自身を解き放った。 (あきやまさん…だいすき…) (…おい) (おい) 「…ぇ」 (大丈夫か?)(あれ…あきやまさん…夢にまで出てきてくれるなんて…嬉しい) (…いつも、悪い。辛くさせて) 「何、言ってるんですかぁ…私は…うれし、い、です」 「ホント、は、いつも…いっぱい…ほしいって思ってる、のに恥ずかし、くて…」 「そうなの?」 「そ、う、…ぇ…?…………っきゃぁっ!!!」 ようやく覚醒し、腕の中で抱かれている状況をたっぷりと数秒かけて理解した。 「クス…元気だな」 「あのっ違うんです!違わないけど、違うんです!」 懸命に説明しようとする直の頭を、目を細めて微笑みながら撫でる。 「俺は、嬉しいけど?」 「え…?」 巻き込むように足を絡め 「いくらでもしていられる気がする」 額に口づけた。 「あ、きやまさん…」普段は聞けない甘い声に頬を紅潮させる。 「キミの言葉が本当なら、もう遠慮はしないけど…いい?」 「ぁ…は、い…わたし…ぁ…」 続けようとする言葉を口づけで奪い、再び熱くなった自身を直の腹に押しつけた。 SS一覧に戻る メインページに戻る |