好きすぎて
秋山深一×神崎直


その日、二人で夕食を食べた帰り、直は秋山の家に初めて遊びに行くことになった。
秋山は直にコーヒーを手渡しながら、テレビをつけた。

「秋山さんっぽいお部屋ですね」
「そうか?」

そういって直は部屋をうれしそうに見渡していた。

「秋山さんの匂いがする」

直はリビングをウロウロしては、はしゃいでいる。

「こっちきたら」

そう声をかけてやっと直は秋山の座るソファーに来た。

「キミ、はしゃぎすぎ」

秋山は微笑んだ。
直は突然恥ずかしくなって、テレビのチャンネルを変えだした。

「あ、あれ?」

その手が一瞬止まり、とある番組に目を奪われた。

『処女の女を抱くのは抵抗がある』
そんな街頭インタビューをしている、よくある深夜番組の一節だ。
そのテレビの中の男たちは
『面倒だ』や『重い』などの肯定的な意見ばかりが並んでいた。

「・・・なんでこんな番組に興味示してんだよ」

秋山はそんなことを思いながら直をチラッと見た。
すると直は思いのほか真剣な表情でその番組に見入っていた。

番組が終わっても直はテレビの前を離れず、じっと考え込んでいるようだった。
さすがに秋山は心配になって声をかけた。

「おい」

直は一瞬びくっとしたかと思うと秋山を見つめた。

「秋山さん・・・」
「なに?」
「秋山さんもですか?」
「なにが」
「秋山さんも処女は抵抗があるんですか?

だから・・・ずっと私にキス以上はしてくれないんですか?」

 彼女は目を伏せた。
 一瞬目が涙で光って見えた。

「そんなことは・・・」

秋山は困ったように言葉を濁すしかなかった。

「じゃあどうしてですか?」
「私じゃだめなんですか?」

そう言い募る直をかわすのもそろそろ我慢の限界だった。

『・・・好きすぎて抱けないなんて言えないよな』

秋山は直を抱きしめて溜息をつくしか出来なかった。






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