愛しいモノ
秋山深一×神崎直


今…何時だろう?
時計を見ると午前6時半を少し過ぎていた。

直は静かに身体を起こし隣にいる秋山を見る。
まだ…眠っているようだった。
起こさないようにそっと布団から抜け出す。

「あっ…」

昨日の情事の名残りで…裸のままで寝てしまっていたのを思い出し、真っ赤になってしまった。
取りあえず秋山に脱がされた下着を見つけ、急いでつけた。

「おはよう。…何、照れてるんだ?」

突然、秋山から声をかけられて、直はびっくりしてしまった。

「あっ…秋山さん、驚かさないで下さい!」
「別に驚かしたつもりはないが…。」
「…いつから見てたんですか?」
「恥ずかしそうに下着を探してた時から。」

そう言って秋山も布団から身体を起こした。

「下着を探して着けただけなのに…何赤くなってるんだ?」
「そっ…それは…。」

直は秋山に指摘されて、更に頬を赤く染めながら言葉を濁す。

「ふ〜ん…。昨日の事でも思い出した?」

直は一瞬言葉を詰まらせた。
図星である。

「…っ、そんな事ありません。」
「…相変わらず嘘がヘタ。まぁいいけど…。」

そう言って秋山は1度身体を伸ばし、さっさとシャワーを浴びに風呂場へ移動した。
何となくホッとした直は急いで服を着て、朝食の用意を始めた。

朝食を食べた後、二人で一緒に玄関を出た。
今日は秋山は仕事、直は一度家に戻ってから大学へ行く予定だった。
それぞれ目的の駅までの切符を買い、一緒の電車に乗り込む。

…ガタン、ゴトン…

朝の通勤ラッシュの中。
かなり客が多く、誰もが密着状態になる。
もちろん、秋山と直も例外では無い。
とはいえ、何とかドア付近の手摺りの横に直を立たせて秋山はその後ろの位置を確保していた。

「人…多いですね…。」
「そうだな。」
「前にこういう状態で痴漢された事があって…悔しいけど何も出来なかったんです。」
「へぇ…。」

痴漢…ね。
秋山は直の耳元へ顔を近づけ囁いた。

「抵抗出来なかったのは…感じてたから?」
「ちっ…違います!」

慌ててしまい、声が少し大きくなってしまった直を秋山が諌める。

「声が大きいって…。」
「すっすみません…。」

だが、ざわついた車内で気にする者は誰も居なかった。

学生時代に犯罪心理学を専攻していた秋山は痴漢行為について記述を思い出した。
『そこに獲物があって二度と会えないからという思いや密着した状態で
誘われている感覚に陥り、ついに手を出してしまう心理』
当時はそんなもの理性で押さえるべきで、勝手な理屈でしかないと思っていたが、
今の状況では…なるほど…と思ってしまう。

…手を延ばせば捕まえられる愛しいモノ。
あと僅かの時間で離れてしまうのだ、と思うと…自分の元に引き留めたくなるもの…だ。

秋山はそっと腕を伸ばし直のスカート越しに太腿からお尻へと手を滑らせる。

「えっ…?」

驚いた直は振り向いて秋山を見たが、秋山は…何?という感じで惚けた。
直は不審に思いながらも窓の外に視線を戻した。

「あ…っ」

今度は確実にお尻に掌が触れていた。
ゆっくりと撫で回しながらお尻の割れ目にそうように指先が流れていく。
もう一度、秋山を見ると悪戯っぽく笑っている。
やはり犯人は秋山らしい。

「やめてください、秋山さん。」

直は小声で抗議する。
しかし秋山は悪びれもせず、どうして?と聞き返して来た。

「…だって…。」
「これ以上の事もしてるのに?」

そう言って直のスカートを手繰り寄せて太腿を直接撫でた。

「ああっ…!」

ゾクッとする感覚が直に駆け巡る。
秋山は手を更に上まで移動させて直の下着まで到達し、下着越しに直の秘部に触れた。

クチュ…

「やっ…!」

敏感な部分を繊細なタッチで撫でられ直の官能が一気に引き出されていく。

更に背後から直を抱きしめるように片手を回し、服の上から胸の膨らみを まさぐり、こねくり回した。
直は人前で弄ばれる羞恥から真っ赤になりつつ…いつしか快楽で熱く艶やかな吐息を漏らさせる。

秋山は直の耳元へ囁きかけた。

「気持ちいい?」

直は答えられず、潤んだ瞳で見つめ返す。

「…まだ…足りないようだな。」

…違う!と直が言い返そうとした時、秋山は下着をずらし、
直の恥ずかしく濡れた秘部へ人差し指を押し入れた。
クチュクチュと肉壁を掻き回され、更に最も敏感な肉芽を親指で刺激される。

「やぁ…んっ!」

押し殺した直の喘ぎが漏れてしまう。
先程まで服の上から弄られていた胸も…いつの間にか秋山の手が服の下から侵入していた。
お気に入りのブラを上にずらされ、胸の突起をクリクリと摘みあげられる。
そして背後からはお尻に秋山の熱く硬いモノがグイグイと押し付けられ
…いやがおうでも昨日の情事を思い出されてしまっていた。

…ダメ…これ以上されたら…私…。

快楽と恥辱でおかしくなりそうになった時に…不意に秋山の手が止まった。
ずらされていたブラが直されて、スカートも元に戻っていた。
すっかり官能に酔っていた直の身体はまだ快楽を求めて疼いている。

「秋山…さん…?」
「君の降りる駅に着いたよ。」
「えっ?」

窓の景色を見ると確かに直の降りる予定の駅だった。

「俺の降りる駅はまだ先だからね。」

そう言ってから直に顔を近づけ囁く。

「…続きはまた今度な。」

電車の扉が開き、人波に押し出されるように直は降りた。
車内で意地悪く笑いながら、手を小さく振る秋山を乗せたまま
列車の扉が閉まる。

今度って…いつ!?
半ば茫然としつつ…直は秋山を乗せた電車を見送っていた。






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