月明かり
秋山深一×神崎直


秋山視点…Side.A
直 視 点 …Side.N


Side.A-1

今日は朝から欝陶しい天気だった。
俺は外出先から戻り、濡れたシャツを脱ぎ捨てて
タオルで濡れた身体を拭き取る。

窓の外から聞こえる雨音は少しずつ激しくなってきたようだ。

「くっくっくっ…。」

今日という日に相応しい。

俺の中で、あの静かなる狂気が蘇る。
滾る復讐心と冷静な計画に身を費やす事を誓った

―――― ちょうど三年前の…。

突然、携帯の着信音が鳴り響いた。
もう何度目だろう?
しつこいぐらいに繋かってくる神崎直の電話を無視しているのは…。
話をするのも怠く、何よりも今の俺では彼女を傷付けるだけしかないだろう。

いい加減、放っておいて欲しい。
鳴り響く携帯を手に取って、通話もせず電源を切り…そのまま机に投げ置いた。


Side.N-1

「どうしちゃったんだろ…秋山さん。」

何度も…携帯に電話とメールをしているが全く返事がない。

最後に会ったのが三日ぐらい前。
食事をしつつ話をしていた後に、店にあったカレンダーを見てから
…帰りは何も話してくれなくなった。

何か怒らせちゃったのかな?
気になって仕方ないから何度も連絡しているのに…出てくれない。

それとも…またLIAR GAMEから案内が来たのかも?
そういえば、ここ数日は何事も無い、元の生活を過ごしていた。
そろそろ動きがあっても…おかしくはない。

「秋山さん…!」

もう夜の近づく時間だったけれど…居ても立ってもいられず、
傘をさして雨の中…秋山さんの家へ向かった。


Side.N-2

雨で肩を濡らしながら、ようやく秋山さんの家に着いた。
もう夜だというのに部屋の明かりはついてなかった。

一応、玄関にある呼出音を鳴らしてみたけど…やっぱり返事はない。

「出掛けちゃってるのかな…?」

このままここで、秋山さんの帰りを待とう。

玄関の前に座り込もうとした時に扉の取っ手に鞄の紐を引っ掛けてしまった。
慌てて取ろうとしたら…取っ手が動き、扉が少し開いた。

えっ…鍵が…開いてる!?
私は恐る恐る扉を開け…中を覗き込んだ。

「秋…山…さん?…居ますか?」

部屋の奥に…上半身にタオルだけを首に掛け、
俯いたまま壁にもたれて座り込む、秋山さんが居た。


Side.A-2

…迂闊だった。
勝手に扉を開けないだろうと甘く考えていたとはいえ
玄関の鍵を掛け忘れていたとは…。
アイツの性格なら、いつ来てもおかしくない状況だったはずなのに。

しかし、当然ながら話をする気も無く…不機嫌なまま、ぶっきらぼうに言葉を投げた。

「…不法侵入だぞ。」

俺の声に驚いた直。

「秋山さん!居たんですね。」

居る事に安心してしまったのか、そう言いながら近づいてくる。

おいおい…聞こえてないのか?

「…帰れよ。」

かなりキツイ口調だったと思うが…キョトンとした表情で俺を見る。

「どうしたんですか?秋山さん…何があったんですか?」
「うるさい!帰れって!!」

怒鳴り付けたのだが…直は一瞬びくっ、となっただけで…どうやら引き下がる様子は無い。

「…帰りません。ちゃんと理由を教えて下さい!」

そう言って俺の横に座り込んでしまう。

…面倒臭い…。
そう思った俺は直を押し倒すように襲い掛かった。


Side.N-3

「きゃっ…!」

突然、秋山さんが私を押し倒し、上にのしかかるように被さってきた。

「あっ、秋山さん!」
「うるさい…黙れ。」

私に言葉を続けさせないように…口付けされた。

「んんっ!」

強引に私の口内へ舌が侵入してくる。

ジタバタと抵抗してても秋山さんは全く動かない。
解放される事なく…着ていたブラウスに手をかけられ、強引に左右に引き裂かれた。

勢いでボタンがいくつか飛び散ってしまう。
そしてお気に入りのブラが外されて…私の胸を…秋山さんが触れた。

「やぁ…んんっ!」

キツく胸を揉みし抱かれ、痛いぐらいなのに
口を塞がれたままの私は、話す事どころか…呼吸すらまともに出来なかった。

どうして…秋山さん!
裏切られた気分がして泣きたくなるほど悲しくなってきた。

ようやく…秋山さんの唇が離れて…少しだけ私を見つめていた。
その瞳が…どこか哀しく寂しげで…私は言葉を失ってしまった。


Side.A-3

乱暴に直を押し倒し、強引にディープキスをする。
そしてブラウスに手を掛け左右に引き裂き、ブラを外した。

柔らかい…女の感触と甘い香り。
形の良い胸のふくらみが、俺が揉みし抱くたびに形を変えていく。
夢中になりそうな…クラクラする感覚を抑えて直を解放し見つめた。
これだけの事をすれば…さすがに逃げ出すだろう。

ところが…直は逃げるどころか、動く気配すらない。

「逃げないのか?」

不審に思い、思わず問いただしてしまった。

「…逃げません。」

直は頬を赤く染め、震えながらも気丈に言い放つ。

「秋山さん、本当にどうしたんですか?いつもの秋山さんらしく…ないです。」
「…いつもの俺って…なんだ?お前に俺の何がわかる!?」

傷つける…とわかりながらも言葉で直を切りつけてしまう。

しかし直は俺の頬までそっと手を伸ばし指先で触れた。

「いつもは…優しい秋山さんです。
 でも、今の秋山さんはどこか寂しくて…哀しい眼をしてます。」

哀しい…眼?
狂った…狂気の眼では無く?

直の言葉が…俺の中を混乱させていた。


Side.N-4

触れた秋山さんの頬はひんやりと冷たかった。

秋山さんは俯きながら逃げるように私から離れてしまい、
黙ったまま壁にもたれて座り込んでしまった。

私は追いかけるように身体を起こし、引き裂かれたブラウスを寄せて前を隠す。
そして座り込む秋山さんにそっと近づいた。

「もう…帰ってくれ…。」

今度は怒鳴られる事も無く、静かに言われた。

でも…引き下がる気持ちは無い。

こんなに辛そうなのに。
こんなに哀しそうなのに。
こんなに……寂しそうなのに。

放っておく事なんて出来ない。
話してくれなくてもいい…傍に居なければと強く思っていた。

「…帰りません。」

そう言って、私は俯き座り込む秋山さんをそっと抱きしめるように腕を回した。


Side.A-4

俺は…直の言う通り、哀しんでいて…寂しいのだろうか?
そんな疑問が頭の中を駆け巡る。
だが、その思考をも…かき消してしまう程、俺を包むように抱きしめる直が暖かい。

ここ数日、昔のように荒れ狂っていた心がゆっくりとだが
確かに…静かに収まっていく気がする。
そんな俺を直は何も言わず…ずっと抱きしめてくれていた。

「…悪かった。」

電話を無視していた事。
そして…今、乱暴に扱った事。
少し落ち着いてきて…後悔の念が俺を責めていた。

直はフルフルと首を左右に振り、小さな声で…いいんです。と言ってくれた。

「秋山さん。」
「ん?」

顔を上げると直がそっと口付けてきた。ついばむ様な…優しいキス。

求める様に俺が口付けし、舌を滑り込ませると直も舌を絡ませ答えてくれた。

そのままそっと押し倒しながら直の髪を撫でる。
唇を離すと直から甘い吐息が漏れて…俺を誘う。

「…いいのか?」

さっきの事があり、訊かずにはいられなかった。
すると直はコクンと頷いてくれた。


Side.N-5

ドキドキしながら秋山さんに初めて自分からキスをした。

全身で…秋山さんを癒したかった。
私がそばにいるという事を…解って欲しかった。
だから、…抱いて欲しい…と心から思っていた。

さっきとは違い、優しく髪を撫でてくれた。
首筋にキスをしながら、私にかかる秋山さんの息がくすぐったい。
思わず、笑ってしまうと秋山さんが、どうした?と尋ねた。

「だって…くすぐったくって…。」
「じゃあ、ココが感じやすいんだ。」

そう言って舌を這わせるように舐められると背筋がぞくっとしてしまった。

「や…っ」

胸をそっと触れる…秋山さんの手が熱く感じられる。
私の感覚が鋭くなってるの…かな?

「ああっ…やぁんっ!」

胸の突起を指で弄ばれて、思わず声がでてしまった。
やわらかい快感の波が私を静かに狂わせていく。

片方の手が私のスカートを捲り上げ、下着を露わにした。
そして太腿から手を這わせ…私の恥ずかしい所を指でなぞる。

「あぁ…あっ…」

クチュ…といやらしい音が聞こえた。
自分でも解っていたけど…濡れてしまっている。
秋山さんは下着の上から何度も私の秘部を指でなぞりあげた。


Side.A-5

焦らすように下着越しに直の割れ目をなぞる。
直は俺の予想通りに腰を浮かせていた。

「…どうして欲しい?」

そう訊き、ワザと焦らされている事に気付かせる。
俺を求めて懇願させたいのに…恥かしいのか、言葉がない。

早く求めさせたくて、下着の上から直の秘部の肉芽を弄った。

「あっ…あああん…うっ…んんっ」

甘い刺激を与えておきながら、不意に弄っていた指を止める。

「やぁ…ん」

直が潤んだ瞳で俺を見つめ続きを訴えるが、言葉で求めない限り叶えるつもりは無い。

「…どうするんだ?直…。」

直は真っ赤になりながら…呟くように求めた。

「もっと……して…下さい…。」
「気持ち良くなりたい?」

俺の言葉に直はコクンと頷く。

「じゃあ、脱いで…。」

俺がスカートと下着を脱がすように滑らせると直も腰を少し上げて手伝った。
ボタンの外れたブラウスとずらしていたブラも脱がせ…生まれたままの姿になった。

あんなに激しかった雨もいつの間にかあがり、月明かりが部屋を照らしていた。
その光で白く浮き上がった直の裸体が非日常的で艶めかしい。

普段の彼女からは想像出来ないほど熱を帯びた目線と恥ずかしげに薄く頬を赤く染めて
両手で胸を隠し横たわる色っぽい姿を見て俺の喉の奥がカラカラになるぐらい飢えを感じていた。

――――直のすべてが欲しい…と。



Side.N-6

見られている恥ずかしさから…きっと赤くなってるんだろうな…私。
でも、身体は快楽を求めて疼き…秋山さんを求めていた。

ゆっくりと私と重なるように覆いかぶさり口付けをする。
そっと忍び込ませたきた舌に絡ませると…もう他の事が考えられなくなっていった。
秋山さんが触れる指先や舌や重なる肌が私を悦楽に捕らえていく。

胸を隠していた私の両手を秋山さんが優しく掴みながら引き剥がし、自分の肩に乗せた。
そのまま秋山さんの頭を抱きしめるように引き寄せると
そのまま首筋から鎖骨へと唇を滑らせてくる。

「はあっ…ああっ…」

そして胸の頂に到達し、軽く吸い上げるように引っ張られた。
最初は鈍い痛みがあったのに…徐々に胸の蕾がしこりたってしまう。
もう片方は指先で摘んだりこね回されて…弄ばれているみたい。

身悶えしてしまう私に…秋山さんの容赦ない指先が更に別の場所を攻めてきた。
…そう…私の恥ずかしい…所…。
さっきみたいに下着越しではなく…直接触れられてると思っただけで
私の全身が熱くなりながら快楽の波に攫われていった。

ぐちゅ、ぐちゅ…

「あんっ…いや…あっ」
「君の中って…蕩けるように熱くてぐちゃぐちゃだな…。」

やだ…そんな事、言わないで…
首を左右に振って答えると少し笑いながら頬にキスをしてくれた。

良かった…少しでも笑ってくれた。
その事にホッとしていたら…いつの間にか秋山さんが身体をずらし
私の秘部を…見つめていた。


Side.A-6

「み…見ないで下さい!」

俺の行動にようやく気づいた直が焦って両手で隠そうとする。
…もう遅いって。
そう思いながら直の両手を外し…もう一度じっくりと見つめた。

薄暗い月明かりの下でもピンク色に染まった直の秘部がとろとろに蜜を溢れさせて
ヒクヒクといやらしく動いているのがわかる。

俺は神聖な儀式でもするように、そっと秘部にキスをした。

「きゃっ…やだ…」

真っ赤になりながら顔を横へ背け、恥ずかしがる直…その姿が可愛くて、もっと乱れさせたくて
今度は直の割れ目の中にそっと舌を差し入れる。

「やぁっ…そんなトコ…」

ゆっくりと肉壁に沿って動かすと俺の唾液と混ざりながら蜜が溢れてくる。
そして舌を中へ突き刺すように突っ込むと肉襞がぴくん、と蠢いた。

もっと直の中を知りたくて両手で肉襞を左右に開け、真珠のような突起を晒した。
出来るだけ優しく指で突起を弄りながら割れ目に舌を這わせる。

「はっ、はあぁ…いやあああっ!」

最も敏感な肉の芽に舌先で弾くように舐ると直の身体が弓なりに反り小さく震えた。

軽く絶頂を与えれたのか…直は息を荒くし、陰部を晒したままで力なく横たわっていた。
…たまんねえな…。
その淫らで何ともいえない淫靡な姿は俺の本能を駆り立てていく。

ズボンと下着を一気に脱ぎ、俺自身を取り出し、直の割れ目にあてがった。
中にいれずに、焦らすように肉棒に蜜を塗りこみ、直の秘部に擦り付けながらも
理性の部分で…悩んでいた。


Side.N-7

私はさっきの…快感で頭の中が真っ白になっていた。
何も考える事が出来なくて力もすっかり抜けてしまってる。

ふと、気がつくと秋山さんが私の両脚を軽く持ち上げていた。
私の恥ずかしい所に…秋山さんの熱い塊が擦り付けられているのがわかる。
秘部に与えられる刺激が、また…じわじわと私を悦楽の世界へ落としていく。
秋山さんに求められている様に…私の身体も…心も秋山さんを欲しがっていた。

「…入れて…下さい…」

私は堪らず懇願した。
でも、秋山さんは無視するように入れてくれない。

「お願い…秋山…さんのが…、欲しいん…です」

どうしても…限界だった。

「もう…我慢…できないん…です。…お願い…!」

「…わかった。」

秋山さんの肉棒が潤み溢れた私の秘部の奥まで一気に侵入してきた。

「ああああっ!」

若干の痛みと…それを凌駕する快感が私を駆け抜けていく。
全身を貫かれるような感覚が私を襲い、秋山さんに支配されていった。

ぐちゅ、ぐちゅ…と卑猥な音が聞こえてくる。
私の中を秋山さんが掻き抉りながら子宮の入り口を突いている。
その度に私の身体はびくんっと反応し…まるで秋山さんを逃さないように
入り口をきゅっと締め付けていた。


Side.A-7

身体は完全に直を欲して暴走する寸前の状況だった。
だが心は…どこか冷静だった。

俺は…直を手に入れていいのだろうか?
守ってやりたい…その気持ちは直と過ごしていく内に大きくなっては…いった。
しかし、俺に守りきる事ができるのか?
また…大切なモノを作る事によって失う辛さ…それが過去の出来事と、どうしても重なってしまう。

だが、俺を求め…懇願する直を見て吹っ切れた。
過去を活かして守りきればいい…今度こそ。
そう思うと俺自身を留めていた箍が完全に外れた。

直の中は濡れた肉襞が俺に絡みつくようにぬるぬるしている。
それを俺自身で擦り回しながら動かすと直の淫口がひくひくと締まってきた。

「はあ…やぁ…ああっ…」

直の顔を見ると…うっすらと涙を浮かべて喘いでいた。

「大丈夫…か?」

少し心配になり、声をかける。

「だい…じょうぶ…です…」
「…悪い、飛ばしすぎた…」

俺の言葉に直は首を左右に振り答える。

「秋山さんの…思うままに…して下さい。」
「しかし…」
「あの…その…、私…好きな人の…望むままに…したいんです…」

恥ずかしげに真っ赤になりながら顔をそむける直に…愛しさが募ってくる。

「…直…」

彼女に顔を近付けキスをした。

「俺も…好きな人に無理はさせたくない。」

そう耳元でそっとささやいた。



Side.N-8

秋山さんがくれた言葉が信じられなかった。
出会った初めから迷惑ばかりかけ続けていたのに…。
驚きと嬉しさで…つい涙がこぼれてしまった。

「おい、泣くなよ…。」
「ごめんなさい、でも…嬉しくて…。」

私は両手を秋山さんの首元に回し引き寄せるように抱きしめた。

「…動いていいか?」
「…はい」

私を気遣うようにゆっくりと秋山さんが腰をうねらせる。

「んっ…あ…ああんっ…」

さっきみたいな激しさは無いけど、その分優しくて甘い動きが緩やかな快感となって
私を溶かしていくようだった。

でも…きっと秋山さんには物足りないんだろうな…。
私の為に、きっと我慢してくれてるんだと思う。
どうしよう…言った方が…いいのかな?

「もっと…さっきみたいに…して下さい…」

恥ずかしかったけど…お願いしてみた。

「…だめだ。俺が止められなくなる。また…泣く事になるぞ?」
「止めなくて…いいです…。嬉しくて泣いちゃっただけですから。」

身体を起こして秋山さんに抱きついた。

「お願い…私は大丈夫ですから…ね。」

秋山さんは少し苦笑いをしながら…わかった、と囁いた。


Side.A-8

本当にコイツは…と思う。
俺に気を使う必要はないのに、生まれ持った性格なんだろう。
どうしても俺の思いのままに行動させたいらしい。
仕方が無いというか、ありがたいというか…彼女の申し出を受ける事にした。

直の両脚を少し上になるように抱え、結合を深くする。
そのまま奥まで突き刺すように腰を突き上げた。

「やああんっ…くぅ…はうっ…ん…」

よく締まる肉穴が卑猥な蜜音をたてながら俺自身を根元まで呑み込んでいく。

腰を打ち付け、肌がぶつかるたびに直の蜜が溢れだしているようだ。
少し感覚を掴んだのか、直が自然と俺に合わせるように腰を動かしはじめる。
ぎこちないながらも俺を刺激するには十分な効果だった。

「あっ…ああん…秋…やま…さん!」

直の身体が弓なり反り、全身が痙攣するように小さく震えだす。

「直…中に出して…いい?」

まともに判断できるような状況ではないかもしれないが、聞かずにはいられなかった。

「…はぁ…い…ああっ…んっ」

直は返事とともに頷いてくれた。

俺自身が中へ注ぎ込みたい衝動をギリギリまで押さえながら
もっと直の絶頂を高めさせたいと激しく突き動かした。

「やぁん、もう…もう、だめぇ…っ!」
「…ッ!」

一段と直の喘ぎ声が高まった瞬間に合わせて直の子宮口に思いっきり突き上げ
中へ大量の粘液を吐き出しながら果てた。


Side.A-9

「はぁ、はぁ…」

直は息を荒げたまま、ぐったりと力尽きている。
まだヒクヒクと痙攣している秘部から俺自身を抜き取ると…白濁の残滓が僅かにピンク色に
染まっていた。

…ちょっと…待て…まさか…!

「…もしかして…初めてだった?」

俺の言葉に真っ赤になりながら直が小さく頷く。

…嘘だろ!?あんな誘い方をするから勝手に経験してると思い込んでいたが…。
ある意味…末恐ろしいヤツ…。
でも、こんなに騙されやすい直が今まで処女を守れた方が奇跡な気がする。

「やっぱり…初めての相手は…抵抗がありますか?」

申し訳なさそうに身体を起こしながら直が問いかけてきた。

「いや…抵抗はないが…やっぱり大事なものだろ?」

そう言うと、直は首を左右に振りながら俺の首に両手を回して抱きついてきた。

「秋山さんだから…もらって欲しかったんです。」
「…直…。」

直は俺の眼を覗き込むように顔を近付けてきた。

「私は何があっても…そばにいます。だから…寂しくないでしょう?
 もう私は…秋山さんのモノですから…。」

そっと直と口付けを交わしながら…思った。
直なら…多分、いや確実に俺の全てを受け入れてくれるだろう。
俺は…直に…打ち明けることにした。


Side.N-9

秋山さんは自分の胸の中に私を抱きかかえながら…ぽつりぽつりと話してくれた。

三年前の事件…あのマルチを壊滅した時の事や…お母さんの事も。
そう…お母さんの命日だったから…様子がおかしかったのだと。
もう、どうしようもない事なのに…時々当時の衝動が甦ってくるみたいだった。

私は…話を聞きながら涙が溢れてしまった。

「なにも、君が…泣く事はないだろ?」

苦笑いしながら私の涙を拭い、抱きしめてくれる。

「だって…」

本来は…優しい人なのだ。
そんな人が自分を押し殺し、狂気に身を費やしていたと思うと哀しすぎる。

「…秋山さんが…泣けないから、私が代わりに泣いてるんです。」
「何だよ?それ…」

そう言って私の髪を撫でながら優しく笑ってくれた。

やっぱり帰らなくて良かった。
そばに居て…こうして少しでも笑ってくれるだけで嬉しくなる。
私が助けてもらった分には程遠いけれど…少しだけ役に立てられた気がする。

月明かりの中…ずっとこうしてそばに居たいと強く願いながら…私は眠りについた。


Side.A-10

「直?」

いつの間にか…直は俺の腕の中で眠りについてしまったようだ。
まったく…世話のかかる…
そう思いながらも愛しさと…信じられる安心感がある。

手放したくない…ずっとそばで守り続けていきたい。
この子が…このままの正直さで生きていけるように…と
月明かりにそっと誓った。






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