無理な欲求
秋山深一×神崎直


「買ってしまった・・・」


早足で家路につきながら秋山は茶色の紙袋を所在無げにぶら下げていた。
直は学校で試験があるらしく、ここ何日か顔を見ていない。

そのせいか、いつもならはいらないアダルトショップに入った時に目に付いたもの…
銀色の金具に重量感のある、無機質な手錠だった…

AVとか、そんなもので自分の欲求を処理するつもりだったのに、思わず手にとって
しまったのは直からのメールのせいかもしれない。

『今日で試験も終わりなので、今日は私が夕飯作りますね。あ、勝手にお邪魔しちゃいますよ』

かわいらしい絵文字で飾られた短いメールにも動揺してしまう…
俺はいったいどうしてしまったのか…



うちに着くと、直はもう夕飯を作り終えたのかカレーのいいにおいがした。
いつもよりそっとドアを開け、ゆっくり閉める。
それでもこのぼろアパートのドアは盛大にきしみ声を上げた。
思わず後ろ手に持った茶色の紙袋に力がこもる…。

「・・・・・・・・?」

いつもならかけよってくる直が今日はやけに静かだ…
ゆっくりとリビングに入っていくと、直はしきっぱなしの布団に横たわって寝息を立てている。

小さな唇に長いまつげ、小さく丸い鼻先が呼吸のたびに小さく揺れている。

いじめたい、むちゃくちゃにしたい…

あえなかった時間はほんの数日。それなのにこんなに理性がなくなるほど、俺はおぼれてたんだな…

「……ん」

直がゆっくりと寝返りをうつ、癖のない髪がさらりと額をながれる。
俺は顔にかかった髪をそっと整えながらまだ直が深い眠りの中にいることを確認する。

まだ起きないな…

目が覚めてしまえば、これからしようとしている行為をとめて、
壊れないようにやさしく抱きしめることができるだろうか…。


そんなこと、できるはずがない。


秋山は直の様子をうかがいながらそっと紙袋を引き寄せた。
なるべく音を立てないようにそっと、気をつけながら秋山は直の細い手首に手錠をつけた。

華奢な彼女の体の中で異様に光る無機質な金属はそれだけで秋山を興奮させていた。

呼吸が荒くなる、精一杯自制して直の体に触れる。
耳から首筋、鎖骨を通って胸へ…
指先を軽く滑らせて与える刺激に直の肌はうっすらとあわ立っている。

「・・・・・んっ」

さっきとは違う甘い声、それが合図だった。

「んっ!!はぁぅ・・・あ、秋山さん!?」

秋山は自分を抑えることができずについに直に覆いかぶさり、さっきまでの自制を振り払うように
荒々しく唇をふさいだ。

突然のことに驚いた直が大きな瞳をくりくりさせて驚いている。
「・・・あ!っやぁあ!!」

いつものように段階を踏んだりはしない。
秋山は思うがまま、直のスカートに荒々しく手を入れた。

「や、やめて下さい!秋山さん!!・・・!?これ・・・?」

秋山の手から逃れようとした直が銀色の手錠に気づく。息を荒げながら状況がつかめないでいる

「手錠。逃げられないから、あきらめな」

言い切って、秋山はますます興奮が高まっていくのがわかった。


「あ!!だめぇ!」

乱暴に突っ込んだ手でショーツを引き釣り下ろす。白いワイシャツも脱がせてしまおうとしたが
縛られた両手で直は必死に抵抗している。

「悪い子だ、直。俺のことが嫌いなのか?」

「き、嫌いなわけじゃ…でもこんな…」

「いい訳にはおしおきが必要だな」

直を抱え上げ、玄関に移動する。

直はまだ状況がつかめないのか秋山の腕の中で何か言っているが、もう秋山の耳には入っていなかった。



「きゃ!!」


玄関の脇、秋山に合わせて高めに取り付けられたコート掛けに秋山は手錠をひっかけた
位置が少し高いうえ、手錠の鎖がしっかりとはまってしまって抜くことができず、
直は両手を高い位置にくくられた格好になった。

「秋山さん、…怖いです」

直はガチャガチャと手錠を抜こうと必死だったがやがてあきらめた。
秋山を見つめる目は涙でうるんでいる。

「お仕置きはこわいもんさ」

秋山はそのままシャツに手をかけ、一気に引き裂いた。

「きゃぁー!!」

「だめだよ直、ご近所に迷惑だろ?」

そのままブラジャーを引き上げて形のいい乳房をにぎる

「っああぁぁっぁ」

「かわいい・・・直」

そのまま秋山は唇をふさぎ、スカートの中であらわになった直に触れる。

「ひぃやぁああ・・・ぁぁ」
「直もうぬれてるよ・・・」

直が手錠を揺らしてもだえるのにかまわず直の中に指をいれる、感触を確かめるように
執拗に、欲望に任せて激しく。

「あ!ああぁあぁぁぁ!!!」
「こんな風に露骨に攻めるのもいいんだ?ほら腰が震えてるよ?」
「あ…あきやまさ・・・ん、やぁぁ・・・あ、ふぅぅ」
「もっと見たいんだ・・・いいだろ?」
「!!やぁ!だめぇ」

秋山は直の前にかがみこみ片足をもちあげる。
直のぬれきったそこが蛍光灯の下で淫靡にひかっている。
なんとか隠そうと必死にてじょうをばたつかせるが、どうすることもできず
直は標本の蝶のように秋山にその姿をさらしている。

「見ない…で…ください…」
「見ないでくれって?こんなにぬれてるくせに?」
「・・・いやぁ」
「なにいってんの?」

直のか細い抗議にますます加虐心がそそられる。言葉があらあらしくなると
それにあわせるように秋山の呼吸は乱れて、理性が飛んでいった

「はぁう!ひぁあっああ!!」

直の一番敏感なつぼみに舌を這わせるいつものようにやさしくはしない。
シンプルに快感だけ与えたい、そんな淫らな愛撫に素直な反応を見せる直はいつも以上に
なまめかしく見える。

「直、正直に言ってごらん?どうしてほしい?」

突然直の前に真正面から顔をちかずけておねだりを求める。

「・・・」

目が合って恥ずかしいのか直は顔を背けて唇をかみ締めている

「だめ」

直のかわいらしい唇に指を突っ込んで無理やりにこっちを向かせる、直はびっくりしているが
いとしい秋山の指に歯を立てぬようとっさに舌を指に当ててくる。

「…いい子だね、でも唇をかみ締めるんじゃない。形が悪くなるだろ?これは俺のものだ」
「…!」

そういって秋山はまた激しく唇を奪う。
キスと快感にぼうっとした直の半開きの唇から銀の糸が伸びる…

「ほら、言ってごらん」



「…入れて下さい、秋山さんの…ほしいです」



十分だった。秋山の理性は完全に吹き飛んだ。

「あ!ひゃぁうああああ!!」

勢いよくずぼんをおろし、直の中にいきなり根元まで埋め込んだ。

「・・・っ、きつい」

スカートははいたまま、破れたシャツにずりあげられたブラ、両手は手錠で拘束され
突き上げるたびにガチャリと金属が擦れ合う重い音がする。
裸になるよりずっと淫らな直に秋山は今にも達しそうになりながら直の最奥に自らを打ちつけ続けた

「…ぁあ、直、直」
「あ…あきやま…さぁん、きもちいぃ」

「っくぅあ・・・いく、直、いくぞ直」
「ふぅうっ、あっぁ」

時間にすればほんの何十分かの交わりなのに、秋山自身は痛いほどに膨張した
自身をもう押さえるすべがなかった…

「あっぁあああ!!」

いつもなら声なんかでない。でも今日は自分の欲望を打ち付けた達成感とまだまだ味わい足りないと
こうふんし続ける頭に何かが麻痺していたのかもしれない。
事実その後秋山は何度となく直を求めた。
玄関で、布団の上で…
何度目かの絶頂のあと、直がぐったりと目を閉じてしまってやっと正気に戻ることができた。

「・・・・・ごめんな」

今は後悔だけが秋山の心を占めていた。さっきまでの時間を取り戻したくて
精一杯優しく直の頭をなでる

「・・・秋山・・さん」
「直」

目を開けた直はあわてて胸までかけてあった布団を頭までかぶる

「ごっごめんなさい!私恥ずかしくて・・・」
「いや、いいんだすまなかった・・・乱暴にしてしまって。」
「・・・・」
「・・・・」

重い沈黙があたりをしめる。破ったのは直だった。

「謝るのは私のほうなんです…」
「?・・・なにを?いや、無理な欲求をぶつけたのは俺のほうなんだ、君が謝ることは・・・」
「ちがうんです!!」

言って直はがばっと起き上がるが、何もきていないのを思い出してひぁやぁ!とか
間抜けな悲鳴をあげてまた布団にもどる。

「フクナガさんからアドバイスされて・・・」
「あのおかま野郎に?」

布団からちょこんと頭を出して直が申し訳なさそうに秋山を見る。

「毎日あってたんじゃすぐマンネリになるから、ちょっとは波があったほうがいいって…」
「…じゃあまさか試験って…?」


「・・・・うそです」

直は消え入りそうな声でいって申し訳なさそうな顔でこっちを見ている。

「・・・っぷふふはははははは!!」
「あ、秋山さん!?」

やられた、フクナガに、というか直に。

直は困った顔でおろおろしながら俺に近寄ってくる。

「きゃ!」

寄ってきた直をきゅっと抱きしめる。

「まったく君といると飽きないよ」
「私も…乱暴な秋山さんも、その、好きです」

「それはよかった、これからうそをついた分もう一回おしおきだ」
「え〜!!あ、秋山さん!それは!!!」

パニックで後ずさる直を見ながら、秋山は屈託なく笑った。






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