お仕置き
秋山深一×神崎直


いつも通り秋山の部屋で過ごす週末の夜、テレビから聞こえた懐かしいメロディーをナオは思わず口ずさむ。

「良くこんな古い曲知ってるな」
「あ…聞こえてましたか…」

小声で口ずさんでいたつもりのナオは秋山の言葉に照れ笑いを浮かべた。

「この歌は昔良く聞いてたんです」
「そうなんだ、何でまた洋楽なんて」
「…初恋の人が好きだった歌なんです」
「へえ…」

えへへ…とはにかんだ笑みを浮かべてマグカップを用意しながらハミングを再開したナオは、秋山の声のトーンが少し落ちた事にはまるで気付いていない。

「私が中学生の頃テニス部にいた先輩で、私の部室からテニスコートが良く見えて」
「……」

懐かしそうに語るナオとは対照的に秋山の瞳に不機嫌そのものの色が浮かぶ。

「憧れてる子も多かったんですよ…」
「ふうん」
「秋山さん…?」

ナオは何も言わずテレビの電源を落とし頬杖を付いた恋人の顔を覗きこむ。

「秋山さん…、何だか機嫌悪くないですか?」
「そう?」

(絶対に機嫌が悪い顔してる…)

秋山もナオの初恋が自分だなどとは思っていなかった。
けれどどこか嬉しそうに他の男の思い出を語るナオを見るのは自分でも驚くほどに不愉快だった。
得意のポーカーフェイスを保とうとも思わない位に。

秋山はため息を一つ吐くとホットチョコレートを口にしようとするナオを抱き上げる。

「きゃっ!…秋山さん!?」

唐突に抱き上げられたナオの驚きの声を意にも介さない素振りで幾分か乱暴にシーツの上に下ろした。

「秋山さん…?」
「お前の口から出る男の名前は俺だけで十分だ」
「ん…」

ナオの昔の話を封じ込めるように秋山はぴたりとその唇を塞いだ。

「取り合えず…お仕置き」
「え…!?」

不穏な単語にナオは身体を竦ませる。

「俺の前で他の男の話なんかするからだ」
「…ごめんなさい」
「大丈夫。痛いことはしないから」

にこりと笑みを浮かべた秋山に不安げな表情を浮かべたナオは諦めた様に小さく頷いた。

「あ…」

秋山は蛍光灯を落とし照明をスタンドのほのかな灯りに切り替える。

「だっていつも明るいままじゃ恥ずかしいって言うだろ?」

秋山がそう笑いかけるとお仕置きという単語に警戒していたナオは少し安心した表情で頷いた。

「……ん」

大人しくシーツの上で待つナオの隣へ戻ると秋山はいつもと変わらないキスをする。
初めは触れるだけのキスから唇をなぞり舌を絡める深いキスへ移行する。
繋がる深さと長さを変えてキスが繰り返され、ナオは微かに艶を帯びた声を漏らした。
口付けの最中あやすようにナオの背中をさすっていた秋山の指がワンピースのファスナーに触れる。
僅かに身体を震わせるがナオは秋山に大人しく身を任せている。

「…あ」
「ふ…ぁ…」

秋山が濡れた唇で耳の縁を挟み込み、舌でなだらかなラインを辿るとナオは甘えた声を上げた。
はらりとワンピースは小さな肩から滑り落ち、ふわりと少し冷えた夜の空気がナオを包む。

「私ばっかりでずるいです…」
「秋山さんも…」

ナオは秋山のシャツのボタンを慣れない手つきで外し露わになった胸にぴたりと頬を寄せる。
秋山はそのままシャツを脱ぎ、ナオの身体を温めるように抱き寄せた。
直接触れ合う皮膚の滑らかな感触にナオは幸せそうに目を閉じる。

「秋山さん…温かいです…」

秋山はナオの髪を除け、首筋に唇を寄せた。

「んっ…」
「ここにキスされるの好きだろ?」
「ん…ふ…」

望むだけ与えられる口付けにナオは切なげな吐息を零す。

「あっ…」

秋山がナオの下腹部へ指を忍ばせるとナオの柔らかな部分は下着越しにも潤い始めている事が感じられた。

「すごいな…キスだけでこんなになっちゃうんだ?」
「だって…」
「俺としては嬉しいんだけどな」

秋山が少し慌てた素振りのナオの頬を覆うように撫でると少女は大人しく瞳を閉じた。

「…?」

ナオは不意に体を離した秋山を目で追う。

「秋山さん…?」
「そのまま目を閉じてて」

優しい手つきで髪を撫でられナオは素直に秋山に従う。

「それじゃお仕置きを始めようか?」
「えっ…?」

秋山は不安げな声を上げたナオの体を抱き寄せ唇を重ねた。
何かを問おうと開いた唇の隙間から舌を割り込ませナオのそれと絡める。

「…んっ…ふ」

甘い唾液を味わい、更に深く口付ける。
抱き寄せる力を強めると秋山はするりとナオの身体を覆う最後の小さな布を抜き取り、両脚の間からすでに果蜜の滲み始めたそこに指を差し入れた。

「―――っ!!」

秋山の指が狭間を辿った瞬間ナオの身体がびくんと跳ね上がった。

「…っ!」
「あっ…う…」

ひやりとした指が触れた箇所が感じたことの無い程の熱を持つ。

「あ…秋山さ、ん…っ…?」

(何…コレ…?)
(…やだ……熱い…)

指がより深く花裂に滑り込む度にその熱は激しさを増していく。

「やっ…な、に…したんです…か?」
「媚薬って知ってる?」
「び…やく…?」

媚薬と言う余り馴染みの無い単語を知ってはいたが、耳元で囁かれるくすぐったさと身体の中心の熱でナオの思考は纏まらない。

「俺の事が欲しくて仕方なくなる薬」
「ふぁっ…やぁ…ん」
「もっと塗ってあげる」

秋山は手元の小さな缶ケースから半透明の膏薬をすくい上げた。

「んっ…っ!」

溢れ始めた果蜜とたっぷり馴染ませ、くちゅくちゅと音をたてナオの最も敏感な花芯へ揉み込む。

「だめぇ…あ…あ」

強すぎる刺激にナオの瞳からぽろぽろと涙が零れる。
揉み込まれ固く尖った小さな突起からじんじんと体中に熱が回る。

「あっ…つ……ぅ…」
「まだ駄目」

ナオは必死で両脚に力を込めるが、たっぷりの愛液が容易に秋山の指を滑り込ませ抵抗の意味を成さない。

「も…だめぇ…っ」
「どうして?」
「だって…っん……!」
「さっきよりもすごく濡れてきたのに?」
「そん…な…」

秋山は力が篭っている為に普段よりも更に狭まった蜜口に指を差し入れる。

「だめ…だめぇっ……!」
「…っ!」

指一本でも窮屈に感じるほど締め上げる花壁の複雑な襞にも膏薬を塗りこまれナオは息を詰まらせる。

「…っ…はっ…」
「すごい、キツイな」
「つぅっ…」
「もっ……抜いて…くださ、い…」

柔らかな襞をなぞり上げ、敏感な箇所に曲げた関節を押し当てられその都度燃え上がるような熱がナオの最奥に浸透する。

「あ…もう、許して…下さ…い」

(やだっ…やだっ……おなかが全部、熱いよぉ)

名残を惜しむようにゆっくりと指を引き抜かれるが、ひりひりと焼け付く熱が指の感触そのままに残される。

「あ…あきやま…さん、…あつ…い……」
「君の身体が満足するまでずっとそのままだよ」

秋山はナオの目元に口付けて、言い聞かせるように囁いた。

「ひ…ぅ」

下腹部から全身を蝕む熱と疼きにナオは胎児の様に身体を丸めて耐える。
塗られた直後の凶暴な熱は治まっているもののじわじわと染み渡る熱がナオの感覚全てを支配する。

「……っ」
「助けて欲しい?」

ナオが力無く頷くと秋山はナオの濡れて鈍く光る花弁に触れ、円を描いて刺激する。

「んっ…あ…あぁ…」

微弱な電流のように身体を走る感覚が熱を中和する。

「もっとして欲しかったらおねだりしてごらん」

ナオはベッドの上に座る秋山の前にうずくまり、たどたどしい動きでジッパーを降ろす。

「秋山さん…」

すでに布を押し上げる程張り詰めた下腹部におずおずと触れた。

「ん……」

ナオは手の中の感触を確かめるようにそっと唇を寄せる。
口に含み何度か上下させるだけで、ソレはナオの口に収まりきらないところまで質量を増す。

「ふ…ぅ…っ」

ナオは全てを口内に収める事を諦めると、張り出した先端に唇を押し当てチロチロと細かく舌を這わせた。

「…っ…君は、可愛いな」
「…あ…嬉し…っです…」

ナオの口元へ掛かる髪を秋山は指で耳の辺りに撫で付ける。

「……ん…」

ナオは唇はそのままにトクンと脈打つ幹を手の平で包み込み往復させた。
唇と手から心地良い弾力を感じ、ナオは目を閉じて秋山を刺激する行為に没頭する。

幾分か慣れてはきたがまだ拙さが勝るナオの奉仕に焦らされ、秋山は湧き上がる衝動を抑えるために長く息を吐く。

「秋山さん…気持ち良いですか?」
「ああ…いいよ…」

秋山は小さな頭を上下させるナオの髪を優しく撫でた。

(あ…何だか、身体…さっきより熱い…)

目を閉じ張り詰めた皮膚にキスを繰り返すうちにナオの身体が熱を帯びていく。

「わたし…変、なんです…」
「薬が効いてきたんだよ」

身体をひねるだけでも両脚の間にくちゅりと濡れた感触が伝わってくる。
もう太腿に伝いそうな程、ナオの花弁は潤っていた。
秋山の感触を感じているだけで快楽を教え込まれた身体は彼を求めてしまう。

(すごく…あっつくて…我慢…出来ない)

ナオはちらりと上目遣いで秋山の様子を伺い、目を伏せているのを確認するとそろりと左手を自分の脚の付け根へ伸ばす。

「……はっ、ぁ」

くちゅんと粘度の高い水音と広がる痺れるような刺激にナオは思わず声を上げた。

「どうした…我慢出来なくなっちゃった?」
「ごめん…なさ、い」

顔を上げた秋山と目線がぶつかってナオは小さな声でそう言って項垂れた。

「焦らされ過ぎて辛い?」
「は…い」
「ごめんね。少しだけ助けてあげるよ」

「身体をこっちに向けて」
「やっ…だめで、す…」

しっかりと腰を掴まれてナオは子供の様に首を振る。

「なんで?我慢出来ないんだろ?」
「…あ、だって…」
「自分で触るより良くしてあげる」
「だめっ…ふ…」

どこかで快楽を期待してしまっている身体は秋山に抗え切れない。

(一緒にするなんて…恥ずかし過ぎるのに…)

添えられた手に誘導されるままに秋山の顔を跨ぎ、そろそろと腰を落とす。

「やっぱり…ダメっ…」
「も…出来な……あっ!」

秋山は強引にナオの腰を押さえつけすぐ目の前にあるナオの秘部に口付けた。

「ひぁ…っ」

舌が触れた途端蕩けてしまう程の快感にナオの腰から力が抜けてしまいそうになる。

「恥ずかし…い、で…す…」

粘着質な音を立ててナオの花弁を押し開き、その奥で震える蜜口から滴りそうな蜜液を吸い上げる。

「ふぁ…ん…っ」

うずくまり必死で秋山に尽くすナオに愛しさを感じるのと同時に嗜虐心を駆り立てられた秋山は、わざと敏感な箇所をずらしてナオの潤ったそこに舌を這わせる。

「……うぁ…やっ……」

(あ…ぁ…も、少し…下に……)
(……っ!……ここ、気持ち、いい…)

普段とは逆の位置から愛撫され、ナオは無意識により強い刺激を求めて腰を動かしてしまう。

「あ…ふっ………」

ふふ…と秋山の含み笑いが聞こえた。

「君の口、留守になってる…」
「んっ…あ…ごめんなさ…っ…」

すっかり秋山の舌戯に溺れてしまっていたナオは、耳元まで紅く染めて秋山への奉仕を再開した。

秋山の先端を滑らかな唇の裏側で覆うと同じ様にナオの花芯に唇が宛がわれる。
何度かナオの愛撫と同じ動作を繰り返され、ナオは秋山の意図に気付く。

「あ…秋山さ…ん……?…」
「どうしたの?」

取り澄ました声色で何事も無かった様に問い返されるとナオは言葉に詰まってしまった。

(秋山さんの……意地悪……)

どう触れて欲しいのか自分の要求が筒抜けになってしまうのが恥ずかしくて仕方ないのに身体を蝕む熱と快楽への渇望に打ち勝てず、ナオは秋山へ愛撫する事で自分の欲望を必死に訴える。
敏感な箇所を吸われ続けて、ぴりぴりと甘い電流の様な快感がナオの下腹部を満たしていく。

与えた刺激がそのまま秋山によって繰り返される。
自分自身を愛撫するような倒錯した感覚にナオの身体はより追い詰められていく。
限界まで硬さを増した先端に滲んだ雫を舐め取り小さな切れ込みに舌を埋めると、一際熱を感じる蜜口に舌を差し入れられナオの身体がびくりと震えた。

(薬のせいなのかな…身体が熱くて、何も考えられない…)

「私…変なんで…す」
「わたし…恥ずかしいのに、すごく…きもち…い」
「薬のせいだよ」
「あ…でも…やぁ…っ…」
「辛い?…我慢しなくていいから」

欲しただけの快感を与えられた事によって満足するよりも、先程以上に身体の中心の疼きは激しくなる。
ぴりぴりと走る甘く痺れる快感よりも更に身体の奥に響く確かな感覚が欲しくてナオは切なげな吐息を漏らす。

どうしようもない渇きを満たすようにナオは秋山のソレを口一杯に含み頭を上下させる。
繋がっているところを思い描きながら息苦しくなるまで飲み込み、筋張った部分に唇を押し当てて引き上げる。

(早く…こうやって、して欲しいのに…)

じゅぷ…じゅぷ…と淫らな音を立て懸命に奉仕するナオの様子が可愛らしくて秋山の胸がとくんと高鳴った。

「ここだけじゃもう、満足出来ないんだ?」
「くぅ…っん!」

すっかり剥き出しにされた薄紅色の突起を濡れた指先で弄られた事で身体から力が抜けてしまいそうになり、ナオはきゅっと唇を噛む。

「あ…秋山さんの…くだ…さい…」


「おいで…入れてあげる」
「……は…い」

素直に答えて仰向けに横たわるナオに覆い被さるようにして、先端を濡れた花弁に宛がう。

「ふ…ぅ」
「…んっ…!」

蜜口の窪みに先端が触れたところで一息に奥まで貫く。
狭い花壁を押し広げる心地良い圧力が秋山を包み込む。

「あっ…ふぁ…」

ようやく渇きが充たされてナオは深く息を吐いた。

(あ…私の中、秋山さんので…一杯になってる…)

「あっ…あぁっ…ふっ!」

弱い箇所に強く押し当てられナオの身体が小さく跳ねる。

「気持ち、よすぎ…て、怖い…っん」
「どうして?」
「だって…薬の、せいでもこんなに感じちゃっ…て、…ヘン、で…す」
「大丈夫、君はどこもおかしくないよ」
「そのままもっと感じてて…」

場違いなほど優しく頬を撫でられ少し安心したのか、ナオはシーツを握りしめながら秋山のストロークに身体を合わせる。

「あっ…んっ…」
「君は本当に可愛いね」

「気持ち良くなりたい所に自分で塗ってごらん」

秋山は枕元の膏薬をすくい上げるとナオの手元へ差し伸べる。

「やっ…」
「もう苛めたりしないから」

秋山は怯えた瞳で首を振るナオの耳元で囁いた。

「上手におねだり出来たからもっと気持ち良くしてあげるよ」

(もっと…気持ち良く…?)

ナオは恐る恐る秋山の指から薬を掬い取り、淫らな水音を立てる結合部へ触れる。
溢れた果蜜の中から先端部の突起を探り当て、ゆっくりと薬を塗りこむ。

「っは…ぁっ!」
「あ、つぅ……っ」

敏感な箇所への燃えあがるような熱でナオの身体が大きく震え、内部の秋山をきつく締め上げる。

「…っ…君のココ、今すごくキツくなった」
「だって……んっ!」
「約束通り良くしてあげる」

薄い皮膜からピンと頂きを覗かせる花芯を親指で触れる。

「…あっ」

秋山はまるで体温で小さな突起を溶かそうとする様に小さく円を描きながら花芯を軽く押し込みじっくりと触れた。

「あぁっ…」

穏やかだけれど全く途切れないじわじわと広がる淡い電流の様な刺激にナオは身体を躍らせる。

「…ひぁ…、秋山さぁんっ…」
「これじゃ物足りない?」

楽しそうに目で笑った秋山の指が再び突起を捉え指で軽く挟み込んだまま小刻みに突き上げると、途端にナオの呼吸が荒くなる。

「ふっ…やっ…あっ、あぁ…」
「すごく気持ち良さそうだな」
「だって、だってっ…これ…あっ!」

(どうしよう…私…もう…)

振動によるぴりぴりと痺れるような強い快感に、ナオの焦らされた身体は容易く限界を迎える。

「……ふぁ、あぁっ!」

ナオの背中がしなり、反らした爪先が宙を蹴った。

「……っ!」

ナオが軽く絶頂に達した事でびくびくと断続的に柔らかく絡みつく襞に締め付けられ、秋山は眉をしかめてもたらされた快感に耐える。

「…本当に君のココは反則だよな」
「……え?」
「………良過ぎるって事」

秋山は苦笑いを浮かべ、とろんとした瞳で全く意味が分からずに自分を見つめるナオの頭をくしゃくしゃと撫でた。

「もっと?」

ナオはこくりと頷いて突き上げられる度に揺れる双房の薄紅色の頂点にまだ膏薬の残る指先で触れた。

「……くぅ…ん」
「あ…あっついの…秋山さん…ここも、し…て…くださ、い」

秋山は柔らかな膨らみを優しく揉みしだく。

「…ふっ」
「うん…してあげるよ」
「そこ、好きなの?」
「は、い…」

秋山は恥ずかしそうに頷くナオの髪を撫でると、胸元に顔を寄せる。

「…いっぱい…して欲しいです…」
「…っん…」

達した直後のナオは秋山の指がふっくらと盛り上がった薄紅色の肌との境界に触れただけで敏感な反応を示す。

「…う、…ん…」

しっとりとした部分に触れられ続けたナオがもどかしげな声を上げると、秋山は満足そうに蕾を口に含んだ。

「んっ…」

痛い程に固く尖った蕾を舌先で転がし軽く吸い上げる。
唇が浮く度にちゅっ…と濡れた音を立てる。

「んっ…ふぅ…ん」

舌で押し込まれ、甘噛みされながらもう一方の蕾は指先で弄ばれ、ナオの腰が自然と動く。

「少し痛いのが好きだよね、君は」
「っ…やぁ、ん」
「ふぁっ!」

蕾を軽く歯でしごかれるのと同時にキツイ位に摘まれてナオはぎゅっと目を瞑った。

胸を愛撫されたまま花芯を擦り上げる様に秋山の腰を押し当てられ、ナオは狭い蜜口を大きく掻き回される。

(やぁっ…ソコ、そんなに押し付けちゃ…ダメ…なの、に…)

「す、ごく…気持ち良くて…わた、し…あっ」
「またイキそう?」
「は、い……だって…すごく…」

(おかしくなっちゃう位気持ち良くて…どうしようもなく秋山さんが欲しいなんて…)

「いいよ。どうして欲しい?」
「奥に…欲しい…です」
「もっと奥まで欲しいんだ」
「は、…い」

獲物を捕らえた秋山の瞳の魔力にナオは魅入られた様に答えた。

秋山は繋がったままの状態でナオの脚を肩に担ぎ上げる。

「くっ…ぁ…」

角度が変わったことでより深く秋山自身がナオの内部に押し込まれた。

「すご…奥に…当たって、くるし…」
「苦しいだけ?」
「ううん…気持ち良いで…す…」
「そう…じゃあ動くよ」

ふわりと微笑んで秋山はナオの膝にキスをした。

「んっ…!」

秋山に突き上げられる度に何かがナオの体の中心で共振し、指先まで快感が広がる。

「気持ち…良いの、…もっと…」
「あきやまさん…もっと…ふぁっ!」

半ば近くまでを引き抜いて再び勢いをつけて突き入れる。
ナオは繰り返される快感の波を秋山の背中にしがみついて必死で受け入れている。

「も…いっちゃ…あっ…」
「秋山さ…ん、私…もうっ…」

秋山はナオの身体に体重をかけて一層深く押し入れた。

「は、ぁ……」

更にナオの膝を折り曲げた事で二人の身体はより密着する。

(あ…ほんとに…深すぎて…も…)

「好き…んっ…すき…」
「秋山さん、す、きっ……」

潤んだ瞳に吸い寄せられるように秋山はナオに深く口付ける。

(秋山さんの舌…温かい…)

「…ん、ふぅ…」

ナオの嬌声が秋山の唇で塞がれた事でくちゅくちゅと二種類の粘着質な水音が部屋に響く。

「…っ…っ…!」
「…んーっ!」

激しく突き上げられて秋山の背中に回されたナオの指に力が篭る。
心地良い熱と固さを最奥に感じるのと同時に舌をきつく吸い上げられナオの意識が弾けた。

「…っく」

跳ね上がるナオの身体に合わせて収縮する花壁に誘われるままに秋山は昂りを解き放ち、しっとりと汗ばんだ少女の身体に自らの身体を預けた。

慣れることの出来ない浮遊感と脱力感の後、乱れた息もそのままにナオは秋山の胸に額を寄せた。

「…あきやまさん」

吐息の様に微かなナオの声に秋山はその華奢な身体を抱き寄せる事で応える。

「あきやまさん…あきやまさん…」

秋山は何度も繰り返し自分の名前を呼ぶナオの髪を優しく梳き撫でた。

「まだ…離れちゃ…やです」
「うん…」

まだ繋がったままの身体が離れてしまうのを恐れる様にナオは秋山の腕にしがみついた。

「君が良いって言うまでこのままで居るから」


「でも、もう…あんな薬は、…恐いから…ヤです…」

幾分か気だるさは残しているもののようやく落ち着いたナオは唇を尖らせて少し拗ねている。

「秋山さんの意地悪…」

くすり…とまだまだ幼さを感じさせるナオの様子に秋山は愉し気に微笑んだ。

「そう…意地悪なんだ」

その表情にナオの胸に嫌な予感が湧き上がる。

(秋山さん…嬉しそう…?)

ネコの様に瞳を細め上機嫌な口調の秋山に言われる事は今までの経験からすると十中八九とんでもない事だ。

「しかもね、俺が嘘つきだって事…覚えてる?」
「えっ…あのっ……秋山さん?」

慌てた声を上げるナオはこれ以上は聞きたくないとその表情で物語っている。

「あのさ…」
「媚薬だなんて都合の良いモノが本当に有ると思う?」
「え…だって…アレは?」

何かを察知したのか不安そうに上目遣いで自分を見つめるナオの顎を秋山はしっかりと押さえつける。

「ああ…前に君が忘れてったメンソレータム」
「ええっ……!?」

ナオは今にも泣き出しそうに瞳を大きく見開いた。

「だから、アレは素のままの君って事になるんだけど…」
「…っ!」
「いつもより素直で大胆な君はなかなか可愛かったよ」

瞳をじっと見つめられたままニコリとこの上なく魅力的に笑いかけられナオの思考回路は停止してしまいそうになる。

「え…え…そんな…だってっ…」

(そしたら…そしたら…私、あんな事、言っちゃったり……しちゃったりしたのに…)

いつの間にかナオの頬はしっかりと両手で包み込まれ秋山から顔を逸らす事は許されない。

「最初に言っただろ?お仕置きだって」
「…っ」

(もっ…秋山さんの顔が見れない…!)

「駄目だって、隠れちゃ」

秋山は羞恥心から必死にシーツに潜り込もうとするナオを片腕で抱留め、くるくると展開されるナオの百面相を堪能している。

「だって…だって…秋山さん…」
「……あんなに、たくさんしたのに…?」
「気持ち良い事だけじゃ、お仕置きにならないんじゃない?」
「…………」

言葉を紡げない唇をぱくぱくと開くナオの額に秋山は愛しさを込めてキスをした。

「それにしても君は気持ち良いコトに弱いね、ナオ」

ひとしきりの恥ずかしい台詞と指摘にこれ以上無いほど頬を染め、涙で潤んだ瞳の表面張力が限界寸前になったところでようやくナオは開放された。
抱きしめていた秋山の腕の力が弱まった途端、ナオはいつにない勢いで秋山に背中を向けた。

「秋山さんなんてっ…もう…キライです!」

胸の下に回された腕を小さな拳でぽかぽかと叩く。

「そんな事したって君は俺が好きなんだろ…?」
「っうー…」

確信に満ちた物言いと図星を差された事が少し悔しくてナオはムキになって声を上げる。

(なんでこんなに意地悪言われてるのに)
(……ドキドキしちゃうんだろう)

「違いますもん!秋山さんなんてもう大っ嫌いですー!」
「へえ…」
「まあ君が俺の事嫌いでも…俺は君の事、愛してるよ」

「だから君は俺の事だけを想ってて」

背後から抱きしめられたまま頬をぴたりと寄せられるとナオはもう何も言えなくなってしまう。
独占欲もそのままに子供の様に体をすり寄せて甘える年上の恋人が愛しくて仕方ない。

(あぁ…)
(秋山さんはずるい…)

ナオが回された腕の叩いた辺りをさすると秋山が嬉しそうに微笑んだ気配がしてもう一度頬をすり寄せられた。

「愛してる」

頭の上から繰り返される柔らかな囁きに答えるためナオはそっと唇を開いた。






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