LoveLife
秋山深一×神崎直


触れ合う手と手が熱くて熱くてどうしようもなくて。
ああもうどうしたって幸せすぎる私はきっといつか天罰が下るんだろうけれど、あなたのその切なげな表情や私を呼ぶ声や這う舌や全てが全てを愛して止みません。
だからどんな天罰が下ろうとも私は満足です。小さな音を立てて軋むベット。漏れる吐息。吐き出される欲液。
いつもいつもあなたは私を気持ちよくさせてくれる。そのたび胸がきゅん、とする。
ああ、本当に大好きです。私はあなたのためならきっと汚れる事すら躊躇わない。
もし私が自分で死ぬ時間や場所を選べる権利を持ったとするなら、迷わずあなたの好きな時に私を壊して下さい、なんて。少し残酷ですか?
でも、それくらい大好きなんですよ、秋山さん。

「もっ、と」
「、え?」
「ぎゅっ、て。もっと……して。秋山さ、んの、す、好きに……して」
「(ああ畜生可愛いすぎるだろほらみろ全然治まらないじゃないか君のせいだからな)ん、直……愛してる」

私は秋山さん以外の男性と、その、えと……え、えっちをした事がありません。
だから比較は出来ないのだけれど、多分秋山さんは他の人よりすごく強欲で強情でびっくりするくらいそういう意味でタフな人なんだと思う。
少し温めのお湯に二人で浸りながら、ぼんやりとそう思う。
後ろから抱きしめられている今現在だって秋山さんのその、あー…うー…あ、アレはぴくぴく反応してるし。
さっきまであんなにしたのに。でも、求められているようで、嬉しい。
お互い何かを話す訳でもなく、ただ抱きしめて、抱きしめられてまどろむ。
お湯と秋山さんの体温が心地良い。まるで宙を浮いているかのような浮遊感に包まれる。
あー。多分今の私は世界で一番幸せな女のなのかも知れない。いや、絶対そうだと思う。
これ以上の幸せなんてありえるわけ無い。そう思える。本当。

「気持ち良い?」
「はい、とっても」
「幸せ?」
「はい、とっても」
「……寝ぼけてる?」
「はい、とっても」
「(あー……キスするぞこの野郎)……出ようか」

最近寝るという行為がすごく勿体無い気がします。
だって眠っている間、秋山さんを見られないじゃないですか。これってすごく損していますよね?
そう秋山さんに告げると、秋山さんは少しの間があって、顔をそむけた。
馬鹿か君は。そう呟いた秋山さんの耳は、可愛らしく朱に染まっていた。
照れているのかな。普段見たことの無い表情に、自然と顔が緩む。
ベットに寝転がる私を見ようとはしない。可愛らしい。

「秋山さん」「……何?」「キス、していいですか?」「……嫌だ」

どうやら機嫌を損ねてしまったみたいです。でも私はするすると擦り寄ると、秋山さんの手を握る。
熱を孕んだ指先に、唇を押し当てて。
そうすれば、ほら。欲張りさんな指先はするすると私の輪郭をなぞり、鎖骨を撫ぜ、ゆっくりゆっくりと女の膨らみを愛撫する。
君が悪い。聞こえる声。そうですね。そう答える前に唇は捕食された。
舌と舌が絡みあう。熱が放出されず、どんどんどんどん体温は上がっていく。
秋山さんのキスは少し荒い。まるで逃がさないように全力で兎を仕留めるライオンみたいだ。
そんなに慌てなくても私はあなたから離れる事はないですよ。
直なおナオ。私は呼ぶ愛しい声。
もっと強く。そう言う代わりに喘ぎ声が漏れる。愛しています。そう言う代わりにキスをした。

もう一体何度交わりながら夜を越え朝を迎えたのだろう。
私の体はすっかり秋山さん仕様に変わってしまった。それはすごく嬉しい事だけど。
ぐい、と強引に四つん這いにさせられ、後ろから何度も何度も突かれそのたびに私はああ、私はこの人に身を捧げているんだなぁ、とぼんやり考えたり。

この時いつも秋山さんは私の耳元で何かを呟くんだけれど、この時の私は気持ち良過ぎて何も覚えていない。
後で聞いても絶対に答えてくれない。気になる。
でも多分今日も覚えられないのだろう。体全身が喜びに打ち震える。
イッた?そう意地悪に聞いてくる秋山さんに私は虚ろな思考能力をフルに使って何とか頷く。
気持ちよすぎです。ずるいです。
最後はいつも向かい合って抱きしめあいながら、秋山さんが私の奥に吐き出す。
私はそれをいつも必死に受け止める。零さないように。
ずるり、と私の中から引き抜いた秋山さんの身体は汗で輝いて、とても綺麗だった。

秋山さんと暮らして何度目かの冬。
私は手に持った写真を見つめながら、秋山さんに尋ねる。

「名前、何にします?」
「……気が早いだろ。まだ男か女も分からないし」
「えーこういうのは先に決めておいたほうがいいですよ。絶対悩みますもん」
「……純」
「え?」
「男なら、純。君みたいに純粋な子でいて欲しいから……どう?」
「わぁ!いいですいいです流石秋山さん!」
「もう君も秋山さんだろ」
「うっ……お、女の子なら?」
「ん?んー……スイ?」
「それ単純すぎませんか?」
「何だっていいよ。君との子なら」

そう言って秋……深一さんは少し大きくなった私のお腹を撫でた。






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