3年分の思い
秋山深一×神崎直


もう3年かぁ・・・


窓から外をぼんやりながめながらふと思った。



3年。
アキヤマと別れて、というよりアキヤマから逃げてもう3年たった。
ライアーゲームの1年後に父が亡くなって情緒不安定になり、
自分はアキヤマにとってお荷物でしかないという思いから逃れられず
アキヤマにむちゃくちゃな別れを告げ別の街に引っ越してしまった。

あれからわたし、少しは成長できたのかなぁ・・・

ナオは会社勤めをするようになっていた。
たまたま開いた求人広告でベンチャー企業の募集があり
なにが気に入られたのか採用されたのが2年前。
あれよあれよと言う間に会社は大きくなり
今ではナオは専務である。世の中わからない。
おっちょこちょいで人を疑わないところは全く変わっていないのだが
そこは上司や部下に恵まれた。天の采配と言ってもいいだろう。

必死になって仕事をこなすうち、自分のダメさ加減に泣くことも少なくなった。
精神的にタフになり、困難にも自身の力で立ち向かえるようになった。
ただあの季節が―――アキヤマと別れた桜の季節がくると、
なんとなく感傷的な気分になってしまい。


「専務!」

へっ!?とおかしな声を上げて振り返ると上司が心配そうな顔でこちらをうかがっている。

「最近ヘンだぞ。ため息つくのも多いし・・・KF社との契約、何か心配なのか」
「あ、いえっ、そんなことはありません。すみません、ボーッとしちゃって・・・」
「しっかりしてくれよ?」

はい、と返事をして手元の書類に目を通す。
KF社との契約はナオの社にとってビッグチャンスだった。
そんな大事な契約の交渉担当のお鉢が、どういうわけか自分にまわってきたのが半年前。
緊張と不安を感じつつ、こんな重要な仕事を任されて嬉しくもあった。
その契約の日が、いよいよ明日に迫っている。


きっと、うまくいく・・・!
ナオはひとつ心に決めていたことがあった。
この契約がうまくいったら、アキヤマに会いに行こうと。
恋人同士に戻れなくてもいい。
あのときのことをとにかく謝りたい。

アキヤマさん、いま何してるのかなぁ・・・

翌日。

気合いを入れてKF社に赴き、通された部屋で待つこと5分。
書類は全部そろえてあるし、忘れ物もない。
契約に付随する条件の確認など、段取りも頭に入っている。

大丈夫。


ところが・・・ノック音がして入ってきた人物と目が合うと、ナオは動けなくなった。

アキヤマ、さ ん・・・?


完璧に思考停止したナオにそ知らぬ態度で名刺を差し出してくる。

「アキヤマと申します。あいにく担当が体調不良でして。こんな日に申し訳ありません」
「い、いえ・・・・」

受け取った名刺には間違いなく「秋山深一」と書いてある。

やっと少しだけ動き出した頭で、ここにいるのはあのアキヤマ本人であると
どうにか理解するが、それでもどうしたらいいかわからなくなっていた。
と言うのもアキヤマは微笑すら浮かべてこちらを見ているのだが
なんとなく再会を喜べない雰囲気をナオは察知していた。
なにか、うまく説明はできないが――アキヤマが入ってきて数秒のうちに
アキヤマが出す不気味な空気感にナオはすっかり萎縮してしまった。

もしかしたら、復讐しにきたのかもしれない・・・
アキヤマさんを裏切って傷つけたわたしに。

そんな思考が脳裏をよぎり、一瞬涙ぐみそうになるが必死でこらえ
書類をテーブル上に並べた。
この契約、おそらくアキヤマと戦うことになるのだろう。
そう考えただけでもう気力が途切れそうだった。
暖かい室内だと言うのに血の気が引いた指先が冷えて思うように動かない。
もう降参したい気持ちだった。
耐え切れずにナオから切り出す。

「アキヤマさん・・・すみませんでした。あの時ひどいことを言って、傷つけて
 逃げたりして、本当にごめんなさい。本当に、ごめんなさい・・・」

「それより契約の話をしましょう」

顔色一つ変えずアキヤマが答えた。
ナオの心がさぁっと凍りつく。絶望感でいっぱいになる。

「わかりました・・・」

震える声で内容を説明する。書類越しに刺さるアキヤマの視線が苦痛だった。



アキヤマはソファに深く腰掛け、顎先に手を添えて説明を聞いている。
整った顔、きれいな指、髪、まなざし・・・全部大好きだった。
なのになぜ、あんなことをしたのだろう。


「・・・以上です。」

アキヤマが小さくふぅと息をついて、背もたれから体を起こす。

「これは、どなたが?」

一瞬ビクッとなり、おろおろしながらわたしですと答える。
怖くなって鼓動が早まる。顔を見られない。

書類をまとめようとして落とした数枚に気を取られている隙に
ふいにアキヤマが手をにぎって、というより掴んできた。
飛び上がりそうなくらい驚いて手を引っ込めようとするものの
物凄い力で掴まれて逃げられない。
アキヤマの意図がわからずにいると、だんだん力が込められていくのがわかった。
痛い。掴まれた先が赤紫色になってジンジンしている。
アキヤマの目には怒りの色が浮かんでいて。


ナオは腰が抜けて立てなくなった。
その場にへたりこんで、ついに降参した。
謝るときは泣かないと決めていたのに、涙をとめどなくこぼしながら、ごめんなさい、ごめんなさい、と繰り返す。

どうすれば、赦してもらえるだろう。
いや、赦してもらえなくてもいい。
こんなふうにわたしの行く先々に現れてめちゃめちゃにすれば気が済むのならそれでいい。
それだけのことを、わたしはしたのだから。


アキヤマは泣き続けるナオの肩を掴むと
さっきまでナオが座っていたソファにぐっと押し付け


突然口付けた。

驚きのあまり、息ができない。
なぜアキヤマは自分にキスしているのだろう。
さっき掴まれた手は、まだ解放されていない。
そうこうしているうちに舌が侵入してくる。
ゆっくりとナオのくちびるをなぞり、吸い、首筋に舌を這わせる。
あいている手でブラウスのボタンを外し、指先で触れてくる。

「あっ、あきやまさん!?」
「しずかに。人来るよ。」

その冷たい言い方に、ナオは観念した。
これも復讐なのだろう。それでアキヤマの気が済むのなら。

ナオが抵抗しないのをみるとアキヤマはナオをソファに引きずり上げ、
後ろ向きにナオを抱きかかえ自分の足でナオの太ももを押し広げて
スカートの中に手を滑り込ませた。
パンストを下ろしてショーツを横にずらし、いきなりじかに触れてくる。
敏感な部分をゆっくりと撫で上げられる。
反対の手で片胸を包み込んで指で先端を刺激される。
うなじを舌で愛撫される。


あの頃と、同じだ。

あの頃体を重ねるたび、同じように愛されていたことを思い出して混乱した。
復讐では、ないのだろうか・・・。
アキヤマは確実にナオの敏感な部分を攻めてきている。

「んうっ・・・」

突然指を深く挿れられ声が漏れてしまう。
こんなシチュエーションでも自分の体が感じていることにも驚く。
ゆっくりと指を出し入れされ、くちゅ、ちゅぷ、といやらしい音が部屋に響いた。
廊下から近づいてくる足音が聞こえ、鼓動が早まる。

「あきやまさ・・・カギ、は・・・」
「開いてるよ。」
「そん、なっ・・んんっ」

指の動きが早くなる。
誰かが入ってきたら、と考えると足がガクガクと震えた。

耳元でアキヤマがクスッと嘲笑う。

「すっごい、キツくなった」
「・・・ぁ、やめ、っ・・・・・・」
「とりあえず、1回イッちゃおうか」
「いやぁ・・・うっ、んん・・くぅ、あ、ああっ!」

アキヤマはガクガクと震えてソファに倒れこむナオに口付けて、
仰向けに寝かせてやるとその脇に座った。



それから数分後。
ようやくまともな思考が戻ってきたが、この状況で何を言ったら良いのか。
アキヤマが怒っているのかそうでないのかも良くわからないままだ。
どうしようと思っているとふいにアキヤマの手が伸びてきて髪をなでた。

「キミは十分成長した。だから、もう戻ってこい」
「え・・・?」
「この3年間、ずっと見てた。」
「うそ・・・!?」
「フフッ、この俺から本当に逃れられると思ったのか?」

セリフとしては恐ろしくなくもないが、その顔は優しい。


きっと、すべてわかってくれているのだろう。
その上で待っていてくれたのだろう。
戻ってくるかもわからない自分を。
いや、きっとアキヤマのことだから、戻ってくるという確証があったのかもしれない。

「アキヤマさん・・・っ」

恋しくてたまらないその胸にすがりついてまた泣いた。
アキヤマは涙をふいてやるといっそう優しく、激しく口付けた。
夢中になってアキヤマの舌に応えているうちに、また熱くなってくるのを感じる。
そしてまた、彼の指で愛され。
2人だけの密室に、自分の小さな喘ぎが響く。
部屋のそとにはたくさんの人がいるというのに。
衣擦れと水音がやけに大きく聞こえる。

アキヤマは手早く自身をあらわにし、入り口にあてがう。
そこが熱くうごめいているのを感じる。
そして一気に沈めた。

「あっ、ああっ・・・くぅ・・・んん」

強く熱く絡みつく感覚に、つい欲望を手荒くぶつけそうになるが
必死で押し留め、ずるずると中を楽しむ。
彼女はもう息を荒くしている。
首筋からキスを降らせながら降りていき、胸に顔をうずめる。
温かい。
決して大きくはないのだが、3年前も抱き合うたびに
同じようにしていたことを思い出す。

(俺は成長してないかもな・・・)

笑ってしまったのは彼女には見られていないはず。
ソファに座った自分にナオを跨らせて深く挿れる。
胸が誘うようにゆれ、さすがに自分も息が荒くなってくる。

「あき、やまさん・・・深、い・・・うう、ふ、んっ・・・」

下から激しく突き上げるとナオの口から声が漏れて、
その声がまた、自分をさらに煽り立てるようで頭がクラクラしてくる。


ナオもまた力が入らなくなっているようで、自分の上でフラフラしているので
ソファに横たえてやり、ラストスパートをかける。

「あ、きやまさ、んっ・・・んうう、はぁっ・・・んんっ」

激しく、激しく3年分の思いをぶつけるように打ちつけ、飲み込まれ。
アキヤマがひときわ強くナオを抱き、最奥へ自身を打ち付けると同時に
ナオは再び強く締め付け、がくがくと身体をふるわせる。
自分の額にキスをするアキヤマをぼんやり見つめながら
意識が白い光の中へ吸い込まれていくのを感じた。

ナオが目覚めたときにはもう窓から入ってくる光の色は
既に日暮れが近いをことを知らせている。
仕事中だったこと、そしてここは他社の社内であること、
さらに大事な契約の途中であることを一瞬で思い出し
あわてふためく自分を見てアキヤマが笑っている。

「あああ〜これじゃ5時に間に合わない〜どうしよう〜〜」
「アキヤマさん何笑ってるんですか!ああ〜どうしよどうしよ」

「わかってないなぁ。キミには俺がいるだろ?」

あの頃と変わらない、自分にだけ見せてくれる優しい微笑みがそこにあって。
あの頃とは違う、強くなった自分。

信じていいんだ。この人と、自分を。


「そうですよね。・・・アキヤマさん、助けてください!」






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