四月馬鹿
秋山深一×神崎直


Pluuuuu〜Pluuuuu〜
「!!!」えっ?うそっ?
ディスプレイに表示されている名前は、

『秋山さん』

携帯を手にした直の心臓が跳ね上がる。
絶対にかけてくるハズがない人の名前に、
頭の中が疑問符でいっぱいになる。

「??…ああっ!!今日ってエイプリルフール…」

どう考えても、秋山さんが電話をくれるはずないし。
福永さんか誰かのイタズラに決まってる。
まーた私を騙そうとしてるんだ。
私だって、今日が何の日かぐらい解ってるんですからね。

よーしっ!

「もしもし!騙そうとしたって無駄ですよ!
秋山さんは今私の部屋で、シャワー中なんですから!」

直は通話と同時に、ひと息に電話の相手に言い放った。


数十秒の沈黙の後、


「……ふ〜ん、そうなんだ」


あ…れ?何かおかしい…この声、って

「も、もしかして…本当の、ぁ、あ秋山さんっですか?」
「いや、俺は今、君の部屋でシャワー中らしいから、
今この電話を掛けているのはホントの秋山さんじゃないだろうな」

携帯を握りしめ、直は慌てふためく。

「いえっ、ち違うんですっ、これはですね、あ、あのっ、そのっ!
嘘なんですっ。エイプリルフールで、誰かのイタズラだと思って。
ホントは秋山さんは部屋に居なくて、あの…」

「あのなぁ。それは俺が一番よ〜く知ってるよ。」
「そ、そうですよね…スミマセン」

「ところで。
いつまでも部屋の外をウロウロしてたら、不審者だと思われるんで、
ドアを開けてくれると有り難いんだがな」
「は、はい!!」

直が慌てて開けたドアの先には、
秋山が携帯を持ったまま壁に寄りかかっていた。

「やっと、話が通じたな」

驚きのまま立ち尽くす直の耳から、
目の前の秋山の声が二重奏で響いてきた。

「あの秋山さん、どうしたんですか?」

問いかけた私に

「これ」

差し出されたのは、可愛らしいパッケージのケーキの箱。

「ここのケーキ、並ばないと買えない有名なお店のですよね」
「前に食べてみたいって言ってただろ」
「ええっ?秋山さん並んでくれたんですか?」
「そんな訳ないだろ」

たまたま貰ったんだよ、そう言いながら
よそ向く秋山さんの顔、
なんだか赤い気がするけど。

「ありがとうございます。
あの、一緒にケーキ食べませんか?」
「そうだな。なにせ今日俺は、君の部屋で
シャワーを浴びる予定だから、
先ずは部屋に入らないとな」

ひどいですっ、秋山さん。
いじめっ子の顔してますよ。



秋山を部屋へ招き入れ、扉が閉まった瞬間。
直の躰は壁に押し付けられ、視界が暗くなった。

ー 口唇を塞ぐ温かい感触 ー
ー 頭の中が真っ白で、躰が溶け出してしまいそう ー

「…んふぁ…」

やっと秋山の口唇が離れて、直は小さく息を吸い込む。


「秋山さん…コレって…何ですか?」
「君はキスも知らないのか」
「い、いえ、キスぐらい知ってます。
だけど、なぜ私に、その…?」
「4月1日だから。嫌だったか?」
「えっ?いえ、イヤじゃないです。
って何でエイプリルフール…んっ…」
「じゃあ、も一回」

私の言葉を飲み込むように、秋山さんの口唇が重なった。
思わず目を閉じた私に、さっきよりも深いキスの雨。

舐めて、
吸って、
絡んで、
飲んで、
熱くて、
潤んで、
痺れて、


ようやく秋山さんが、私の口唇を
解放してくれたとき、透明な糸が見えた。

「ハァハァ…」

私の呼吸は乱れて、秋山さんの支えがないと
崩れ落ちてしまいそう。

「秋山さん…」

ぎゅっとしがみつく私を、強く抱きしめてくれる。

嘘みたい、秋山さんが…

!!!!!!


「秋山さん、これってエイプリルフールだからですか?
だから、会いに来てくれたり、キスしてくれたり、
抱きしめてくれるんですか?」

ー 全部、嘘? ー

「今日が4月1日だからだ」

秋山さんの胸の中で聞く、聞きたくなかった言葉。
目の奥が痛くなって、気づけば涙が溢れていた。
もがいて秋山さんの腕を振りほどく。

「こんな事して楽しいですか?
私の気持ち知ってるクセにっ」

お遊びの行為とわかっても、
嬉しくて舞い上がってしまうココロ。

やっぱり私って馬鹿だな…

床にしゃがみこんで泣きじゃくる私の躰が、
急にに宙に浮いて。
お姫様抱っこで訳も分からず運ばれた先は、ベッドの上。
ポスッと落とされた私の躰は、柔らかい寝具と
熱くて固い秋山さんの躰に挟み込まれて拘束状態。

上からのし掛かる秋山さんの真剣なまなざし。
涙で潤んだ瞳で、秋山さんを見つめ返す私。

「俺は母さんの死以来、他人にどう
思われようと気にした事なんかない」

押さえつけられた手首が痛みを感じても、
秋山さんから目をそらせない。

「だから気持ちを返そうなんて、
思いもしなかった。君を知るまでは」

秋山さん、なに言ってるんですか?
意味わからないです。

でも、わからないけど、もうそんな事どうでもいい。

馬鹿なままでいいです、私。


だって、秋山さんが私にキスしてくれる。
愛しそうに抱きしめてくれる。
ブラウスのボタンを1つずつ外して、
ドキドキしてる胸を、長くて綺麗な指が探って、
私を覆ってるモノを、総て剥ぎ取って、
躰中を、熱い口唇が這って、
私の全部が秋山さんの物になって、

私を、世界で一番幸せにしてくれたから。

今の私は、ベッドの中で
秋山さんの腕にすっぽり包まれている。
腕まくらをしてくれている秋山さんの手が、
さっきからずっと私の髪を梳いている。
まだドキドキが治まらない私の
火照った頬に伝わる秋山さんの素肌の温もり。
こんな秋山さん、今日だけ限定だから、
少しだけワガママ言ってイイですよね。

「秋山さん…私のカレンダー、
実は毎日4月1日なんです。
だから、明日からもずーっと
今日みたいな秋山さんがイイです」
「まぁ、確かにあんなに騙されるんだから、
君のカレンダーは毎日エイプリルフールだな」

もうっ、知りません!

ニヤって笑う秋山さんに腹が立って、
私は怒って背中を向けた。
からかってるのわかってるけど、やっぱり切ない。

「4月1日ってさ…」

長い腕が背中越しに回されて、
私を抱きすくめた秋山さんが耳元で囁く。

4月1日って日本では
『不義理をわびる日』だそうだ。

ー えっ?それって… ー

「知り合ってから君は、多くのモノを俺にくれた。
だから何を返せば君が喜ぶか、
色々考えたんだが、結局自分がしたい事を
しただけになってしまったけどな」

人を騙す方がよっぽど簡単だ、なんて
危ない台詞を本気そうに言う秋山さんを、
私は正面から見つめて答えを返す。

「秋山さんのしたい事、全部全部、
うれしい事ばっかりでしたよ」

その言葉を聞いて秋山さんが緩やかに微笑んだ。

「なら、良かった」



「…でも〜、それってやっぱり
今日だけ限定じゃないですか〜」
「じゃあ、これからは毎日君を
抱きしめる、こうしてね」
「秋山さん…夢じゃないですよね。ウソみたい…」
「ま、今日はエイプリルフールだしな」



……



「秋山さんのイジワルッ〜〜〜!!!」






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