秋山深一×神崎直 ![]() カランカラーン! 勢いよく喫茶店のドアを開け、キョロキョロと周囲を見渡す。 目当ての人はコーヒーカップ片手に文庫を開いていた。 「ごっごめんなさい秋山さんっ!」 「…寝坊か?」 約束の時間より30分遅れてきた私に、秋山さんは呆れたように目を細めた。 ライアーゲームという名の長い闘いが終わり、私達はやっと元の日常に戻る事が出来た。 私はその日常に浸る間もなく、学校の勉強に必死になったり、父親の様子を見に行ったりと、慌ただしい日々を過ごしていた。 一方秋山さんはと言うと。 一部の世界で秋山さんの名前はとても有名になってしまったらしく、「仕事」の依頼がひっきりなしに来てるみたいだった。 何の仕事かも教えてくれないし、「危険な事は止めて下さい!」って言ってもみたけれど。 「危なくもないし悪い事もしていない。選んでうけてるからお前は心配しなくていい」と軽くなだめられただけだった。 お金には困ってないみたいだから、そこは少し安心してるけど…。 それに、こうして定期的に秋山さんが私と会ってくれているのも、ひとまず安心出来る一因だった。 ライアーゲームが終わって、もう会えないんじゃないかという不安を抱えていた私を見かねてか、たまに秋山さんは私と食事をしてくれたり、映画や美術館に連れて行ってくれるようになった。 連絡はいつも私が一方的にするんだけど、そこから毎回秋山さんは色々考えてくれて、それが私はとっても嬉しい。 だからこそ最近、ふと考えてしまう。 秋山さんは私の事…どう思ってるんだろう。 「…おい、聞いてるのか?」 「あっ!はいっごめんなさい!」 気が付くと、メニュー片手に秋山さんが店員さんを指さしていた。 聞いてませんでした…とうなだれつつ、私はレモンティーを注文する。 はあ…またぼんやりしちゃった。 さっきまでの暗い気持ちを押し込め、私は秋山さんに笑いかけた。 「秋山さんお久しぶりです!」 「ああ、お前が大学の単位が危ないって泣きついてきて以来だな」 「う…あの時はありがとうございました…」 「で、何で今日は遅刻したんだ?」 「あっそれは」 募金してたんですよ。 「……募金?」 「はい、何でもある女の子が重病を患っていて、その手術代の為に募金活動をされている方々が…」 「何で募金に30分も掛かってるんだ」 「お話を色々聞かせていただいてもう感動してしまって…」 「で?」 「殆どお金入れちゃいました」 「……」 「え?どうかしたんですか」 「本当に目が離せない奴だな…」 「へ?今なんて」 秋山さんは頭を掻き、手にしていたブラックコーヒーを飲み干すと、おもむろに立ち上がった。 「よし、行くぞ」 「え、どこに」 「どこで募金活動してたんだそいつらは」 「えっとそこの交差点の…って秋山さん?!」 強引に私の腕を引き、秋山さんは伝票片手にスタスタ歩き出す。 結局レモンティーが運ばれてくる前に、私達は喫茶店を出る羽目になってしまった。 「……はあ」 「やっぱり、詐欺だったな」 「あの話が全部嘘だったなんて…」 「募金詐欺なんて今時誰が引っかかるんだ。普通は偽物かどうか位見破れるだろう」 「…」 秋山さんに叱られ、しゅんとうなだれてしまう。 また迷惑掛けちゃった…私ってどうして、こんなに鈍いんだろう。 フクナガさんの言う通り、やっぱり私は本当に馬鹿で… ふわっ 「…っ」 不意に頭の上に温かい何かが触れ、驚いて目を見開く。 「お前がした事自体は間違っていない」 秋山さんの手が、優しく私の頭を撫でていた。 「秋山さん…」 「お前の信念は正しい…だが騙されちゃ意味がない」 秋山さんは、なでなでと柔らかく私の頭に手を這わせ、その髪の質感を味わうように親指をゆっくりと動かす。 その動作が心地良くて、思わず目を閉じる。 「お前に必要なのは、何が真実なのかを見極める目だ」 「…はい」 そう言って、秋山さんは私の頭を撫で続ける。 そうされると、私は何だか目がとろんとして来てしまう。 きゅううと胸の辺りが苦しくなって、全神経が頭にあるんじゃないかと思う位、撫でられた部分が敏感に感じる。 トクトクと心臓が波打つ。 秋山さんはどうなのかな…? 「…直」 「んっ…秋山さん?」 暫くして、秋山さんはふっと頭から手を離し、私を見つめた。 「とんだ邪魔が入ったが、今日はお前どこか行きたい所があったんだろう?」 「あっそうなんですよ!」 「何だかんだで大分遅くなったが…今からでも良ければ」 「時間なんて大丈夫ですよ〜何たって今日私が行きたい所は」 「……」 私が行き先を言うと、いつもは無表情な秋山さんの顔がぴくりと動いたような気がした。 手近な椅子に腰を下ろし、秋山さんは本日5度目位の言葉をはいた。 「何でお前の家なんだ」 「今までのお礼ですよ!」 秋山さんにはライアーゲームが終わってからも、勉強や食事や色々付き合ってもらって本当に感謝してるんです! 「で?」 「私はお金も無いし、頭も良くないから、秋山さんになかなかお礼が出来なかったので…」 「お礼なんか」 「だからもう…体で返すしかないんです」 「はっ?」 何故か秋山さんの顔が引きつる。 「ちょ、お前何を」 「止めないで下さい、そりゃ下手かもしれないですけど…」 「いや下手とか言う事じゃなくて」 「秋山さん、嫌かもしれないですけどっ…」 「いや嫌な訳ない…じゃなくて!」 「良ければ今までのお礼に私の手料理、食べて下さい!」 「……」 「あっビーフシチューなんですけど…」 「………」 「お、お嫌いですか?」 「…………」 「秋山さーん…」 「いや…大好きだ」 「あっそうですか!じゃあ早速作りますね!」 私は喜びいさんで秋山さんをテーブルに残し、台所へ向かった。 そう、これが私の今日の計画だった。 日頃の感謝を込めて、秋山さんに手料理をご馳走する。 目的を最初に言ったら秋山さんは絶対来てくれないと思ったから、頑張って到着するまで内緒にして。 下ごしらえもバッチリで、下手なプレゼントよりお金を使って材料も奮発した。 大好きって言ってくれたし、喜んでくれるといいな…。 「……」 それに今日はもう一つ、心に決めた事がある。 関係を壊したくなくて今まで言えなかった事。 でももうどうしようもない、ずっと想っている事。 大切なこの気持ちを。 「秋山さん…」 私は今日、秋山さんに告白する。 ホカホカと湯気を立て、ビーフシチューが秋山さんの口に運ばれていく。 「美味しいですか?」 「ああ」 「…本当に?」 「美味いよ。お前料理上手いんだな」 秋山さんが顔を上げ、優しく微笑んでくれたから、私まで笑顔になる。 「ありがとうございます!」 「やけに遅い時間を指定して来ると思ったら、こういう事か…」 「ふふ〜、頑張って言うの我慢してたんですよ!」 そう言うと、秋山さんは何だか眩しそうに私を見て、「まあ、お前にしたら上出来だよ」とまたビーフシチューを一口、口にした。 よーし、秋山さんが喜んでくれてる。 あとは……こ、こ、告白を… 「はぐうっ!」 「おい何だいきなり」 告白の事を考えると一気に緊張が高まって、思わずニンジンを喉に詰まらせてしまった。 「げほ、だっ大丈夫で、ごほっ」 「慌てて食べるからだ!ほら水!」 折角一世一代の告白って時なのに、色気も何もないやり取りで食事は終了してしまった…。 夕飯を食べ終え、食後のコーヒーを一杯飲んだ後、秋山さんはおもむろに立ち上がり言った。 「じゃ、俺はこれで」 「えええっ!?」 私の声に、不審げに眉を潜める秋山さん。 「何だ、まだ何かあるのか?」 「はい、そうなんですよ!」 あ!思いっきり肯定してしまった! 「またプレゼントか何かか?」 いいって言ってるのに…という表情を作る秋山さん。座り直してさえくれない。 「い、いえ…何というか。形じゃなくてですね…想いと、いいますか…」 「お前の想い?」 あれ?何だか思いもよらない方向に進んじゃってる…。 私の予定では、コーヒーを飲んだ後に私がちゃんと正座して、「秋山さん!私、秋山さんの事大好きです!」ってちゃんと言おうと。 「お前が俺を好きな事か?」 「あ、はい!正にそれです!さすが秋山さ………」 あれ? …………。 「ええっ?!なっなっなんでっえっ?あの」 「まあ落ち着け」 そして秋山さんは、何てことないって顔で私に言った。 「あのな」 「ハイ」 「お前はバカ正直だから…すぐ分かるんだよ」 「…………」 あああ…。 ガクッという音がしそうな程…私の頭は下を向いた。 そっかぁ…秋山さん、知ってたんだ。 急に情けない気持ちが押し寄せてくる。 よく考えたら…心を読む天才の秋山さんにとってバカ正直な私の心を読むなんて、本当にたやすかったに違いない。 それなのに私、バカみたいに秋山さんを誘って、ちょっと構ってもらっただけで浮かれて。 私の気持ちが分かってる秋山さんは断れなくて、きっと嫌々付き合っていたに違いない。 じわり…と涙が浮いて来るけど、必死で堪える。 「おい、どうした」 必死で堪えているのに、秋山さんは俯く私に駆け寄り、くいっと私の顎を持ち上げた。 「…っ」 秋山さんの心配そうな顔が視界いっぱいに広がり、私の決心は脆くも崩れ、涙がこぼれ落ちた。 「…っひくっ…」 「何で…泣いてるんだよ」 「だって…も、申し訳なくて…」 「何がだよ」 「私に気を使って…無理して今まで付き合ってくれて…」 そういった瞬間、秋山さんの顔が見たことない程、歪んだ。 「何言ってんだお前」 視界がブレて、一瞬何も見えなくなる。 え。 「っ…んっ!」 気付いた時、私は秋山さんにキスされていた。 「ん、ふ…」 「…」 何も、考えられなかった。 口付けた瞬間、秋山さんの舌が私の口に入り込んできて、上げようとした声は掻き消え吐息になった。 「はっ…」 呼吸もままならない程、秋山さんは私の口内を貪るように侵していった。 舌が絡まりあう音がピチャリと部屋に響く。 胸が痛くて、頭が真っ白で何も考えられない。 「…っはぁっ…!」 ようやく唇が離れ、唾液がつぅ、と下唇を伝う。 「…直」 秋山さんは、何故か苦しそうに、私を見つめていた。 先に口を開いたのは私だった。 「秋山さん、何で…」 「俺は確かに人より人の考えが読める」 「え?」 私の声を遮り、秋山さんは静かに語り始めた。 「心理学的に見たらこれは好意の表れだとか、人間はこういう心理状態にある時こんな行動をするとか、そんな事は幾らでも考えられる」 「秋山さん…?」 心につかえていたものを吐き出すように、秋山さんは言葉を続けた。 「だけどいつだって、その推測が正しいなんて保証はドコにもない」 まして自分が恋愛感情に捕らわれて、マトモな思考判断が出来ない状態ならな。 「…それって」 ………。 これは…。 相変わらず秋山さんは難しい言葉を沢山使っててよく分からないけど。 もしかして。 「秋山さん…もしかして告白してますか?」 「まだ気付いてなかったのか…」 バタン、と秋山さんは机に突っ伏してしまった。 初めて見る、ちょっと面白い秋山さんだった。 本当に、全くもって秋山さんらしくない。 でも…。 胸にじんわり、温かくてこそばゆい感情が浮かんで来て、私はたまらず秋山さんの名を呼ぶ。 「秋山さん」 ちょんちょんと秋山さんの頭をつつくと、秋山さんはゆらりと頭を起こす。 そんな秋山さんの顔を見つめ、私は笑顔で気持ちを伝えた。 「私も秋山さんの事、大好きです」 「俺も好きだ」 その瞬間手を引かれ、私はまた秋山さんの腕の中に捕らわれた。 そして。 「ふっあ、ん…」 幾度目かのキスの途中、私は妙な違和感に気付いた。 絡み付く舌に溺れる心を奮い、私は必死で言葉を紡ぐ。 「あっ…ん、あのっ」 ピチャ、ピチャリ。 「ふっ…あ」 「ん…なに…?」 「はっ…、あの、何か…当たってるような」 「え」 携帯電話ですか? そういった時の秋山さんの顔は、多分一生忘れられそうにない。 「帰る」 次の瞬間、秋山さんはスクッ!と立ち上がり、歩き出した。 「ちょっ、待って下さい!どうしたんですか!?携帯がどうかしたんですか?!」 「本当に携帯と思ってるお前は、本当に凄い奴だよ」 秋山さんは何かを堪えるように言ったかと思うと、またズンズン歩き出す。 「えっ!あーきーやーまーさーんっ!」 私は必死で秋山さんの足を掴むけど、ズルズルとそのまま引きずられてしまう。 何でいきなり?ちょっと動いてたみたいだけど、もしかしてバイブで誰かに呼び出されたとか… 「このままじゃ、我慢出来ない」 「ヘ?」 秋山さんは不意にピタリと立ち止まり、独り言のように呟いた。 「何が、ですか…?」 ハッキリ言わないと伝わらないんだろうな…と、秋山さんは深い溜め息を付く。 そしてバツの悪そうな顔で私に向き直り、言った。 「お前が可愛すぎて我慢出来ない。襲いそうだから、帰る」 「………」 あまりの言葉に一瞬、頭が真っ白になった。 「…え?」 「俺はいつも聖人君子じゃないし、我慢出来ない時だってある」 「秋山さん」 「自分の欲望に任せてお前を傷つけたくない。また別に機会を改めて会えば」 「…何で我慢してるんですか?」 「え」 秋山さんのクールな表情に、心なしかヒビが入ったような気がした。 一方の私と言えば何故か、自分でも根拠が分からない自信に満ち溢れていた。 「秋山さんには今まで散々迷惑をかけたり、我慢させたり、いっぱいお世話になりました。今度は私が頑張る番です」 「お前…それ本当に意味分かって」 「私は秋山さんの事が大好きなんです」 私は今伝えられる精一杯の気持ちを、秋山さんに伝える。 「大好きで大好きで…秋山さんでいっぱいになりたいんです。秋山さんと一緒に」 「……」 心の底から、秋山さんと繋がりたいと、そう思う。 …怖いと言えば嘘になる。 だけど、今の自分の気持ちに嘘をつきたくない。 暫くの沈黙の後、秋山さんはポツリと言葉を投げかけた。 「…いいんだな?」 秋山さん、分かってくれたんだ! 私は嬉しさのあまり、勢いよく返事をする。 「はいっもうドーンと任せて下さいっ!」 「成程、ドーンとな」 「はいドーンと!」 「ひぁっ…ふぁあ、あ、あきやまさぁん…!」 「どうした?ドーンと任せてもらえるんじゃなかったのか?」 「だって、ひっ…秋山さん、が…ひぁあっ意地悪する、からあ…っ!」 私は今、自分のベッドの上に下着姿で寝かされている。 そして私の上には秋山さんが跨っていて…さっきから私の胸を指や舌で遊んでいた。 ぴんっと秋山さんはまた私の乳首を指で弾く。 瞬間、またあの痺れが体を突き抜け、お腹の下がきゅうんと疼いた。 「ふぁあっ!」 「何がドーンなんだか。これだけでこんなに」 涙目で震える私の様子を楽しみながら、秋山さんはするすると手を下腹部に伸ばし、布一枚で覆われているそこに指を這わせた。 そろり。 布越しに指が窪みに沈むと同時に、じわりと液が染み出してくる。 「…っ!」 びりびりと今まで以上の快感が全身を支配し、思考がどんどんおぼつかなくなっていく。 秋山さんは楽しむように指を割れ目に往復させ、私の足が震え始めた頃に。 ぐちゅり。 「っあ、ふぁああっ!」 容赦なく下着の隙間から指を差し入れた。 「あっあ、ひ…あぁっ!」 恥ずかしさの余り噛み締めた唇は呆気なく開かれ、声がとめどなく漏れ出した。 私のそこは恥ずかしい位にドロドロになってしまっていて、秋山さんが少し中を掻き回しただけで、ぐしゅ、ぐしゅと液がとろとろと流れ出してきた。 「凄いな…」 耳元で秋山さんの低い声が吐息と共に響く。 するとまた甘い痺れが私を襲い、疼くそこはきゅうぅと秋山さんの指を締め付けてしまう。 秋山さんは意地悪な笑みを浮かべながら、私に囁きかける。 「直、ぬるぬるだぞ…気持ちいいんだな」 「いっ言わないで下さい…秋山さんの意地わ…」 「そうはいかない、『ドーンと任せて』もらう約束だからな。下着脱いで、足広げてみろ」 「あ、あし…」 クラクラする頭で、言われるがままに殆ど意味を成さなくなった下着を下ろし、両足を少し広げてみる。 瞬間。 グチャッ! 「ひああぁあっ?!」 一瞬頭がスパークして、何が起こったのか分からなかった。 「…っあ…!」 じゅぷっ、じゅぷっ!という水音が部屋にいよいよ響く。 意識が浮上すると同時に、信じられない快感が私を襲った。 「あっはっ、はあっはぁっふぁあ!あんっ」 「凄い締め付けだな…そんなにいいのか?」 秋山さんの指はあろう事か3本も入っていて、指の付け根まで丸ごと入ったそれは激しく動いて、私を責め立てていた。 怖いし、少し痛いのに。 意志とは関係なく、私のそこはキュゥウとキツく収縮し、その指に食らいつくようにして離さない。 「いっいやっあっはあっ…あきっやまさん…ダメっ」 「何がダメなんだ?」 「そんないっぱいしたら…」 「したら?」 グリッ。 私の中で秋山さんは指を軽く曲げ、愛液を掻き出すように、中の襞を掻き回した。 「あぁあっ!い、い…っ!」 「イクか?」 思考がどんどん奪われ、体の中で何かが高まっていく気配だけがひしひしと全身を支配していく。 何かが体の奥から湧き上がってくるような… 「あきやまさぁん、なっ何か、ふぁあっあっ、来ます…!」 「大丈夫だ、そのまま身を任せろ」 「こっ怖い、あっひぁっあっ」 「イクんだ」 「あ」 秋山さんの顔が近付き、貪るように私の唇を奪った、その瞬間。 「あああああぁあっ!」 目前に火花がチカチカと散り、全身に痙攣が走る。 ビチャッ!ピチャッ! 私のそこからは勢いよく何かが吹き出して来て、それは秋山さんの膝を汚してしまう。 「…っはっはぁ…、あっ…」 体が…弛緩する。 私は秋山さんの手で、初めて達してしまった。 「っは…あ、私…!」 ふと我に返り、自分のした行為の余りの恥ずかしさに青ざめる。 もしかして私、気持ち良くなっちゃった時に…。 「どうしよう秋山さん、ごめんなさいっ…何だか頭が真っ白になってしまって、気付いたら勝手に…っ」 恥ずかしくて、何をしたかすらハッキリ口に出せない。 「直…凄く気持ちよかったんだな」 一方秋山さんは余裕綽々で、赤くなったり青くなったりしているだろう私の頬を撫で、優しく汗ばんだおでこにキスを落とした。 「気にするな。今のは気持ち良くなった時に出るもので、お前が思ってるようなものじゃない」 「そ、そうなんですか…?」 なおも不審げな私の顔が面白かったのか、「お前、本当に可愛いな」と秋山さんはまた笑い、おもむろに服を脱ぎ始めた。 「あ…」 その姿は、これから始まる未知の体験を予感させた。 今までは秋山さんの行為を受け止めるので精一杯だったけど…これから、とうとう秋山さん自身を…。 「っ…」 怖い、という気持ちが頭をよぎると同時に、先程まで愛液を撒き散らしていたそこが、ずくんと疼くのを感じる。 私、一体どうしちゃったんだろう…。 ぼんやりと秋山さんを眺めていると、秋山さんがチラリとこちらを振り返る。 「…何でそんな凝視してるんだ」 「あっいえ…その、キレイな体だなって」 そう言うと、何故か秋山さんは目を逸らし、「何言ってんだ」と上着を私の頭にボサッと被せた。 「ひゃあっ!何するんですか?!」 「ジロジロ見るからだ馬鹿」 「も〜前が見えないじゃないですか!」 慌てて上着を手探りで剥ぎ取り、秋山さんを睨み付けようと視線を上げる。 だけど。 「あ…」 「直」 そこに居たのはいつもの優しい秋山さんじゃなくて、1人の男の人だった。 秋山さんは裸だった。 つまり、下も何もはいていないという事で。 「……!」 「初めて見て、びっくりしたか?」 「あ、あの…おっきいですね…」 初めて見るそれは、想像以上にグロテスクで、大きかった。 …こんなの入るのかな? っ!ダメだダメだそんな弱気になっちゃ! 私は臆病な心を振り払い、キッと前を向く。 「お、大きいことは良い事ですから!」 そして、自分でも全くよく分からない事を言ってしまった。 「ふ……」 が、何故かウケてしまったらしく、秋山さんは顔を押さえて無言で笑っていた。 「もう、秋山さん!」 「お前面白過ぎる」 秋山さんは笑い顔で私に突っ込んだ後、不意に真顔になった。 で。 「今からこれをお前の所に突き刺す訳だが、本当にいいのか?」 「……」 秋山さんは最後の確認を私にした。 「出来るだけお前には無理させたくない。もし無理をしてるなら、今日はお前を気持ち良くさせてやるだけで」 「秋山さん、私は大丈夫です」 私はそんな秋山さんの優しさに感謝しながらも、きっぱりと答える。 「確かに怖いですけど…でも、私は今、大好きな秋山さんと繋がりたいんです」 今まで触れられなかった分、沢山触れ合って、お互いを感じ合いたい。 愛し合いたいんだ。 私の様子にようやく納得したのか、秋山さんは「そうか…」と呟き、 「ありがとな」 と私の頭をくしゃりと撫でてくれた。 私は、ずっとこの手が欲しかったのかもしれない。 それ以上考える前に秋山さんが私に覆い被さり、思考は途切れた。 先程の愛撫で、すっかりぬるぬると愛液にまみれてしまったそこに、秋山さんはそっと触れる。 くちゅり。 「ん、ああ…」 それだけで私の全身はぴくりと反応し、一旦は落ち着いたそこがゾロリとうごめく。 「これだけ濡れてたら…大丈夫だな」 秋山さんは指を割れ目全体に走らせながら、ちゅくちゅくと私のそこを指で押し広げていく。 「あ、ん…あっ秋山さん…っ!」 「ほら…もうお前ので、ぬるぬるだ」 秋山さんはべとべとになってしまった手を見せ、人差し指と親指を合わせ、愛液が糸を引く様子を私に見せ付ける。 「やあっ!恥ずかし…っ、あああっ!」 反論する暇もなく指を襞に這わされ、またどろりと愛液が一気に溢れ出す。 秋山さんは手を引いて、私のそこに秋山さん自身が当たるように体の位置を変える。 そしてその愛液を秋山さん自身ですくい上げ、腰を動かして先端に塗り付けた。 グチュ、ニュルッ! 「は、あっ!」 初めての接触に、敏感になっている私のそこはくぱり、くぱりと呼吸をするように痙攣する。 「ひっ、ふあぁ…!」 少し中に触れただけなのに、信じられないような快感が頭を突き抜け。 「ふ、う…っ」 ポロリと思わず流れた涙が頬を伝う。 どうしようもない子宮の疼きが頭を、体を支配する。 私、私秋山さんのが… 「あ、あきやまさ…私、もう」 「分かってる…ゆっくり入れて行くから、我慢しろよ」 そう言って秋山さんは、とうとうそれを、私の中へ侵入させた。 初めはよく分からない圧迫感、違和感が感じられ、次に鈍い痛みがじわじわと私を襲ってきた。 秋山さんのものが半分くらい埋まった所で、秋山さんは私に尋ねた。 「痛いか…?」 秋山さんは額に汗を浮かべて、何故か苦しそうな顔をしている。 「大…丈夫です…っん…秋山さん、気持ちいいですか?」 「ああ…お前の襞がぬるぬる絡み付いてきて、温かくて…死ぬほど気持ち良い」 「ひ、いや…恥ずかしい…」 「締めつけが凄くて、油断したら出そうだ…」 そう言って、眉をしかめながら秋山さんは、ゆっくりと吐息を吐き出した。 きっと、凄く我慢しているに違いない。 「あ、秋山さん…私、もう大丈夫です…だから動いて下さい」 秋山さんの顔がますます苦しそうに歪む。 「今下手に動いたら抑えが効かない…めちゃくちゃになるぞ」 「いいんです」 秋山さんを早く楽にしてあげたくて、私は精一杯の笑顔を浮かべて、秋山さんに囁いた。 「いいんです、私の事…めちゃくちゃにして下さい」 「っ」 瞬間、何かが弾けたように秋山さんの腰が一気に進んだ。 「あっ、はあぁあっ!」 グチュグチュッジュブッ! 水濁音が盛大に鳴り、ゴプリと私のそこから溢れた愛液がタラタラと流れ出す。 「あああああぁっ!」 ギチリとはまっていた秋山さん自身が大きく律動し、私の最奥にまで、抉るようにそれは挿入された。 グチュッグチュッと卑猥な音を立て、秋山さんのそれが出し入れされる。 「や、ああっあき、あきやまさんっ!ひあああっ」 鈍痛が下腹部に走ると同時に、味わったことのない感覚が全身を突き抜けた。 ガクガクと腰が乱暴に揺らされ、私の体はいとも容易くベッドに跳ね返る。 「直…っ!」 秋山さんは目を閉じて、私の中に絶え間なく打ちつける。 「ふっう、あっああっあ!」 最初は、それをひたすら受け入れるのに精一杯だったけれど…。 「はあっ!」 腰が痺れるような快感が次から次へと打ち込まれる。 「…あ…ふっ、んんんっ!」 キュウゥとそこが収縮して、秋山さんのものに食らい付いていく。 最初はただ痛かっただけの秋山さんの動き。 それはいつの間にか、体の奥底からわき出すような快感となって、私の意識を飛ばし始めていた。 「あっあっ、ああんっあきやまさんっはあっ」 グチュグチュと鳴り響く結合音が恥ずかしいのに、その恥ずかしささえ、快感に変わっていってしまう。 気持ちイイ、という感覚だけを残して頭が真っ白になっていく。 「あっあっあっふあ!…っああ!」 快感が高まって、更に秋山さんのものをキツく締め付けた瞬間。 「…直、気持ちいいのか?」 秋山さんは不意に私にそう呼び掛け、私の頬をなぞった。 高まる寸前での問い掛けに、私の頭はまた現実に引き戻されてしまう。 「あっあ、あああっ…いやっ…」 「言わないと動かないぞ」 グチュ…。 恥ずかしさと快感で言葉が出ない私を見て、秋山さんは腰を打ち付けるスピードを目に見えて落とした。 それが焦れったくて、恥ずかしくて、私はまた秋山さんの名を呼ぶ。 「あっ秋山さん…っ?」 「イキそうだったんだろ?」 腰が動いてるぞ? 秋山さんの指摘に、ビクンとそこが収縮する。 「っ!」 「続けて欲しいなら、ちゃんと『気持ちいい』って言って…おねだりするんだな」 秋山さんは汗だくになった顔で、ニヤリと今日一番の意地悪な笑みを浮かべた。 「ほら、どうする?」 「っう…あっ!」 恥ずかしさに口ごもった瞬間、抉るように秋山さんのそれがぐちゅりと私の中で蠢き、瞬間私の理性は飛んでしまった。 「っ気持ちいい…です…はっあ、秋山さんの…いっぱい下さい…!」 「よく言えました」 ご褒美な、と秋山さんは一気にそれを最奥まで突き刺し進んだ。 ゴツゴツと子宮に先端がぶつかり、快感で頭に火花が散る。 「あああっ秋山さんの、ふっあ…当たってます…!」 「もう、イカせてやるよ…俺も限界だ」 ジュブッ!ジュブッ!ジュブッ! 「ひいっあああああぁあっ!」 今まで以上のピストンに、自分のものと思えないような甲高い嬌声があがる。 またあの頭が真っ白になるような感覚が頭を襲い、秋山さんのものをきゅうっとキツく締め付ける。 「あっあきやまさぁんっ!あっああっあ何か、きます…やっ、ああっ!」 「く…イクぞっ直っ」 「あああああああっ!!」 プツリと完全に意識が途絶え、快感だけが全てを支配する。 私のそこは激しく痙攣し、また大量の愛液を撒き散らした。 「…っ!」 同時に秋山さんは自身を私の中から抜いて、私のお腹の上に白い精液を吐き出した。 ドプッドプッと流れ出たそれは、下腹部のなだらかなラインに沿い、ベッドへ流れ出す。 「あ…はぁ…」 快感の余韻の片隅で、ぬるりとした自身の愛液を感じる。 私のそこも、秋山さんのものを抜かれた瞬間、ドロリと止めどなく愛液が流れ出し、コプコプと恥ずかしい音を立ててベッドへこぼれ出していた。 「はっはぁっはぁ…」 全て吐き出した後、秋山さんは私の体に被さり、その腰に手を回した。 「直…初めて、どうだった」 弾む息を抑えて私に問う秋山さんは、とっても綺麗で…私は見惚れてしまった。 「はい、ちょっと痛かったですけど…秋山さんと繋がる事が出来て、凄く嬉しかったです」 「痛かっただけじゃないだろ?」 ニヤリと笑う秋山さんに、思わず赤面してしまう。 「っ!もうっ止めて下さい!」 「まあ、これで晴れてお互いなりたかった、恋人同士になれた訳だし」 秋山さんは私の髪を優しく梳きながら、微笑む。 「今度は俺がお前を遊びに誘うよ」 「……」 何故か。 その言葉に泣きそうになってしまう。 「何で泣くんだ」 「っ知りません!」 秋山さんは相変わらず私の頭を撫でて、舌で私の涙を拭う。 そして「好きだよ」、と秋山さんは私の唇にキスをして、私も「好きです」とキスを返す。 ライアーゲームの先に、私たちは本当の愛を見つける事が出来た。 ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() |