気持ち
江藤光一×神崎直


リストラゲームの最中、俺はフクナガとMチケットを交わしてしまったため
直ちゃんを救い出すことは不可能だった。
うなだれる直ちゃんを前に何もできない自分。
せめてもと、直ちゃんに水を差し出し
フクナガと交わしてしまった条件を話す。
直ちゃんを救えない悔しさは変わらなかったが
それでも、直ちゃんに伝えたかった。

「エトウさん・・」
「ほんとにごめん!直ちゃん!」

俺は謝ることしかできない。
直ちゃんはもうだめなんだとまた深く落ち込む。
俺はどうしようもない気持ちを抑えられず
直ちゃんを抱きしめた。

「エトウさん?」

直ちゃんがいつも秋山と一緒にいて
二人がどんな関係かはわからなかったけど
直ちゃんの視線の先にいるのはいつも秋山で
直ちゃんの秋山への思いはわかっていたつもりだった。
でも、自分の気持ちも抑えられなくなっていた。

「俺、直ちゃんのことが・・」
「え?」
「秋山みたいに助けてあげることはできないけど
でも・・傍にいることはできる」

そう、今ここには秋山はいないのだ。
直ちゃんの傍には自分しかいない。

「エトウさん・・でもあたし・・」
「何も言わないでくれ」

直ちゃんをきつく抱きしめ無理やり唇を奪おうとする。

「や・・っ・・!」

直ちゃんが自分を突き放そうとする。
直ちゃんが嫌がることはしたくないはずなのに
でも、自分の気持ちが抑えられない。

「直ちゃん、秋山はいないんだよ?
俺だって直ちゃんのこと」

「あたしには秋山さんだけです!
秋山さんだけ・・」

直ちゃんの頬から涙がこぼれだす。

「ごめん・・」

やはり無理やり奪うことはできなかった。

そこに扉が開く音がする。

「何泣かしてるんだ」

低く響くその声には、明らかに怒りの色が含まれている。

「秋山さん!」

自分の腕からすり抜けていく直ちゃん。
むなしさだけが残った。

「この落とし前は、会場で」

秋山は直ちゃんを連れて行ってしまった。

「あいつも直ちゃんのこと・・」

秋山の冷たい表情を思い出し苦笑してしまう。

秋山が来たのなら直ちゃんはきっと大丈夫だろう。
直ちゃんの幸せしか願えない自分はヘタレかもしれないが
やっぱり直ちゃんの笑った顔が見ていたい。

そんなことを思って自分も会場に戻った。






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