ヨコヤァァァァァァァァッ 「わ〜、可愛い♪あ、こっちもいいなぁ」 直は、中央広場のショップではしゃいでいた。 秋山は最近忙しかったため、久しぶりのデートである。 選んだコースは遊園地。無邪気に笑う直を見て、秋山の頬は弛みっ放しだった。 ちなみに周囲の男たちは、秋山の殺気で直に近づく事は出来なかった。 頬が弛んでも、そこはしっかりしているらしい。 結局直は、キーホルダーとぬいぐるみを買って戻って来た。 「次、何処行く?」 「え〜っとぉ…」 考え始めた直のお腹がググゥ〜と鳴った。 「くくっ、そういやそろそろお昼だな」 「は、はい…えへへ」 恥ずかしそうにお腹を押える直を、秋山は頭を撫でてやりながら、近くのレストランにエスコートした。 「むぐむぐ…美味しいですねぇ♪」 「あぁ、そうだな」 お前の料理(+体)の方が旨い。その言葉をご飯と一緒に飲み込んだ。 流石にここで言う事でも無いという彼なりの判断だった。 「ふあ〜、ごちそう様でした。…あれ、まだ食べ終わって無いんですか?」 「ん、あぁ、悪い。…お前に見とれてただけだ」 サラッと、直にとってはとんでもない事を言った。 「ああ、秋山さん、ここ、こんな所でそんな大胆な」 顔を真っ赤にして慌てふためく直に、本当だ、と呟いた。 恥ずかしさに耐えられなくなった直は、トイレに行くと言って、立ち上がった。 普段の直には考えられない速度で、女子トイレに駆け込む。 一応本当だが、ちょっとイジワルし過ぎたか。秋山は自嘲気味に口元を歪めた。 直は、手を洗うと廊下に出た。 (秋山さんてば、あんな事をこんな所で…やだもう…) 再び思い出し、顔が火照って来た。 「あれ、神崎直さんじゃありませんか」 「へっ…あ!ヨコヤさん。お久しぶりですねぇ♪」 あのゲーム以来、会って無かった。 本当に久しぶりの会話に、直のテンションは急上昇した。 「お一人ですか?」 「いえ、今日は秋山さんと来てるんですぅ」 「ほう、それはそれは」 調度良かった、とヨコヤは微笑んだ。 「実は、いい物が手に入りましてね。彼に勧めてみようかと…」 そう言うと、鞄の中から小ビンを取り出した。 「何ですか?」 渡された直はしげしげとそれを眺める。 「栄養ドリンクですよ。ただし、市販のものより何倍も効き目がありますがね」 「何倍も?」 「えぇ、仕事で疲れて帰って来ても、これを飲めば直ぐに吹っ飛びます」 ホントですかぁ、直の黄色い叫びが廊下に響いた。 ヨコヤの厚意らしく、お金は要らないとの事。直は嬉々としてそれを持ち帰った。 「ヨコヤが?」 「はい!1週間分貰って来ましたぁ♪」 秋山は、直に渡されたドリンクを観察した。 よ〜く見ると、うっすらと本来のラベルと文字が見えて来る。 「あん?…赤…マ……ム…」 プチッ。 (ヨコヤアアァァァ!) この後、鏡の迷宮の隅っこで、早速ヨコヤの厚意に甘えた秋山であった…。 SS一覧に戻る メインページに戻る |