小ネタ21
劇場版キノコ


「え、殴る?殴るんですか?」
「そうだ。思い切りやれ」
「私がですか?思い切りですか?痛くないですか?」
「大丈夫だ。下手に加減された方が実はダメージが強い」


感動の再会もソコソコにコソコソとふたりしてまぁ色気がない。
あ、今の別に駄洒落とかじゃないから。
俺がそんな低能なコメントするわけないじゃん。バカじゃん?
バカと言えばあのふたりだよね。
直ちゃんと秋山。
俺は若いふたりに背を向けて、ぐいんぐいんブランコを漕ぐ。
金具部分が物凄いガッチョンばっきんいってるけど気にせず勢いMAXで漕ぎ続ける。


「ちょっとキノコ、何のつもりよ」
「うっせーババァ何がだ」
「ババァ言うな。それよそれ、ブランコ!急に何してんのよ」
「ほっとけババァ運動だ運動。適度な運動で脳に刺激を与えているんだよ!」
「アンタの頭を働かせるがためにこっちの集中力を乱すな!うるっさいのよ!」


ぎゃあぎゃあ騒ぐ俺とマジシャンババァに周りの奴らの視線が集まる。
こいつら単純すぎて俺こまっちゃう。
ちらりとくだんのふたりに目をやれば、まーださっきと同じような話をしているようだ。
「ボディ?ボディが良いでしょうか?」
「……いや、君が突然ボディに右ストレートをかますと場が必要以上に騒然となる」
「じゃあ……ほっぺでしょうか」
「そうだな、無難だ」
音声は聞こえないけどまぁこんなトコだろう。
……じゃれてないでさっさと話進めろよ。
大体打ち合わせならもっと隠れてしろっつーの。

バーカバーカと胸中罵りまくっていると、秋山と一瞬目があった。
にやりと120%の悪人ヅラで口元を歪めて見せるアイツは、またどうせ碌でもないこと企んでる。
直ちゃんに張り手の演技指導してるあたり、秋山が孤立する展開に持ってくんだろ。
へーへー、俺は乗っかって騙されたフリをしてやれば良いんですね。

あーあ。
全く直ちゃん絡むと俺損してばっかでホントやんなっちゃう。






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