黒の炎
鹿目知久×暁美ほむら


・挿入なし
・ややリョナあり
深夜。既に日付の変わった時刻。
市内の新興住宅地に位置する鹿目邸の中、長女まどかの寝室で怪しげに蠢く影があった。
室内には影と、安らかな寝息をたてているまどかの二人だけ。
窓やドアは内側から施錠されており、誰もこの寝室に足を踏み入れることは叶わない。
影は万全の準備にニヤリと口元を歪めると、荒い息のまま期待に胸を高鳴らせて、まどかの掛布へと腕を伸ばした。
通常なら邪魔が入ることは考えられない。常識で考え得る限りの準備を、影は行っていたのだから。
しかし――――運命は彼の前に大きく立ちふさがった。

「そこまでよ、鹿目知久」
「ッ――――!!」

名を呼ばれ、ビクリとまどかの父である知久は声の主へと振り向いた。
室内の隅。立っていたのは、まどかと同年代の少女。まるで闇に溶け込むような――――否、闇さえも拒絶するような漆黒を宿して、
暁美ほむらは知久を射ぬくように見つめていた。

「娘に手を出そうだなんて、最悪の父親ね」
「ひどい言いがかりだな。娘の部屋に父親がいることが、そんなに不思議かい。
こんな時間にまどかの部屋にいるキミのほうが、よっぽど気味が悪いけどね」

相手が少女だと知るや、知久は開き直る。
現に知久はまどかに何もしていない。時間が時間とは言え、状況だけを見れば父親が娘の部屋にいただけだ。
それ自体に罪を求めることは出来ない。
しかし暁美ほむらは知っていた。現に、起こるべき未来として。
何周目だったかは正確に記憶していないが、知久の為にまどかが魔法少女の契約をしたことがある。
その時、まどかの中には知久の子どもが宿っていたのだ。
目の前の男には、放っておけば事も有ろうに自分の娘を孕ませる未来が待っている。
それは何としても、暁美ほむらにとって阻止しなければならない未来だった。

「本当なら撃ち殺しておくところだけど、あなたが怪我をするとまどかが悲しむ。だから失せなさい、私の気が変わらない内に」

言ってほむらは、無骨な拳銃の銃口を知久へと向ける。
そんな行動に知久は肩をすくめた。

「モデルガンで大人を脅すのか。最近の子どもは、大したものだな」

口元に薄笑いを浮かべ、知久はほむらへと距離を詰めてくる。
警告はした。それでも聞かないのならと、ほむらは実力を行使しようとするが、彼女の魔力で精製された銃器が砂のように崩れ落ちた。

「なッ……」
『やぁ、暁美ほむら』
『キュゥべぇ――――ッ!!』

出来の悪いぬいぐるみが、部屋の中央に我が物顔で座っている。
周囲を見渡せば、巧妙に結界が張り巡らされていた。
それが原因なのか。ほむらは魔力が思うように使えなかった。

『キミの魔力は僕の結界で制限させてもらってる。イレギュラーが相手でも、これくらいは出来るんだ。もしかしてこの展開は、キミにとって初めてかな?』
『なにを……』
『僕の力はあくまで一時的なものだけど、気をつけたほうがいいよ。目の前には、危険が迫っているワケだしね』

魔術が使えないならと、ほむらが徒手空拳で知久と対峙しようとするが、彼女の脇腹に鋭い痛みが走った。
立っていられずに、ほむらはその場に崩れ落ちる。
更にもう一撃。
知久はスタンガンを振り上げ、ほむらの首筋へと押し当てた。



どれ程の時間が経ったのか。コンクリートの壁に囲まれた、窓一つ無い埃っぽい地下の一室。
底なし沼から這い上がるように、ゆっくりと重く、暁美ほむらの意識は覚醒する。手首に食い込む縄の感覚が煩わしかった。

「やぁ、起きたかい」
「鹿目知久……どういうつもり?」

ほむらの問いを嘲笑うかのように、知久は口元を歪める。
人としてはひどく醜悪な嗤い。
元が温和なだけに、その違和感は顕著なものがあった。だがこれも鹿目知久の一部。
人の持つ悪辣な二面性は魔女よりもたちが悪いと、暁美ほむらは内心で舌打ちをした。

「今が何時か教えてもらえる?ここは陽の光が入らないから時間が分からないの」
「ん……そうだね。まぁ、愛する妻と娘を送り出し、小さい息子は昼寝をしてる。主夫としてやっと一息付ける時間帯かな」

知久の話から、ほむらは現在時刻を正午間際かと推察する。
となると半日近くも気を失っていた。
おかげで体力は申し分ないが、魔力の方は依然として十全の機能を果たしていない。
キュゥべぇがどんな手段を取ったのかは知らないが、時間操作を行うには何らかの解決策を講じる必要があるだろうと、ほむらは今までの知識を総動員して解決策を模索する。

「しかし驚いた。我が家に侵入した手際もそうだけど、この状況に物怖じ一つしないとは」
「………………」
「泣き叫ぶってのを期待していたのだけれど、残念だな」

知久の戯言に沈黙で応じながらも、ほむらの内心は穏やかではなかった。
全裸に剥かれているが、それは大した問題ではない。
天井から吊るされたロープが、ほむらの両手をガッチリと拘束している。ロープの長さも絶妙で、つま先立ちをしなければほむらの足は床につかない。
おかげで踏ん張りが利かず、ろくな抵抗をすることが出来なかった。
一番厄介なのは、ソウルジェムが手元から離れていることだ。おそらくは脱がされた服に混じっているのだろうが、ソウルジェムから離れているという事実はほむらはひどく不安にさせる。

「まぁ、ゆっくり愉しもうか」

言って知久はプラスチックのケースに入った白色の軟膏を右手でたっぷりと掬った。
ほむらの射殺すような視線にも躊躇せず、知久は軟膏を、ほむらの発育途中の胸に塗りたくる。
羞恥などという感傷はとうの昔にほむらは捨てていた。実際裸を知久に見られても全く動じていない。
しかし刺激に敏感な乳房を乱暴に扱われ、ほむらは不快感に顔を歪めた。
針で刺されるような痛みは堪らえ難く、身を捩って抵抗する。

「そう慌てないで、すぐに気持ちよくなるからさ。貿易会社に勤めてる友人に頼んで手に入れた特別性の媚薬だよ」
「――――ッ!」
「ほら。よくなってきただろう」

軟膏を塗られた乳房の部分が、まるで火傷をしたように熱を持っていた。
経験したことがないような熱さに、ほむらの息が荒くなっていく。
媚薬の効能は、確かにほむらの官能の疼きを引き出すことに成功していたようで、額には解れた髪が汗に絡まっている。

「ァ、熱い……」

ほむらは自分のまだ未熟な膨らみを、これ程までに意識したのは初めてだった。ジクジクと熱を持つ二つの膨らみに全神経が集中している。
そんな真ん丸い果実の中心に位置する突起は、今や痛々しいほどに自己主張をしていた。空気に触れているだけで、痺れるような痛みが走る。
ここを触られたらどうなるのか――――。そんな事を考えると、ほむらは普段押し殺している筈の恐怖が頭をもたげるのを感じる。

「まったく淫乱だな。ほら、こんなに乳首を起たせて」
「い、いやッ!やめて!」
「まどかも可哀想に。ストーカーには、お仕置きしないとな」

知久が取り出したのは、プラスチックの洗濯バサミだった。
洗濯バサミを二つ、ゆっくりと、ほむらへ思い知らせるように、二つの木の芽へと近づけていく。
流石のほむらも恐怖に顔をひきつらせ、頭を振りながら抵抗していた。透き通るような黒の瞳には、うっすらと涙まで浮かんでいる。

「いや、いやぁッ!!」
「あははは。ほらッ!」

パチンッと間が抜けた音と共に、洗濯バサミはほむらの淡い桜色を勢い良く挟みこむ。
二つの乳首は押しつぶされ、瞬間にほむらはビクっと体を痙攣させて、瞳を限界まで見開いた。
この程度でどうにかなる魔法少女の体ではないが、キュゥべぇが張った結界の影響で、痛覚の遮断は不可能になっている。
一挙に頭に流し込まれた許容量を超えた痛撃に言葉を発することもままならず、ほむらは呆けたように口を開きっ放しにしている。

高飛車な物言いだった少女が、無抵抗のまま自分の好きにされていた。
そんな状況に知久は興奮を抑えきれない。
娘のまどかを相手にする時の愛しい感情とは違う、もっと穢してやりたいというどす黒い欲望が渦を巻いていた。
加えて少女の、まるで人形のような端正な顔立ちは、凌辱の対象としてこれ以上望むべくもないものだった。

未だに放心状態のほむらの背後に回った知久は、腰まである艶やかな髪を手に取って大きく息を吸い込んだ。
吸い込んだほむらの頭髪の匂いは、男に少女の全てを手に入れた様な、そんな錯覚に陥らせるような香りだった。
何度も何度も、ほむらが抵抗しないのを良いことに、知久は頭髪の香りを吸い込む。

「……外して。お願い、痛いの……」

未だに乳首を押しつぶしている凶器を外すように懇願するほむらだったが、知久はそんな言葉を聞いていなかった。
髪の匂いにこらえ切れなくなったのか、知久はズボンのジッパーを降ろして性器を露出させる。
それはほむらの背後で行われていて、彼女はただならぬ気配を背後に感じて、落ち着かないように体をよじった。
直後に、ぐいと髪を引っ張られ、ほむらは苦しそうな呻き声を上げる。

「なに、なにしてるの?」

弱々しいほむらの問に答えず、ほむらの髪の毛を露出したペニスに巻きつけた知久は、腰を使って快感を得ようとする。
サラサラとした髪の感触が、今までに無い快感を知久に与えていた。
少女の清廉な黒髪に、グロテスクな肉棒が出入りしている。そんな様子はひどく倒錯的で、知久の性感を更に高めていく。
射精すれば白い精液が、この黒髪を汚すのだろう。その光景は、どんなに刺激的だろうか。
知久の腰の動きは更に加速する。
男のただならぬ息遣いを背中に感じ、ほむらは恐怖していた。
ギリギリと締め付けるような乳頭の痛みは依然としてほむらを苛んでいて、抵抗の意思は消え失せてしまいそうだった。

「う……出すぞぉ!」

高まった射精感を堪えようともせず、巻きつけた髪の毛へと知久はラストスパートを開始する。
髪の毛の一本一本が肉棒を刺激していて、まるで射精を促しているようだった。数回浅く突き、最後に深い一突き。
と同時に知久は獣のような雄たけびをあげて、吐精していた。

「ぇ、――――ひぁッ!」

勢い良く飛んだ白濁色の精液が、ほむらの艶やかな黒髪を汚している。
強烈な生臭さに、ほむらは吐き気がした。

「う、うぅ……」

密かに自慢だった髪の毛を精子で穢されて惨めな気分が沸き上がってきて、自然と目の端から涙がこぼれ落ちてくる。
もう泣かないと決めていた。だけれど、こんな理不尽が悔しくって、ほむらは唇を噛み締めた。

「ふぅ……それじゃぁ僕は夕食の準備があるから、家に戻るよ」

平然とした口調で言ってのけた知久は地下室を後にしようとするが、何か思い直したように立ち止まった。

「そうそう、忘れてた」

知久の顔面に貼りつく邪悪な笑みに、自然とほむらは身構えていた。
何をするのか予想はできて、ほむらの肩が震える。

「こいつを取ってあげないとな」
「いや、やめ――――ッ」

平手を振り上げた知久は、勢い良くほむらの胸へ掌を打ち下ろした。
バチンと音が響き、ほむらの乳頭に喰らいついていた凶器がはじけ飛ぶ。

「がひぁぁぁぁぁ!!」
「そら、もう一発!」
「ぎぁぁぁぁあぁぁぁッ――――」

再び振り下ろされた平手は、残った凶器を弾き飛ばし、同時にほむらの意識も刈り取った。
意識を失い弛緩したほむらの下腹部からは、透明な液体が床へと垂れ落ちる。
コンクリートの床を汚していく黄金色の液体。
室内に充満するアンモニア臭から逃れるように地下室を後にした知久は、頭を切り替えて夕食の献立を考え始めていた。
切り替えの速さは彼の美徳の一つだった
だけれど、そんな彼の前に白い獣が現れる。

『初めまして、鹿目知久』

非現実の象徴は、知久の脳裏へと直接語りかけた。






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