さやか陵辱
番外編


・第6話放送終了時点までのネタバレあり(公式サイトで公開された設定含む)。
・さやかが酷い目にあいます。
・残虐描写、嫌悪感を抱く内容注意。


プルプルとした白いゼリーには、細かく刻まれた果肉がトッピングされていた。本当ならば友人た
ちと食べに来るはずだった新メニューだが、周りの席には誰の姿もない。

(最近、独りの時間が増えたな……予想はしてたけど)

美樹さやかは苛立ちを隠せない表情を浮かべながら、いつものカフェで新商品のスイーツにス
プーンを突き立てた。金属の薄板を白い山に深く潜り込ませ、粘質の塊を抉り出していく。
すっと眼を閉じて、ゆっくりと口に運んだ。
舌の上に乗せた塊を磨り潰し、唾液と絡めてゆっくりと味わう。
程よい甘みが喉に消えていき、余韻まで楽しんでから次の塊を口に運ぶ。

「……………」

食べている間は、最初から最後まで無言だった。
さやかは、好きな物を食べるときは頭を空っぽにして、味を楽しむようになった。
毎日の魔女警戒パトロールと、数日毎に起きる命懸けの戦闘の日々は、彼女の精神を徐々に
削り取っていた。そして、疲弊した心は、五感に直接刺激をもたらす娯楽を好むようになる。

(美味しい……甘くて美味しい)

五感の刺激が、生きているということを教えてくれるから。
誰が何と言おうと、身体が多少おかしくなっていても、生きていると確信できるから。

(マミさんも、こんな気持ちで紅茶を飲んでいたのかな……)

スプーンを置き、今は亡き先人のことを想った。
彼女は戦闘の後、独りで紅茶を飲んで、生き残れたことを再認識したのだろうか。
さやかと同じならば、それは非現実的な魔女の空間から生還し、日常の平和な世界に戻るため
の儀式だったのだ。人魚姫が冷たい水中から、ゆっくりと温水に漬かり、陸に上がるような。

「……………」

勿論、死んだ彼女が疑問に答えてくれるはずもない。

現実の彼女は、学校内でようやく失踪したことが噂になり始めている。戦死した日から数えても
時間がかかり過ぎており、彼女の交友関係の希薄さを残酷に示していた。

(それにしても、マミさんに比べて……他の魔法少女どもは、本当に悪い奴ばっかり……)

自分のためならば、ヒトの命さえ何とも思わない非情な輩だ。
友人の鹿目まどかでさえ、最近は彼女たちに感化されたようで、かつての彼女では信じられない
ような薄情なことや、酷い嘘を吐くようになっていた。
例えば、彼女曰く、マミを失った病院での戦闘で、ほむらはマミを見殺しにしたのではなく、マミの
魔法で拘束されていたのだという。マミが変身していないほむらを魔法で拘束したのが、救援が遅
れた理由であり、だから、マミの死について、ほむらに直接的な非は無いのだという。

心の底から怒りが込み上げてきた。
激昂して、思いつく限りの酷い言葉で彼女を――まどかを罵った。
汚い嘘を吐いて、マミを悪者にしてまで、ほむらを庇った彼女が許せなかった。

最近のまどかは事あるごとに、杏子やほむらとの和解を勧めてくるが、さやかはそれに応じては
いない。その理由の1つが、ほむらが病院の件でマミを見殺しにしたことだった。
まどかの説明は一応の筋は通っていたが、そんなことは信じる理由にならない。そんな後から
とって付けたような言い訳を鵜呑みにするほど、単純な性格ではないのだった。
和解の障害を取り除くために、まどかがそのような酷い嘘まで考えるようになったことがショック
で悲しかった。そして、それ以上に、彼女の変わりようが悔しくて、情けなかった。
マミの崇高な意思は、まどかには残っていないのだと悟った。
さやかは確信を持った。
まどかは、以前と比べて、変質してしまったのだ。

(私がマミさんの正義を継いで、この街を守るんだ……あんな奴らに頼るもんか)

震える手を握り締めて、無理矢理に気合を込める。
自分が戦うことで、想い人の未来が守れるなら、勇気などいくらでも搾り出せる。

(恭介……私、頑張るからね!)

……………………………………………………………………
…………………………………

魔女空間では、敵の影が壁に虹色に映るだけで、敵の本体はどこにもいなかった。しかし、敵の
攻撃はさやかに届いてくるし、接触した感触と痛みは確かに感じてしまう。

「くそっ!こっち来るなっ!これ以上近づくなっ!」

壁に映った虹色の影が、さやかの魔法剣に切り飛ばされて散り散りになっていく。
しかし、剣は一振りで刀身にヒビが走ってしまい、次の攻撃にはとても耐えられそうに無い。仕方
が無く、新しい剣を生み出して構えるも、次の一振りですぐに壊れてしまう。
切り伏せた影は、スクリーンのような壁の中で、無数に分裂したまま動き出した。そして、壁の中
で合体して膨張し、更に巨大な姿となって再び襲い掛かってくる。
斬っても斬ってもキリが無かった。
本体が別にいるのか、それとも攻撃の仕方がまずいのか、全く見当もつかない。取り囲まれての
近接戦だけに敵を観察する余裕は無く、誰にも連絡していないので救援も見込めない。

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」

剣を構えるさやかは、壁に映った影のシルエットでは、数十体の敵に囲まれていた。
心臓が高鳴り、全方位に意識を張り巡らせる緊張が終わり無く続いている。精神は限界に近く、
使い魔たちを振り切って前進するか、もしくは退却するかの判断を迫られていた。

(どうしよう……ここは、こいつらを何とか振り切って前に……)

意識が内側に向いた一瞬、壁の中では、巨大なシルエットの拳が猛烈な勢いでさやかに迫って
いた。大きな曲線を描いて、そのまま彼女の顔に吸い込まれていく。
攻撃が向かってくるのが壁を介して見えるが、身体が反応できなかった。不可視の存在の巨大
な拳が、壁に映った影の中で、躊躇無くさやかの左頬を殴りつける。

「…………っ!」

細い首が不自然な方向に曲げられていく。
殴られた瞬間は痛みを感じず、大したダメージだとは思えない。
口内に鉄錆の味が広がり、折れた歯が舌の上でころりと転がる感触があるだけだった。
しかし、カンナをかけられたように左頬の薄皮が剥け、口と同じぐらいの大きさで頬が裂けて血
が飛び散り、生肉が空気に触れた瞬間、灼熱を帯びた激痛が思考を一気に掻き乱してくる。

「……ごっ……お゛……あ゛……!」

ニーソックスに包まれたヒザから力が抜けて、さやかの華奢な肢体がぐらりと傾いた。
必死に勇気を振り絞っていた美顔が、隠しようもない苦悶に塗り潰される。
割れた花瓶から水が零れるかのように、穴が開いた頬と半開きの唇から、泡を含んだ血液が流
れ落ち、純白のマントからフリル付きの胸アーマーに、赤黒い斑点と染みが増えていく。

(倒れちゃ……倒れちゃダメ……!反撃しないと……!)

血塗れの頬は光を発して治っていくが、ダメージはまだ抜けない。
虹色の影は螺旋を描くように伸び上がり、さやかの前に二本腕の巨人を形作る。
槍のように先の尖った右腕と、棍棒のように膨らんだ左腕が振り上げられた。

さやかは剣を不可視の敵に向けようとする。しかし、焦点の合わない視界はぐらぐらと左右に揺
れ、剣先は激しく振動して定まりもしない。感情のままに悲鳴を上げようと口を開きかけるが、破れ
ている頬の痛みがそれすらも許してはくれなかった。
大きく見開かれた瞳から、激痛で大粒の涙が溢れ出す。

(マミさん……私に力をください……貴女みたいにみんなを守れる力を……)

さやかは震えるひざを奮い立たせて、何とか攻撃を回避しようとした。
しかし、激痛で注意力が散り、背後の敵に気付くことができない。
敵がもう一体、背後に出現していることに気付いたのは、巨大な棍棒の影が彼女の背中に叩き
つけられ、背骨が砕けるボキンという音を聞いてからだった。
さやかの顔から零れた涙や血液は、空を切って水平方向に流れていく。
背面で砕けた胸アーマーが乳房から剥がれ落ち、衝撃で雑巾のように捻られた上半身が90度
以上回転してから、ようやく下半身がよろめきながらそれに続いていく。
腹部に広がった強烈な圧迫感が激痛と化して込み上げ、喉を逆流してきた胃袋が一瞬口内にま
で達してから戻り、カフェで食べたゼリーが胃液と混じって唇から漏れ落ちた。

(どうして……身体が動かないんだろ……だって私、怪我とかすぐ治るはずなのに……)

一瞬で音も聞こえなくなり、顔が地面に激突しても身体が動かない。
虚ろな眼で地面とキスをしたさやかは、自分の身体がどういう状態か理解できていなかった。彼
女の治癒力でも動けるのは数十分先だが、当然、使い魔がそれを待つ理由は無い。
無抵抗でごろりと蹴り転がされたさやかの、治癒途中の顔が軋んだ。考える間も無く骨が砕ける
音が顔の奥で聞こえて、鼻と頬肉が足の形に陥没する。

「ごぼっ!かは、ぁ……あ……う……」

壁に映る影たちが、倒れたさやかの影を足蹴にし、サッカーボールのように頭を踏みつけ、乳房
を執拗に踏み躙る。明らかに、弱った獲物を苦しめていたぶる行為だった。

「あ゛あ゛あ゛………あ゛ぐ……ん゛あ゛……」

鼻と破れた頬から溢れた血液が、水滴をガラスで押し潰したように顔中に広がった。級友に比べ
て成長が早く、柔らかな脂肪を十分に蓄えた乳房も、踏み躙られて谷間から押し潰されていく。
復元しつつあった胸アーマーは音を立てて砕け、ドレスは破れて肌が露になった。ぶるんと飛び
出した乳房は左右交互に捏ね潰されて、内出血で青黒い肉塊に変わっていく。
影は更に数を増し、一体がそのまま、倒れたさやかの下腹部に身を摺り寄せていった。
同時に、彼女の下腹部には大きな異物感が広がり始める。陰唇付近に生じた気配は下着をすり
抜けるかのように存在を無視して、膣口を押し広げ、そのまま内部に侵入しようとしていた。

(そ、そんな………いやだっ!)

理解はしていても、身体が動かなくては抵抗のしようもない。
膨張した異物が性器に埋め込まれ、男性の味を知らない狭隘を引き裂いていく。
股に何かを挟んでいるような不快感も、異物が下腹部の内側を奥へと進んでいく感触も、ありの
まま受け入れるしかなかった。快感など欠片も無く、ただ激痛が生まれただけだった。
汗の浮かんだ肌を伝う赤い血が、ミニスカートにじわりと広がり、染みを作っていく。異物が膣道
の奥、子宮口まで到達したときには、腹部の圧迫感から呼吸さえできなくなってしまった。

「うっ……ううっ……うあ……ああ……ぐうっ……」

影たちは、涙を流したさやかの顔や胸をいたぶり、下腹部に何度も巨体を重ね合う。
異物はますます膨張し、性器は前後に裂け広がり、スカートは瀧のように流れる血で黒く染まっていた。
荒々しく出入りを繰り返す異物に結合部の裂傷から血肉が零れ、子宮は殴られるかのように乱暴にノッ
クされる。内臓を突き上げられる音が、腹の奥から連続して響いてくる。
破瓜の痛みは独特のものだが、それでも乳房や顔のダメージに比べれば耐えれない痛みではなかった。
しかし、気を抜けば心さえ折られそうな激しい苦痛を感じるのは、勿論気のせいではない。

平気でいられる少女などいるはずがない。しかし、それでも、

(恭介……私、負けないから……絶対に、負けない……!みんなを、守っ…る……)

血塗れの顔を苦悶に歪めながらも、自身を奮い立たせるさやかは、顔を無慈悲に蹴り飛ばされ
て新しい血を流す。壁では何百という影たちが、倒れ付した彼女を嬲ろうと群がっている。
しかし、いくら尊厳を蹂躙されても、肉体を破壊されても、彼女は屈しない。彼女の心には、気高き
魔法少女のマミと、愛しい恭介が輝いているのだから。
二人の支えがある限り、
どのような強敵や孤独が襲ってこようとも、暗闇や絶望が襲ってこようとも、



既に発狂している彼女はもう何も怖くない。






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